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補助金・助成金

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2026.08.07

令和8年度版「業務改善助成金」実務ガイド 今年は9月1日申請受付開始の短期決戦

 

必読ポイント

対象者:今現在は最低賃金以上をクリアしているが、秋に改定される新しい地域別最低賃金と比べると下回ってしまう状態の中小企業・小規模事業者。現在、すでに最低賃金を下回る違法状態にある事業所は申請できません。

目的:賃上げを条件として、生産性向上に役立つ設備投資等(ITシステム、機械設備の導入、コンサルティングなど)にかかった費用の一部を助成し、企業の賃上げに向けた環境整備を支援すること。

申請受付期間:2026年(令和8年)9月1日〜都道府県の新しい地域別最低賃金の発効日の前日、または同年11月30日のいずれか早い日。

【注意点】

◆国の予算上限に達し次第、募集期間内でも早期終了する可能性があります(早い者勝ち)。

◆本助成金は事後精算型です。最も注意すべきは実施のタイミングであり、賃上げは「交付申請の完了後(※郵送の場合は、労働局に申請書が到着した後)」から最低賃金改定日の前日までに実施し、設備投資(契約・導入・支払い)は必ず「労働局からの交付決定通知後」 に行う必要があります(交付決定前の契約・支払いは助成対象外)。

◆原則として令和9年1月31日までに設備投資(機器の納品、支払い)を完了させる必要があります。

◆申請は労働局窓口や郵送のほか、電子申請システム「Jグランツ」からも可能ですが、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須となります。

業務改善助成金は、従業員の賃上げを条件として、社内の設備投資にかかる費用をサポートしてくれる国(厚生労働省)の制度です。例年だと4月から申請を受け付けていますが、令和8年度は9月1日から受付がスタートします。今年もっとも注意すべきは、申請受付開始から短期決戦を迫られる方が多いという点です。また、予算額の上限に達した場合は募集が終了しますので早い者勝ちでもあります。 本記事では、申請受付開始を前に、制度の基本や例年との変更点などをわかりやすく解説します。最後までお読みいただければ、9月1日に慌てないために心得ておくポイントなどが明確になるはずです。

本記事で使用している図表の出典はいずれも、厚生労働省のウェブサイトに掲載されているリーフレット「令和8年度業務改善助成金のご案内」

第1章:業務改善助成金は設備投資を一部助成

業務改善助成金は、事業場内(社内)で最も低い時給を一定額以上引き上げることを条件に、生産性を上げるための設備投資を行ったり、専門家によるコンサルティングを受けたりした場合、その「設備投資等にかかった費用」の一部が国から最大600万円助成される制度です。
対象となるのは、大企業と密接な関係を持たない「中小企業・小規模事業者」です。

1.1 賃上げと設備投資を実施するタイミングが重要

この助成金を活用する上では、実施のタイミングに留意する必要があります。

  • 賃上げのタイミング:必ず「交付申請の提出後(郵送の場合は労働局到着後)」から「地域別最低賃金の発効日(改定日)の前日」までに行う必要があります。交付決定を待ってはいけません。

💡【重要】
ここでいう賃上げとは、実際に給与を振り込むことではなく、新しい時給のルールを定めた就業規則等を社内で適用(スタート)させることを意味します。

  • 設備投資のタイミング:一方で、設備の契約や支払いは、必ず労働局からの「交付決定の通知後」に行う必要があります。交付決定通知前に設備を契約すると助成されません。

このように、それぞれ実施すべき期間が異なるという大原則を、まずはしっかりと頭に入れておいてください。

1.2 対象事業者は中小企業と小規模事業者

前述の通り、助成対象となる事業者は、大企業と密接な関係を持たない中小企業・小規模事業者です。具体的には、業種ごとに以下の資本金または従業員数のどちらか一方を満たす企業が対象となります。

中小企業・小規模事業者の定義(資本金額と従業員数のどちらか一方を満たせばOK)

  • 製造業・その他:資本金3億円以下 または 従業員300人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下 または 従業員100人以下
  • サービス業:資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下
  • 小売業:資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下

※上記の条件を満たしていても、親会社が大企業であるなど、大企業と密接な関係がある「みなし大企業」は対象外となりますのでご注意ください。

※小規模事業者(個人事業主や従業員数が少ない企業)も、上記の基準のいずれかを満たしていれば対象となります。

1.3 賃上げコストは助成されない

この助成金は、あくまで機械の導入などの設備投資にかかった費用を助成するものです。引き上げた分の従業員の賃金(人件費)そのものが助成されるわけではありません。

第2章:助成上限額と計算例

2.1 助成上限額の考え方

助成される上限額は、引き上げる時給の額(コース)と人数によって決まります。

助成上限額の目安 (事業場規模30人未満の場合)

  • 50円コース(50円以上引き上げ)1人引上げで40万円、2〜3人で70万円など
  • 70円コース(70円以上引き上げ)1人引上げで50万円、2〜3人で100万円など
  • 90円コース(90円以上引き上げ)1人引上げで100万円、2〜3人で240万円など

※引き上げ人数が増えるごとに上限額も段階的に上がります。

【事業場規模とは】
本社や別拠点も含めた会社全体の人数ではなく、今回申請を行う店舗や工場、オフィス(事業場)単体で働く「常時使用する労働者の数」を指します。例えば、会社全体では40人従業員がいても、申請する店舗のスタッフが15人であれば、事業場規模は「30人未満」となり、より高い(有利な)助成上限額が適用されます。

2.2 引上げ人数のカウント方法

「一番時給が低い人だけを引き上げたら、先輩スタッフから不満が出るのでは?」と心配になります。しかし業務改善助成金は、「追い抜かれる従業員の救済措置」があり、以下の人を引き上げ人数としてカウントし、会社がもらえる助成上限額の枠を広げることができます。

事業場内最低賃金だった人(引上げ必須):社内で一番時給が低く、引き上げの起点となる人です。

時給が「追い抜かれてしまう」人:①の人の時給を引き上げた結果、時給を追い抜かれてしまう(逆転現象が起きる)人たちです。この人たちについても、①の人と同じコース額(50円や70円など)以上の引き上げを行えば、引き上げ人数にカウントできます。

(具体例)現在の最低時給が1,050円の会社で「70円コース」を申請する場合

  • Aさん(時給1,050円):一番低いので、70円引き上げて1,120円にします。
    ⇒ 1人目としてカウントします。
  • Bさん(時給1,090円):そのままだと、後輩のAさん(引き上げ後1,120円)に時給を追い抜かれてしまいます。そこで、Bさんも一緒に70円引き上げて1,160円にします。
    ⇒ Aさんに追い抜かれる対象かつ、70円上げたので2人目としてカウントします。
  • Cさん(時給1,190円): Aさんが1,120円になっても追い抜かれない(既に引き上げ後の最低時給以上)ベテランです。会社として一律で引き上げるのはもちろん自由ですが、助成金の引き上げ人数にはカウントされません。

つまり、「一部の人だけ引き上げると不満が出そう」という事態を防ぐために、「下から底上げされて追い抜かれてしまう従業員も一緒に引き上げた場合、人数にカウントすることができる」という、非常に実務に配慮された制度になっています。

【事業場内最低賃金】
自社の事業場(店舗や営業所など)で働く従業員のうち、「最も低い時給額」のことです。月給や日給の従業員の場合は、時給に換算して比較します。時給の計算において、精皆勤手当、通勤手当、家族手当や、臨時に支払われる賃金、賞与、残業代などの割増賃金は計算から除外(算入しない)しなければならない点にご注意ください。
なお、この「最も低い時給額」の基準(起点)に位置づけることができる従業員は、入社後6ヶ月を経過している雇用保険被保険者のみです。もし、入社間もない新人スタッフの時給が社内で一番低かったとしても、その時給を基準(起点)とすることはできません。
ただし、その新人スタッフの時給を上げなくてもよいわけではありません。基準(起点)にはならないものの、その新人スタッフを含めたすべての労働者の時給を、引き上げ後の新しい事業場内最低賃金以上に引き上げる義務がある点にはご注意ください。
なお、当該新人スタッフが雇用保険に加入していれば、申請コース額以上の引き上げを行うことで引き上げ対象人数にカウントし、助成額の枠を広げることはできます。雇用保険に入っていない場合はカウントできません。

2.3 助成率は2パターン

かかった費用に対して助成される割合(助成率)は、引き上げ前の自社の「事業場内最低賃金」によって以下の2パターンに分かれます。

  • 引き上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満の場合:4/5
  • 引き上げ前の事業場内最低賃金が1,050円以上の場合:3/4

(具体例)100万円(税抜)の設備投資を行った場合
引上げ前の時給が1,000円だったとすると、助成率は「4/5」になります。
100万円 × 4/5 = 80万円 が助成額となり、実質20万円の負担で設備導入が可能です。ただし「2.1 助成上限額の考え方」で示した助成上限額の範囲内に限ります。

第3章:助成対象となる設備投資とは

会社の生産性向上等に役立つ設備投資等が助成の対象です。具体的には、自社の課題に合わせて以下のような用途に分けられます。

3.1 主な助成対象カテゴリ

IT・システムによる業務効率化
POSレジシステム、顧客・在庫管理システムの導入など(効果:会計や管理の作業時間を短縮し、生産性を向上)。

機械・設備による作業効率化
リフト付き特種車両(いわゆる8ナンバーの特種用途自動車)の導入(効果:送迎や作業の時間を短縮し、生産性を向上)。

専門家によるコンサルティング
顧客回転率向上などを目的とした業務フロー見直しのための国家資格者によるコンサル費用。

【コンサルタントの要件にご注意】
本助成金の対象となる経営コンサルティングは、国家資格者(中小企業診断士、社会保険労務士、1級・2級FP技能士)、国から認定された「認定経営革新等支援機関(一部の民間コンサル会社や税理士法人等)」、または金融機関が実施するものに限定されています。

3.2 購入金額は「税抜10万円以上」であること

上記の対象設備を導入する際、下限額として「税抜10万円以上」という条件があります。 ただし、1つ1つの設備は10万円未満でも、複数の設備(※すべて対象設備である必要があります)を合算して合計10万円(税抜)以上になれば申請可能です。

(申請できる例)

5万円のPOSレジ周辺機器(上記①)+6万円の在庫管理ソフト(上記①)= 合計11万円
⇒ どちらも生産性向上に直結するため、合算しての申請が可能です。相互に関連がない設備同士の合算でも問題ありません。

(申請できる例)

5万円のPOSレジ周辺機器(上記①)+6万円の単なる休憩室用テレビ= 合計11万円
⇒ 休憩室用テレビは生産性向上に直接関係ない(娯楽性が高い、または通常の備品である)とみなされ、助成対象外となります。そのため、これらを合算して10万円の条件をクリアすることはできません。

第4章:主な変更点と注意点

以前申請したことがある事業者も、初めての方も押さえておきたい、制度の変更や重要ルールを確認しておきましょう。

  • 申請期間がタイトに
    令和8年度は9月1日受付開始ですが、申請期限は「都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日又は同年11月30日のいずれか早い日」です。10月上旬に最低賃金が改定される都道府県では、実質1ヶ月程度しか申請期間がないため要注意です。
  • 申請コースの再編
    賃上げ額のコースが50円、70円、90円の3コースに再編されました。

以下のルールは前回の改正で導入され、今年度も引き続き義務化・制限されている重要なポイントです。久しぶりに申請する企業はご注意ください。

  • 車両の助成対象外化(一部を除く)
    過去に特例で対象になっていた通常の自動車は、助成対象外となっています。リフト付き車両などの「8ナンバーの特種用途自動車」のみ、引き続き対象です。
  • 対象労働者の限定(雇用保険必須)
    第2章でも触れましたが、引き上げ人数としてカウントできる対象労働者は、雇用保険被保険者に限定されています。パート・アルバイト等の引き上げを検討する際は、必ず雇用保険の加入有無をご確認ください。
  • 対象事業所の拡大(判定基準が「改定後の最低賃金」へ変更)
    本助成金は従来、申請時の最低賃金との差額が「50円以内」の事業所しか申請できないという一律の制限があり、最低賃金ギリギリの企業しか使えない制度でした。
    現在は、この「差額50円以内」というルールが廃止され、判定基準が「改定後の新しい地域別最低賃金未満かどうか」に切り替わっています。これにより、一律の50円縛りがなくなり、秋の最低賃金引き上げ額が50円を超える地域(例:60円台の引き上げなど)であれば、従来は対象外だった「差額50円以上」離れている事業所でも広く申請可能となっています。

    【具体例】
    現在の最低賃金が1,000円の県で、社内の最低時給が1,060円(差額60円)の場合。以前は差額が50円を超えているため申請できませんでした。しかし今のルールでは、秋の改定で県の最低賃金が1,070円(70円引き上げ)に上がる場合、自社の最低時給(1,060円)が改定後の新しい最低賃金(1,070円)未満となるため、申請が可能になります。

第5章:申請フローと用意すべき主な書類

5.1 申請の主な流れ

  1. 交付申請
    自社の賃金引上げ計画と設備投資計画を立て、必要書類を揃えて労働局へ提出します。窓口への持参のほか、郵送や電子申請システム「Jグランツ」での申請も可能です。Jグランツを利用する場合は「GビズIDプライムアカウント」を取得しておく必要があります。
  2. 賃上げの実施 【要注意】
    すでにお伝えした通り、賃金の引き上げは交付決定を待っていてはいけません。必ず、交付申請の完了後(※郵送の場合は、労働局に申請書が到着した後)から地域別最低賃金の発効日(改定日)の前日までに実施(就業規則等の改正および適用)してください。
  3. 労働局から交付決定の通知
    労働局の審査を経て「助成金を交付します」という決定通知が届きます。審査期間は約3ヶ月程度が見込まれています。
  4. 設備投資の実施【要注意】
    必ず決定通知が届いてから設備投資(計画していた設備の契約や導入、支払い)を行ってください。交付決定通知が届く前に契約や支払いを済ませてしまうと、助成対象外になってしまいます。
  5. 実績報告・支給申請
    すべての取り組みが終わったら、実施した結果をまとめた「事業実績報告書」(報告の際には、新しい就業規則の写しなどを添付します)を労働局へ提出し、助成金を請求します。審査を経て、指定口座に助成金が振り込まれます。なお、設備の納品や代金の支払いは原則として1月31日までに完了させる必要があります。

5.2 過去6ヶ月分の賃金台帳の用意は早めに

交付申請の添付書類として、時間と手間がかかりがちなのが過去6ヶ月分の賃金台帳の写しです。不備による差し戻しが発生しやすい書類です。
給与明細のコピーなどを賃金台帳の代替とすることはできません。
提出前に、自社の賃金台帳について以下の3点に引っかかっていないか必ず確認してください。

【チェック1】
労働時間数や残業時間が正しく印字されているか?
労働日数や労働時間、残業時間の内訳など、労働基準法で義務付けられた法定項目が網羅されている必要があります。ただ支給金額だけが印字されている台帳は、給与ソフトから出力したものであっても受け付けてもらえません。

【チェック2】
歩合給や、毎月変動する手当はあるか?
歩合給や変動手当がある従業員の場合、直近6ヶ月分では時給換算の審査ができないため、労働局から追加で「過去1年分」の提出を求められるケースがあります。

【チェック3】
賃上げ対象者は「雇用保険被保険者」であるか?
提出が必要なのは、賃金を引き上げる労働者(雇用保険の被保険者)の台帳のみです。雇用保険に加入していないパート・アルバイト等の賃金台帳は提出不要です。

※申請書には賃上げ対象者の雇用保険被保険者番号を記入する欄があるため、番号がわかる控えを手元に用意しておきましょう。

※新しい時給を規定する「就業規則等の写し」は、事後の実績報告時に提出します(申請時は申請書内の「案」の記載のみでOKです)。

第6章:よくある質問

設備を先に買ってしまいました。助成してもらえるでしょうか。

助成対象外になります。設備の契約や購入は、必ず交付決定の通知が届いてから行ってください。事前着手は厳禁です。

賃上げはいつ実施すればいいですか。

「交付申請の完了後(※郵送の場合は労働局に到着した後)」から「新しい地域別最低賃金が発効する前日」までに、賃上げ(新しい時給のルールを定めた就業規則等を社内で適用すること)を実施する必要があります。

設備の納品や支払いの期限はありますか。

あります。設備の納品や支払いは、原則として交付決定年度の1月31日までにすべて完了させる必要があります(※なお、Q2の通り、賃上げだけは秋の最低賃金発効日前までに済ませておく必要があるためご注意ください)。

入社間もないスタッフしかいない場合でも申請可能でしょうか。

この助成金を申請するには、引上げのベースとなる一番時給が低いスタッフが雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者である必要があります。つまり、入社6ヶ月以上のスタッフが1人もいない場合は、そもそも申請自体ができません。

第7章:9月1日に慌てないための3つの準備

今年は申請受付開始から締め切りまでの期間が非常に短くなる可能性があります。今のうちから以下の3つに取り掛かりましょう。

  1. 自社の事業場内最低賃金(時給)と、従業員の入社時期・雇用保険状況の確認
  2. 導入したい設備の選定と、2社以上の見積もりの取得
  3. 過去6ヶ月分の賃金台帳の整理

詳しい要件や申請様式、最新の申請マニュアルについては、必ず厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。

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