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2026.09.25

【令和9年度予算概算要求の紹介】農林水産省編 食のサプライチェーンの革新へ! スマート農業やフードテックで広がる企業の参入機会

令和9年度の農林水産省概算要求は、「改正食料・農業・農村基本法」のもと、食料安全保障の確立と農林水産業の成長産業化に向けた大きな舵切りを示す内容となっています。今回の概算要求は、従来の生産農家や農業法人にとどまらず、IT、メカトロニクスメーカー、食品加工・製造業、物流・流通事業者、輸出商社、フードテック・スタートアップなど、幅広く一般企業が参入・連携できる支援プログラムが多数盛り込まれている点が特徴です。
本記事では、農水省予算の全体像と、カテゴリー別の主要事業や支援内容を解説します。

第1章:食料システム全体の構造転換と生産性向上に重点

令和9年度の農林水産関係予算概算要求額(3兆1,377億円)のうち、成長投資や構造改革を重点的に後押しする枠組みとして「『強く豊かな日本』投資枠」に4,272億円が要求されています。
今回の予算編成における重点方針として、食料安全保障の強化、農林水産業の持続可能な成長の実現、そして生産から加工、流通、消費、輸出に至る食料システム全体の構造転換と生産性向上が掲げられています。
特に、資材高騰や労働力不足、物流の2024年問題などの構造的課題に対し、先端技術(スマート農業やフードテック)の実装や流通・物流構造の合理化、国際展開の強化など、民間企業の技術力やノウハウを必要とする施策に、重点的な予算要求が行われています。
次章以降では、主な施策の中身を見ていきます。

第2章:先端技術分野(対象:IT、機械メーカー、フードテック等)

生産現場の自動化・省力化や、先端技術を活用した新たな食ビジネスの創出、フードテックの社会実装やグローバル展開を後押しする施策が要求されています。

2.1 スマート農業技術の開発・供給促進事業:88億円

概要:ロボット、AI、IoT等の先端技術を用いたスマート農業技術の開発・供給を促進する取組を支援します。中山間地域等の生産現場のニーズを踏まえた即戦力となる低コスト・小型化などに関する技術開発や、ユニークな技術シーズを有する高専や職業能力開発大学校などと民間事業者が連携した研究開発も対象となっています。

この記事で使用している図表の出典は、いずれも農林水産省のウェブサイト↗に掲載されている資料です

2.2 フードテックビジネス実証・実装事業:4億2,900万円

概要:フードテックを活用した新たなビジネスモデルの実証・実装を後押しするとともに、優良な取組の横展開を図るための事例集の作成、セミナーの開催等が見込まれています。

2.3 フードテック活用食品産業効率化支援事業:5億8,000万円

概要:食品産業の生産性向上に向け、関係者の連携から現場への導入、飲食事業者への伴走指導までを一体的に補助する内容です。以下のような取組が予定されています。

  • 食品企業、機械メーカー等が連携して取り組む、業種横断的な生産性向上プロジェクトへの支援。
  • 食品製造事業者による、フードテックを活用した省力化・効率化設備やサービスの導入補助。
  • 生産性向上に取り組む飲食事業者に対し、専門家派遣による伴走指導や、外部サービスの導入実証を推進。
  • 事業者同士が連携・協調して取組を進められるよう、情報交換会の開催を後押し。

2.4 フードテック関連海外展開加速化対策の先行事例創出型:30億円

概要:植物工場、陸上養殖、食品機械、新規食品等の海外展開に向けた実現可能性調査や実証に要する費用を支援する狙いです。

第3章:食品流通や物流効率化(対象:卸売・食品流通等)

「物流の2024年問題」への対応やコールドチェーンの確立、卸売市場や共同物流拠点の機能強化、デジタル化を推進する施策群です。

3.1 強い農業づくり総合支援交付金(食料システム構築支援タイプ等):138億1,500万円

概要:産地から消費地まで、食べ物を安定して届ける仕組みを強くするための支援が要求されています。農産物をつくる地域の収益力を高める施設や、食品を効率よく運ぶための卸売市場施設の整備などを後押しします。
あわせて、地域農業を支えてきた古い共同利用施設について、集約や再整備を進める産地も支援します。たとえば、業務用野菜を輸入品から国産品へ切り替えること、化石燃料に頼らない園芸施設へ移行すること、流通のムダを減らして卸売業のコストを下げることなどを目指す内容です。

3.2 卸売市場再編集約等整備事業:78億4,400万円

概要:農産品等のサプライチェーン全体の物流効率化や、輸出拡大に向け、卸売市場の再編集約、合理化、高度化のための施設整備を進める計画です。具体的には、トラック予約システム、納品伝票の電子化・データ連携システム、自動フォークリフト、自動搬送車といったデジタル化や省力化に必要な機械設備の導入と、それに併せて卸売市場の施設整備を進めます。また、輸出先国までの一貫したコールドチェーンシステムを確保するための施設や、輸出先国が求める品質や衛生管理基準等を満たす施設整備を進める予定です。

3.3 持続可能な食品等流通総合対策事業:24億500万円

概要:物流の人手不足や輸送力不足に対応するため、食品流通の効率化を支援する事業です。標準パレット(荷台)の導入、物流関係者のデータ連携や共同配送、ラストワンマイル配送、輸出向けの新たな物流ルートづくり、中継共同物流拠点の整備などを後押しし、産地から消費地・輸出先まで食品を安定して届ける体制づくりを目指します。

3.4 食品ロス削減等推進事業:3億5,100万円

概要:地域の関係者が連携した食品リサイクルの効率化、食品企業が物流事業者等と連携して行う食品寄附のワンストップ化、食品ロス削減に向けた商慣習の見直し等の取組を支援します。

第4章:輸出拡大や海外展開分野(対象:食品メーカー、商社等)

2030年までに農林水産物・食品の輸出額5兆円達成という目標に向け、グローバルなサプライチェーン構築や現地の規制への対応を強力に支援しようとするカテゴリーです。

4.1 大規模輸出産地モデル形成等支援:21億4,400万円

概要:海外の規制やニーズに対応するため、生産・流通体系の転換に取り組む産地への対策を計画しています。具体的には、輸出が本格化するまでに発生する追加コストの支援など、大規模輸出産地の形成に向けたモデル的な取組を、複数年にわたり総合的に後押しする内容です。

4.2 GFPによる伴走支援、交流イベント開催、コミュニティサイト機能向上等支援:4億6,600万円

概要:農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)を通じた輸出拠点づくりや、海外ニーズへの供給拡大に向けたマッチング支援、伴走支援、交流イベントの開催、GFPコミュニティサイトの機能向上等が盛り込まれています。

4.3 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業:61億2,800万円

概要:あくまで要求段階ではありますが、令和8年度当初予算額1億2,300万円と比較して大幅増となっており、国が重要施策に位置付けていることが分かります。
輸出先国の求める基準(HACCP、ハラール、コーシャ、ISO等)に対応するため、食品製造・加工、流通施設の新設や改修、急冷施設・異物混入防止機器等の導入を支援します。

第5章:コメの安定供給と消費者の理解醸成

一時期のコメ不足・価格高騰から一転し、コメ余り・価格下落。そして食料品の値上がり。農林水産省の予算概算要求には、消費者の関心が高いテーマも含まれます。この章では、コメの周年安定供給や、持続可能な食料供給に向けた消費者の理解醸成等を目指す施策を紹介します。

5.1 米穀周年供給・需要拡大支援事業:77億500万円

概要:生産者や集荷業者などが需要を見ながらコメを生産・販売できるよう、産地の取組を支援する狙いです。たとえば、主食用米を計画的に長期販売する取組や、海外向け・加工用など別用途への販売を進める取組を後押しします。民間の力を活用し、一年を通じコメを安定的に供給するとともに、新たな需要の開拓も目指します。
また、コメの安定供給に向けた民間備蓄の本格導入に向けた実証的な取組も推進予定です。

5.2 地域での食育の推進(食品安全等に関する消費者の理解醸成等):56億6,500万円

概要:地域の関係者が連携して進める食育活動を支援する事業を予定しています。農林漁業の体験や生産者との交流、学校給食での地元食材の活用を広げるとともに、地域の農業関係者と学校が連携して農林漁業を学ぶ仕組みづくりを後押しします。また、食品の安全性や生産現場への理解を深め、消費者と地域の食をつなぐことを目指します。
たとえば、地域で活躍する食育推進・農業体験リーダー等の育成、多世代交流やこども食堂といった共食の場の提供支援、学校給食向け地場産物等の安定供給などが並んでいます。

第6章:企業参入に向けたポイント

ここまで見てきた事業や施策のポイントをまとめました。

  1. 生産現場支援から食料システム(サプライチェーン)全体支援へのシフト
    農家や生産地の支援に加え、生産、加工、流通、消費、輸出に至るフードチェーン全体の効率化や自動化、データ連携を支援する意図が反映されています。
  2. 「企業×産地・生産者」による連携重視
    補助事業には、事業者単独への支援にとどまらず、IT企業、機械メーカー、物流事業者と、産地や自治体が協議会やコンソーシアム等の連携体制を組んで取り組むプロジェクトが複数、盛り込まれています。
  3. 先端技術(DX・フードテック)とグローバル展開への集中投資
    人手不足対応や物流の2024年問題、海外の衛生・規制対応に向け、ロボット、AI、フードテック、自動化機器等の実装、ならびに海外市場獲得に向けた施設整備や輸出環境の高度化に対して重点投資が計画されています。

このように、令和9年度の農林水産省概算要求は、食料安全保障の確立と農林水産業の成長産業化に向け、個別の農家や企業を支援するのみならず、生産から輸出まで多様な主体の連携を後押しする内容となっています。民間企業の技術やノウハウを取り込みながら、地域やサプライチェーン全体に波及効果を生み出そうとしている点も一つの特徴と言えそうです。

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