
必読ポイント
- 第1号被保険者向け育児免除制度が開始(令和8年10月〜):自営業やフリーランス等の第1号被保険者を対象に、従来の産前産後免除(4ヶ月)に引き続いて子が1歳になるまで(実母9ヶ月・実父等最大12ヶ月)国民年金保険料が免除されます。所得制限や休業要件はなく仕事の継続中も利用可能で、将来の年金額にも100%反映されます。
- 会社員(第2号被保険者)の社会保険料免除手続きを「おさらい」:自社従業員の免除手続きは「産前産後休業取得者申出書」と「育児休業等取得者申出書」をそれぞれ別々に年金事務所等へ提出する必要があり、産休後の育休に関する手続きの漏れに注意が必要です。
- 従業員の配偶者や社会保険未加入パート従業員(第1号被保険者)への情報提供:扶養外のフリーランスである配偶者や、社会保険未加入パート従業員(第1号被保険者)等へ新制度を周知することで、世帯負担(実母は約16.1万円、実父・養父母は最大約21.5万円)が軽減され、エンゲージメント向上につながります。
2026年(令和8年)10月1日から、国民年金第1号被保険者(自営業、フリーランス等)を対象とした育児期間中の国民年金保険料免除制度↗が始まっています。これにより、実母は出産前から、実父・養父母は養育開始時から、子どもが1歳になるまで保険料免除を受けられる仕組みとなりました。
本記事では、新制度の要件やメリットを分かりやすく整理するとともに、中小企業の事業主や人事担当者が改めて押さえておきたい会社員(厚生年金・健康保険)の育休社会保険料免除手続きの注意点などについても確認します。
第1章:産前産後から1歳まで!切れ目のない年金免除体系
1.1 育児免除へスムーズなバトンタッチが実現
これまで、自営業者やフリーランス等の国民年金第1号被保険者を対象とした出産・育児に関する保険料免除制度は、平成31年(2019年)4月に始まった産前産後期間の免除制度のみでした。この制度では、出産予定月(または出産月)の前月から4ヶ月間(多胎妊娠の場合は3ヶ月前から6ヶ月間)の国民年金保険料が免除されていました。
2026年(令和8年)10月1日からは、これに引き続く形で育児期間免除制度が新設されました。実母の場合、従来の産前産後免除期間に続いて9ヶ月間の育児免除が適用されます。これにより、妊娠・出産期から子どもが1歳になる誕生日の前月まで、最大13ヶ月間にわたり保険料の支払いが免除される切れ目のない支援体系が実現しました。
1.2 父親・養父母も対象、所得制限や休業要件なし
新制度の対象となるのは、1歳未満の子を養育する国民年金第1号被保険者(自営業者、農業者、フリーランス、学生、無職の方等)です。要件として、子との法律上または特定の親子関係(実子・養子等)があり、かつ住民票上の住所が同一(同居)であることが求められます。
主な特徴と要件のポイントは以下の通りです。
父親単独・養父母も対象
実母だけでなく、父親単独や養父母が子を養育する場合も、養育を開始した日の属する月から子が1歳になる誕生日の前月まで(最大12ヶ月間)免除制度が適用されます。
夫婦ダブル免除が可能
夫婦ともに第1号被保険者であれば、要件を満たすことで夫婦揃って免除を受けられます。
所得制限なし・休業要件なし
本制度には所得制限がありません。また、会社員の育児休業とは異なり休業要件(仕事を休まなければならないルール)も設けられていないため、事業やフリーランスの業務を継続しながらでも、要件を満たせば国民年金保険料の免除を受けることができます。
1.3 第2号・第3号・任意加入被保険者は対象外
本制度はあくまで国民年金第1号被保険者を対象とした制度です。以下のカテゴリに該当する方は、本制度においては対象外となりますのでご注意ください。
- 第2号被保険者(会社員・公務員など):厚生年金保険の加入者。会社員等には別途、厚生年金保険・健康保険の育休免除制度が用意されています。
- 第3号被保険者(扶養配偶者):第2号被保険者に扶養されている配偶者(自身で保険料を直接納める必要がない方)。
- 任意加入被保険者:60歳以上の方や海外在住者で任意に国民年金に加入している方。
1.4 制度のメリットと申請手続き
新制度を利用するにあたって、押さえておくべき実務上のメリットと申請手続きのポイントは次の通りです。
- 将来の老齢基礎年金額に100%反映:保険料の納付が免除された期間は、保険料を全額納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。免除を受けたことで将来の年金額が減額される心配はありません。
- すでに支払った保険料は将来分へ振り替え、または返金が可能:口座振替やまとめ払い(前納)などで、すでに保険料を支払い済みの場合でもご安心ください。届出を行えば育児免除が適用され、すでに納めた分の保険料は免除期間が明けた後の将来の支払いにそのまま振り替える(充当)か、指定口座へ返金してもらう(還付)ことができます。
- マイナンバー連携による届出不要ケース:産前産後免除を受けた実母で、マイナンバー連携等により日本年金機構において親子関係および同一世帯であることが確認できる場合、個別の届出を行わなくても自動で育児免除が適用されます。父親や養父母、産前産後免除の届出をしていない実母は届出手続きが必要です。
- 市区町村窓口・郵送・スマホ(マイナポータル)で申請可能:住民登録をしている市区町村の国民年金窓口や郵送による「紙」での届出はもちろん、マイナポータルを利用したスマホ等からの電子申請(24時間365日対応)にも対応しています。
第2章:会社員の「社会保険料(厚生年金・健康保険)免除手続き」を確認
ここまで、第1号被保険者の育児免除制度について紹介してきました。
会社員等については、従来から育児中の社会保険料免除の仕組みが設けられていましたが、改めて主なポイント等を確認しておきましょう。
2.1 会社員等の社会保険料免除の仕組み
社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入している企業の従業員(第2号被保険者)が産休や育休を取得する場合、事業主が年金事務所等へ申出を行うことで、休業期間中の社会保険料が被保険者本人負担分・事業主負担分ともに免除されます。この免除期間も、将来の年金額の計算上は保険料を納めた期間として扱われます。
また、男性従業員が取得する「産後パパ育休(出生時育児休業)」や短期育休についても、育児休業開始日が含まれる月に14日以上取得した場合や、月末を含む休業の場合には月額保険料が免除対象となります。
産後パパ育休(出生時育児休業)
子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日)まで取得できる主に男性(父親)向けの育児休業制度です。1歳までの通常の育児休業とは別に取得可能で、2回に分割して取得することもできます。労使協定の締結など一定条件のもとで休業中の就業も認められており、同一月内で14日以上取得した場合などに社会保険料(厚生年金・健康保険)の免除対象となります。
2.2 産休と育休は別々の届出が必要
経営者や人事労務担当者が実務上で注意すべきポイントは、産前産後休業と育児休業の社会保険料免除手続きは、法令上それぞれ別々の届出が必要になるという点です。
現場でよくあるミスとして、1回目の産休手続きのみを済ませ、2回目の育休手続きの提出を失念してしまうケースが散見されます。手続きが漏れると保険料免除が正しく適用されないため、自社の育休フローにおいて2段階の届出チェックが組み込まれているか再確認しておきましょう。
- 1回目の届出:従業員が産前産後休業を取得した際、「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」を提出します。
- 2回目の届出:従業員が産休終了後に育児休業へ入った際、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を改めて提出します。
2.3 復職後は「養育期間標準報酬月額の特例」を活用
育休からの復職後、短時間勤務(時短勤務)制度を利用すること等により給与(標準報酬月額)が下がるケースが多くあります。
この際、事業主が「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を年金事務所に提出することで、子どもが3歳に達するまでの間、実際下がった標準報酬月額ではなく「養育を始める前の高い標準報酬月額」で将来の年金額を計算してもらえる特例措置が適用されます。これは従業員の将来の年金受給額を守る重要な制度です。本特例は被保険者(従業員)からの申出に基づき事業主が手続きを行う仕組みとなっているため、復職時の社内フローとして会社側から従業員へ案内を行い、事業主から年金事務所へ確実に届出を行いましょう。
第3章:従業員の配偶者やパートスタッフ等へ任意の情報共有
今回スタートした国民年金の育児免除制度は、会社側に届出などの法的義務があるものではありません。しかし、対象となる方にとっては年間で約16万〜21万円もの負担軽減となるため、社内周知や情報提供は大変喜ばれる取り組みと言えます。また、従業員らが安心して育児と仕事を両立できる職場環境づくりやエンゲージメント向上にもつながるはずです。
- 配偶者がフリーランス・自営業等の従業員へ: 従業員の配偶者が個人事業主やフリーランスなどで、社会保険の扶養(第3号被保険者)に入っていない第1号被保険者である場合、本制度の対象となります。実母の場合は産前産後免除に引き続く9ヶ月分(約16.1万円)、実父や養父母の場合は最大12ヶ月分(約21.5万円)の国民年金保険料(月額17,920円/令和8年度)が免除されます。「配偶者の方も役所やスマホ(マイナポータル)で申請すれば年金免除を受けられますよ」と案内することで、世帯全体の経済的負担を大きく和らげることができるでしょう。
- 社会保険未加入のパート・アルバイトスタッフへ:週20時間未満の勤務等で自社の社会保険に入っておらず、自身で国民年金保険料を納めているスタッフ(第1号被保険者)に対しても、「ご自身で申請すれば1歳まで保険料が免除になります」と案内しておくと親切です。
第4章:よくある質問
- 国民年金の育児免除制度は父親単独でも利用できますか?
-
はい、利用できます。国民年金第1号被保険者であれば、父親単独であっても、子を養育することとなった日の属する月から子が1歳になる誕生日の前月まで(最大12ヶ月間)、免除制度の対象となります。
- フリーランスで仕事を続けながらでも申請できますか?
-
申請できます。本制度には所得要件も休業要件も設けられていません。事業やフリーランスとしての業務を継続しながら育児を行っている場合でも、要件を満たせば免除を受けることが可能です。
- 会社員はこの育児免除制度を利用できますか?
-
利用できません。国民年金育児免除制度は第1号被保険者向けの制度です。会社員や公務員(第2号被保険者)には、第2号被保険者向けの産前産後休業・育児休業期間の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)免除制度が適用されます。
- 免除を受けると将来もらえる年金額は減ってしまいますか?
-
減りません。育児免除制度によって保険料が免除された期間は、保険料を全額納付したものとして老齢基礎年金の受給額に100%反映されます。
第5章:新制度を従業員支援と職場環境づくりに活かそう
2026年10月に開始された「国民年金育児免除制度」は、自営業者や個人事業主、フリーランスといった働き方を選ぶ人々にとって、妊娠から育児期までの経済的負担を軽減する制度です。経営者(自営業者)ご自身や、配偶者が対象となる場合は、マイナポータル等から忘れずに届出を行い、制度を活用しましょう。
また、これまでに述べた通り、社会保険未加入のパートスタッフや従業員の配偶者に情報提供することで、「安心して子どもを産み、復職できる」と感じられる職場環境づくりに役立ちます。こうしたサポート体制の整備は、優秀な人材の定着を促し、企業の持続的な成長を後押しするはずです。
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