
必読ポイント
対象者:中小企業事業者(1年以上事業を実施しており、労災保険に加入し、役員を除く自社の労災保険適用の「60歳以上の高年齢労働者」を常時1名以上就労させていること)
目的:高年齢労働者の労働災害防止のための職場環境改善(設備・装置の導入等)、熱中症対策、全労働者対象の健康保持増進(コラボヘルス等)の取組支援(補助上限:最大100万円)
公募締切:令和8年10月31日(土)(※専門家総合対策コース第1段階は8月31日(月)まで)。予算額に達した場合は早期終了となります。
注意:交付決定通知が届く前の発注や契約、代金の前払いは補助対象外となります。
働く高齢者が増える中、職場での転倒や腰痛などの労働災害を防止するための環境整備が求められています。厚生労働省が令和7年12月に公表した「令和7年 高年齢者雇用状況等報告」によると、65歳までの雇用確保措置を実施している企業はすでに99.9%に達し、さらに70歳までの就業機会確保に乗り出している企業も全体の34.8%に上るなど、シニア層が長く第一線で活躍する社会へと確実に変化しています。
このように高年齢労働者が増加する一方で、加齢に伴う身体機能の低下をカバーする対策が各企業における急務となっています。「エイジフレンドリー補助金」は、高年齢労働者が安全に働けるよう、設備の改善や専門家による指導といった取組にかかる経費の一部を国が補助する制度です。 本記事では、令和8年度の制度概要やコースの違い、申請の流れや必要書類についてわかりやすく解説します。

第1章:60歳以上なら正規・非正規問わず
1.1 補助対象となる労働者
本補助金が対象とする労働者は、雇用形態(正規・非正規)を問わず、自社の労災保険が適用される直接雇用の従業員であることが基準となります。
- 【対象になる】パート、アルバイト、契約社員など:正社員はもちろん、パートやアルバイト等の非正規雇用であっても、労災保険の適用対象であれば60歳以上の高年齢労働者として対象に含まれます(従業員数のカウントにも含めます)。
- 【対象にならない】経営者、役員、派遣社員、特別加入者など:そもそも労働者として労災保険の適用を受けない人(経営者、役員、労災保険未加入者、特別加入の中小事業主など)や、自社との直接の雇用関係がない人(派遣社員など)は、補助対象外となります。
1.2 補助金の使途ルール
労働災害リスクを下げるためのリスクアセスメント、作業環境改善(設備導入)、運動指導、熱中症対策、健康保持増進の取組が補助対象ですが、補助金の使途には以下のルールがあります。
- 業務への配置が前提:設備や機器を導入する場合、対象となる高年齢労働者がその補助対象に関係する業務に実際に就いていることが条件です。
- 高年齢労働者の人数分が上限:アシストスーツや冷却服など個人が着用・使用する機器は、若手従業員分を含めて一括購入することはできず、対策に関わる高年齢労働者の人数分が補助の上限となります。
- 【例外】全年齢対象の取組:専門家による「転倒防止・腰痛予防の運動指導等」や「コラボヘルスコース(健康保持増進)」などのソフト面の対策については、高年齢労働者が1名以上いることを前提に、全年齢の労働者を対象とすることが認められています。
第2章:中小企業の企業規模要件
申請できるのは、1年以上事業を実施しており、以下の要件をすべて満たす中小企業事業者が対象となります。
- 自社の労災保険が適用される60歳以上の高年齢労働者を常時1名以上就労させていること(全コース共通)。
- 以下の企業規模要件(資本金または常時使用する労働者数のいずれか)を満たすこと(資本金・出資がない場合には、労働者数のみで判断する)。
- 小売業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業: 5,000万円以下 または 50人以下
- サービス業(医療・福祉、宿泊、娯楽、情報サービス等): 5,000万円以下 または 100人以下
- 卸売業: 1億円以下 または 100人以下
- その他の業種(製造、建設、運輸、農業、金融業など): 3億円以下 または 300人以下
第3章:3つのコースの概要
自社の課題に合わせて、以下の3つのコースから申請します。同一年度内に複数のコースを同時に申請することはできません。
| コース名 | 内容 | 補助率 | 上限額 (※消費税抜き) |
|---|---|---|---|
| ①専門家総合対策 | 【第1段階】労働安全衛生に係る専門家による高年齢労働者の特性に配慮したリスクアセスメント(RA)の実施 | 4/5 | 100万円 (※第1・第2段階の合計額) |
| (同上) | 【第2段階】RA結果を踏まえた設備・装置の導入(アシストスーツ等)、専門家による運動指導等 | 1/2 | 同上 |
| ②熱中症対策 | 暑熱環境での熱中症予防として、身体機能の低下を補う服やスポットクーラーの導入等 ※屋内作業場は、労働安全衛生規則の温湿度調整を行っても室温31℃又はWBGT(暑さ指数)28℃を超える環境等に限られます。 |
1/2 | 100万円 (※経費が200万円未満の場合は経費の1/2が補助額となります) |
| ③コラボヘルス | 保険者への健診データ提供を含む労働者の健康保持増進の取組(健診結果を踏まえた禁煙指導やメンタルヘルス対策等の健康教育指導、健康管理システム導入等) ※注意:メンタルヘルス対策の指導は単独での申請は不可(他の健康教育等とのセット申請が必要)です。 ※事前要件:事業主健診情報が医療保険者(協会けんぽ等)に提供されていること。 |
3/4 | 30万円 |
原則として、第1段階⇒第2段階と順を追って申請する必要があります。しかし外部の専門家に依頼せず、自社の安全衛生担当者がリスクアセスメントを実施した場合は、その結果を踏まえ、第1段階を省略して直接第2段階(対策の実施)から申請することが可能です。
【補足】厚生労働省が令和8年5月に公表した「令和7年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値) 」によると、職場での熱中症による死傷者の約半数を50代以上が占めており、高齢層の熱中症予防は特に重要な課題となっています。

第4章:スケジュールとフロー概要
4.1 申請期間と提出方法
- 申請期間:令和8年10月31日(土)まで
- 専門家総合対策コースの第1段階は8月31日(月)まで。
- 予算額に達した場合は早期終了となります。
- 提出方法: Jグランツでの電子申請、または郵送(当日消印有効)。
4.2 主な必要書類
交付申請書、見積書(相見積不要)、労働保険申告書、労働保険領収書など。
4.3 フロー概要と注意点
STEP 1
交付申請書類の提出
STEP 2
審査・交付決定(申請から2ヶ月程度かかる見込みです)
STEP 3
取組の実施(発注・施工・購入など)
【重要:事前着手・前払いの禁止】交付決定前の発注・契約は補助対象外となります。また、納品や工事などのすべての取組が完了する前に代金を支払う前払いも補助対象外です。必ず交付決定後に発注し、取組完了後に代金を支払うようにしてください。
STEP 4
支払請求書類の提出(対象費用の支払い完了後、実績報告と請求を行う)
※提出期限:令和9年1月31日(当日消印有効)まで。
STEP 5
補助金の確定・支払い(入金)
第5章:よくある質問
-
同一年度内に複数のコースを申請したり、複数回申請したりすることはできますか?
-
できません。ひとつの事業者は、同一年度内に1回限り申請できます。なお、専門家総合対策コース第1段階と、その後の第2段階は、あわせて1回の交付申請とみなされます。
-
リスクアセスメント結果で優先度が高いとされた職場環境改善の取組はすべて補助対象となるのでしょうか?
-
専門家総合対策コースによる補助金は、専門家によるリスクアセスメントを受ける経費の5分の4及びその結果優先度が高いと判断された職場環境改善の取組に関する経費の2分の1、合わせて最大100万円が交付されます。
【例】
・専門家によるリスクアセスメントを受ける経費:20万円(20万円×4/5=16万円)
・優先度が高いと判断された取組として
①段差の解消:20万円、②床の改修:100万円、③リフトの導入:80万円=総額200万円(200万円×1/2=100万円) →16万円+100万円=総額116万円だが、補助金額は上限の100万円(第1段階16万円+第2段階84万円)となる。
-
安全衛生委員会などでは、どのような審議を行えばよいでしょうか?
-
安全衛生委員会または衛生委員会では、職場における安全衛生対策の課題について審議してください。これらの委員会の設置義務がない事業場では、定例会議や業務ミーティングなどで労働者の意見を聴く機会を設けて話し合ってください。
審議や話し合いでは、職場環境の改善や運動指導など、自社の実情に応じた安全衛生対策を挙げ、それぞれについて重要度や優先順位を付けて検討してください。そのうえで、補助金申請時には審議や話し合いの内容が確認できる議事録や記録を添付する必要があります。
第6章:第一線で活躍していただく環境を整える
深刻な人手不足が続く中、多くの企業にとって60歳以上のシニア層は、これまでの経験と知識を活かして第一線で活躍していただくべき不可欠な戦力です。だからこそ、高年齢労働者が安全で働きやすく、その能力を存分に発揮できる職場環境を整えることは、企業にとって急務であり、大きな投資価値があります。
本記事で紹介した「エイジフレンドリー補助金」は、そのような前向きな職場環境づくりを強力に後押しする制度です。自社の状況に合ったコースを選び、シニア層の活躍を支える環境整備に向けて、予算に達する前に早めの準備・申請をご検討ください。
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