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2026.07.31

政府一体で輸出5兆円を目指す! 新始動「日本の食輸出1万者支援プログラム」とは 農水省と経産省の担当者に狙いを聞く

2030年の農林水産物・食品の輸出額5兆円目標に向け、これから輸出に挑戦する事業者を政府一体となって後押しする新たな支援策が始動しました。経済産業省と農林水産省などが連携して推進する「日本の食輸出1万者支援プログラム」は、ジェトロ(独立行政法人 日本貿易振興機構)のノウハウを活かした伴走支援から、輸出に使える各補助金の情報提供までをワンストップで行い、農林水産物・食品の輸出拡大の加速化や地方の中小企業をはじめとする食品事業者の「稼ぐ力」の強化を目指す枠組みです。経済産業省貿易振興課の新藤大樹・課長補佐と、農林水産省輸出企画課の伊藤圭・課長補佐に、本プログラム立ち上げの狙いや、世界市場における地方の食品事業者の勝ち筋などをうかがいました。記事の後半では、具体的な支援メニューや、「GFP」と連携した輸出チームづくりなどを解説しています。

出典:ジェトロの「日本の食輸出1万者支援プログラム」に関するページ

新藤さん:日本国内で人口減少が進む中、農業や食品産業の発展を図るためには、今後成長する海外の食市場を取り込み、輸出促進を図ることが重要です。農林水産物・食品の輸出について、政府は2030年に5兆円という目標を掲げ、昨年も過去最高の1.7兆円を超えました。しかし、5兆円の達成に向けては、輸出を巡る諸課題に対応するための施策をより積極的に展開し、ペースアップしていく必要があります。
こうした背景を踏まえ、総理からの指示もあり、ジェトロによる輸出支援や中小企業支援を所管する経済産業省においても、農林水産省と協力して何かできることはないかと考え、本プログラムを立ち上げました。中小企業向けの付加価値向上支援やECサイトを活用した販路拡大支援など、経済産業省の施策も含めた支援策を地方局も含む関係機関が連携して推進することで、輸出プレイヤーの増加等を促し、輸出拡大を加速化していきたいと考えています。

出典:農林水産省のウェブサイトに掲載されている資料「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」

伊藤さん:新たな支援プログラムは、従来からある全産業向けの横断的な取り組みに着想を得て、食特化型の新規政策として打ち出したものと理解しています。両者の最大の違いは、「食品輸出特有の課題(分厚い壁)」に対応するための専門的なサポート体制があるかどうか、という点です。
食品産業は内需が強く、国内の商習慣を前提にビジネスが展開されてきましたが、輸出する場合には、異なる商習慣を乗り越える必要があります。また、輸出先国によって食品衛生の規制が異なり、施設登録や証明書が求められる場合があります。
こうした様々な課題解決に向け、今回、経済産業省とタッグを組むにあたり、食品輸出を支援する施策を省庁横断的に集めたガイドブックを作成・公表するなど、省庁の垣根を越えて支援できる情報基盤を整え、事業者のニーズやフェーズに応じてオーダーメイドで伴走支援できるようにした点が本プログラムの1つの強みとなっています。

伊藤さん:まずは「新たに輸出に取り組みたい」という新規層に向けての入り口という位置付けです。すでに食品の輸出に取り組んでいて新しい輸出先国や新しい品目の輸出に挑む方、あるいはこれまで国内向けのみに販売していた方が輸出に取り組もうとするときに、このプログラムに登録することで情報が得やすくなります。このプログラムへの登録をきっかけに、これまで知られていなかった様々な支援策への活用に繋がればと考えています。潜在的な輸出事業者をここで掘り起こせれば嬉しいですね。

伊藤さん:今回のプログラムでは、特に農林水産物・食品の輸出額の約3分の1を占めている加工食品メーカーによる輸出拡大、さらなる掘り起こしに期待しています。
一方で、農林水産省が8年前から取り組んできた「GFP」は加工食品メーカーや輸出商社といったプレーヤーに加え、生産者や産地との繋がりにも強みがあります。今後、海外市場が求める大規模な供給力(ロット)に対応するためには、生産者とどう連携していくかが課題になります。そうした産地側のマッチングやチーム作りは引き続きGFPが担い、両者が発展して相乗効果をもたらす形(両輪の連携)になればと考えています。

GFP:(Global Farmers / Fishermen / Foresters / Food Manufacturers Project)

農林水産省が推進する「農林水産物・食品輸出プロジェクト」の略称。輸出に意欲的な生産者、食品メーカー、商社などが登録し、専門家の支援や事業者同士のマッチングを受けられるコミュニティです。現在、1万1,000者以上が登録しています。

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GFP公式ウェブページ

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伊藤さん:具体的な勝ち筋を実現するため、経済産業省の中堅・中小企業向けの支援施策や、輸出先国の規制・条件に対応するための設備投資に関する農林水産省の補助金(食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業など)等の支援の枠組みを活用し、輸出の基盤を整えていただきたいと考えています。また、各事業者の輸出に取り組む経緯や戦略は様々ですが、我が国の強みを生かした具体的な勝ち筋としては大きく3つ考えられると思います。
1つ目は、文化や日本らしさと連動して輸出が広がっていく形です。加工食品は輸出のポテンシャルが高く、国としては、輸出重点品目として、例えば味噌、醤油などを選定しています。発酵食品は世界から注目されており、和食の浸透とともに、味噌、醤油の輸出額はアジアや欧米を中心として、対前年比で2桁%の成長を見せています。

また、日本の外食企業が海外店舗で日本での味を再現する際、現地では調達できない質の高い調味料などを日本から調達することも考えられます。昨今外食チェーンの海外進出が目覚ましく、こうした外食企業の進出に引っ張られる形で世界へ輸出されていくというストーリーがあります。
2つ目は、現地消費者のメインストリームであるスーパーでの取り扱いです。日本食での使用や日系スーパーでの取り扱いにとどまらず、現地のスーパーで取り扱ってもらうことが、輸出を大きく広げるには重要ですが、こうした現地の商流に個社でアプローチすることは困難です。そのため、複数社で連携した加工食品クラスターなどを組成して売り込んでいくことが重要となります。
3つ目は、インバウンドの活用です。訪日外国人は、2025年に4000万人を突破しました。彼らが求めている大きなニーズは「日本食を食べること」であり、これを活用しない手はありません。自社の商品が訪日外国人に好評だったことをきっかけとして輸出にチャレンジするという流れを、より強くしていければと思っています。

輸出重点品目

日本の強みを発揮して輸出を促進し、海外市場を開拓するため、国が重点的に支援している品目。現在は、海外で評価の高い牛肉やホタテ貝をはじめ味噌、醤油、お菓子など31品目が選定されています。農林水産省のウェブサイトでは、品目別に輸出実績が公表されています。

伊藤さん:人口減少が進む中、海外に目を向けた事業展開は不可欠です。本プログラムがそのきっかけとなって、「輸出に取り組んでよかった」と思っていただけるよう、私たちも汗をかいてサポートしていきます。輸出における課題は企業ごとに様々ですが、解決に向けてご支援できる政策を幅広く用意しております。まずは、お気軽にお問い合わせいただき、ぜひ積極的に活用していただければと思います。

新藤さん:輸出に成功している企業の中には、単独での努力に加えて、ジェトロの支援策や補助金などもうまく活用されている企業も多いです。ただ、経営リソースも限られている中で、すべての企業が自力で同じように動けるわけではないと思います。できるだけ多くの中小企業が輸出の成功ステージに進んでいけるよう、いろいろな支援策を用意しておりますので、まずはこの1万者支援プログラムにご登録いただき、支援策を知っていただければと思います。
また、「ポータルサイトを見るだけでは分かりにくい」という方には、経済産業省の地方局や、全国各地にあるジェトロの事務所(貿易情報センター)、ジェトロの「農林水産物・食品輸出相談窓口」など、地域に密着したサポート体制も整えています。ぜひお近くの窓口へお気軽にお問い合わせいただき、本プログラムや様々な支援策を上手に活用していただければと思います。私たちもしっかりサポートして、輸出にチャレンジしやすい環境を整備していきます。


前半のインタビューでは、新プログラムにかける省庁の熱い思いや、地方企業が世界で勝つためのヒントが見えてきました。ここからは、実際にどのような支援が受けられるのか、「日本の食輸出1万者支援プログラム」の仕組みや活用法について具体的にご紹介します。

第1章:食輸出1万者支援プログラムの背景と目的

前半のインタビューでも語られたように、農林水産物・食品の年間輸出額は、2025年に過去最高の1兆7,005億円(1〜12月実績)を記録し、13年連続で増加しました(農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」より)。
一方で、国が掲げる「2030年の輸出額5兆円」という目標を実現するには、これまで以上に輸出の裾野を広げ、取組を加速させていく必要があります。

そのためには、海外の現地ニーズに応じた販路開拓を進めるとともに、大きく2つのアプローチが重要になります。1つは、これまで輸出に取り組んでこなかった事業者を新たに掘り起こし、輸出プレイヤーそのものを増やすこと。もう1つは高付加価値化を後押しし、1社あたりの輸出額を伸ばすことです。

こうした課題に対応するため、2026年4月に農林水産省、経済産業省、中小企業庁、ジェトロ、中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)が連携し、政府一体で事業者を支援する取組として始まったのが「日本の食輸出1万者支援プログラム」です。

資料提供:農林水産省

第2章:従来プログラムとの違いと活用ポイント

2.1 従来からの「新規輸出1万者支援プログラム」

これまで政府は、輸出未経験の事業者や、初めての国への輸出に挑戦する事業者を後押しするため、「新規輸出1万者支援プログラム」を実施してきました。
このプログラムは中堅・中小企業を対象としています。登録するとジェトロによる個別カウンセリングを受けることができ、自社の課題や準備状況に応じた最適な支援策を提案してもらえます。具体的には、輸出の可能性を探る段階から、専門家による事業計画の策定・個別伴走支援(ハンズオン支援)、輸出商社やバイヤーとのマッチング、越境ECサイトへの出品、さらには商品開発やプロモーションに使える国の補助金の案内など、輸出の実現に向け一貫したサポートが用意されています。

出典:ジェトロの「新規輸出1万者支援プログラム」に関するページ

2.2 規模・形態を問わず登録可能! 大企業・団体にも広がる支援対象

前半のインタビューでも語られた通り、「食輸出」プログラムの主眼は、これから輸出に挑戦する事業者の裾野を広げることにあります。

しかし、制度としての対象は決して限定的ではありません。食品関連事業者向けの支援としては、「新規輸出」プログラムが中堅・中小企業を対象としていたのに対し、「食輸出」プログラムは大企業や各種団体(農協・漁協などの生産者団体等)にも対象が拡大しています。

食品の輸出には、地域の生産者から加工・流通業者まで、多様なプレイヤーの連携が欠かせません。これから世界へ飛び出す事業者を地域ぐるみでバックアップできるよう、企業規模や形態を問わず、日本の食に関わるすべての層が登録できる、間口の広い枠組みになったと言えるでしょう。

2.3 食関係企業が登録すべき窓口は?

ここまで見てきた通り、輸出に関する政府の支援窓口としては、従来からの「新規輸出」プログラムと、新しい「食輸出」プログラムの2つが存在します。食関係の中小企業がこれから輸出に挑戦する場合、「食輸出」プログラムのポータルサイトから登録するのがスムーズなルートです。

なぜなら、「食輸出」プログラムの窓口から登録することで、ジェトロが提供する従来からの充実したサポート(個別カウンセリングや商談会支援など)をベースとしつつ、農林水産省が展開する食特化の強力な支援策(専門的な相談窓口、ビジネスマッチング、補助金など)へも一元的にアクセスできる仕組みになっているからです。

では、「食輸出」プログラムに登録すると、具体的にどのような支援が受けられるのか、次章で詳しく見ていきましょう。

第3章:食輸出のための強力な支援メニュー

「日本の食輸出1万者支援プログラム」に登録すると、これまで省庁ごとに分かれていた以下の強力な支援策へ一気通貫でアクセスし、自社の課題に合わせて最大限に活用することができます。

3.1 輸出に関するご相談・伴走支援

農林水産省の輸出相談窓口や、ジェトロの専門家による個別の伴走支援などが受けられます。輸出先の選定から各国の規制対応、事業計画の策定まで、初めての輸出でも迷わないよう強力にバックアップしてもらえます。

3.2 HACCP対応やサプライチェーン構築に向けた補助金等の情報提供

輸出の壁となる「HACCP(ハサップ)」等の国際的な衛生管理基準をクリアするため、農林水産省の「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」を活用できます。最大6億円の手厚い補助金を受けながら、施設改修や機器導入を進めることが可能になります。

HACCP(ハサップ)

食品の生産から加工・流通までの全工程において、食中毒菌の汚染や異物混入などの危害を予測し、安全性を確保するための衛生管理システム(手法)の基準です。現在、EUや米国など多くの国や地域が、輸入される食品に対してHACCPに基づく衛生管理や施設認定を義務付けており、日本の農林水産物・食品を輸出する上で欠かせない要件となっています。

また、販路の開拓を通じ輸出の一層の拡大を図るため、生産から現地販売までの一気通貫した戦略的なサプライチェーンの構築に向けて、産地の供給力強化、物流の効率化、テスト販売等の課題解決のための実証を支援する「サプライチェーン連結強化プロジェクト事業」を活用できます。

出典:農林水産省のホームページに掲載されている、令和8年度当初PR版
出典:農林水産省のウェブサイトに掲載されている令和8年度当初PR版

3.3 海外見本市から越境ECまで!海外販路開拓事業の支援

ジェトロが主催するジャパン・パビリオン(海外見本市の共同出展支援)といったリアルな販路開拓はもちろん、Amazon(米国/英国)上の日本商品特集ページ「JAPAN STORE」を通じたプロモーションなど、多岐にわたる越境EC支援を活用できます。

なかでも初心者におすすめなのが「JAPAN MALL事業」です。こちらは国内納品・円建て決済で取引が完結するため、複雑な輸出手続が不要で、初心者でも参入しやすい仕組みになっています。

3.4 海を渡ったあとも安心!「輸出支援プラットフォーム」を活用

アメリカ、EU、アジアなど主要な輸出先(10の国と地域)に設置された、大使館やジェトロ、JFOODO(※ジェトロ内に置かれた日本食品海外プロモーションセンター)等からなる現地合同チームと連携。日系食品企業のネットワーク化等を通じ、規制等の情報共有、現地政府申し入れ等により事業者に共通する課題に対応することや、オールジャパンでのプロモーション活動への支援など、海外進出後も国を挙げた手厚いバックアップが受けられます。

出典:農林水産省のホームページに掲載されている輸出支援プラットフォームの概要より

第4章:食輸出実現までのステップ

日本の食輸出1万者支援プログラムを通じた支援の流れは以下の通りです。 ※初めてジェトロのサービスを利用する場合、まずは「お客様情報登録」が必要です。

 

Step

申込み

プログラムへ申し込むと、ジェトロのデータベースに登録されます。

 

Step

支援サービスのご案内

事業者のニーズや課題に合わせて、最適な支援メニューや相談窓口が紹介されます。

 

Step

輸出に向けての準備

商談スキルや輸出手続きに関するセミナーへの参加、「農林水産物・食品の輸出支援ポータル≫」活用などにより知識を習得します。

 

Step

BtoBマッチング/カタログサイトへの登録

準備が整い次第、ジェトロの国際ビジネスマッチングサイト「JETRO e-Venue≫」やオンラインカタログサイト「Japan Street≫」に商品を登録し、海外バイヤーからの引き合い(商談オファー)を待ちます。

 

Step

各種サービス・イベントへの参加

商社マッチングや国内外の商談会・展示会、越境EC事業などに参加して、バイヤーと商談します。

 

Step

輸出開始

バイヤーと契約締結。商品開発や改良などのサポートを受けながら輸出を開始します。

第5章:最強の輸出チームで日本の食を、さらに世界へ!

前半のインタビューでも語られた通り、日本の食輸出1万者支援プログラムの強みは、加工食品メーカーなどへの充実した支援と、海外展開の実務ノウハウにあります。
一方で、メーカーが海外の巨大な需要(大ロット等)に応え続けるためには、原材料を供給する生産者との繋がりが不可欠です。この、産地や生産者のネットワークに強みを持つのが、巨大なコミュニティであるGFPです。

これからの食の輸出において重要なのは、食輸出プログラムとGFPという2つの支援枠組みを使いこなすことではないでしょうか。「製造・販売(ジェトロ等)」×「生産・供給(GFP)」の連携により、単独の企業では成し得ない、強力な輸出チームを作ることが可能になります。

近年は、日系外食チェーンの海外進出に伴う調味料の輸出や、地方を訪れたインバウンド観光客からの評価をきっかけとした輸出など、地方の食品事業者にとっても世界へ羽ばたくチャンスは広がっています。
「日本の食輸出1万者支援プログラム」を入り口として活用し、地域ぐるみで世界市場という新たなステージへ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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