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2026.09.04

日本人1.2億人割れ/外国人は400万人突破 人口動態から見る労働供給の現在地

総務省が令和8年7月29日に公表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(令和8年1月1日現在)」は、日本社会の構造が大きな転換点を迎えたことを示しています。
日本人住民が17年連続で減少し、昭和59年(1984年)以来、42年ぶりに1億2,000万人の大台を割り込んだ一方で、外国人住民は初めて400万人を突破しました。これは単なる総数の変化にとどまらず、社会の担い手である現役世代の急減と、生活インフラを支える「労働供給制約」がいよいよ本格化しつつある現実を映し出しています。
人口が減るからといって、社会全体の仕事量(需要)も減って需給は相殺されるわけではありません。このままでは、私たちの当たり前の日常を支えるサービスが機能停止に陥るリスクがあります。持続可能な未来のために、社会そしてわたしたちは、どうすべきなのか考えてみたいと思います。

「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」

総務省が毎年公表している、行政記録に基づく公式な人口統計です。

  1. 統計の概要と集計内容
    住民基本台帳法に基づき、全国の市区町村の住民票に登録されている人口と世帯数を集計したものです。基準日である「1月1日現在」の実数に加え、前年1年間(1月1日〜12月31日)の出生・死亡(自然増減)や転入・転出(社会増減)といった「人口動態」をあわせて公表しています。
  2. 外国人住民の反映
    平成25年(2013年)調査から外国人住民の数値も含まれるようになりました。これ以降、日本人住民と外国人住民の合計値が「総計」として表記されています。

第1章:東京と地方の労働供給格差

1.1 中核都市が消失するほどの人口減少

令和8年1月1日現在における日本人住民の人口は1億1,973万6,483人となり、前年比で91万6,744人の減少を記録しました。
91.6万人という年間の減少数は、多くの地方中核都市の人口規模に匹敵する規模です。長期的かつ深刻な少子化の傾向が続いており、令和7年中の日本人住民の自然減少(生まれた数から死亡した数を差し引いたマイナスの数)は92万3,008人と、調査開始以来で最大の減少となっています。
「消費者が減るなら、社会に必要な仕事の量も同じように減るのではないか」という疑問が生じますが、実際にはそうはなりません。その理由は、高齢化による消費と生産の非対称性にあります。人間は何歳になっても医療や介護、物流、小売り、生活インフラの維持といったサービスを消費し続けますが、高齢期に入るとサービスの提供者(生産者)からは退くため、バランスがとれないのです。

出典:総務省のウェブサイトに掲載されている資料「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」

1.2 1千万人超の労働供給不足

国内では、2040年代前半に高齢人口がピークを迎えるとの推計が多く見られます。人口減少社会とはいえ、高齢化に伴い医療や介護などの一部の生活維持サービスに関しては労働需要が維持、あるいは増加すると考えられます。
一方で働き手(15歳から64歳までの現役世代)は急減するため、深刻な需給ギャップが生じます。
リクルートワークス研究所が2023年3月に公表したレポート「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」によれば、日本が経済成長せず、社会全体の仕事の量が増えないという前提(=新たな人手が不要なため、最も人手不足の被害が小さくなる前提)で計算した場合でも、2030年に341万人余、2040年には1,100万人余の労働供給が不足すると見込まれています。
さらに、この不足は地域によって極端な格差があります。
同レポートの都道府県別シミュレーションによると、2030年には東京都を除くすべての道府県において労働供給が不足します。たとえば福島県(不足率13.9%)、京都府(不足率13.8%)、新潟県(不足率12.0%)などです。2040年になると、3割~4割の労働力が不足すると見込まれる道府県もあります。
他方、東京都だけは労働供給が労働需要を上回ると予測されています。同レポートは「東京からは労働供給制約の実態は見えない」として、このことが危機対応への遅れにつながりかねないとの懸念を示しています。

第2章:職種別の統計から見えてくるもの

2.1 数字上の均衡は取れるシナリオだが…

労働力不足を職種という視点から読み解いてみましょう。

経済産業省が2026年3月に公表した「2040年の就業構造推計(改訂版)」では、2040年までに名目+3.1%、実質+1.7%のGDP成長を見込む成長シナリオを前提に、AIやロボットの活用促進、リスキリング(学び直し)などが一定程度進むケースを試算しています。いわば、AIやロボットの徹底した導入によって業務の省力化に成功し、国全体で必要な労働力の量(労働需要)を、実質的に約200万人分削減(スリム化)する場合のシナリオです。

同推計が示す将来の姿は、次の通りです。

人口減少によって、実際に働く人(就業者数)は2022年の約6,700万人から2040年には約6,300万人へと、約400万人も減少してしまいます。

他方、2040年に本来必要と見込まれる仕事の総量は約6,700万人分ですが、上記の200万人分のスリム化と、人口減少に伴う自然な需要減(200万人分)を合算した400万人分を差し引くことで、6,700万人分-400万人分=約6,300万人分となり、こちらも「6,300万」に縮小します。これによって、働く人の数(約6,300万人)と必要な仕事の量(約6,300万人分)が合致し、「国全体の総量としては大きな不足は生じない」という均衡状態を作り出すことができる、というのが国の試算のシナリオです。

2.2 著しい職種のミスマッチ

しかし、「2040年の就業構造推計(改訂版)」は、以下の通り極めて激しい不均衡が生じる可能性があると警鐘を鳴らします。

  1. 事務職の余剰
    AIなどを活用した自動化・省力化によって、主にデスクワークを担う事務職は2040年に437万人が余剰となると予測されています。
  2. AI・ロボット等の利活用を担う人材の深刻な不足
    現場を動かす現場人材(生産工程やその他の現場仕事など)は2040年に260万人不足します。また、AI・ロボット等の利活用を担う人材が339万人不足すると試算されています。
出典:経済産業省のウェブサイトに掲載されている資料「2040年の就業構造推計(改訂版)について」

つまり、仕事の総量と働く人の数だけを見ると、国全体では一見バランスが取れているように見えます。しかし内訳に目を向けると、供給超過が見込まれる職種がある一方で、現場人材や専門人材のように大幅な不足が見込まれる職種もあります。問題は、単に「人が足りるかどうか」ではなく、必要とされる場所・職種に人材が移動できるかどうかにあります。この職種間のミスマッチが解消されない場合、介護、建設、運輸、物流、災害復旧など、人への依存度が高い分野を中心に、地域によってはサービス供給の維持が難しくなる可能性があります。

■前提が異なれば見通し(推計)も異なる

比較軸 リクルートワークス研究所の推計「未来予測2040」より 経済産業省の推計「2040年の就業構造推計(改訂版)」より
前提シナリオ 「現状維持(成り行き)」シナリオ=今の社会構造や働き方のまま、人口減少を迎えたらどうなるか? 「技術革新」シナリオ=AIやロボットを極限まで導入し、業務の効率化(200万人分スリム化)に成功したらどうなるか?
2040年の結果 1,100万人の供給不足
(生活維持インフラの崩壊危機)
総量としては大きな不足なし
(ただし、内訳は著しい不均衡)
推計から読み取れるメッセージ 「このまま手をこまねいていれば、生活維持サービスが物理的に消滅する」という警告 「技術革新で総量を合わせられたとしても、職種や地域間に著しいミスマッチが残る」という警告

第3章:外国人住民に広がる中長期滞在と定着化の兆し

日本人の急激な人口減少と構造的な人手不足が進む中で、外国人住民の存在感は急速に高まっています。
人口動態調査によると、全国の外国人住民の数は35万3,696人増(前年比9.62%増)となり、初めて400万人を突破する403万1,159人となりました。

3.1 労働供給を担える年齢層が極めて多い年齢構成

日本人住民と外国人住民の年齢構成を比較すると、外国人住民は労働供給を直接担える年齢層(生産年齢人口)が極めて多いという特徴があります。
日本人住民で最も人口が多い年齢階級のピークは、中高年期に差し掛かる「50〜54歳」(約965万人/8.06%)です。

これに対して、外国人住民の最も人口が多いピークは、働き盛りとなる「25〜29歳」(約71万人/17.70%)であり、20〜24歳の層も約66万6千人(16.54%)となっています。この結果、外国人住民における生産年齢人口(15〜64歳)の割合は「86.17%(約347万人)」という非常に高い水準に達しています。
日本人住民における生産年齢人口の割合が59.09%(約7070万人)まで低下している現実と比較すると、外国人住民は労働市場を実質的に支える若い世代の層が非常に厚い構成となっています。

3.2 世帯数の増加と在留資格から見えてくる変化

今回の調査で注目すべきは、外国人住民の世帯数の増加です。外国人世帯数(約261万世帯)は前年比12.16%増と、人口自体の伸び(9.62%増)を上回るペースで増えており、1世帯あたりの人数は令和7年の1.58人から1.54人へと低下しています。
これは、かつてのように「会社の寮などで集団生活をする一時的な出稼ぎ」から、「個人でアパートを借りて独立した暮らしを営む単身者や少人数世帯」へと、生活スタイルが変化していることを物語っている可能性があります。

この流れを補足する材料となるのが、国の「第2次出入国在留管理基本計画」に示された在留資格に関するデータです。

  • 「永住者」の定着:2025年末時点で94万7,125人に達し、在留資格の中で最多。
  • 中長期の就労資格の急増:ホワイトカラー・専門職の「技術・人文知識・国際業務」が約47.6万人、現場を担う「特定技能」も約39.0万人へと拡大。

さらに国も、2027年4月施行の「育成就労制度」を通じて、外国人材が長期的なキャリアを描きながら日本に定着できる仕組みへと舵を切っています。
世帯数の増加と在留資格の動向からうかがえるのは、外国人住民を単なる「一時的な労働力」としてとらえることはできないということです。地域社会で独立した世帯を持ち、長期的に暮らす生活者としての存在感が高まりつつあることは、日本の人口・地域社会が迎えている新たな変化の兆しと言えるのではないでしょうか。

第4章:人口動態が示す現実と、インフラ維持に向けた論点

今回公表されたデータから見えてくるのは、不足する現場の労働力と、それを実質的に埋めつつある若い外国人住民という客観的な現実です。具体的には、これまで見てきた通り、以下のような数字がその実態を示しています。

  • 日本人住民の自然減が続く中、生産年齢人口(15〜64歳)の割合が約59%(平成5年前後は約69%)まで低下していること
  • 外国人住民が400万人を超え、その86%以上が生産年齢人口で構成されていること
  • 外国人住民において、世帯数の増加ペース(+12.16%)が人口の伸び(+9.62%)を上回り、1世帯あたり1.54人へと単身化・少人数化が進んでいること

リクルートワークス研究所のレポート「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」は、労働供給制約社会において、人手不足は一時的な景気変動ではなく人口動態に起因する構造問題であると指摘します。事務職の自動化を進めたとしても、生活基盤を直接動かす現場のピースは、日本人だけではすでに埋まりきらなくなっています。

一方で、外国人住民の増加に対しては、生活ルールの遵守や地域社会の安全など、慎重な視点や不安の声があるのも事実です。国も「第2次出入国在留管理基本計画」において、ルール違反への厳正な対処や適正な管理体制の強化を強く打ち出しており、「秩序ある共生社会」の実現を前提としています。

出典:出入国在留管理庁のウェブサイトに掲載されている「第2次出入国在留管理基本計画」の概要資料

私たちが直面しているのは、このマクロの現実を前に、どのような前提を置いて中長期的なインフラ維持の仕組みを構築していくかという問いです。徹底したAI・ロボット化への投資を進めつつ、すでに社会に組み込まれつつある外国人住民と、いかに秩序を保ちながら地域を維持していくのか。客観的なデータを踏まえ、冷静かつ現実的な議論を深めていくことが求められています。

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