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2026.07.28

10月施行の改正・同一労働同一賃金 従業員の納得感を生む実務的な対応ガイド

令和8年(2026年)10月1日より、パートタイム・有期雇用労働者および派遣労働者に対する「同一労働同一賃金」のガイドライン等の改正が施行されます。

今回の改正は、法令上の基本理念である、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を徹底することを目的としています。さらに厚生労働省は、改正の趣旨として、労働者が自らの待遇に納得して働ける納得感の向上を重視する姿勢を示しています。「自社には関係が薄い」と考えていると、ある日突然、従業員から待遇差についての説明を求められた際に適切な対応ができず、労使トラブルに発展するリスクがあります。

例年、10月は都道府県ごとの最低賃金が見直される時期でもあり、非正規雇用労働者の給与や待遇を総合的に見直す絶好のタイミングと言えます。

本記事では、主に経営者や人事担当者の皆様を対象に、この10月に向けて具体的に何をチェックし、どのように対応を進めるべきか、実践的なチェックリストや文言例とともに解説します。

同一労働同一賃金

同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止するルールです。職務内容(業務の内容および責任の程度)や配置転換の範囲などが全く同じであれば差別的取扱いが禁止され、違いがある場合であっても、単に正社員か否かという理由ではなく、職務内容などの客観的・具体的な実態に照らして、合理的な理由を説明できなければなりません。 今回の改正内容については、厚生労働省が同一労働同一賃金特集ページ≫やYouTubeの解説動画≫で詳しく紹介していますので、ぜひ参考になさってください。

第1章:法改正の理念と、企業への2つの大きな影響

今回の改正は、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を徹底し、労働者が自らの待遇に納得して働ける環境を整えることを目指しています。これに伴い、経営者が直面する実務上の大きな変化は以下の2点です。

影響①:待遇差に関する「説明を求めることができる旨」の明示義務化

従業員を新しく雇い入れる時だけでなく、既存の有期雇用労働者(契約更新のあるパートやアルバイトなど)の雇用契約の更新時にも、労働条件通知書等に、待遇の相違の内容・理由等について事業主に説明を求めることができる旨を明示することが新たに義務付けられます。明示義務違反には10万円以下の過料が規定されていますので注意が必要です。

【そのまま使える!厚生労働省のモデル通知書に準拠した文例】

「正社員(通常の労働者)との間の待遇の相違(内容・理由)等について、説明を求めることができます。希望される方は〇〇(担当部署・担当者名・連絡先)までお申し出ください。 」

※説明を求めることができる旨と、その窓口を明示すれば問題ありません。

▲厚生労働省の同一労働同一賃金特集ページ≫には、改正に対応したモデル労働条件通知書が掲載されており、ダウンロードして使用することができます。

■ 影響②:正社員人材を確保する目的だけでは待遇差の理由にならないことの明確化

待遇差の理由として、正社員としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図るためといった目的(いわゆる正社員人材確保論)があったとしても、その目的があることのみをもって、直ちに「その待遇差は不合理ではない(正当である)」と当然に認められるものではないことが明確化されました。

出典:厚生労働省のウェブサイト≫に掲載されている資料

第2章:「不合理」とされた基準とは

手当や休暇はこれまでも同一労働同一賃金の対象でしたが、過去の裁判例などを踏まえ、今回のガイドライン改正で「このような差をつけると不合理(法違反)になる」という具体的な基準が新たに明記(追加・充実)されました。これまで曖昧なルールのまま放置していた企業は、以下の項目について早急な見直しが必要です。

2.1 新たに明記された項目

家族手当:労働契約の更新を繰り返しているなど、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者に支給していない場合は、不合理と判断されるリスクがあります。「何年以上働いたら」という一律の基準ではなく、契約の更新回数や実態を見て個別に判断されます。

家族手当のうち「配偶者向け」は見直しの岐路】企業が支給する家族手当の中でも、「配偶者の年収が〇〇万円以下なら支給する」という要件を設けているもの(いわゆる配偶者手当)は多いですが、今回の改定では、このことが「パート労働者の働き控え(いわゆる「年収の壁」)の一因になっている」と指摘されました。
このため国は、労使で話し合い、見直しを進めることを推奨しています。今回を機に、配偶者手当を廃止して基本給に組み込んだり、子ども向けの手当へ移行したりするなど、家族手当のあり方自体を根本から見直すことも一つの有効な選択肢です。

住宅手当:住宅手当が転勤(転居を伴う配置の変更)の有無に応じて支給されるものである場合、正社員と同じく転勤がある非正規雇用労働者には、正社員と同一の住宅手当を支給しないと不合理となるリスクがあります。

無事故手当:正社員と同一の業務(運転など)を行っている非正規雇用労働者に支給していない場合は不合理となります。

特別休暇(夏季・冬季休暇など):非正規雇用労働者に対しても、正社員と同一の夏季・冬季休暇を付与する必要があります。

褒賞:永年勤続などの褒賞について、同じ期間勤続している非正規雇用労働者には、正社員と同一の付与が必要です。

2.2 基準がより厳格になった項目

福利厚生施設:利用条件や利用料金の割引率などに不合理な差をつけることは禁止されます。

賞与・退職金:会社の業績等への貢献度に応じて支給する賞与や、労務の対価の後払い等の性質を含む退職金について、非正規雇用労働者にも実態に合わせた均衡のとれた支給や制度の見直しが求められます。(※退職金についての基準は今回新たに明記されました)

病気休職・休暇:正社員に病気休職中の給与保障(会社独自の見舞金や上乗せ支給など)を行っている場合、相応に継続的な勤務が見込まれる非正規雇用労働者にも、正社員と同一の給与保障を行う必要があります。(※給与保障に関する考え方が今回、追加・充実されました)

出典:厚生労働省のウェブサイト≫に掲載されている資料「同一労働同一賃金ガイドライン等の改正内容について(パートタイム・有期雇用労働法関連)」

第3章:10月施行に向けてなすべきこと

10月1日からの改正内容の施行に向けて、具体的にどのように動いたらよいのでしょうか。順を追って説明します。

ステップ①:自社の待遇の違いを洗い出し、違いの理由を整理する

給与明細や就業規則をもとに、正社員と非正規雇用労働者の間の手当や休暇の違いをリストアップします。待遇にモヤモヤを抱えている従業員がいるかもしれません。厚生労働省は、アンケートを実施して現場の意見を吸い上げるといった工夫を推奨しています。

不合理な待遇差にあたるか否かを判断する重要なチェックポイント

正社員と異なる待遇(手当の額など)を設ける場合、以下の要素で「客観的な違い」を説明でき、かつ「その違いに見合ったバランスの取れた差」になっているかを確認してください。
なお、通勤手当(交通費)や、食費の負担補助を目的とする食事手当など、業務内容や責任が違っても必要性が変わらない手当については、以下の要素に違いがあったとしても差をつけることは原則として認められません。


業務の内容(具体的な範囲、ノルマの有無など)

責任の程度(トラブル時の対応、管理職か否かなど)

職務内容や配置の変更の範囲(転居を伴う異動があるかなど)

その他の事情(職務の成果、能力、経験など)

ステップ②:就業規則や賃金規程の改訂

客観的に説明できない不合理な差があれば、社内ルールを改訂します。

【重要】格差をなくすために、正社員の待遇を引き下げて非正規に合わせることは、労働条件の不利益変更となり原則として労使の合意等が必要となるため、基本的には望ましい対応とはいえません。非正規雇用労働者の労働条件を改善する方向で検討してください。

ステップ③:新たな労働条件通知書の準備と説明体制づくり

10月以降の雇い入れや契約更新に向けて、第1章で紹介した「待遇差の説明を求めることができる旨」の文言を記載した新たな労働条件通知書を準備します。また、従業員から実際に説明を求められた際は、ステップ①で整理した理由をもとに、資料を見せながら口頭で説明する、または説明事項を網羅した資料をそのまま渡すなどの体制を整えましょう。

どんな資料を準備すればいい?】説明用の資料は、手当や休暇などの項目ごとに、正社員と非正規雇用労働者の支給ルールの違いと、その客観的な理由(転勤の有無など)を並べて記載した一覧表を作成しておくのが実務上おすすめです。ステップ①で洗い出したリストを、そのまま対比表の形に整えることで、分かりやすい説明資料として活用できるでしょう。

第4章:よくある質問

非正規雇用労働者から「手当の違い」について説明を求められたら、どう対応すべきですか?

単に「雇用形態が違うから」といった主観的な説明では不適切です。第3章のステップ①のチェックリストで整理した職務内容や配置変更の範囲などの客観的な違いに基づき、資料を見せながら口頭で説明する、または説明事項を網羅した分かりやすい資料を渡すといった方法で、相手が納得できるよう具体的に説明する義務があります。

非正規雇用労働者の待遇改善に伴うコスト負担への支援策はありますか?

国の「キャリアアップ助成金≫」を活用できる可能性があります。基本給を引き上げたり、正社員と共通の諸手当制度を導入したりした企業に対して資金が助成されます。また今年度から、正社員転換制度などの情報をウェブ等で公表すると助成金が加算される仕組みも新設されています。

出典:厚生労働省のウェブサイト≫に掲載されている資料「同一労働同一賃金ガイドライン等の改正内容について(パートタイム・有期雇用労働法関連)」
自社だけでルールを見直すのは不安です。無料で相談できるところはありませんか?

全国47都道府県にある「働き方改革推進支援センター≫」の活用をおすすめします。社会保険労務士などの専門家が、就業規則の見直しや助成金の活用などについて、無料で窓口相談や訪問支援を行ってくれます。また、厚生労働省のウェブサイト≫には、「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)」も公開されていますので、ぜひ参考にしてください。

第5章:制度対応は人材定着への投資

法改正への対応は、就業規則の見直しやコスト増など、企業にとって負担に感じられる側面があるかもしれません。しかし、今回のルール見直しの根底にあるのは、現場を支える従業員が納得して働き続けられる環境づくりです。
従業員が抱く待遇への疑問を解消し、「自社は公正に評価してくれている」という納得感をもたらすことは、人手不足が深刻化する現在において、離職を防ぎ定着率を高めるための重要な投資となります。
まずは、自社の就業規則と従業員の給与明細をそろえて、第3章でご紹介したステップ①のチェックリストを用いて待遇の差異を洗い出すことから始めてみませんか。早めに行動を開始することで、専門家による無料相談や助成金の活用を検討する余裕も生まれます。

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