
必読ポイント
- 対象者:中小トラック運送事業者(資本金3億円以下または従業員数300人以下で、事業用トラックを5両以上保有)。
※メニューにより荷主企業やリース事業者等も申請できます。 - 目的:車両の効率化設備やシステムの導入、M&A、人材確保・育成等の支援による、労働生産性の向上と持続的な経営基盤の強化。
- 公募締切・注意点: 7月24日(金)17:00。先着順のため、予算上限に達し次第終了します。
- 本事業は事後精算型です。対象期間内(令和8年2月7日〜令和8年7月24日)に機器の導入や事業(人材育成や免許取得等)の実施、および費用の支払いをすべて完了させた上で、専用WEBフォームから電子申請を行う必要があります(郵送不可)。
国土交通省は、物流業界の「2024年問題」や深刻な人手不足に直面する中小企業を支援するため、機材導入からシステム化、M&A、人材確保・育成までを網羅した総合支援パッケージ「中小物流事業者の労働生産性向上事業」を公募しています。本記事では、自社がどのメニューを使えるかが一目でわかる早見表を掲載。申請時に気をつけたい注意点などを分かりやすく解説します。
物流の2024年問題
トラック事業においては、2024年4月から働き方改革関連法施行により、時間外労働の上限(休日を除く年960時間)規制等が適用されています。労働時間が制限されることで、①1日に運ぶことができる荷物の量が削減、②トラック事業者の売上げ・利益の減少、③ドライバーの収入の減少、④収入の減少による担い手不足といった問題が生じているとされます。
第1章:物流業界向け総合支援パッケージ
本補助金は、ハード(車両設備)、ソフト(システム)、経営(M&A)、人(人材確保・育成)と、一見すると毛色の違う非常に幅広いメニューが1つの事業にまとまっています。
現在の中小物流業界が抱える複雑な課題を解決するため、車両設備改善といった単一の対策ではなく、経営の構造的な改善を促す仕組みとして設計されています。
その結果、現場の省力化から経営改善、人材育成までを横断的に(同時に)進めることができ、自社の状況に合わせて必要なメニューを自由に組み合わせて申請できる点が本事業の大きな特徴です。
第2章:申請のための基本条件
本補助金は、申請するメニューによって対象者の条件が異なります。まずは、主たる申請対象者である運送事業者の基本条件を確認しましょう。
2.1 企業規模や車両台数に関する条件
以下の1と2の両方を満たしていれば、補助金を申請できます。
- 企業規模:「資本金3億円以下」または「従業員数300人以下」のいずれかを満たしている。
- 車両台数:次の表のとおり。事業用トラックは申請日におけるエンジン付き緑ナンバーのことで、軽自動車・被けん引車両は除きます。
| 支援類型 | 対象となる運送事業者の類型 | 必要な保有車両数(台数) |
|---|---|---|
| (1) 車両の効率化設備の導入等事業 | 一般貨物自動車運送事業者 特定貨物自動車運送事業者 第二種貨物利用運送事業者 |
5両以上 |
| (2) 業務効率化事業 | 一般貨物自動車運送事業者 特定貨物自動車運送事業者 |
5両以上 |
| 第二種貨物利用運送事業者 | 台数を問わない | |
| (3) 経営力強化事業 | 一般貨物自動車運送事業者 特定貨物自動車運送事業者 |
5両以上 |
| (4) 人材確保・育成等事業 | 一般貨物自動車運送事業者 特定貨物自動車運送事業者 |
5両以上 |
2.2 申請メニューによる要件や対象者の違い
さらに、申請するメニューによっては以下の違いがあります。詳細は第4章の各メニューの解説をご確認ください。
- 追加要件の有無:導入機器が事務局の「指定型番リスト」に含まれていることや、「ホワイト物流宣言」等の取得が必須となる場合があります。
- 運送事業者以外の申請:連携する荷主・倉庫業者、リース事業者、人材育成機関も申請の対象になるメニューがあります。
第3章: 4つの支援パッケージ早見表
自社の課題に合わせて選べる4つの枠組みについて、メニューと補助率・上限額を表で整理しました。対象となる経費の詳細は次章で解説します。
| 枠組み名 | 補助率 | 補助対象メニュー | 上限額・単位 |
|---|---|---|---|
| ①車両設備導入 | 1/4 | テールゲートリフター | 15万〜30万円 /台 |
| (同上) | 1/4 | トラック搭載型クレーン | 105万〜135万円 /台 |
| (同上) | 1/4 | トラック搭載用2段積みデッキ | 36万円 /台(※1基12万円) |
| (同上) | 1/4 | ダブル連結トラック | 1,100万円 /台 |
| ②業務効率化 | 1/2 | 物流連携最適化システム | 500万円 /事業者 |
| (同上) | 1/2 | 業務効率化システム | 250万円 /事業者 |
| (同上) | 1/2 | 車両動態管理システム | 12万円 /台(※上限10台) |
| ③経営力強化 | 1/2 | 原価管理システム | 250万円 /事業者 |
| (同上) | 1/2 | M&A | 1,000万円 /事業者 |
| ④人材確保等 | 1/2 | 人材確保(求人活動等) | 15万円 /事業者 |
| (同上) | 1/2 | 人材育成 | 15万円 /事業者 |
| (同上) | 1/2 | 各種免許等取得 | 各15万円 /名(※上限5名) |
| (同上) | 1/2 | 外免切替教習 | 各15万円 /名(※上限5名) |
第4章:各メニューの詳細と申請時の注意点
本章では、4つの支援パッケージそれぞれについて、具体的な補助対象と、申請時に見落としがちな注意点を解説します。
4.1 車両の効率化設備の導入等事業
- 補助対象となる設備:テールゲートリフター(後部・床下格納式、アーム式、垂直式)、トラック搭載型クレーン、トラック搭載用2段積みデッキ、およびダブル連結トラックの導入費用が対象です。
- 機器・車両の新品要件と対象外経費:導入する機器(リフター、クレーン、デッキ)は未使用品(新品)のみが対象です。中古品の機器や、すでに機器が装着済みの車(新古車など)を購入する場合は対象外となります。
なお、これらを取り付けるトラック自体は新車・中古車を問いません。
一方で、ダブル連結トラックについては、トラクタとトレーラの両方が新車新規登録のものである必要があります。また、機器の「取付工賃」や消費税も補助対象外です。
※ローン等で購入し、車検証の所有者がディーラー名義等になっている場合は、期日までに自社名義へ変更しないと補助金が交付されません。 - リース導入の注意点:設備やシステムをリースで導入することも可能ですが、その場合の補助金申請者は運送業者ではなくリース事業者となります。また、リース契約は原則5年以上が必要であり、5年未満の場合はリース契約延長宣誓書の提出が必要です。なお、「トラック搭載用2段積みデッキ」はリースやレンタルでの導入が一切不可(補助対象外)となっているため注意しましょう。
- 複数台導入のチャンス:申請できるのは、原則として1事業者1台ですが、「Gマーク取得(上限3台)」「ホワイト物流宣言・働きやすい職場認証等(上限2台)」「賃上げ(上限2台)」の要件を満たすと、それぞれの上限数を合算して引き上げることができます。
【計算例】
- いずれも取得していない場合:原則通り1台申請可能
- 「Gマーク」のみ取得している場合:上限 3台まで申請可能
- 「Gマーク(3台)」と「ホワイト物流宣言(2台)」の両方を満たす場合:3+2=上限 5台まで申請可能
※なお、自社で購入する車両とリースで導入する車両を組み合わせる場合でも、それぞれの台数を合算して上限を超えることはできません(リース分はリース事業者が申請しますが、上限台数のカウントは運送事業者ごとに合計されます)。
- 導入する機器の注意点:重い荷物をボタン一つで上げ下ろしできるトラック後部の昇降機(テールゲートリフター)や、人力では運べない資材を吊り上げるトラック搭載型クレーン、荷台を上下2段に分けて積載量を増やす組立式の棚(トラック搭載用2段積みデッキ)を導入する場合は、予定の機器が事務局公表の型式(製品)一覧に含まれている必要があります。ダブル連結トラックには指定された型番はありません。

4.2 業務効率化事業
- 補助対象となるシステム:
- 物流連携最適化システム:予約受付、受注情報事前確認、求貨求車システムなど。
- 業務効率化システム:配車計画、運行・労務管理、契約書電子化システムなど。
【ポイント】上記2つのシステムは、既成のパッケージ製品だけでなく、自社の実態に応じた「個別のシステム設計・構築費」も補助の対象に含まれます。 - 車両動態管理システム: デジタコ車載器本体および取付費が対象です。
- デジタコは単独申請不可:車両動態管理システム(デジタコ)は、単独での申請ができません。必ず物流連携最適化システムや業務効率化システムと同時に導入(セットで申請)する必要があります。
- 物流連携最適化システムは荷主や元請業者なども申請可能:バース予約などの「物流連携最適化システム」に限り、運送事業者だけでなく、中小トラック運送事業者と連携してシステムを導入・費用負担する元請トラック運送事業者、荷主企業、倉庫業者自身が補助金を申請することができます。運送事業者が自社単独では解決が難しい荷待ち時間の削減などに向け、荷主等に対して「補助金を活用してシステムを導入してほしい」と交渉・提案する強力な武器になります。
さらに、自社でシステム費用を負担するのが難しい場合でも、仕事をくれている元請企業に対して「この補助金を使って、お互いの配車や連絡業務を効率化するシステムを導入しませんか?」と提案してみるのも有効な活用法でしょう。
【要注意】対象外となる経費:システムの月額利用料(初期費用を除く)や、システムを利用するためのスマートフォン、タブレット、パソコン等の汎用機器、および通信料などは補助対象外となるため、資金計画を立てる際は注意しましょう。

4.3 経営力強化事業
- 対象となる経費:貨物自動車運送に係る原価計算や分析等を行うための原価管理システムの導入費用や、M&Aによる事業拡大・経営力強化に向けたM&A等支援事業者へのコンサルティング費用が対象です。システムをリースで導入する(リース事業者が申請する)ことも可能です。
原価管理システムについても、パソコン等の汎用機器や月額利用料は補助対象外です。 - M&A申請の注意点:M&Aについては、将来に向けた相談や企業評価などの検討段階は対象になりません。株式譲渡契約が締結され、M&Aが完了していることが必須条件です。その上で、最終契約を成約させたM&A専門業者(M&A支援機関登録制度の登録業者)や金融機関等へ支払った費用(仲介手数料等)のみが補助されます。登記費用や税金などの手続き費用は補助対象外です。また、申請できるのは「買い手(譲受人)」のみです。
- M&A申請の注意点(株式保有割合のルール):対象となるM&Aは、実施前の時点では対象企業の株式の過半数を持っていなかったこと、かつ、実施後には議決権の3分の2以上の株式を保有していることが条件となります。すでに過半数を保有している関連会社の完全子会社化などは対象外となるため、事前の確認が必要です。

4.4 人材確保・育成等事業
- 対象となる経費:
- 人材確保:求人媒体への求人広告費、採用HP作成・改修費、人材確保セミナー開催費、人材確保のためのコンサルティング費用、就職氷河期世代の試行雇用に対する人件費補助(最大3ヶ月)。就職氷河期世代の補助は、雇入れ時に35歳〜60歳未満であり、かつ「これまで物流業界で働いたことがない未経験者」であることが必須条件です。
- 人材育成:運行管理者や危険物取扱者等の技能取得に係る講習開催費、および受講費。
- 免許等取得:中型、大型、けん引、フォークリフト、特例教習の教習・講習費。特例教習のみの単独申請は不可です。
- 外免切替教習:特定技能外国人の外国免許から日本免許への切替教習費。
- 【要注意】対象外となる経費:セミナー等の開催に伴う飲食費(お弁当代など)や、人材派遣会社への紹介料、警察署等で支払う免許交付手数料などは補助対象外となります。また、講習費や免許取得費を従業員自身が自己負担した分も対象外(会社が負担した費用のみ対象)となるため注意しましょう。
- 申請のための必須要件: 本メニューを申請するには、「ホワイト物流」推進運動の自主行動宣言、働きやすい職場認証の取得、パートナーシップ構築宣言のいずれか1つを行っていることが必須です。未取得の場合は申請できません。
第5章:申請スケジュールと補助金受領までのフロー
本補助金は先着順の事後精算型です。まずは全体のリミットとフローを確認しましょう。
5.1 スケジュール
- 申請締切:令和8年7月24日(金)17:00。予算上限に達し次第、受付終了となります。
- 機器等の導入および支払期間:令和8年2月7日以降、申請する日までの間に、導入と支払いをすべて完了させたものが対象です。
5.2 事業実施から補助金受領までのフロー
ステップ
事業の実施・支払いの完了
対象期間内(令和8年2月7日~申請日まで)に、対象機器やシステムの導入および代金の支払いをすべて完了させます。申請時に、納品書や領収証、設置写真などの証拠(証憑)を提出する必要がありますので、必ず保管しておいてください。
ステップ
書類の準備とWEB申請
本補助金に関する特設サイトから所定の書類をダウンロードします。作成した申請書類は専用のWEB申請フォームから提出します。郵送不可です。予算上限に達し次第終了の先着順ですので、早めに手続きしましょう。
ステップ
事務局による審査・交付決定
提出された書類に基づき、事務局で審査が行われます。審査の結果、適正と認められれば交付決定となります。
ステップ
補助金の交付(振込)
無事に交付決定を受けた後、令和8年8月以降に順次、指定した口座へ補助金が振り込まれる予定です。
【ご注意】
- 補助対象外でないか十分な事前確認を:「補助対象外のシステムだった」「令和8年2月6日以前に支払っていた」というようなケースでは、申請しても不採択となり、全額自腹になってしまいます。購入前に、対象機器や対象期間のルールをしっかり確認しましょう。
- 手元の資金繰りに注意:繰り返しになりますが、この補助金は経費をいったん全額自社で支払う(立て替える)仕組みです。支払いは銀行振込が原則(一部を除きローン等は不可)ですので、一時的な資金不足にならないようしっかりとした資金計画を立てましょう。

第6章:よくある質問
-
複数のメニュー(例えばリフターと配車システム)を組み合わせて申請することはできますか?
-
はい、可能です。先着順1回の申請で複数の事業メニューを組み合わせて応募することが可能です。ただし、申請書類は事業メニューごとに分けて作成・提出してください。
-
公募開始(6月8日)より前に導入・支払いをしてしまったので、申請はできないでしょうか。
-
今回の補助金は、令和8年2月7日から申請日までの間に導入・支払いを済ませたものが補助対象になります。よって、公募開始(6月8日)より前の導入・支払いであっても、令和8年2月7日以降に完了したものであれば対象となります。
-
手形やローンでの支払いは認められますか?
-
手形や割賦払いは原則として認められません。補助対象経費の支払いは銀行振込が原則です 。
なお、車両の効率化設備の導入等事業については、例外としてローンが認められます。ただし、ローンであっても令和8年7月24日までに全額の精算を完了させ、車検証を自社名義に変更しなければ補助金は交付されません。
第7章:経営基盤の強化に向けて
物流業界が直面する「2024年問題」や深刻な労働力不足に対応していくうえで、現場の省力化からデジタル化、人材育成まで幅広く対象となる本補助金は、有効な手段となり得ます。自社の課題を解決し、経営基盤を強化していくための選択肢の一つとして、うまく活用していきたい制度です。
最後に、本記事で解説した、申請に向けての大切な絶対ルールをおさらいしておきましょう。
- 事後精算型:先に自社で導入と全額支払いを済ませてから申請します。
- 対象期間に注意:令和8年2月7日以降に導入・支払いを済ませ、証拠書類がすべて手元に揃った状態で申請してください(申請後の後払いは不可)。
- 先着順:令和8年7月24日(金)の締切前でも上限に達し次第終了となるため、早めの行動をおすすめします。
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