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補助金・助成金

bizrize

2026.04.23

【課題別 厚労省の助成金紹介②】 人手不足(採用・定着・育成)編 働き続けたいと思える環境整備

前回の第1回では、「賃上げ・待遇改善」に効く助成金をご紹介しました。全3回の連載でお届けしている本企画、第2回となる今回のテーマは「人手不足(採用・定着・育成)」です。新規採用がますます厳しさを増す昨今、今いる優秀な人材の流出を防ぎ、社内で育てていく「定着・育成」への投資こそ、効果的な採用対策となります。今回は、そんな企業の取り組みを力強く後押しする厚生労働省の助成金を厳選しました。
国の助成金は原則、企業規模を問わず広く活用できますが、中小企業が利用した場合には、支給額や助成率がアップする優遇措置が用意されている場合も多いです。そういった中小企業への優遇ポイントも解説していきます。

お悩み別「逆引き」ガイド

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非正規社員の給与のベースアップをしたい
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テレワーク等を導入して事務職の離職を防ぎたい 第3回「仕事と家庭の両立」編
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本記事における「中小企業事業主」の定義

原則として、以下の「資本金等」または「労働者数」のいずれか一方を満たす事業主が、本記事における中小企業事業主にあたります。

業種 資本金等 労働者数
小売業(飲食店含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

※特例:医療・福祉(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院など)については、資本金等に関わらず労働者数300人以下であれば中小企業事業主として扱われます。

申請はお早めに!(申請方法と注意点)

助成金は国の予算の範囲内で支給されるため、予算上限に到達次第、予告なく受付終了となる場合があります。

申請方法と期限について:

原則として、労働局やハローワーク等の窓口への持参、または簡易書留など記録が残る方法での郵送のほか、電子申請も可能です。なお、厚生労働省の助成金は制度によって期限のルールが大きく異なります。

  • 「全国一律の事前申請(交付申請)締切日」が設けられているもの:働き方改革推進支援助成金(令和8年11月30日)など
  • 「自社のアクションを起点とした個別の厳格な期限」が設けられているもの:キャリアアップ助成金(対象となる賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内)など。
電子申請について:

「GビズID」の事前取得が必要となります。助成金の種類によって利用するシステムが以下の2つに分かれていますのでご注意ください。

共通要件について:

「労働保険料の滞納がない」「労働関係法令の違反がない」などを満たす必要があります。また、助成金の種類によって雇用保険や労災保険の適用事業所であることが求められます(例:キャリアアップ助成金は雇用保険、働き方改革推進支援助成金は労災保険の加入が必須です)。個別の助成金に関する詳細な要件や申請先は、必ず厚生労働省のウェブサイトを確認するようにしてください。

① キャリアアップ助成金(正社員化コース)

優秀な非正規社員の流出を防ぎ、モチベーションを上げるための正社員化を支援します。

就業規則等に「正社員への転換ルール(面接などの試験、勤続年数などの要件、実施時期)」を明記(ない場合は新たに規定)し、そのルールに則って有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換します。さらに、転換後の給与を転換前と比べて「3%以上増額」させる必要があります。

有期雇用から正規雇用への転換にあたり、対象者が「重点支援対象者」に該当する場合、大企業は最大60万円ですが、中小企業は1人あたり最大80万円(半年ごとに40万円を2回=合計1年分)が助成されます。重点支援対象者以外の場合は、中小企業であっても従業員1人あたりの助成額は最大40万円(1回のみ)です。

重点支援対象者とは?:より手厚い支援が必要とされる以下のような労働者のことです。

  • 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
  • 正社員経験が少ない方(過去5年間の正社員期間が1年以下 等)
  • 派遣労働者、母子家庭の母・父子家庭の父、所定の職業訓練修了者
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初めて正社員化のルールを作ったり、実績を公表したりすることで、上記の基本額に加えて、1事業所あたり1回限りの大きな加算ボーナスが受け取れます(複数の要件を満たせば合算可能です)。

  • 正社員転換制度の新設(+20万円):今まで正社員への転換ルールがなかった会社が、就業規則に新たにルールを規定して転換させた場合。
  • 多様な正社員制度の新設(+40万円):勤務地限定や短時間正社員など、働き方の多様な正社員制度を新たに規定して転換させた場合。
  • 実績のネット公表(+20万円):令和8年度から新設されました。正社員転換の条件や実績などを、自社のウェブサイトや厚生労働省のサイト(しょくばらぼ)で公表した場合。
  • 計画の事前提出が必須:正社員へ転換する日の前日までに、労働局へ「キャリアアップ計画」を提出しておく必要があります。

    キャリアアップ計画とは:労働者のキャリアアップに向けた取組内容や方針をまとめた計画書です。
  • 対象労働者の厳格な要件:転換前に有期雇用労働者等として6か月以上継続して雇用されていること。また、過去3年以内に自社(密接な関係にある関連企業含む)で正社員として雇用されていた者は対象外となります。
  • 制度の明文化:転換は必ず就業規則等に定めたルールに基づいて行う必要があります。口約束や個別契約の変更のみでは対象になりません。

② 人材確保等支援助成金(テレワークコース)

「現場がメインの事業だから、うちにはテレワークは関係ない」と考える企業にこそおすすめです。建設業や製造業など現場仕事が多い企業であっても、経理や総務といった事務職・バックオフィス部門に絞ってテレワークを導入することで、離職を防ぎ、人材を確保するための有効なアピール材料として活用できます。

適正な労務管理下における良質なテレワークを制度として導入・実施します。具体的には、就業規則等の作成・変更、外部専門家によるコンサルティング、社内研修といったテレワークを可能とする取組を実施したうえで、対象となる従業員にテレワークを実施させます。テレワークを既に導入しており、これから実施を拡大する事業主の方も対象です。

このコースは中小企業限定の制度であり、以下の2段階で定額の助成金が支給されます。

  • 制度導入助成(20万円):就業規則の整備等を行い、3か月間の評価期間内に規定のテレワーク実績(対象労働者全員が1回以上実施など)をクリアした場合に支給されます。
  • 目標達成助成(10万円):制度導入助成の評価期間開始日から1年後に、離職率の低下(導入前以下かつ30%以下)などの目標を達成した場合に支給されます。さらに、従業員の賃上げ(5%以上)を伴う場合は15万円に増額されます。
【注目ポイント】
  • 事前認定は不要:以前は、事前のテレワーク実施計画の作成・提出と認定が必要でしたが、計画書の手続きは廃止されています。スピーディーに取組を始められるようになりました。
  • 評価期間が始まる「前」の規程整備が必須:計画作成は不要になりましたが、テレワークの実績を測る3か月間の評価期間をスタートさせる前に、就業規則の整備や、職場風土づくりの取組(トップからのメッセージ発信等)、社内研修などを完了させておく必要があります。

③ 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)

求職者や従業員にとって魅力ある職場を創出するため、新たな人事制度や、作業を楽にする業務負担軽減機器等を導入し、人材定着(離職率の低下)を図りたい企業を支援します。

以下のいずれか(または組み合わせ)の取組を実施し、離職率の低下を図った場合に助成されます。

  • 雇用管理制度の導入(定額助成):賃金規定制度(賃金表の整備/中小企業のみ対象)、諸手当等制度(資格手当等の導入)、人事評価制度、職場活性化制度(メンター制度や1on1ミーティング等)、健康づくり制度(人間ドック等)の導入。
  • 業務負担軽減機器等の導入(経費助成):労働者の直接的な作業負担の軽減が図られる機器・設備等の導入にかかった費用。
【機器・設備の具体例】

業種に合わせて、以下のような様々な設備投資が対象となります。

  • 飲食・宿泊業:食器洗浄機、ロボット掃除機など
  • 小売・卸売業:POSシステム(在庫管理の負担軽減)、電動搬入カートなど
  • 医療・福祉:車いす昇降リフト、介護ソフト(記録作業の負担軽減)など
  • 運輸・製造・建設:フォークリフト、電動アシスト台車、建築用ソフトなど
助成額:導入する制度や機器に応じて、最大230万円が助成されます。
  • 賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度:各40万円
  • 職場活性化制度、健康づくり制度:各20万円
雇用管理制度の助成上限について>

上記の5つの制度を複数組み合わせて導入した場合でも、助成される合計額の上限は最大80万円までとなります。

  • 業務負担軽減機器等の導入:対象経費の1/2(上限150万円)。さらに、あわせて従業員の賃上げ(3%~7%以上等)を行った場合は加算があり、助成額は最大325万円へと大幅に引き上げられます。
  • 「整備計画」の事前提出が必須:テレワークコースとは異なり、こちらは事前に「雇用管理制度等整備計画」を労働局へ提出し、認定を受けてから制度導入や機器購入を行う必要があります(認定前に購入・支払いしたものは対象外となります)。
  • 離職率の低下目標の達成:助成金を受け取るには、制度や機器を導入するだけでなく、その結果として、計画終了から1年経過するまでの離職率が、導入前1年間と比較して目標値以上に低下している必要があります。ただし、従業員9人以下の小規模な事業所の場合は、導入前を「上回らない(現状維持)」で目標クリアとなります。

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

新規事業の立ち上げや社内のDX(デジタル化)、GX(グリーン・脱炭素化)を進めたいが、社内にノウハウがないという企業におすすめです。新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための教育訓練を支援します。

従業員に対して、事業展開やDX・GX化等に関連する10時間以上の専門的な研修(OFF-JT:通常の業務と区別して行われる座学や外部研修など)を受講させます。この際にかかった入学料・受講料・教科書代などの訓練経費が助成対象となります。

【補足】自社で研修を主催した場合も経費が助成されます:外部の研修機関に通わせる際の入学料・受講料が対象になるのはもちろんですが、自社で研修を企画して社内で行う場合(事業内訓練)であっても、外部から招いた専門家への謝金・交通費、会議室などの会場レンタル代、研修用に購入した教科書代などが広く経費助成の対象として認められます。

中小企業には手厚い優遇率が設定されており、以下の経費と賃金のダブルで助成されます。

  • 経費助成:かかった訓練経費の75%(大企業は60%)が助成されます(訓練時間に応じて、1人あたり最大30万円〜50万円が上限)。
  • 賃金助成:訓練を受講している時間についても、1人あたり1時間1,000円(大企業は500円)が助成されます。
<中小企業限定!機器・設備の導入に対する加算ボーナス(設備投資加算)>

訓練で習得したスキルを活かして、新たな事業展開やDX・GX化に必要な機器・設備等を新たに購入(導入)し、あわせて対象従業員の賃上げ(5%以上等)を行った場合、上記の基本助成に加えて、機器・設備の導入費用の50%が追加で助成されます(上限:対象従業員1人につき15万円、10人以上受講させる場合は最大150万円まで)。

  • 1か月前までの計画提出:訓練開始日の1か月前までに、労働局へ「職業訓練実施計画届」(誰にどんな内容の訓練を何時間受けさせるか等の計画書)や訓練カリキュラム等を提出しておく必要があります(事後申請は不可)。
  • 訓練経費が助成されるためには本助成金は、会社が教育訓練機関等へ経費を全額支払った(負担した)後に、その一部が国から助成される仕組みです。そのため、研修業者等から「後からキックバックするので実質無料になりますよ」と持ちかけられて実質的な負担を減らしたり、労働者本人に費用の一部を負担させたりした場合は「会社が全額負担していない」とみなされます。これらは不正受給となり、会社名公表や多額の返還金等の重いペナルティが科される恐れがありますので十分に注意してください。

> 次回は、仕事と家庭の両立に焦点を当てた助成金を紹介します。

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