
企業が直面する賃上げ、人手不足、仕事と家庭の両立という3大課題をテーマに、解決の糸口となる厚生労働省のおすすめ助成金をご紹介する本連載も、いよいよ最終の第3回です。今回は仕事と家庭の両立に焦点を当てます。育児や介護に直面する従業員が増加する中、この従業員たちが離職することなく安心して働き続けられる環境を整えることは、企業にとって待ったなしの課題です。ベテラン層の介護離職や、若手エースの育休離職を防ぐための強力なサポートとなる制度をピックアップしました。 今回ご紹介する助成金にも、中小企業が利用した際に助成率や支給額が大きく引き上げられる優遇の仕組みがしっかりと組み込まれています。自社で活用できる手厚い支援がないか、ぜひ優遇制度のメリットと併せてチェックしてみてください。
お悩み別「逆引き」ガイド
原則として、以下の「資本金等」または「労働者数」のいずれか一方を満たす事業主が、本記事における中小企業事業主にあたります。
| 会社が抱えている課題・お悩みは? | チェックすべき記事 |
|---|---|
| パート従業員の「年収の壁」対策をしたい | 第1回「賃上げ・待遇改善」編 |
| 従業員の残業削減や有休取得を促進したい | |
| 非正規社員の給与のベースアップをしたい | |
| 非正規社員を正社員に転換したい | 第2回「人手不足(採用・定着・育成)」編 |
| テレワーク等を導入して事務職の離職を防ぎたい | |
| 社員の育休中の業務をカバーできる体制を作りたい | 本記事(第3回)「仕事と家庭の両立」編 |
※特例:医療・福祉(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院など)については、資本金等に関わらず労働者数300人以下であれば中小企業事業主として扱われます。
本記事における「中小企業事業主」の定義
原則として、以下の「資本金等」または「労働者数」のいずれか一方を満たす事業主が、本記事における中小企業事業主にあたります。
| 業種 | 資本金等 | 労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
※特例:医療・福祉(病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院など)については、資本金等に関わらず労働者数300人以下であれば中小企業事業主として扱われます。
申請はお早めに!(申請方法と注意点)
助成金は国の予算の範囲内で支給されるため、予算上限に到達次第、予告なく受付終了となる場合があります。
申請方法と期限について:
原則として、労働局やハローワーク等の窓口への持参、または簡易書留など記録が残る方法での郵送のほか、電子申請も可能です。なお、厚生労働省の助成金は制度によって期限のルールが大きく異なります。
- 「全国一律の事前申請(交付申請)締切日」が設けられているもの:働き方改革推進支援助成金(令和8年11月30日)など
- 「自社のアクションを起点とした個別の厳格な期限」が設けられているもの:キャリアアップ助成金(対象となる賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内)など。
電子申請について:
「GビズID」の事前取得が必要となります。助成金の種類によって利用するシステムが以下の2つに分かれていますのでご注意ください。
- 雇用関係助成金ポータル:キャリアアップ助成金など
- Jグランツ:働き方改革推進支援助成金など
共通要件について:
「労働保険料の滞納がない」「労働関係法令の違反がない」などを満たす必要があります。また、助成金の種類によって雇用保険や労災保険の適用事業所であることが求められます(例:キャリアアップ助成金は雇用保険、働き方改革推進支援助成金は労災保険の加入が必須です)。個別の助成金に関する詳細な要件や申請先は、必ず厚生労働省のウェブサイトを確認するようにしてください。
① 両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)
目的と背景
育休取得者や短時間勤務の利用者が出た際、その穴をカバーする周囲の社員の負担感や不公平感を軽減し、会社全体で快く支援できる体制を整備します。
助成対象となる取組・経費
休業者や時短社員の穴埋め方法として、以下のいずれかの取組を実施した場合に助成されます。
- 既存社員でカバーする場合(手当の支給):新たな人を雇わず、対象者の穴をカバーする既存の社員(=業務代替者)に対し、残業代とは別に、カバーした職務を評価・労うための業務代替手当を新たに制度化して支給します(育休だけでなく、短時間勤務のカバーも対象となります)。
- 新しい人を雇う場合(新規雇用):育休取得者の穴をカバーする新しい人材(=代替要員)を新たに雇い入れ、または派遣受入れ等により確保します。正社員だけでなく、パートや派遣社員の受け入れでもOKです。
【支給額】
- 手当を支給した場合(育休・時短のカバー):既存の社員に支給した手当総額の3/4が助成されるほか、業務見直しのための体制整備経費が別途助成されます。
- 育休のカバー:手当は1か月あたり最大10万円(最長24か月分)。体制整備経費は6万円等。
- 時短のカバー:手当は1か月あたり最大3万円等(子が3歳になるまでの期間が対象)。体制整備経費は3万円等。
<プロに頼むと助成額アップ>
就業規則の見直しや業務効率化などの労務コンサルティングを、外部の専門家(社会保険労務士など)に委託して行った場合は、上記の体制整備経費が一律20万円へと大幅に増額されます。これらの手当支給のメニューは、企業規模問わずすべての事業主が利用できます。
- 新規要員を確保した場合:休業期間に応じて最大81万円が助成されます。こちらは中小企業等に限定されています。
<さらに2つの加算ボーナス>
- 有期雇用労働者加算(+10万円):休業を取得(または時短勤務を利用)する対象者が、パートや契約社員などの有期雇用労働者だった場合に加算されます。
- 情報公表加算(+2万円):自社の育児休業の取得状況などを、厚生労働省の指定サイト(両立支援のひろば)で公表した場合に加算されます。
【申請の前提条件】
- 手当は「事前の制度化」が必須:手当を支給する場合、対象者が育休や短時間勤務に入る(業務代替期間が開始する)までに、就業規則や労働協約に業務代替手当の支給ルールを明確に規定しておく必要があります(事後対応は不可)。
- 代替要員の労働時間:パート等を代替要員として雇う場合、その人の労働時間が「休業する人の労働時間の半分(1/2)以上」であることが条件となります。

育休中等業務代替支援コースは、国の「こども未来戦略」に基づく「共働き・共育ての推進」を後押しするための目玉施策として、2024年1月に創設されました(出典:こども家庭庁のウェブサイト)
② 両立支援等助成金(出生時両立支援コース)
目的と背景
男性の育休取得を促進し、「子育てパパ」を会社全体で応援する職場風土作りを支援します。
助成対象となる取組・経費
男性が育休を取りやすい雇用環境の整備(研修や相談体制の設置、業務の引き継ぎ体制の整備など)を行った上で、以下のいずれかの目標を達成した場合に助成されます。
- 男性労働者の育児休業取得:男性従業員が、子の出生後8週間以内に「連続5日間以上」の育児休業を取得すること。
- 育休取得率の上昇:会社全体の男性の育休取得率が、前事業年度から「30ポイント以上上昇し、50%以上」となること。こちらは、常時雇用する労働者が300人以下などの企業(特定事業主)限定のコースです。
【優遇ポイント】
- 手厚い雇用環境整備で増額:自社で対象となる男性社員の1人目(第1号)は20万円。ただし、研修の実施や相談窓口の設置といった雇用環境の整備措置を4つ以上実施した場合は30万円に増額されます。さらに、2人目・3人目(※3人目までが上限)の社員が出た際にも各10万円が助成されます。
- 育休取得率の上昇で助成:先述の育休取得率の上昇を達成した場合、60万円が助成されます。なお、申請時に「プラチナくるみん認定」を受けている企業であれば、さらに15万円が加算されます。
【くるみんとは?】
「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。認定を受けた企業が、より高い水準の取組を行い一定の基準を満たした場合、申請を行うことによって優良な「子育てサポート企業」として、「プラチナくるみん認定」を受けることができます。

- 【加算】情報公表でさらに上乗せ:自社の育休等の利用状況を厚生労働省の一般事業主行動計画公表サイトで公表すると、情報公表加算として上記の助成金にプラス2万円が上乗せ(1企業につき1回限り)されます。
【申請の前提条件】
「一般事業主行動計画」の事前の届出と周知:男性の育休が始まる前に、次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、労働局に届け出るとともに、従業員への周知と外部への公表を完了しておく必要があります。
【一般事業主行動計画とは?】従業員の仕事と子育ての両立を図るための環境整備について、計画期間、目標、目標達成のための対策を定めた自社独自の計画書のことです。
③ 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
目的と背景
従業員が家族の介護に直面した際、仕事と介護を両立しきれずに退職してしまう介護離職を防ぎ、貴重な人材の定着を図りたい企業を支援します。
助成対象となる取組・経費
介護に直面した社員のニーズに合わせて、以下のいずれかのアクションを実施した場合に助成されます。
- 介護休業の取得:対象社員に介護休業(連続5日以上)を取得させ、職場復帰させる。
- 介護両立支援制度の利用:介護のための短時間勤務制度、在宅勤務(テレワーク)、時差出勤などの制度を導入し、一定期間利用させる。
- 業務をカバーする体制づくり:休業や短時間勤務をする社員の業務をカバーするために、新たに代替要員を雇い入れたり、周囲の同僚に業務代替手当を支給したりする。
- 有給の介護休暇の導入:新たに有給の介護休暇制度を導入し、社員に利用させる。
【優遇ポイント】
介護離職防止支援コースは中小企業のみが対象であり、取組内容に応じて以下の助成金が支給されます。
- 介護休業の取得:40万円(※「連続5日以上」の休業が必要)。連続15日以上の休業を取得させた場合は60万円に増額されます。
- 介護両立支援制度の利用:20万円~最大40万円
- 業務代替支援:代替要員の新規雇用で20万円(連続15日以上の休業の場合30万円)、手当の支給等の場合は3万円~10万円(※代替要員の新規雇用には、派遣社員の受け入れや、同僚が休業者の業務をカバーした分の穴を埋める玉突きでの雇い入れも幅広く認められます)
- 介護休暇制度の有給化:30万円。これは、有給の介護休暇制度を新たに導入し、従業員が合計10時間以上利用した場合に助成されます。なお、従業員に年10日以上の有給休暇を付与する手厚い制度にした場合は50万円に増額されます。
<さらに2つの加算ボーナス!>
環境整備加算(+10万円):社員が仕事と介護を両立しやすくなるよう①研修、②相談窓口設置、③事例収集・提供、④方針の周知という雇用環境整備をすべて行った場合に加算されます。
有期雇用労働者加算(+10万円):介護休業や両立支援制度を利用する社員が、パートや契約社員などの有期雇用労働者だった場合に加算されます。
【申請の前提条件】
会社による介護支援プランの事前作成が必須:単に休業や短時間勤務をさせるだけでは助成金支給対象とはなりません。休業や制度利用が始まる前に、会社(上司や人事担当者)が対象社員と面談を実施し、休業中の業務の引き継ぎ方法や、制度利用中の職場の業務カバー体制などを具体的に定めた「仕事と介護の両立支援プラン」を作成し、その計画に沿って支援を行うことが絶対条件となります。

④両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)
目的と背景
中小企業限定の制度です。「子どもが小さいうちはテレワークにしたい」「週休3日にしたい」など、育児中の社員が自分のライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を選べる環境を整備し、仕事と育児の両立を強力に支援したい企業におすすめです。
助成対象となる取組
会社は、以下の「柔軟な働き方選択制度」の中から3つ以上の制度を選んで新たに導入(就業規則等に規定)します。その上で、対象となる育児中の社員が、導入された制度のうちの1つを一定期間(6か月間で一定基準以上)利用した場合に助成されます。
【 導入する制度の選択肢(ここから3つ以上を選択)】
1.フレックスタイム制度、または時差出勤制度
2.テレワーク等の制度
3.短時間勤務制度(1日5時間や7時間、週休3日など柔軟に選べるもの)
4.保育サービスの手配および費用補助(ベビーシッター代等の半額補助など)
5.社独自の「養育両立支援休暇」の導入(年次有給休暇とは別の有給休暇を年10日以上付与)
【助成金額】
導入した制度の数に応じて、制度を利用した従業員1人につき以下の助成金が支給されます(1企業につき5人まで)。
- 制度を3つ導入した場合:20万円
- 制度を4つ以上導入した場合:25万円
- 【別枠】子の看護等休暇を有給化した場合:柔軟な働き方制度とは別に、法律で定められた「子の看護等休暇」を有給扱いにする制度を新たに導入・利用させた場合は、1企業につき1回限り30万円が助成されます。
<さらに3つの加算> 上記の助成金(柔軟な働き方制度、または子の看護等休暇有給化)を受給する際に下記の取組を追加で行う場合、1企業につき1回限り、基本の助成額にプラスして一定の金額が上乗せ(加算)されます。ただし、柔軟な働き方制度で制度利用期間延長加算または障害児等要配慮支援加算を受けるためには、導入した「すべて」の制度において、利用できる子どもの対象年齢が加算の要件に合わせて引き上げられている必要があります。- 制度利用期間延長加算:+20万円
- 障害児等要配慮支援加算:+20万円
- 育児休業等に関する情報公表加算:+2万円
【申請の前提条件】
- 対象制度の事前明文化が必須:対象となる柔軟な働き方の制度を、利用開始の前日までに就業規則や労働協約に明文化して規定しておく必要があります(事後対応は不可)。
- 面談の実施と支援プランの作成が必須:単に制度を利用させるだけでは助成金はもらえません。事前に上司や人事担当者が本人と面談を行い、制度利用中の業務体制や今後のキャリア形成等について定めた「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成し、それに沿って支援を行うことが絶対条件となります。
終わりに
自社のお悩みにあった助成金は見つかったでしょうか。
厚生労働省の助成金は、優秀な人材が離職してしまうことを防ぎ、企業が長期的に戦力を確保するための実務的な支援策です。制度の事前整備やプラン作成など、一定の事前準備を必要とするものも少なくありません。早めの検討が、将来の離職リスクを大きく減らす一歩になります。まずは社労士などの専門家や、各都道府県の労働局・ハローワーク、働き方改革推進支援センターと早めに相談し、申請準備を進めてください。
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