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2026.06.04

廃棄農産物に新たな価値 子育てママの活躍の場を拡充

ローカル10,000プロジェクトの先行事例に学ぶ「企業組合スイーツキッチン」編

総務省の「ローカル10,000プロジェクト」は、地域資源を活かして新規事業に挑む民間事業者を、自治体や金融機関が連携して支援する補助事業です。本記事では、この補助金を活用して、キッズルーム併設の新たな農産加工所を整備した山形県天童市の「企業組合スイーツキッチン」の取り組みに迫ります。増加する加工依頼に応えるための保管・生産体制の拡充と、長年進めてきた「子育て世代の女性が働きやすい環境づくり」の両立を、行政や金融機関のサポートを得ていかに実現したのか――。そのプロセスを紐解きます。

スイーツの製造やOEMを手掛ける

山形県のほぼ中央部に位置し、奥羽山脈を水源とする豊かな扇状地に抱かれた天童市。山形空港にも近いなど交通の便に恵まれ、フルーツ王国として知られるこの地で、規格外の農産物を使った加工品やスイーツの製造・OEM(受託製造)を手掛けるのが「企業組合スイーツキッチン」です。現在は代表理事の森谷あかねさんと、役員である娘の日南子さんを中心に、パートスタッフを含め通常は5〜6名、繁忙期には10名ほどの規模で事業を営んでいます。
森谷代表は、天童市の米農家の方との結婚を機に福岡県から移り住んだ際、傷がついたために捨てられてしまう果物の多さに「もったいない」と衝撃を受けたといいます。その後、「子育て中の母親たちが働きやすい場所を作りたい」と一念発起。2003年にママ友たちと物置のプレハブ小屋を改造して手作りクッキーの製造をスタートしました。家事や育児の合間を縫って柔軟に働けるスタイルで地道に事業を育て、2014年には法人化して事業を拡大してきました。
事業が成長し、生産者からの加工依頼も増えるにつれ、分散していた小さな作業場の統合や、旬の果物を一時保管するための大型冷凍庫や冷蔵庫の増設が必要になりました。

▲ローカル10,000プロジェクトの補助金を活用して新たに完成した加工所(本記事の写真提供:企業組合スイーツキッチン、森谷あかねさん)

過去の補助金申請ノウハウが活きる

そこで目を向けたのが、「ローカル10,000プロジェクト」です。その存在を教えてくれたのは、知り合いの建築業者でした。「活用できる補助金があれば教えてほしい」と日頃から声をかけていたことで、同プロジェクトに関わったことのある業者から情報がもたらされました。周囲にアンテナを張っておくことで、有益な情報が入ってくる好例と言えるでしょう。
申請にあたっては、摘果果実や果皮といった、これまでなら廃棄されていた未利用部位を活用した新商品開発によるフードロス削減と、キッズルーム併設による女性の就労支援を柱に据えました。
申請プロセスにおいては、過去に「小規模事業者持続化補助金」や「事業再構築補助金(現:新事業進出補助金)」などを活用してきた森谷さん自身の経験が大きく活かされました。それまでのノウハウをもとに、今回も事業計画はほぼ森谷さん自ら執筆。同プロジェクトの対応が初めてだった天童市役所の担当者とこまめに意見を交換し、建築業者が提供してくれた事例も参考にしながら申請書類を完成させました。
さらに、以前から付き合いのあった地元の「きらやか銀行天童支店」からの融資も獲得。事業者自身の熱意によって行政や金融機関を巻き込む強力なバックアップ体制を築き上げたこと、そして事業による地域貢献や将来性が高く評価されたことが、今回の補助金採択へとつながりました。
こうして完成した新しい加工所では、大型ガス設備の導入によりゼリーなどの生産能力が向上しました。あわせて、念願のキッズルームが稼働しています。キッズルームは現在テレビが置かれている状態ですが、徐々に充実させていく予定です。春休みにスタッフの子どもが初めて訪れた際には、元気な声が響く賑やかな空間になっていたといいます。

しっかり利益を出す経営へ、次世代と共に決意

現在は、看護師から転身した日南子さんが、一番人気のさつまいもチップスのほか、自身が開発を手掛けたグラノーラやフルーツプリン、ゼリーなどの新商品開発や原価計算、そして営業を強力に牽引しています。施設の拡充により事業の幅が広がった一方で、森谷代表は「借り入れた資金の返済が2年後から始まるため、原価計算を徹底し、しっかりと利益を出せる経営システムを作り込むことが目下の課題」と、経営者としての決意も口にします。
一人の母親の「もったいない」という気づきから始まり、「働く場所がないなら作ろう」とプレハブ小屋からスタートした小さな活動。20年の時を経て、それは行政や金融機関をも巻き込む確かな事業へと成長しました。母から娘へ想いが受け継がれ、地域のお母さんたちと共に楽しみながら廃棄農産物を「宝」へと変えていくスイーツキッチン。一歩ずつ地域課題を解決していく女性たちの挑戦は、これからの地域ビジネスのあり方に力強いヒントを与えてくれます。


天童市役所農林課・ご担当者にうかがいました

農業の課題解決と女性活躍のモデルケースへ

――スイーツキッチンの件は、天童市として初めてローカル10,000プロジェクトを活用した事例だったそうですね。申請プロセスを進める上で、特に苦労された点や、工夫されたサポートについて教えてください。   

本市で初の試みだったため、制度の主旨に合致した事業計画となるかどうかという点、最初にお話をいただいてから申請期限までの期間が短かった点が不安要素でした。
 また、市の内部、事業者、金融機関、国、議会とそれぞれ調整する必要があったため、事業計画書の作り込みには時間を割きました。しかし、森谷様から最初にいただいた事業計画の素案はビジョンが明確であり、市の負担は比較的少なかったと捉えています。

――スイーツキッチンが掲げた「廃棄農産物の活用」や「キッズルームの併設」という事業プランは、天童市が抱える課題や目指すビジョンとどのように合致し、評価されたのでしょうか。
 農業は本市の基幹産業ですが、近年の異常気象による正品率(規格に合った良品の割合)の低下は、農業者が抱える大きな課題の一つとなっています。このような中で、廃棄農産物を活用できる小ロットの加工所を整備することは、課題解決に有効であると考えています。
 また、女性や若い世代が活躍できる社会の実現は本市の目指すところであり、キッズルーム併設の加工所を整備することは有効であると考えています。

――今回の施設の完成をきっかけに、今後の天童市の農業や地域全体にどのような波及効果をもたらすと期待していますか。
 農業分野において、加工品の販売という選択肢が持てることは、特に多様な販路を開拓しようとする若い農業者のニーズに沿っているため、高齢化・後継者不足が大きな問題となっている農業において、活気をもたらす手段の一つだと考えます。
 また、廃棄農産物は、有害鳥獣を誘引する一因ともなるため、近年増加する鳥獣の抑制に繋がる可能性があります。
 女性の働き方という点においては、キッズルーム併設の職場は有効であり、農閑期の働き口の確保にも繋がると考えます。
 親子向けの料理教室や、小学生向けの体験教室などを実施することによる農育の促進等、将来的に期待される要素は多くあります。


ローカル10,000プロジェクトとは

事業者や地方自治体、金融機関などの連携により、地域の資源と資金を活用して地域に雇用を生み出す地域密着型事業の立ち上げを支援する総務省の補助事業(補助金)です。事業が採択されるためには、以下の5つの要件を全て満たす必要があります。

  1. 地域密着型:地域の資源を活用する事業であること
  2. 地域課題への対応:公共的な課題の解決につながる事業であること
  3. 地域金融機関等による融資:公費による交付額と同額以上の融資(原則として無担保)を受けること
  4. 新規性:事業者にとって新規事業の立ち上げであること
  5. モデル性:地域の中で前例がなく、モデルとなる事業であること

資金構成としては、公費(国費+地方費)、地域金融機関による融資、自己資金を組み合わせます。支援対象となるのは、民間事業者の初期投資費用(施設整備費、機械装置費、備品費など)です。

企業組合スイーツキッチン

名称 企業組合スイーツキッチン
住所(本社) 〒994-0075 山形県天童市蔵増1005-2
電話 023-664-0037
URL https://sweets-kitchen.jp/index.html
主な商品 砂糖を使わず素材本来の風味を活かした「ドライフルーツ詰め合わせ」(4,400円)や、一番人気で4種類のフレーバーが楽しめる「さつまいもチップス」(4,770円~)など。いずれもECサイト 山形直送計画 での送料込みのセット販売価格です。
このほかにもグラノーラやフルーツプリンなどを製造。商品は、地元の道の駅などでも販売しています。
ケーキ・クッキー
ドライフルーツ
冷凍フルーツ

BizRize事務局

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