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2026.06.05

環境スタートアップの挑戦を後押し 中小企業向け、国の研究開発支援制度を解説

必読ポイント

■ 対象者
概ね設立15年以内の未上場の中小企業(みなし大企業は対象外です)。フェーズ1に限り、事業を営んでいない起業前の個人(起業家)も対象となります。複数社での共同申請も可能です。

■ 目的
環境問題(気候変動、資源循環、自然環境保全)の解決に役立つ技術の研究開発・事業化支援。事業の成熟度に合わせて、フェーズ1(上限400万円)、フェーズ2(最大3,000万〜4,000万円)、フェーズ3(最大4億円)の資金提供に加え、専門家による伴走支援が受けられます。

■ 重要

  1. 締切は令和8年6月15日(月)14:00必着です。
  2. 申請にはシステム(e-Rad)の利用が必須で、事前のID登録が必要です。
  3. 交付決定(正式な許可)前の発注は補助対象外です。 
  4. 設備等は原則としてリース、レンタルで対応することが求められており、リース代やレンタル料が補助対象経費となります。

独自の環境技術やアイデアを持つ中小企業、そしてこれから起業を考える方を対象とした補助事業が公募されています。対象は、設立15年以内の未上場企業や起業前の個人。環境省が実施する「イノベーション創出のための環境スタートアップ研究開発支援事業」で、技術開発から事業化まで一貫した支援を受けられる点が特徴です。本記事では、この事業のメリットや申請の全体像を分かりやすく解説します。

第1章:挑戦を後押しする3つのメリット

本事業は、中小企業やスタートアップのイノベーション創出を強力にバックアップするために設計されています。特に、以下の3つのメリットがある点が特徴です。

① 起業前の個人から挑戦できる、間口の広い制度設計

概ね設立から15年以内の未上場の中小企業(みなし大企業等は対象外)」はもちろんのこと、フェーズ1(事業構想)に限り、まだ事業を営んでいない「起業前の個人(起業家)」も応募が可能です。法人化する前の初期段階からでも、優れた技術力やアイデアがあれば、社会実装に向けて集中して挑戦できる環境が整っています。

② 専門家による伴走支援

資金提供だけでなく、技術の事業化に関する知見を持つ専門の事業コーディネーターによる伴走支援が受けられます。技術開発計画から資金調達、販路開拓、スケールアップまで一貫したサポートがあるのは大きな魅力です。

③ SBIR(Small/Startup Business Innovation Research)制度に基づく優遇

本事業は国がスタートアップを支援する「SBIR制度」の一環です。そのため、採択された企業は、日本政策金融公庫による低金利融資や、特許料等の減免措置といった、国が用意する様々な事業化支援策の対象となります。なお、各制度を実際に利用するにあたっては別途、一定の要件や審査があります。

スタートアップ等による研究開発と成果の社会実装を促進するための国の制度です。研究開発型スタートアップ等への補助金等の支出機会を拡大し、初期段階から事業化までを一貫して支援します。

第2章:3つの領域と採択事例紹介

2.1 各領域の研究対象

環境省が実施するスタートアップ向けの研究開発支援は、大きく分けて「①エネルギー起源CO2の排出抑制(化石燃料の削減など)」に特化して支援する枠組みと、「②それ以外の多様な環境課題」を幅広く支援する枠組みで、明確に制度のすみ分けがされています。

本事業は後者(②)に該当し、次の3領域で環境課題の解決に取り組む事業が対象です。ハードウェアだけでなく、IT、AI、ビッグデータを活用したシステムやサービスの開発も期待されています。

  • 気候変動領域
    温室効果ガスそのものを減らす技術(メタン等の排出抑制やCO2の吸収・固定など)に加え、気候変動による災害や気温上昇に備えて被害をやわらげる技術(高精度な気候予測システム、熱中症対策、気候変動に強い農作物など)の研究開発も求められます。
  • 資源循環領域
    サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行に向けた、廃棄物の適正処理やリサイクルの最適化、バイオマスなどの地域資源を活用したエネルギー回収、海洋プラスチック問題の解決等に役立つ技術開発が該当します。
  • 自然環境保全領域
    生物多様性の損失を止め、自然共生社会を実現するための生態系の維持管理・回復や、AI、ドローン等を活用した効率的な自然環境調査、鳥獣被害対策などの技術・サービス開発が含まれます。
注意

前述の「①エネルギー起源CO2の排出抑制」に直接役立つ研究開発については、国の別の補助金「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業 」が用意されています。申請前に自社の技術が①と②どちらの制度に該当するか確認をしてください。

2.2 採択事例の傾向と具体例

本事業では、AIを活用した最新サービスから、一次産業と連携したアイデアまで、幅広い環境技術が採択されています。環境省のウェブサイト「環境省におけるスタートアップ支援施策」には、研究開発の成果を紹介した資料が掲載されています。この資料の中から2社の事例をご紹介します。

事例①:自動車×AIを活用したごみ分布調査プラットフォーム

(株式会社ピリカ/フェーズ2R&D支援事業/資源循環領域)

ドライブレコーダーやストリートビューなどの動画データから、AIが道端のごみを自動検知して分布状況を見える化するシステムです。人工衛星では見えない小さなごみも検知でき、「どこに清掃員を重点配置すべきか」「不法投棄がどこで起きているか」といったことを正確に把握できるため、自治体等の効率的なごみ回収や不法投棄対策に活用されています。本事業で特に期待されているITやAIを存分に活用したソリューションの好例です。

事例②:牛のゲップ(メタン)を低減する海藻飼料の開発

(株式会社サンシキ/フェーズ1 F/S・PoC支援事業/気候変動領域)

牛など反芻(はんすう)動物のゲップに含まれるメタンは強力な温室効果ガスです。同社は、メタン生成を抑える効果を持つ海藻を独自の陸上養殖で低コストに生産し、現場で使いやすい飼料へ加工する技術開発を行いました。水産業(海藻養殖)や畜産業といった一次産業と連携して環境課題にアプローチするユニークな事例です。

その他にも、以下のような多様なテーマが採択されています。

  • 空撮画像から海鳥類の種類と数をAIで認識し、環境調査を自動化するシステム
  • 生コンスラッジ(建設廃棄物)からCO2を吸収・固定化するコンクリート原料の開発

第3章:フェーズ1・2・3の違いと補助金額

3.1 各フェーズの概要

自社の事業の成熟度に合わせて、以下の3つの区分(フェーズ)から申請先を選択することができます。フェーズ(成熟度)とは、事業化に向けた研究開発の進み具合のことです。アイデアが実現可能か試す初期段階から、実用化に向けた本格的な研究、そして社会実装目前の大規模な実証まで、自社の研究段階に応じた支援を受けられます。フェーズ2はさらに3つの枠が用意されています。

出典:本補助事業の特設サイトに掲載されている説明会資料

※フェーズ2のオープンイノベーション枠には事業会社等からの出資、フェーズ3は試作機がすでに動くレベルまで技術が到達していることといった条件が求められます。詳しくは公募要領をご確認ください。

3.2 新しい技術を世に出すためのステップ

上記の表に「F/S」や「PoC」「R&D」といった言葉が登場していますが、これらは新しい技術を世に出すための標準的なステップ(段階)を表す用語です。新しい技術や製品をつくるとき、いきなり多額の資金を投じて本格的な開発を始めるのはリスクが高すぎるでしょう。そこで、一般的には①アイデアの検証⇒②本格開発⇒③現場での実証という順番で慎重にステップを踏んで進めます。

F/S(Feasibility Study / 事業化可能性調査)

このアイデアは本当にビジネスとして成り立つのか、コストは見合うのかといった、事業としての実現可能性を事前に調べるステップです。

PoC(Proof of Concept / 概念実証)

理論上はできそうだが、本当に機能するのかという疑問に対し、小さな規模の実験や簡単な試作品を作って、技術のアイデアが実現できるかを証明するステップです。

R&D(Research and Development / 研究開発)

F/SやPoCで「いける!」と確信できた技術を、実際の製品やサービスとして使えるように本格的に研究・開発(実用化)するステップです。

さらにその先へ!(本事業におけるフェーズ3)

R&Dで完成した技術を、今度は実際の現場に持ち込んで大規模にテストし、世の中に普及させる(社会実装・事業化)ための最終仕上げのステップです。本事業は、これらのステップに合わせてフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3に支援枠が分かれているのです。

第4章:補助対象経費と申請ルールのポイント

4.1 主な補助対象経費

  • 工事費:試作機などを製作するための材料費、労務費など。
  • 設備費:実証に必要な機器やシステムの利用経費。
  • 業務費:事業に直接従事するメンバーの人件費(※役員であっても、技術開発等に自ら直接従事している時間分は対象になります)。その他、専門家への謝金や、事業に関する出張旅費、研究開発に直接必要な通信費(例:調査アンケートの郵送代)など。
  • 事務費:事業の事務手続きに必要な消耗品費や備品購入費、通信費など。
  • 外注費・委託費: 自社で実施できない一部の業務を外部(大学や他企業など)に委託する経費。(※原則として補助対象経費の1/2以下であることが条件です)

4.2 設備費は原則としてリースやレンタルの場合に補助される

設備については、原則としてリースやレンタルの経費が補助対象となります。ただし、どうしてもリースやレンタルでの対応ができず、購入せざるを得ない合理的な理由がある場合(応募時に書類へ理由の記載が必要)に限り、例外的に購入が認められることがあります。

ノートPCやソフトウェアは、汎用性が高いため原則は補助対象外です。ただし、本補助事業専用で使用することが明確な場合に限り、対象となる可能性があります。

4.3 主な補助対象経費

  • 交付決定「前」や事業完了「後」の支出(※原則として、交付が決定してから発注・契約した経費のみが対象です)
  • 事業に直接かかわらない人件費や、本補助金の応募・申請手続き自体にかかった経費
  • 既存施設の撤去、移設、廃棄、処分にかかる費用
  • 予備の設備や、将来使用する予定の設備の購入費・工事費
  • 事業に直接必要とはいえないオプション品の購入費・工事費

4.4 申請手続きはオンラインシステム「e-Rad」経由

応募申請は、郵送ではなく「府省共通研究開発管理システム(e-Rad)」を利用してオンラインで行います。応募を決めたら、まずシステムの登録を済ませましょう。

出典:本補助事業の特設サイトに掲載されている説明会資料

コラム:国が環境スタートアップを全力応援する理由

ここで少し視座を広げてみましょう。これほど手厚い補助金や伴走支援が用意されている背景には、国の、どのような狙いがあるのでしょうか。そこには、スタートアップの成長が、日本経済と地球環境の双方に好影響をもたらすという期待があります。

経済産業省がこのほど公表した、「スタートアップエコシステム調査2026」の結果を見てみましょう。スタートアップエコシステム調査とは、経済産業省が定期的に実施している大規模な実態調査です。日本のスタートアップがどれほどの経済効果を生み出しているのか、また世界と比べてどの位置にいるのかを豊富なデータで分析しており、国の今後のスタートアップ支援策(補助金など)の重要な土台となっています。この調査によれば、日本のスタートアップがもたらす経済波及効果は年間25兆円規模に達し、日本経済の新たな牽引役となっています。

また、環境問題などの複雑な社会課題を技術で解決する「ディープテック」は、いま世界中で最も成長しているビジネス領域です。「環境省におけるスタートアップ支援(2026年5月)」によると、世界のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)に占めるディープテックの割合は、わずか5年間で14%から25%へと急激に拡大しています。

つまり国は、「環境課題を解決する優れた技術やアイデアを持つ企業を強力に後押しすることで、彼らが新たなロールモデルとなり、ひいては日本経済を牽引する大きなビジネスへと成長していく」というポテンシャルに大きく期待しているのです。だからこそ、これだけの予算(最大4億円の枠など)を割いてでも、企業や起業家を支援しようとしています。社会課題に挑む技術と、それを後押しする国の支援が完全にマッチしている今こそ、自社のアイデアを形にする絶好のタイミングと言えるのではないでしょうか。

出典:経済産業省のウェブサイトに掲載されている「スタートアップエコシステム調査2026

第5章:よくある質問

大企業の資本が入っている子会社でも応募できますか?

「みなし大企業」に該当する場合は応募できません。本事業は、中小企業者自身の独立した成長を育成する目的があるため、発行済株式の1/2以上を同一の大企業が所有している場合などは対象外となります。

創業前(法人登記前)でも応募は可能ですか。

登記前でも応募は可能ですが、応募締め切り後 2 週間以内に登記が完了している必要があります。なお、フェーズ 1 に限り、起業家(事業を営んでいない個人)であって、研究開発成果の事業化を目指す者による応募が可能です。

大学や研究機関は応募できますか。

大学や研究機関が代表事業者・共同事業者として応募することはできません。応募できるのは環境スタートアップ企業(フェーズ1に限り起業家も可)です。

第6章:スタートアップへの追い風を生かそう

本事業には、最大4億円という手厚い資金枠に加え、専門の事業コーディネーターが技術開発から資金調達、販路開拓までを二人三脚でサポートしてくれる伴走支援が用意されています。これらの手厚い支援は、大きな魅力です。

環境問題という地球規模の課題を解決するには、優れた技術力だけでなく、それをビジネスとして成立させる力が必要です。本事業は、まさにその両輪を国が全力で後押ししてくれるチャンスです。「自社の技術で社会を変えたい」という熱い思いを持つ中小企業や起業家の皆さんは、ぜひこの強力な追い風に乗って、新たなイノベーションへの第一歩を踏み出してみてください。

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