
必読ポイント
■ 目的
社会課題解決と収益化(ビジネス)を両立する住まいや地域交流拠点等の整備(ハード)+事業立ち上げのための技術検証や調査検討などに関する資金サポート(ソフト)。補助上限は3億円/案件。調査・検討といったソフト事業のみを行う「③事業育成型」の補助上限額は500万円/案件。
■注意点
- 際の事業運営にかかる費用は補助対象外:施設のスタッフの人件費や家賃など、日々、実際に事業を進めるために必要な経費は補助対象外です。
- 事前着手NG:交付決定(正式な許可)が出る前に事業着手(工事の着工、設計や調査の委託契約等)をした場合は、原則として補助対象外です。
- 立地制限:新築の場合、ハザードエリア(土砂災害特別警戒区域や浸水想定高さ3m以上の区域など)に該当する場所での事業は原則、補助対象外です。
この記事では「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」をご紹介します。この事業は、地域課題の解決につながる拠点づくりに向けて、建物の整備費(ハード)と、立ち上げ時の技術検証や調査検討、情報発信などに関する費用(ソフト)を支援する国(国土交通省)の補助制度です。社会的価値と事業性の両立が求められます。
注意すべきは、日々の事業運営費は補助されないという点です。そのため、補助終了後も継続できる収支計画をあらかじめ描いておくことが重要になります。
第1章:事業の狙いと五つの申請タイプ
本事業は、高齢者、障害者、子育て世帯など、誰もが安心して健康に暮らせる住環境の整備を促進するため、これらに役立つ先導的な取組を支援する事業です。
1.1 どんな建物や施設の整備が対象?
本事業において住宅の整備を行う場合は、必ず住宅以外の機能の整備(シェアハウス等における住宅内の共同空間の整備を含む。)をあわせて行うことが必須要件とされています。単なる住宅整備ではなく、住まいと地域交流・支援の場を組み合わせた施設整備が求められるというわけです。たとえば、以下のような整備が考えられます(過去の採択事例より)。
- 空き家を改修して若者や母子世帯のシェアハウスとし、居住者の自立支援等を行う。
- 長屋木造住宅を改修することで、ひとり親世帯や高齢者向けのシェアハウスとし、地域交流に寄与するシェアキッチンなどをあわせて整備する。
これらの取組において、開設後の事業運営体制や運営にかかる費用の考え方が明確であり、取組の継続性が確保されるか(事業の継続性・堅実性)が評価委員会による審査の視点となります。
1.2 五つの事業タイプの使い分け
提案する事業の内容に合わせて、以下の5つから申請タイプを選択します。
①課題設定型
国土交通省が設定した以下の5つの事業テーマのいずれか(複数選択可)に応じた先導的な取組を行う事業です。原則として、人が住むための住宅、または地域の人々を支える施設(交流拠点など)のいずれか(※両方も可)の整備を実施します。
- 「居住サポート住宅」を普及・推進するためのモデルになる住環境整備
- 住宅確保要配慮者が円滑に入居できる仕組みを備えた住環境整備
- 既存建築ストックを活用した住宅確保要配慮者への住環境整備
- 見守り・安否確認等のDX化を伴う住環境整備
- 住宅確保要配慮者の居住の安定を図るための住環境整備
②事業者提案型
上記の①のテーマとは別に、提案者が独自で事業テーマを提案し、先導的な取組を行う事業です。対象となる整備(住宅や施設など)のルールは①と同様です。
③事業育成型(調査・検討等)
上記①又は②の事業を実現するために必要な調査・検討等の準備段階の取組です。当該事業完了後、原則として①又は②として提案することを前提とします。
④子育て住宅型
空き家の改修等による住環境の整備と、見守りや自立支援を併せて実施する事業です。
⑤子育て公営住宅型
地域の居住ニーズを踏まえ、公営住宅等のストックを活用して子どもを産み育てやすい環境整備を行う事業です。
ページが分かれています
1.3 応募対象者(提案者)の要件
本事業は、事業類型ごとに応募主体の要件が異なります。
①課題設定型、②事業者提案型、③事業育成型
住宅・施設の建築主や管理者、生活支援・介護・子育て支援サービスの提供者、先導的な技術を導入する者などが応募主体として想定されています。法人格は不要で、個人や地方公共団体も提案可能です。
④子育て住宅型
居住支援協議会が実施するか、あるいは居住支援法人、社会福祉協議会、社会福祉法人、NPO法人、労働者協同組合等が、居住支援協議会や地方公共団体と連携して実施する必要があります。
⑤子育て公営住宅型
地方公共団体、又は民間事業者が代表応募者となります。(※民間事業者の場合は、原則として地方公共団体との連携が必須です)
1.4 新築の場合における立地制限の確認
本事業は、新築する住宅またはシェアハウスの立地が以下の区域に該当する場合は、原則として補助対象外となります。用地を選定する際は、事前に自治体のハザードマップ等で該当状況を必ず確認してください。交付申請時には、災害ハザードエリア等と事業実施場所・敷地の関係がわかる資料の提出が必須です。
- 災害危険区域(住居の用に供する建築物の建築が禁止されている区域に限る)
- 地すべり防止区域
- 急傾斜地崩壊危険区域
- 土砂災害特別警戒区域
- 災害危険区域または市街化調整区域であって、土砂災害警戒区域または浸水想定区域(洪水浸水想定区域もしくは高潮浸水想定区域であって浸水想定高さ3m以上の区域に限る)に該当する区域
- (※サービス付き高齢者向け住宅を整備する場合)浸水被害防止区域
第2章:事業の基本概要
公募締切:第1回:6月30日/第2回:8月17日

補助上限額
①課題設定型、②事業者提案型、④子育て住宅型、⑤子育て公営住宅型
最大3億円/案件。これは、建物の整備費(ハード)と、事業立ち上げ時の技術検証や調査検討費(ソフト)の合計額です。
③事業育成型
最大500万円/案件。建物整備を含まない、準備段階の調査・検討費(ソフト)のみが補助されます。
主な補助対象経費と補助率
建物の整備(ハード)の補助率は注意が必要です。
建物を新築(建設)する場合や、既存物件(空き家など)を購入(取得)する場合は補助率1/10以内(※⑤子育て公営住宅型は既存物件の「改修」のみが対象のため、新築・取得はできません)、既存物件を改修する場合は補助率2/3以内です。
他方、新サービスを立ち上げるための実験費用や専門家への謝礼といったソフト面の費用については、新築・既存物件のいずれを活用する場合であっても補助率は2/3以内となります。
まとめると以下の通りです。
- 改修費(空き家活用などのハード):補助率は費用の2/3以内
- 新築の建設費・既存物件の取得費:費用の1/10以内。土地代は補助対象外です。
- 技術の検証費(※⑤の場合は「調査検討費」)、情報提供・普及費(ソフト面):新築か既存物件かを問わず補助率は費用の2/3以内
情報提供・普及費とは
国から補助を受けて実施した先導的な取り組み(モデル事業)で得られた成果やノウハウを、社会全体に広くシェア(発信)するための活動にかかる費用のことです。たとえば以下のような事例が該当します。
- WEBサイト関連:本事業専用の特設サイトの制作費やサーバー代
- イベント関連:成果報告会、見学会、シンポジウムの会場費や開催経費
- 印刷物関連:取り組みを周知するためのパンフレットや資料の作成・印刷費
- 人件費・謝礼:上記のイベントに登壇する専門家への謝礼や、情報発信を手伝うスタッフの人件費(※事業を審査する評価委員会で認められた場合に限る)
【情報提供・普及費に関する注意】
本事業はビジネスとして収益化し、自走することが求められます。しかし、国から支給される情報提供・普及費(ソフト)は、あくまで、成功ノウハウを社会に共有(還元)するための費用(事例発表シンポジウムの開催や、ノウハウ公開HPの作成など)に限られます。カフェの新メニューや施設の入居者募集など、自社の売上アップ(集客)を直接の目的としたチラシや広告宣伝費には補助金が使えませんので、集客は自社の経費で行う必要があります。
また、どの事業タイプであっても、施設のスタッフ人件費や光熱費、家賃といった日々の事業運営にかかる費用は補助対象外です。
第3章:どんなアイデアが選ばれている?採択事例紹介
住まい環境整備モデル事業の特設サイト内「事例検索ページ」では、これまでに採択された①課題設定型、②事業者提案型、③事業育成型に関する事例が多数公開されています。ここでは、その中から参考になる取り組みの一部をご紹介します。
事例1:元保育園を多世代共生の複合施設へ(課題設定型)
廃園となった保育園を多世代共生型の住宅兼複合施設(賃貸住宅、レストラン等)として改修する事業概要。入居者が運営に関わることで、役割を持ちながら共生できる、持続可能なコミュニティ施設づくりを進める内容です。
事例2:宿場町の古民家を高齢者や障害者が共に働くレストランへ(課題設定型)
この事業の実施場所では、旧宿場町である商店街の活気を取り戻すことが課題となっています。商店街に位置する古民家を改修し、高齢者や障害者が運営するレストランとして、地元の人や観光客が集う拠点づくりを進めます。
事例3:空き家を活用したシングルマザー向けシェアハウス(課題設定型)
隣接する二棟の空き家を改修し、シングルマザー向けシェアハウスとゲストハウスに改修・整備。シングルマザーの住まいと就労の場を作ります。ゲストハウスや敷地内の菜園を開放し、シェアハウス入居者と地域の方が交流できる場づくりを構築します。

第4章:よくある質問
-
事業に選定されたら、すぐに工事や設計を始めてもいいですか?
-
いいえ、補助金の交付を受けたい費用については、必ず交付決定を待ってから着手してください。交付決定通知を受けてから着手(工事の着工や設計の委託契約等)しないと、例外はあるものの、原則としては補助対象外となってしまいます。
-
新規事業を運営するための人件費は補助対象になりますか?
-
原則として人件費は補助対象外です。しかし、技術の検証や情報提供・普及活動に関して付帯的に必要になる経費(補助員への賃金など)は、評価委員会で認められた場合、補助対象となる可能性があります。
-
提案が採用(選定)された場合、補助要望額は全額を受給できるのでしょうか?
-
補助額は、予算の範囲内で、応募書類に記載された金額や事業計画などを総合的に考慮して決定します。そのため、提案事業が選定された場合であっても、補助要望額の全額が補助されるとは限りません。
第5章:審査ポイント
申請前に、自社の事業アイデアが以下のポイントを満たせているかチェックしてみましょう。なお、④子育て住宅型および⑤子育て公営住宅型は、原則としてコンペ方式ではなく、所定の要件を満たしているかを審査(確認)して選定されます(④子育て住宅型については、例外的に下記の審査基準に基づく審査が行われることがあります)。
① 課題対応性:事業テーマが地域の課題に適合し、課題に対して適切に対応した取り組みであるか。
② モデル性・先導性:課題に対する模範的な「解」として、一般への普及が期待できるか。斬新なアプローチによる「解」であるか。
③ 事業の継続性:実働性のある組織体制が確保され、経済的に自走できる提案であるか。
④ 支援の妥当性:補助金による支援が妥当か。
⑤ 地域課題の分析:対象地域の課題を的確に分析できているか。
⑥ 建築空間の質:住宅などの整備が質の高い空間を提案しているか。
⑦ 地域への波及性:事業概要がまちづくりにおける波及効果や地域活性化、雇用創出等の効果をもたらすものであるか。
第6章:社会性と事業性の両立を目指して
本事業は、社会課題の解決と事業としての継続性を両立させたい人にとって、非常に相性のよい制度です。ここまで見てきたように、空き家や遊休不動産の活用、住まいと交流機能を組み合わせた拠点づくり、立ち上げ時の調査・検証への支援まで、アイデアを形にするための土台が幅広く用意されているからです。 地域に必要とされる事業は、最初から完璧である必要はなく、実現に向けて動き出すことに意味があることもあります。ぜひ一度、具体的な事業案として言葉にしてみませんか。
▼ BizRizeでは、無料相談を行っております! ▼

BizRize事務局
ヒト・モノ・カネに関する経営資源を、効率よく活用できるプラットフォーム「BizRize」を運営。毎週木曜に経営者向けの勉強会を開催し、補助金や資金調達に役立つ情報を無料メルマガで配信中!




