
EC事業者(ネットショッピング運営会社)や物流事業者の皆さん、再配達や物流にかかる負担を減らす新しい仕組みづくりに挑戦しませんか? 国土交通省による「物流負荷の低減に向けた多様・柔軟な受取・注文方法の普及促進事業」の公募が行われています。この制度は、再配達の多さなどの深刻な悩みを解決するため、企業間で連携して消費者の受け取り方の選択肢を増やす実証事業(新しい仕組みを実際に試して効果を検証すること)を支援する制度です。本記事では、制度の概要や意義、事業者が注意すべきポイントを解説します。
第1章:受け取り方法を増やして物流を楽にする
ネットショッピングの普及などに伴い、宅配便の取扱量は増え続けていますが、再配達の多さやドライバーの負担増大など、物流業界の負荷は限界に近づいています。これを解決するためには、消費者が置き配や駅の宅配ロッカーなど多様で柔軟な受け取り方を選べたり、急がない配送を選べたりするような物流に配慮した注文方法の普及が急務とされています。一社単独ではなく、複数の事業者が連携して再配達を削減する新しい仕組みをテストし、物流負荷を社会全体で下げることを目的として、この補助事業が設けられました。
第2章:事業の概要と必須要件
2.1 物流の負担を減らすための実証事業
この制度は、単に自社用の設備(普通のロッカーなど)を買って置くだけの設備投資に対する支援ではありません。今までになかった新しいロッカーの使い道やシステム連携をテストして、物流の負担を減らす効果を証明するための実証事業であることが最大のポイントです。この前提を踏まえたうえで、以下の詳細を確認していきましょう。
2.2 想定される実証事業例
置き配サービスの事業者間連携
各社の伝票番号等を共通化し、オートロック開錠システムと連携して置き配の利便性とセキュリティを向上させる取組など。

駅・公共施設等の宅配ロッカーの活用
EC事業者とロッカー事業者がデータ連携し、通勤や帰宅途中に気軽に受け取れる仕組みの構築など。

物流に配慮した注文方法の普及促進
配送日数を長くとる注文方法を消費者に促し、行動変容を通じてサプライチェーン全体の負荷を軽減する取組など。

この項の図の出典は本事業の特設サイト≫
2.3補助対象事業者
宅配便を扱うEC事業者、物流事業者、物流システム開発会社やロッカー運営事業者などが対象です。共同申請は不可ですが、複数社が連携して事業を実施することは可能です。その場合は代表の1社を決めて申請する必要があります。
2.4 補助対象経費
実証調査や効果検証を行うために必要最低限な費用のみが対象となります。例えば以下の費用です。
- 工事費:宅配ロッカー設置に伴う工事費など。
- 設備費:新しい受取システムに必要な機器や設備の購入費。
- 業務費:システムの開発・改修費や、調査の外部委託費など。
- 事務費:事業に直接必要なスタッフの人件費、交通費、会議室の費用や消耗品費など。

出典:国土交通省のウェブサイトに掲載されている同大綱の概要資料
2.5 発注は必ず交付決定後に
交付決定日(国から正式にゴーサインが出た日)以降に発注することができます。交付決定前に発注・契約してしまったものや、期間終了後に納品されたものは経費として認められませんので十分に注意してください。また、事業の目的に直接関係ない経費や、必要最低限以上の過剰な経費も対象外です。
原則として、支払いは事業実施期間内に終える必要がありますが、同期間内に請求書が発行されているものについては、令和9年1月29日の実績報告期限までの支払いも認められます。支払完了後に銀行振込受領書等を提出します。
2.6 補助額・補助率
- 適用単位:1事業者あたり
- 補助率:かかった経費の2分の1以内
- 補助額:下限250万円 ~ 上限5,000万円
【注意点】1社から複数の事業を提案することも可能ですが、採択された場合の合計額が5,000万円の枠内となります。目的や連携先が異なる複数の取り組みは、目標(KPI:再配達率の削減など、効果を測るための具体的な数値目標)やスケジュール、連携体制も異なりますので、別々の事業提案として分けて申請します。
2.7 申請のための必須要件
単に設備やシステムを買うだけでは不可です。以下の条件をすべて満たす必要があります。
KPIと、その計測方法を設定すること。
<KPIの例>
- 再配達率の削減
- 再配達に係るトラックドライバーの労働時間の削減量もしくは削減率
- トラックドライバーの労働時間当たりの配達個数の増加量もしくは増加率等
- 1個当たりの配達に要するトラックドライバーの労働時間の削減量もしくは削減率
期間内に事業実施による効果の検証を行うこと。
事業終了後の計画や目標を示し、結果をまとめた成果報告書を提出すること。
第3章:申請フローと審査のポイント
3.1 申請から入金までの全体の流れ
ステップ1:応募(メールにて必要書類を提出)
ステップ2:審査・採択
ステップ3:交付申請・交付決定。ここで初めて発注・契約が可能になります。
ステップ4:事業の実施・支払いの完了。事業と経費の支払いを完了させます。
ステップ5:実績報告。証拠書類を提出して審査を受けます。
ステップ6:補助金の入金。お金はすべて後払いの精算払いとなります。
3.2 証跡保存の流れ
実績報告時に書類(証跡)が不足していると、補助金が受け取れなくなるリスクがあります。必ず以下のフロー順で書類を残してください。
【仕様書の作成】
【見積もりの取得】
【発注】
【納品】
【検収(納品物の確認)】
【請求・支払い】
3.3 主なスケジュール
- 公募締切:令和8年5月22日(金)12:00必着
- 事業実施期間:交付決定日~ 令和8年12月31日(木)まで
- 実績報告締切:令和9年1月29日(金)まで。
3.4 主な審査項目と有利になるポイント
審査では、①取り組みの新規性・先進性②普及・拡大の可能性③関係者間の連携体制④費用の妥当性⑤申請者内の実施体制⑥スケジュールの確実性などの項目が評価されます。さらに、以下の要件を満たすことで、審査で評価されやすくなります。
✅物流負荷の低減や再配達率の削減に大きく寄与する、新しく先進的な取り組みであること。
✅将来的に広く社会に普及し、効果が拡大することが期待できること。
第4章:よくある質問
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複数社で連携してシステムを作りたいのですが、補助金は参加企業それぞれがもらえるのですか?
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いいえ、複数社での共同申請はできないため、代表となる1社が申請し、国から補助金を受け取ることになります。ただし、代表企業から協力企業に対して、システム開発や調査などを業務委託として発注し、その委託費を補助金の対象経費(業務費など)に含めることで、協力企業にも正当な対価が支払われるスキームを組むことが可能です。ただし、事業の企画立案や根幹となる管理業務まで協力企業に丸投げすることはルールで禁止されているため、代表企業が主体性を持って事業を推進する必要があります。
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システムや機器の導入にリースを利用できますか?
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長期にわたる契約の場合でも、補助事業の期間内(交付決定日〜令和8年12月31日まで)にかかる費用のみが対象となります。期間外の費用は対象外です。
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補助金で購入した設備(単価50万円以上の機械など)を、事業終了後に売却したり別の目的に使ってもいいですか?
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認められません。定められた期間内(※耐用年数等を勘案して定められます)に、補助金の目的以外に使用したり、売却・譲渡・貸付・担保の提供などをしたりする場合は、必ず事前に事務局の承認が必要です。無断で処分した場合は、補助金の返還とペナルティ(加算金)が命じられてしまいますので避けてください。
第5章:働きやすさとサービス向上の両立へ
「物流負荷の低減に向けた多様・柔軟な受取・注文方法の普及促進事業」は、単なる設備の購入費用を補填するものではありません。深刻な再配達問題や物流のひっ迫という社会課題を根本から解決し、EC業界や物流業界の働きやすさとサービス向上を実現するという国の重要な目的を持った制度です。この補助金を活用して、置き配システムでのデータ連携や、宅配ロッカーの新しい活用方法に挑戦することは、自社のビジネス課題の解決だけでなく、消費者満足度の向上にもつながる大きなチャンスです。ぜひ、未来の物流を支える新しい仕組みづくりにチャレンジしてみませんか。
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