
必読ポイント
■ 対象者:中堅・中小規模の飲食店および個人事業主。以下の条件などを満たす必要があります。
■ 飲食店営業の許可を持ち、実店舗を営業していること(テイクアウト専業や接待を伴う店は対象外)
■ 2025年(令和7年)1月1日以前から継続して営業していること
■ 全事業の売上に占める飲食事業の売上割合が70%以上であること
■ 目的と補助額:調理、接客、店舗管理の領域における、設備・機器(※リースに限る)やシステム等の導入を通じた労働生産性の向上を支援します。
■ 補助額:1領域あたり下限100万円〜上限500万円。複数領域の同時申請も可能(最大1,500万円)
■ 補助率:定額(対象経費の全額補助)※完全後払い制
■ 公募締切:令和8年5月29日(金) 17:00(WEB受付のみ)
■ 交付決定(正式な許可)が出る前の発注・契約は一切不可ですので、ご注意ください。
飲食店を経営する皆さんの中には、日々の店舗運営において「人手が足りない」「スタッフの業務負担が大きすぎる」といった悩みや課題を抱えている方も多いでしょう。そんな課題を解決するため、ロボットやITシステムを導入して業務を効率化する費用を支援する農林水産省の「飲食業労働生産性向上支援補助金」の公募が行われています。補助額は1領域あたり上限500万円(最大3領域で1500万円)となっています。
本記事では、補助金の制度概要、申請のルールや注意点、具体的な手続きの流れまでを分かりやすく解説します。
第1章:集中的な省力化投資と生産性向上が不可避
現在の飲食業界では、深刻な人手不足が大きな課題となっています。一人ひとりの従業員への負担が大きくなり、結果としてサービス品質の低下や、従業員の定着率悪化につながる恐れがあります。
こうした課題を背景に、2025年6月、農林水産省と厚生労働省は「省力化投資促進プラン(飲食業)」を策定しました。このプランでは、人手不足に苦しむ飲食業において集中的な省力化投資を行い、生産性の向上を実現することが重要な目標として掲げられています。
国はこの大きな目標を達成するための具体的な支援策の一つとして、令和7年度補正予算に基づいて本補助金制度を設けました。ロボットやITシステムを活用して業務の無駄を省き、従業員がより少ない負担で働ける環境を作る(労働生産性を向上させる)事業者を後押しすることが、この補助金の目的です。


(出典:農林水産省のウェブサイトに掲載されている「省力化投資促進プラン(飲食業)」)
第2章:事業の概要や必須要件
補助対象経費や補助金額など、この制度の基本的な概要を押さえておきましょう。
2.1 申請できる対象者
以下のすべてに当てはまる中堅・中小規模の飲食店(個人事業主含む)が対象です。
- 飲食店営業の許可を持ち、実店舗を営業している(テイクアウト専業や「接待」を伴う店は認められません)。
- 2025年(令和7年)1月1日以前から現在まで継続して飲食店を営業している。
- 全事業の売上のうち、飲食事業の売上が70%以上を占めている。これは直近年度の実績で判定します。また、他事業も営む複合事業の場合は、飲食事業とその他事業の売上・経費を区分して証明できる必要があります。
- 資本金5千万円以下、または従業員50人以下の中小企業、あるいは従業員2000人以下の中堅企業
※複数店舗を運営している場合、店舗ごとの申請ではなく、法人としてまとめて1つの申請を行います。
2.2 補助対象経費
以下のような省力化に直結する設備やシステムの導入費用が対象です。
- 設備・機器等の導入費:配膳ロボット、自動調理機器、券売機、急速冷凍機など。
- システム等の導入費:モバイルオーダー、予約管理システム、勤怠管理システムなどのソフトウェア導入費(ソフトウェアは購入やサブスクリプション利用料も対象となります)
- 技術導入費:機器やシステムの初期設定、スタッフへの操作指導(トレーニング)費用、軽微な据付工事費など。
- 運搬費:機器を店舗へ運ぶための費用。

2.3 補助金の対象にならない経費
以下の費用は、つまずきやすいポイントですのでご注意ください。
- ハードウェア(機器)はリース契約のみが対象:配膳ロボットや券売機などの機器類(ハードウェア)はリース契約のみが対象となり、一括購入やレンタル契約は対象外です。ただし、システムなどのソフトウェア類については、システム構築費や初期設定費用、サブスクリプション等の利用料などが対象となります。
- 汎用品の購入:事務用のパソコン、プリンタ、タブレット(iPad等)、スマホ、Wi-Fiルーターなど、飲食店業務以外にも使えるものの購入は対象外です。ただし、省力化システム導入と一体となった期間内のリース費用であれば対象になる場合があります。
- 大規模工事やリフォーム:店舗の改修や建物の建設工事費などは対象外です。
- 他制度との重複:同じ内容で、他の国や自治体の補助金をもらっている経費は対象外です。
2.4 補助額や補助率
■補助率:定額(交付決定額を上限として、事業期間内の対象経費の100%を補助)。
■補助額(1領域あたり):下限100万円 〜 上限500万円。
本補助金では調理、接客、店舗管理の3つの領域があり、複数領域を同時に申請することも可能です。例えば2領域に申請する場合の補助上限額は1000万円です。

2.5 申請のための必須要件
本補助金に申請するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 専門家の「伴走支援」を受けること:事務局が派遣する専門家(コンサルタント等)と一緒に課題を整理し、計画の推進を行う必要があります。
- 「自動化・省力化ガイドブック」に沿った計画であること:国が推奨する行動計画に合致した内容でなければなりません。例えば以下のような取組です。
- 野菜や肉のカットを自動化・高速化し、仕込み時間を短縮する
- 料理の運搬や片付けをロボットに任せ、スタッフの負担を軽減する
- シフト作成、勤怠管理、給与計算を自動化し、店舗責任者等の事務負担を軽減する

- 「食料システム法」に基づく事業活動計画の認定申請:事業期間中に、環境に配慮した取組などの計画を作成し、国(農林水産大臣)へ認定申請を行うことが必須です(すでに認定済みの場合は不要です)。
食料システム法とは
環境に配慮しながら、持続可能でムダのない食品供給(ビジネス)を目指そうという国のルールです。
いずれか一つの計画を選んで提出 今回の補助金で設備やシステムを導入する「労働生産性向上の取組」に合わせて、以下のいずれかの計画を作成・申請します。
- 流通合理化事業活動計画:食品の流通や店舗運営のムダを省き、効率化を進めるための計画です。例えば、受発注をデジタル化して業務効率を上げるといった取組は、この合理化に直結します。
- 環境負荷低減事業活動計画:食品ロス(廃棄)の削減や、省エネ・省資源など、環境への負担を減らす取組をまとめた計画です。新しいシステムで在庫管理を正確にし、食材の廃棄ロスを減らすといった取組が該当します。
第3章:省力化の取組事例紹介
ここでは、国が推奨する「自動化・省力化ガイドブック」に掲載されている取組事例などを参考としたモデルケースをご紹介します。申請時の参考にしてください。
3.1 調理領域の取組イメージ
- 野菜や肉のカットを自動化・高速化する機械を入れ、仕込み時間を大幅に短縮する。
- 急速冷凍機を導入して鮮度を保ったまま長期保存を可能にし、アイドルタイムに仕込みをまとめることで作業を平準化する。
- 焼く・蒸す・煮るなどを1台で大量に行い、調理工程を自動化・効率化する自動調理機を導入する。
3.2 接客領域の取組イメージ
- お客様のスマートフォンで注文・決済ができる「モバイルオーダー」を導入し、注文を聞きに行く手間やオーダーミスをなくす。
- 料理の配膳や下膳を配膳ロボットに任せ、スタッフの肉体的な負担を減らす。
- 会計業務を自動化(セルフレジ等)し、レジ締め作業の簡素化を図る。
3.3 店舗管理領域の取組イメージ
- 在庫状況をリアルタイムで把握し、発注データを自動作成するシステムを入れ、発注業務の負担を減らす。
- シフト作成や勤怠管理、給与計算システムを導入し、店長などの事務作業時間を削減する。
- 動画マニュアル(教育研修ツール)を活用し、従業員育成にかかる負担を軽減する。
第4章:申請フローと審査のポイント
申請に関する全体の流れと重要なスケジュールを解説します。発注のタイミングとお金の受け取り方にはルールがあるため、以下のステップをよく確認してください。
4.1 申請から入金までの時系列フロー
4.2 締切は5月29日
- 公募締切: 5月29日(金) 17:00 厳守。応募はWEBサイトからのアップロードのみで、紙の資料提出は不可です。
4.3 審査の主なポイント
審査では、主に以下の項目がチェックされます。
- 課題解決につながっているか:業務工数の削減や、売上拡大の結果として従業員の時給単価がアップするなどが見込めるか。
- 複合的な取組か:単に設備を買うだけでなく、メニュー開発や販促などと組み合わせているか。
- 事業の継続性と投資回収:なぜこの補助金が必要なのか、今後の事業成長(客数・客単価増など)を見据えているか。
第5章:よくある質問
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これからオープンする新店舗への導入費用は補助対象になりますか?
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既存店がない全くの新規出店の場合は対象外です。令和7年(2025年)1月1日以前から継続して飲食店を営業しており、既存店舗の実績と比較して生産性向上の成果検証ができる場合のみ対象となります 。
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設備やシステムを導入する際、見積もりは1社からだけでも良いですか?
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いいえ。どのような費用であっても、必ず複数社からの相見積もりと選定理由書が原則必須です。1社のみの見積書では審査の対象になりませんのでご注意ください。
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ハードウェア(機器)とソフトウェア(システム)の両方を導入する場合、契約はどうすればいいですか?
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ハードウェア部分はリース契約限定ですが、ソフトウェア部分(システム構築費やサブスクリプション等)は購入費や利用料が対象になります。POSシステムなどで両方を導入する場合は、ハードウェア部分はリース、ソフトウェア部分は購入・利用料として、明確に契約と費用を分けて申請してください。
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新しい機器を入れるための店舗の大規模な工事費は補助対象になりますか?
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大規模な改修・建設工事費は対象外です。ただし、機械装置の設置と一体と考えられる軽微な据付工事であれば、技術導入費として対象に含めることができます。
第6章:生産性向上で店舗の未来を変えよう
今回ご紹介した飲食業労働生産性向上支援補助金は、自動化・省力化を進めることで、スタッフの業務負担を減らし、浮いた時間を本来のおもてなしや新メニュー開発に充てることを狙いとしています。これらに充てる時間を増やすことで、国は、飲食店が利益と売上(客数・客単価)を増やし、従業員の賃上げ(時給単価アップ)を実現することを期待しているのです。また、専門家のアドバイス(伴走支援)を無料で受けられるため、自社だけでは気づかなかった課題解決のヒントを得るチャンスでもあります。 店舗の未来を変える大きな一歩として、ぜひお早めの準備と申請をご検討ください。
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