
「長年培ってきた自社の技術を切り出して、新しい会社(スタートアップ)を立ち上げたい」
「大学や企業での研究成果を使って起業し、世の中を変えるような急成長ビジネスを作りたい」
今回は、そんな熱い思いを持つ中小企業の皆さんや、技術者・研究者の皆さんにぜひ知っていただきたい制度をご紹介します。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、高度な科学技術(ディープテック)を武器に急成長するスタートアップの立ち上げを目指す人たちに向けた支援プログラム(NEP)の公募をスタートしました。この制度は、「今の会社のまま、ちょっとした新製品を作って少し売上を伸ばす」といった既存事業の延長を目指すものではありません。将来的に投資家(ベンチャーキャピタル等)から資金を集め、社会課題を解決しながらユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の非公開スタートアップ企業)へと急成長するポテンシャルを秘めた、全く新しいビジネス(将来的な分社化・独立が前提)への挑戦を応援する制度です。 本記事では、最大3,000万円の補助金に加え、起業・事業化に向けて専門家による助言などが受けられる「躍進(やくしん)コース」について、分かりやすくご紹介します。

第1章:NEDOのNEP(ネップ)とは
NEDOが実施する「NEP(NEDO Entrepreneurs Program)」は、世の中の役に立つ優れた技術を持っている人が、それを武器にスタートアップとして起業・独立し、社会に送り出すことを国がサポートする仕組みです。既存のITツールを組み合わせただけのウェブサービスや飲食店の新しいメニューのように、研究開発の要素が薄いもの(すでに世の中にある製品やソフトを利用しただけのアイデア)は対象外となります。本事業の対象となるのは、ロボット、AI(人工知能)、エレクトロニクス、新しい素材、環境・エネルギー、バイオ技術など、独自の高度な科学技術(ディープテック)の力で勝負するアイデアです。
NEPには大きく分けて二つのコースがあります。
- 【開拓コース】:起業のアイデアを練る準備段階の人向けです。
- 【躍進コース】:本記事でご紹介する内容です。すでにビジネスプランがあり、試作品作りやテストを一気に進めて、事業の立ち上げや資金調達を狙う本気の起業家・法人向けとなっています。
つまりNEPは、研究開発型の技術を持ち、将来的にスタートアップとして独立・成長を目指す人・企業のための制度だと言えるでしょう。

第2章:躍進コースは3タイプ、どんな企業向け?
躍進コースには、応募する方の今の立場や会社との関係性に合わせて、三つのタイプが用意されています。まずは、自社・自身にもっともマッチしたタイプはどれなのか、チェックしてください。
2.1 起業を目指す個人や、新規事業に挑戦したい法人 → 「躍進500・3000」
これから起業を目指す個人(チーム)や、既存の法人が独自の技術を使って新しい製品やサービスの試作・テストをしたい場合におすすめのコースです。最大500万円未満(躍進500)、または最大3,000万円以内(躍進3000)の補助金を受け取ることができます。個人で応募する場合は、遅くとも補助金交付が決まるタイミング(9月ごろ)までに新しく法人を設立することが条件となります。一方、既存企業が応募する場合、将来的にその事業を分社化して、新しいスタートアップとして独立させる構想があることが必須条件となります。
2.2 会社の技術を切り出して独立したい → 「躍進カーブアウトA・B」
大企業等のなかで眠っている技術を外に持ち出して、新しく会社を作って独立したい人向けです(これをカーブアウトと呼びます)。このコースは他のコースと異なり、かかった事業費(Aは500万円未満、Bは3,000万円以内)のうち4分の3が補助されます。そのため、実際にもらえる補助金の最大額は、Aが375万円未満、Bが2,250万円以内となります。
2.3 環境・脱炭素がテーマの技術 → 「躍進GX」
CO2を減らすなど、地球環境を良くするための技術でスタートアップを目指す人向けです。最大3,000万円以内を補助してくれます。
2.4 補助金は何に使える?
受給できる補助金は、研究費だけではなく、事業化のための実務費用にも使えます。例えば、以下の経費などに充てることができます。
- 試作品の設計・製造費
- 外部の試験機関での性能テスト費
- 大学・研究機関との共同研究費
- 事業化に向けた市場調査や実証実験
なお、一般的な補助金と同じく、交付決定後に発注した経費が補助対象です。「最大3,000万円もの経費を、事業終了まで自社で全額立て替えるのは資金繰りが厳しい…」というスタートアップや中小企業のために実績払や「つなぎ融資」といった資金繰りのサポート(救済措置)も用意されています(※これらは併用不可)。
躍進カーブアウトAについては例外となっており、原則として、NEDOが委託する運営管理法人が活動費を管理し、直接支払ってくれます。
これらの仕組みを活用すれば、手元のキャッシュ(自己資金)が満額用意できなくても事業を進めることが可能になりますので、詳細は、NEDOのウェブサイトから公募要領を確認してみてください。

第3章:どんな技術が採択されてきたのか
NEPに関する特設サイトには、開拓・躍進各コース別の過去の採択事例が掲載されています。具体的に、どんな高度な技術を使って、私たちの生活や現場の課題を解決するスタートアップが選ばれているのか、申請にあたっての参考になるはずです。一例をご紹介します。
- 実例1:目に見えない細菌を、あっという間に見つけるセンサー半導体(Aqua-SemiTech株式会社)
- 高度なセンシング技術を、食品工場などの衛生管理の時短という身近な現場の課題解決に応用し、事業化を進めています。
- 実例2:古い橋や道路の危ない箇所を、AIですぐに見つける逆解析技術(株式会社カルマリオン)※東大発スタートアップ
- AIやシミュレーション技術を、老朽化する土木インフラの点検という社会課題の解決に応用し、事業拡大を目指しています。

第4章:必要な書類と主なスケジュール
申請へ向けて、まずはスケジュール(予定)を確認しましょう。
- 4月17日正午:応募締め切り
- 5月中旬〜6月中旬:書面や面談での審査
- 7月上旬頃:採択者の発表
- 9月上旬:交付決定
- 事業期間:交付決定から12か月以内

4.1 書類提出の特例
補助対象となる事業費の上限が3,000万円以内のタイプ(躍進3000、カーブアウトB)とGXタイプでは、申請にあたり、「投資家(ベンチャーキャピタル等)」から「このビジネスにお金を出資するかも!」という「出資関心願/出資関心確認書」をいただく必要があります。国だけでなく、民間のプロの目から見ても成長しそうかが問われます。ただし、「出資関心願/出資関心確認書」については応募締切に間に合わない場合、2026年5月15日(金)正午まで提出期限が延長される特例があります。焦らず投資家と対話を進めましょう。
4.2 今すぐできることを確認
申請に向けて必要な書類等の準備を進めると同時に、以下についてチェックしておきましょう。
- 自社(自分)の技術が、単に既存事業の延長ではなくスタートアップとして独立(分社化)できる事業か整理する。
- オンライン説明会(3/19、3/27開催)に参加して全体像をつかむ。NEDOのウェブサイトから申し込んでください。
- NEDOは、精度の高い提案書の作成を目的として、外部委託先による提案書の添削指導を行っています。受付は2026年4月2日(木)正午までです。詳細はNEDOのウェブサイト を確認のうえ、指定されたメールアドレス宛に提案書を送付して申し込んでください。
第5章:審査基準と加点項目
公募要領から、審査で重視されるポイントと、有利になる加点項目をご紹介します。
5.1 主な審査のポイント(全タイプ共通)
単に技術が優れているだけでなく、「どうやってビジネスとして急成長させるか」という視点が強く問われていることが読み取れます。
- 人物評価:このビジネスにかける熱意やリーダーシップはあるか、将来、大成功するスタートアップ(ユニコーン企業)の経営者になるポテンシャルがあるか
- 技術評価:その技術は机上の空論ではなく本当に実現できるか、世界で戦えるレベルの画期的な技術か、特許やノウハウで自社の強みをしっかり守れているか
- 事業性評価:その技術を使った製品やサービスは本当に売れるのか(市場は十分に大きいか)、ライバルにすぐマネされないか、将来の資金調達やビジネス拡大の計画が現実的かつ具体的に練られているか
5.2 タイプ独自の特別チェックポイント
選んだタイプによっては、上記の共通基準に加えて以下の点も審査されます。
- カーブアウトの場合:元の事業会社から、人員の提供や設備の貸し出し、ネットワークの紹介など、独立に向けた協力・応援をしっかり得られる見込みがあるか
- GXの場合:その技術が、将来にわたって日本国内のCO2排出削減に大きく貢献できるか
5.3 審査が有利になる加点項目と優遇措置
ある特定の条件に当てはまる場合は、審査において加点や優遇を受けられます。技術力以外の部分でもアピールできるチャンスです。主な例をご紹介します。
- 賃上げを宣言する企業(加点):事業開始年度に、前年度に比べ従業員の賃金(給与)を引き上げる計画を公表する場合。
- 働きやすい会社の認定企業(加点):えるぼし(女性活躍)、くるみん(子育てサポート)、ユースエール(若者雇用)など、国からワーク・ライフ・バランス推進の認定を受けている場合。
- 過去に表彰実績がある方(優遇):NEDOが後援するピッチイベント等で「NEDO賞」を受賞した方や、NEP開拓コースで優秀な成績を収めた方など。※カーブアウトの場合は、特定の国支援事業から生まれた技術に対する優遇措置もあります。
第6章:よくある質問
- 自社の主力事業を大きくすることだけを目的として応募してもいいですか?
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今の事業の単なる延長・拡大は全タイプで対象外です。また、「躍進500・3000」と「躍進GX」は、今の会社で応募する場合、これまでの技術を活かした新規事業を創出するとともに、将来的にその事業を分社化する構想がなければなりません。
一方、「カーブアウトA・B」は、元の会社から退職・独立(カーブアウト)して、新たなスタートアップとして事業化を進めることが条件になります。
※カーブアウトAは法人を設立せずに独立に向けた準備を行う個人・チーム向け、Bはすでに独立した法人、あるいは交付決定時までに独立して法人を設立する方向けです。
- まだ会社を作っておらず、仲間の職人や研究者と数人しかいません。
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チームでの応募も可能です。ただし、500・3000タイプとGXタイプは、交付決定時(9月ごろ)には会社(法人)を設立しなければなりません。まさに起業する絶好のチャンスとなるでしょう。
- 補助金は後払いなので資金繰りが不安です。
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手元の資金が不安な方のために、かかった経費を事業の途中で払ってもらえる仕組み(実績払)や、交付決定を担保にして金融機関からお金を借りられる「つなぎ融資(POファイナンス)」を利用することも可能です(併用不可)。
なお、個人やチームで応募する「躍進カーブアウトA」については制度の仕組みが異なり、原則として運営管理法人が経費を立て替えて直接支払います。旅費や一部の仕入先への支払い等を除き、ご自身で高額な立て替え(精算払い)資金を準備する必要はありません。
第7章:資金+ノウハウ提供で挑戦を後押し
日本の科学技術・モノづくりを支えてきた皆さんの確かな技術は、新しい産業を生み出し、世界へ羽ばたくスタートアップへと飛躍する大きなポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。 今回ご紹介した補助事業の一番の価値は、資金面のサポートだけではなく、あなたの技術を事業に変え、資金調達まで導くプロが本気で伴走してくれることです。資金とノウハウが足りない!という壁を乗り越えて、ぜひこのチャンスを掴み取っていただきたいと思います。
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