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2026.03.05

【インタビュー2026「飛躍への道標」③】 ――ジェトロECビジネス課 志賀大祐・課長代理 輸出自体が目的ではない 越境ECは経営課題解決の手段

国内市場の縮小や人手不足が常態化する中で、海外はもはや一部の大企業だけの選択肢ではありません。しかし、いざ海外展開を考えたとき、「やり方が分からない」「リスクが高そうだ」と立ち止まってしまう経営者が多いのも事実でしょう。「輸出は難しい」「越境ECは一部の成功例に過ぎない」――。そうした先入観を、現場の知見から解きほぐしてきたのが、独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)です。
経済・産業界のキーパーソンに、次なる一手を聞く「飛躍への道標」第3回では、ジェトロECビジネス課の志賀大祐・課長代理に、越境ECを一過性の試みにしないための時間軸の考え方や、成果を上げている企業に共通する地道なリサーチの重要性について話を聞きました。輸出すること自体を目的ではなく、経営課題を解決するための手段と捉え直したとき、企業の視界はどう変わるのか。支援の最前線に立つジェトロだからこそ語れる、実践的なヒントと現実的な一歩を探ります。

独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)https://www.jetro.go.jp/

日本の貿易・投資促進を目的とする独立行政法人。2003年に設立(前身は1958年設立)され、現在は海外ビジネス支援や、外国企業による日本への投資の促進、調査・情報提供などを通じて、日本企業の国際展開を支援しています。
世界50以上の国・地域に70カ所を超える海外事務所を持ち、現地市場の動向や規制、商習慣に関する実務的な情報提供を行うほか、越境ECやスタートアップ支援、海外バイヤーとのマッチングなど、企業の成長段階に応じた支援策を展開しています。特に中堅・中小企業に対しては、初めての海外展開でも取り組みやすい実践的な支援に力を入れています。

私は2011年の入構以来、約15年にわたり経済環境の変化を見てきましたが、今は企業が経営を根本から見つめ直さなければ生き残れない時代だと痛感しています。
海外展開に二の足を踏む経営者の方に、現在の課題を伺うと、多くの方が人手不足や賃上げ原資の不足を挙げられます。しかし、その解決策となる資金をどこから得るかとなると、国内市場だけでは見通しが立たないのが実情です。
そこで、輸出や海外進出を「外貨を稼ぎ、それを原資にして人材確保や賃上げを行うための手段」として提案すると、多くの方が納得されます。 重要なのは、輸出自体を目的化せず、自社の経営課題を解決するための手段であると理解することです。政府や周囲に勧められたからではなく、自社が生き残るために必要な稼ぎ方なのだと経営者自身が腹落ちした時、マインドセットが変わり、具体的なアクションへとつながっていきます。

まず大前提として、「ECなら簡単だ」という認識は捨てるべきです。その上で成果を出している企業に共通するのは、軸がぶれていないこと、そして成功までの時間軸を適切に設定していることです。
越境ECは、開始から1年目は、売上が立つかどうかも分かりません。2年目でようやく投資回収が見え始め、3年目で投資以上の利益が出るといったスパンで考えるべきビジネスです。最初に「3年間はこの計画で、これだけの人と資金を投資する」という青写真を描けている会社は強いです。
逆に、安易に始めてしまうと、成果が出るまでのタイムラグに動揺し、「向いていないのではないか」と迷いが生じます。このブレがなく、腰を据えて取り組めるかどうかが成功の条件と言えます。

出典:ジェトロ 「地域・分析レポート

ジェトロが海外の有力ECサイトやバイヤーと連携し、日本の食品、化粧品、日用品などを海外市場で販売する支援事業です。本事業を利用するための入り口(前提)として、まずはジェトロが運営する海外バイヤー専用のオンラインカタログサイト「Japan Street(ジャパン・ストリート)」へ商品情報を登録する仕組みとなっています。
最大の特徴は、日本企業が国内の指定先へ商品を納品するだけで取引が完結する点にあり、原則として国内買取・円建て決済となるため、複雑な貿易実務や言語対応の負担を大きく軽減できます。販売を通じて海外市場の反応を検証できる仕組みとなっており、原則無料(※一部有料オプションあり)で利用できることから、初めて海外展開に取り組む企業のテストマーケティングや販路開拓の第一歩として活用されています。

JAPAN MALL事業は、ジェトロが海外ECサイトと連携し、日本商品を販売するプロジェクトです。最大の特徴は、国内にある連携輸出商社に商品を納品すればよいという点です。
自ら海外ECサイトと交渉したり、複雑な輸出手続きを行ったりする必要がありません。さらに、販売後には「どのように売れたか」というデータフィードバックも得られます。これが無料で利用できるため、越境ECの入門として非常に有効なツールです。
現在は23カ国・地域、40以上のバイヤーと連携しており、欧米だけでなく、南米、アフリカ、インド、中東といった日本の(食品、化粧品、日用品などの)商品がほとんど入っていない市場にも注力しています。まずはここで商品を現地の消費者に届け、実績を作ることが、将来的なBtoB取引への足がかりにもなります。

まず、「品質が良いから売れるはずだ」という先入観を捨てることがレベル0の段階です。越境ECの世界では、単に品質が良いだけでは売れません。
次に重要なのが、「どの国のECサイトで売るべきか」を見極めることです。なんとなくのイメージでターゲット国を決めるのではなく、根拠を持つ必要があります。
その根拠を得るために一番のおすすめは、訪日外国人(インバウンド)に直接聞くことです。 日本を訪れている彼らに商品を試食・試用してもらい、リアルな反応を見るのです。どの国の人がどのようなポイントを評価するのか、感触を掴んで優先順位をつけてから進出すれば、「出品したけれど全くニーズがなかった」という失敗を防ぐことができます。

ジェトロの「地域・分析レポート」に掲載されている志賀・課長代理の「インバウンド客のニーズを出発点に旅アトビジネスへ」をご参照ください。

外部ECモール

Amazonや楽天など、多数の店舗が集まる巨大プラットフォーム。既存のデパートやショッピングモールの中にテナント出店するイメージです。

自社ECサイト

Shopifyなどを使い、独自ドメインで運営する独立したサイト。自社ブランドの世界観を作り込み、路面店を一から構えるイメージです。

手法は大きく分けて「外部ECモールへの出品」と「自社ECサイトの構築」があり、それぞれにつまずきポイントがあります。
まずECモール型の場合、注意すべきは想像以上にかかるコストです。売れない焦りから、プラットフォーム側から次々と提案される有料オプションや広告を闇雲に追加してしまい、利益が出なくなるケースがよくあります。これを防ぐには、お金をかける前に、モール内で競合商品のレビューを徹底的に分析することです。現地の消費者が評価するポイントを探れば、自社の説明文の改善点や刺さる表現といった相場観が見えてきます。これはコストをかけずにできる有効なマーケティングです。
一方、自社ECサイト型の最大の壁は集客です。プラットフォーム自体が莫大な広告費をかけて顧客を呼んでくれるモールと違い、自社サイトは作っただけでは誰も見に来てくれません。最初はアクセスがほとんどなく心が折れそうになりますし、流入させるための広告費が最もかかります。
ただし、自社サイトには、ブランドの世界観を表現できるという圧倒的なメリットがあります。 例えば日本茶を売る場合、消費者が求めているのは液体そのものではなく、お茶による安らぎやマインドフルネス(心を整えること)といった体験価値であることが多いです。モールの画一的なページでは伝えきれないこうした情緒的価値を、自社サイトなら自由に表現できます。世界観を売るなら自社サイトが向いていますが、集客戦略は専門家と組んで進めるのが近道でしょう。

国内だけでビジネスを完結させるのが難しい一方で、世界には、日本の製品やサービスが欲しいというニーズが確実に存在します。
ECなどのデジタル販売チャネルを使えば、海外の消費者が何を求めているかを直接知ることができます。そうして掴んだ世界の具体的なニーズに自社の強みをしっかりと合わせていけば、想像以上の反響が返ってくるはずです。 「世界のニーズに、あなたの商品を合わせてみませんか?」。そのような視点を持つだけでも、ビジネスの可能性は大きく広がっていくと思います。

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BizRize事務局
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