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2025.06.20

従業員のメンタル不調を予防し、心の健康を守る! 中小企業対象にサービス利用料を補助 経産省が「心の健康投資」支援事業

 人手不足が叫ばれる中、企業にとって労働⼒の確保と労働者の⽣産性の向上は切実な課題の一つです。労働者が能力を最大限に発揮するためには、心身の健康が不可欠ですが、厚⽣労働省の令和5年の「労働安全衛⽣調査(実態調査)」によると、仕事や職業⽣活に関して強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.7%に上っています。職場のストレスが労働者の健康を脅かし、モチベーションや生産性の低下、ひいては離職・休職へとつながると、組織の⽣産性にも影響を及ぼしかねません。そこで経済産業省は、こうした課題を解決し、中小企業の「心の健康投資」の拡大を目指して、先端技術を活用したメンタルヘルスサービスのサービス利用料を補助する事業を実施中です。今回は、本事業の概要をご紹介します。

01 健康経営と健康投資

 本題に入る前に、健康経営と健康投資の考え方をご紹介します。

健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。そして、従業員の健康の保持・増進に向けた取り組みが、将来的に収益性などを高める投資であるという考えのもと、こうした取り組みに充てる費用を健康投資ととらえます。これは単なるコストではなく、将来に向けた人的資本への投資であると定義されています。

企業が従業員に健康診断や人間ドックの受診を勧めたり費用を負担したりする、運動施設の利用費の一部を補助する、スポーツイベントを開催するといった健康投資は、従業員の健康な心身を守り、活力を向上させることが期待できます。この健康投資により企業の生産性が向上し、結果的に業績向上や株価向上にもつながる(健康経営)というわけです。

このような健康経営の取り組みを「見える化」し、社会的に評価されることを目的として、経済産業省は2016年度に「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などの法人を認定するもので、現在は民間の運営主体が事務局を務めています。詳細については、ACTION!健康経営ポータルサイトで確認できます。

※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

02 健康経営を後押し

 経済産業省は、企業の健康経営の取り組みを後押しするため、その基本的な方針や仕組みを策定し、関係資料を公開しています。具体的には、以下のガイドブックとガイドラインが主なものです。

企業の「健康経営」ガイドブック
主に、これから健康経営に取り組み始める企業や、より深く知りたい企業向けに、有識者による議論を経て作成されています。社内の組織体制づくりや、具体的な施策の実施、PDCAサイクルの意識など、健康経営の基礎的な考え方について解説しています。

健康投資管理会計ガイドライン
すでに健康経営に取り組み始めており、効果分析や評価方法を模索している企業が利用することを想定しています。このガイドラインでは、管理会計の手法を用いて、健康投資にかかる費用とその活動によって得られる効果を「見える化」する手順と活用方法が解説されています。これにより、企業は健康経営を、より継続的かつ効率的・効果的に実施できるようになり、また、取り組み状況について外部(株主や金融機関など)と適切に対話する際の共通の考え方も提供されます。

(出典:健康投資管理会計ガイドライン概要説明資料

03 事業概要と目的

それでは、企業の「心の健康投資」を支えるメンタルヘルスサービス導入促進事業について見ていきましょう。

本記事の冒頭でもご紹介した通り、仕事などに関し強い不安やストレスを感じている労働者の割合は8割を超え、組織の生産性低下が懸念される状況です。一方、従業員のメンタルWell-being(精神的な健康状態や心の状態が良い状態)向上に取り組むことは、業績向上や従業員エンゲージメント(従業員の企業に対する活力や熱意、貢献意欲の度合い)の向上につながり得ます。

このような状況下で、近年開発が進む先端技術を活用したメンタルヘルスサービスは、例えば、大規模なデータを用いたメンタルヘルス問題の早期発見や予測、個別に最適化された介入メニューの提供など、企業が従業員の「心の健康」をサポートするための機能を十分に有しているとされます。しかし、そうした新たなサービスはまだ広く普及しておらず、実績や効果検証のデータも不十分な状況にあります。

そこで、経済産業省は、中小企業を対象にサービス利用料の一部を補助し、中小企業の「心の健康投資」の拡大を図る事業に取り組んでいます。「心の健康投資」は、企業が従業員の心の健康のために行う取組を、法令で定められる健康管理を超えて経営的視点から戦略的に実践するがゆえに、将来的に収益性や企業価値の向上をもたらす「人的資本への投資」ととらえられているのです。

企業は、事前に公募の上決定済みのサービスの中から、希望するサービスを選んで導入します。応募時に、希望するサービスを申告してください。サービス一覧は、本事業の公募サイトに掲載されています。また、サービスを導入した企業には、補助金受給の要件として、サービスが実際に役立つことを証明するためのデータ集めに協力していただきます。

従業員のメンタルWell-being向上や、メンタルヘルス不調の予防に取り組みたいけど、費用がネックで踏み切れない…。そんな悩みを抱えていた経営者の方は、本事業の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

 

キーワード

介入メニュー
先端技術を活用して、従業員一人ひとりの心の健康状態や組織の課題に合わせてカスタマイズされた、具体的かつ実践的なサービスやプログラムのこと。


(出典:本事業のチラシ

先端技術を活用したメンタルヘルスサービス

本事業で選定されたサービスには、以下のカテゴリがあります。

1:認知行動療法(心理療法)やマインドフルネス等の心理学の理論を取り入れたデジタルサービス

 

キーワード

マインドフルネス
ストレスなどにとらわれることなく、今という瞬間に集中すること。グーグルやアップルなど、著名な企業が社員育成や研修に導入しており、注目されるようになった。


2:調査や生体情報(身体的特徴や行動に関する情報)などを活用して、心の健康に関する組織や個人の状態を把握し、改善するデジタルサービス

3:チャットボットやVR技術を活用したカウンセリングサービス

4:上記のデジタルサービス等を活用した職域向けのメンタルヘルスサービス

補助金の拠出が特定のサービス提供事業者に偏ることがないよう調整する場合があります。このため、導入を希望するサービスは第3希望まで申請できます。

(本事業で選定されているサービス一覧 出典:本事業の公募サイト

04 本事業の主なメリット

本事業を活用することで得られる主なメリットは以下の通りです。

①先端技術を活用したメンタルヘルスサービスの利用料補助を受け、従業員に「心の健康」に関する取組を実施する機会が持てる。

②心の健康や組織に関する課題の解決につながることが期待される。

③サービス効果の検証のため結果がフィードバックされることから、結果をもとに改善へ向け取り組むことが出来る。

05 事業の要件など

公募期間

2025年7月17日(木)正午(12時)まで

申請方法

所定の公募申請書やエントリーシートなどを、本事業事務局へ電子メールで提出します。申請書や送付先・問い合わせ先などは、>公募サイトでダウンロードしたり確認したりすることができます。

補助対象となる事業者

中小企業及び個人事業主。中小企業の定義は業種により異なります。詳細は公募要領を確認してください。

申請要件

本事業の補助対象(申請対象)となるためには、以下の全ての要件を満たす必要があります。

  1. 交付申請時点において、日本国内で法人登記され、日本国内で事業を営む法人又は個人であること。
  2. あらかじめ選定済みのサービス提供事業者が提供するサービスを導入すること。
  3. 申請時に提出する「本事業利用予定人数」のうち、少なくとも半数以上が補助対象期間を通してサービスを利用し、その利用実績及び成果について、サービス提供事業者に報告・共有すること。

補助対象経費

サービス利用料

補助率

1/2以内

補助上限額

300万円(1件あたり)

※消費税は原則除外します。交付申請書の補助金申請額算定段階で、消費税を補助対象経費から除外して補助金額を算定し、交付申請書を提出してください。

06 よくある質問

サービス利用料に含まれる経費の範囲は?

本事業における補助対象経費は、サービスの利用に必要なサービス利用料のみです。具体的なサービス利用料の内訳は、公募サイトに掲載されている各サービス提供事業者のサービス紹介資料をご確認ください。

サービス利用に伴うデータを報告する必要があるか。

はい、サービスの利用実績および成果について、サービス提供事業者に報告・共有していただく必要があります。また、本事業ではサービスの効果検証のため、個人情報を除く効果検証用データをサービス提供事業者から事務局に提出することとなりますので、ご協力ください。

当社は免税事業者だが、補助対象経費をどのように算出すべきか。

原則として、補助金額の算定段階では消費税を補助対象経費から除外して交付申請書を提出する必要があります。ただし、納税義務者とならない事業者や免税事業者、簡易課税事業者、特定の法人等の補助対象事業者は、消費税を補助対象経費に含めて補助金額を算定することができます。

07 まとめ

 企業が継続的に安定した発展を続けるには、従業員(人材)の存在が不可欠です。社会が複雑化し、人が仕事で抱える不安や悩み、ストレスの種類や質も複雑化しています。加えて、日本の生産年齢人口は減少が予測されており、労働力の確保と生産性の向上は重要な課題です。このような時代において、従業員が心身ともに健康に働ける環境を整えることは、経営者が優先的に取り組むべき課題の一つと言えるでしょう。

 「人材は人財」という言葉が示す通り、従業員の心身の健康は企業価値向上につながる「人的資本への投資」ととらえられます。本事業は、メンタルヘルスに役立つサービスの利用料が補助されるため、この機会にサービスの活用を、ご検討ください。

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