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補助金・助成金

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2026.04.06

インバウンドは戻ったが人手が足りない! 宿泊現場を救う「省力化投資補助金」

国内外からの観光客が戻り、活気を取り戻しつつある日本の観光地。しかし、現場では「お客様は来ているのに、対応するスタッフが足りない」という切実な声が上がっています。そんな宿泊事業者の悩みに寄り添い、現場の負担を減らすための、国の「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」の公募が、2026年3月27日から始まりました。この記事では、申請の必須要件や、役立つ採択事例をわかりやすく解説します。

第1章:人手不足が深刻な観光業

冒頭でも触れた通り、観光需要が急回復する一方で、宿泊業の現場では深刻な人手不足が続いています。コロナ禍で他業界へ移った人材が戻りきっていないことや、現場の業務負担が大きく、新たなスタッフが定着しにくいことがその背景にあるとされます。このまま限られたスタッフの負担が増え続ければ、サービスの質を維持することが難しくなり、それがさらなる離職を招くという悪循環にも陥りかねません。
このピンチを断ち切り、少ない人数でも質の高いおもてなしを実現するカギとなるのが、デジタル技術や最新機器を活用した「省力化(現場の手間を減らすこと)」なのです。

インバウンド消費などは順調だ。
出典:観光庁のウェブサイト「インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)」に掲載されている資料

第2章:事業の概要と必須要件

本事業は、機器やシステムの導入費用を国がサポートしてくれる嬉しい制度ですが、申請には厳格なルールがあります。

2.1 誰が申請できるの?

「旅館業法」の営業許可を受けている宿泊事業者(法人、個人)が対象です。ただし、民泊(住宅宿泊事業法)や、店舗型性風俗特殊営業にあたる施設は補助の対象外となります。

【施設数の上限に関する注意】
1事業者(法人、個人)につき最大3施設まで申請可能です。ただし、代表者が同じ、または企業会計が同じ会社(親会社・子会社など)は「同一グループ」とみなされ、グループ全体で合計3施設までが上限となります。複数のホテルや旅館をグループで経営されている場合はご注意ください。

出典:本補助事業の特設Webサイトに掲載されている「計画申請の手引き」

2.2 何に使えるの?

宿泊現場の人手不足解消や業務効率化につながる機器やシステム、設備の購入・導入費用に使えます。例えば以下のようなものが対象となります。

【フロント業務】

自動チェックイン機、スマートロック、施設内情報表示システム(客室のテレビやタブレットでの館内案内)、翻訳・通訳システム、POSレジなど

【予約・デスク業務】

ホテル管理システム(PMS)、サイトコントローラー(複数の予約サイトの在庫・料金を一元管理)、チャットボット(Webサイトでの自動応答)など

【清掃業務】

清掃ロボット、清掃管理システム(客室の清掃状況をスマホやタブレットでリアルタイム管理)、オゾン脱臭機など

【バックサポート業務】

スタッフ間の連絡用インカム、ビジネス電話システム(従業員のスマホを内線化)、温度管理システム、監視カメラなど

【食事の準備・配膳】

モバイルオーダーシステム(お客様のスマホやタブレットからの注文)、真空包装機(作り置きによる効率化)、冷凍庫など

【中小企業の方は要注意!】
申請する宿泊施設が「中小企業」に該当する場合(別の補助事業「中小企業省力化投資補助金」の対象要件を満たす場合)、同補助金のカタログ(令和8年2月20日時点)に掲載されている製品を選ぶと、その製品本体や導入経費は本補助事業では補助対象外となってしまいます。機器選びの際(※スチームコンベクションオーブンや清掃ロボットなど多岐にわたります)は、カタログ掲載品でないか、「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」の公募要領で十分に確認してください。

出典:「計画申請の手引き

2.3 補助対象外になってしまう経費とは

主な対象経費は以下の通りです。

  • 汎用品の単体購入:パソコン、タブレット、スマートフォン、テレビ、Wi-Fi機器など、他の用途にも広く使えるものは原則NGです。ただし、導入するシステムを利用するために必要不可欠な場合は認められる場合もあります。
  • 中古品の購入:価格の適正性が判断しづらいため対象外です。
  • 建物の新築工事など:建物の新設、増築、改築、改修などの大規模な工事費は原則として対象外です。ただし、設備の導入及び設置に附随する必要最小限の工事費は補助対象になります。
  • 消耗品:食器や衣類などの購入費は対象外です。
  • レンタル・リース料:原則として対象外となりますが、システム利用料と不可分なものは対象となる場合があります。

2.4 補助額・補助率

1施設あたり最大1,000万円、補助率は1/2です。

出典:「計画申請の手引き

2.5 申請締切の前に参加申込締切あり

申請は2段階のステップを踏む必要があります。

  1. 参加申込締切:5月22日(金)17:00 ──まずは、この日までに特設Webサイトでアカウント登録を済ませてください。登録したあとで事業計画の提出など(本申請)を行います。
  2. 計画申請締切:5月29日(金)17:00(書類を揃えて本申請)──前述の通り、参加申込を済ませていないと計画申請はできませんので、ご注意ください。

2.6 注意すべき三つのポイント

対象外施設

単に設備を買うだけではNGです。補助事業を実施する施設が位置する地域(DMO(観光地域づくり法人)、地方公共団体、観光協会など)と連携し、地域一体での求人活動など、人手不足解消のための具体的な取組(PR活動・セミナー、イベントの参加又は開催)を行っていること(原則過去3年以内。予定でも可)が必須となります。

必須要件

計画申請時点で未開業(準備中含む)/計画申請時点で休業中または申請後に休業し、完了実績報告時までに営業を再開していない/閉業・売却・承継予定のある施設は、補助対象外や交付決定取消の対象となります。

事業着手は交付決定後に

申請した事業計画が選ばれた(計画特定)からといって、交付決定通知を受け取る前に契約や発注をしてしまうと、その経費は全額補助対象外になってしまいます。必ず事務局からの交付決定通知を待ってから動き出しましょう。

第3章:こんなに変わった!過去の採択事例

実際にどのような設備を導入し、現場がどう好転したのか、過去の成功事例をご紹介します。

3.1 事例1:自動チェックイン機・電子宿帳

ある老舗旅館では、紙の宿帳をパソコンに手入力する作業に追われていました。自動チェックイン機や電子宿帳システムを導入したことで、ペーパーレス化が進み、フロント専任スタッフの入力負担が激減。サービスの質を下げることなく、お客様への接客に時間をかけられるようになりました。

チェックイン手続き画面。
出典:本補助事業の特設Webサイトの事例紹介

3.2 事例2:PMS/ホテル管理システム

予約情報を紙で管理していたホテルでは、手書きで転記・配布する作業に毎日1時間半以上かかっていました。新しいPMS(ホテル管理システム)と大型モニターを導入し、フロントと厨房で最新情報をリアルタイム共有。毎朝のホワイトボードへの転記作業がなくなり、部署間の連携が驚くほどスムーズになりました。

3.3 事例3:インカムや施設内情報表示システム

あるホテルでは、スタッフが客室の状況確認のために移動を繰り返していましたが、インカム(無線通信機)の導入でリアルタイムな連絡が可能になり、清掃スタッフとフロントの連携が劇的に改善しました。
また、別の旅館では、客室の紙冊子を客室のテレビやお客様のスマートフォンを活用した施設内情報表示システムに置き換えたことで、情報更新の手間が半減し、多言語対応によって海外のお客様へのご案内もスムーズになりました。

テレビも案内役になった。
出典:本補助事業の特設Webサイトの事例紹介

第4章:申請フローと優先的採択のポイント

申請から入金までは、以下のようなステップで進みます。

4.1 申請から入金までの流れ

参加申込

まずは特設サイト( https://kanko-jinzai.go.jp/ )からオンライン申請システムのアカウント登録を行います。

計画申請

アカウント発行後、事業計画書や見積書などの必要書類を特設サイトの申請フォームから本提出します。

計画特定

事務局で審査が行われ、補助対象となる事業計画が選ばれます。まだ発注してはいけません。

交付申請

申請した計画が選ばれたら、原則として1カ月以内に補助金の交付を申請します。

交付決定

事務局から決定通知が届きます。ここでようやく機器の発注・契約がスタートできます。

事業実施

交付決定日から令和9年1月8日(金)までです。この期間内に、計画に沿って機器を導入し、業者への支払いをすべて完了させます。

実績報告

事業が完了したら、納品や支払いが終わったことを証明する書類を提出します。

補助金額の確定・請求

事務局の審査を経て実際に受け取れる補助金額が確定したら、請求書を出します。

精算(入金)

請求書を提出してから約45日後、指定の口座に補助金が振り込まれます。

出典:「計画申請の手引き

4.2 審査で優先されるアクション

申請時、以下の二つのアクションを行うことで、審査において優先されます。

  1. 特設サイトからの「省力化投資に係るアンケート」への回答。
    計画申請フォームの受付完了メールに添付されているURLにアクセスし、回答します。
  1. 独立行政法人 中小企業基盤整備機構の省力化ナビを活用し、設問回答後に出力できるPDFを提出すること。省力化ナビの利用には「GビズID(プライム)」の取得が必要です。未取得の方は、早めに準備してください。

申請の順番も有利な要素になります!

本事業では、上記の優先事項を満たした同順位内において、「早く申請をした事業者から先に審査・選定する」というルールが明記されています。つまり、同じ条件であれば、1日でも早く書類を揃えて提出した方が有利ということです。準備ができ次第、速やかに申請することをおすすめします。

第5章:よくある質問

部屋食提供業務の効率化のための食事会場の整備や、布団敷き業務の効率化のためのベッド付客室への改修等の施設整備は補助対象になりますか。

建物(小屋、物置、仮設建築物等を含む)の新設・増築・改築・改修(間仕切りによるブース新設及び原状復帰の範囲を超える内装/外装の変更等)などの工事費(設備の導入及び設置に附随する必要最小限の工事費を除く)は補助対象となりません。

汎用性が高く、一般使用が見込まれる物品の購入費用は補助対象になりますか。

テレビ、事務用のパソコン、ディスプレイ、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン及びデジタル複合機など、汎用性が高く、一般使用が見込まれる物品単体の購入は補助対象外です。ただし、本事業で導入する他のシステム及び設備等の利用にあたって必要不可欠とされる場合は、補助対象経費として認められます。

客室の扉にスマートロックの導入を検討しています。スマートロック製品の導入にあたって、扉の工事が必要となります。この場合、扉の工事費用は補助対象経費となりますか。

システム、設備及び備品の導入及び設置に附随する経費は、必要最小限の範囲で補助対象になります。

相見積もりが取れない場合は、1社の見積りだけでも申請できる?

原則は相見積もりが必要ですが、特定の業者でなければならない理由と根拠を記した「業者等選定理由書」を提出すれば可能です。

補助金はいつ入金されるの?

概算払い(前払い)ではありませんので、事業がすべて完了し、実績報告と最終検査を経て補助金額が確定した後の後払いとなります。請求書を提出してから約45日後の入金となります。

補助金で買った設備は将来売却できる?

単価50万円以上の機械や設備には財産処分の制限期間が設けられています。期間内に無断で売却や廃棄をすると、補助金の返還対象となるためご注意ください。

第6章:業務を見直す契機に

観光業界の人手不足は深刻ですが、見方を変えれば、業務のやり方や現場の仕組みを見直す絶好のタイミングとも言えます。
本補助事業は、単に機器を導入するための制度ではなく、少ない人数でも無理なく回る現場をつくり、サービス水準の向上や賃上げを達成するための支援策です。また申請にあたっては、「何を買うか」から考えるのではなく、「どの業務に一番負担がかかっているのか(関連業務の現状)」「どこを省力化できれば現場が楽になるのか(導入による生産性向上・業務効率化の見込み)」を整理することが求められています。これらをしっかりと整理したうえで、設備やシステムを選びましょう。
この制度を現場改善のきっかけとして活用できるよう、まずは早めに特設Webサイト( https://kanko-jinzai.go.jp/ )を確認し、参加申込の手続きを進めてください。

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