専門家・企業ブログ

補助金・助成金

bizrize

2026.03.26

「通過型観光」から「地域一体で稼ぐ観光」へ! 体験拠点づくりを支援する補助金解説

国(観光庁)による「地域資源を活用した観光まちづくり推進事業」の公募が行われています。この補助事業は、「地域には素晴らしい歴史や自然があるのに、観光客が通り過ぎてしまう」「地域の歴史や文化のストーリーに合わせて、新たな価値を生み出すための改修をしたい」といったお悩みを解決するための制度です。地域の歴史、食、自然、文化を活かし、主に訪日外国人観光客(インバウンド)を対象に、長く滞在して楽しめる拠点づくりを、国が手厚くサポートしてくれます。 本記事では事業概要や申請時の注意点などを解説します。

第1章:回遊型観光の必要性

令和7年の訪日外国人旅行者数は、過去最高の約4,200万人となりましたが、特定の都市部にばかり人が集まってしまう「観光客の偏り」が大きな課題となっています。地域の魅力(歴史、食、自然、文化など)は全国各地にあるものの、旅行者が快適に滞在できる拠点施設が不足していたり、地域内の複数の観光スポットがバラバラで「面」としてつながっていなかったりするため、旅行者の滞在時間が延びず、地域にお金が落ちにくいという悩みがありました。
そこで、地域ならではの「ストーリー」に基づいた深い体験を提供する拠点を整備し、観光客が地域をあちこち巡ってくれる(回遊性を高める)仕組みを作るために、施設改修や設備投資を支援するこの補助事業が設けられました。
この制度は、前身の「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進事業」がパワーアップした後継事業です。これまでは対象が歴史的資源に限られていましたが、今回からは食、自然、文化へと取組の範囲が大幅に広がり、より多様な地域の魅力を活かせるようになりました。

第2章:事業概要と優先採択のポイント

この制度の基本ルールと、審査のポイントなどを見てみましょう。

2.1 補助対象事業者

地方自治体、観光地域づくり法人(DMO=観光地域づくりの舵取り役となる法人のこと)、民間事業者などが申請できます。個人事業主の方や法人格を持たない団体でも申請可能です。補助対象となる施設の数に上限はありません。

2.2 補助対象経費

地域のストーリーに基づいた体験を創り出したり、エリアの回遊性を高めたりするための施設整備や周辺環境の整備に使えます。例えば以下のような費用です。

  • 建物の新築・改修など:古民家を改修した宿泊・飲食施設に要した費用/伝統工芸が体験できる工房や、自然体験の拠点施設などの建築・改修工事費。
  • 周辺環境の整備:庭や外構の造園工事費/案内標識、多言語対応の解説板、トイレ、駐車場の整備など。ただしこれらの整備は、建物の工事とセットで行うことが必要です。

出典:観光庁のウェブサイトに掲載されている事業説明会資料

2.3 補助対象の経費

  • 建物や土地の購入費:古民家などの購入代金は対象外です(改修工事費は対象になる場合があります)。
  • 単なる修繕や設備の更新、取り壊し(除却):壊れたものを直すだけ、古いエアコンを新しくするだけ、廃屋を撤去するだけといった工事は対象外です。
  • 観光客が利用しない場所の工事:従業員専用の駐車場や通路などは対象外です。
  • 交付決定前の支払い:国から交付決定という正式な許可が降りる前に契約したり支払ったりした経費は、一切補助されません。

2.4 補助額・補助率

  • 補助率:かかった対象経費の 1/2(半分)以内
  • 補助上限額:1つの申請者あたり 最大2億円(下限額はありません)。

2.5 五つの審査項目

この補助金は、以下の五つの項目で審査されます。

  1. 事業全体:地域の課題を踏まえ、観光客が地域をあちこち巡る(回遊する)ストーリーや、明確な目標(KPIなど)があるか。
  2. 観光体験:訪日外国人観光客(インバウンド)を対象とした、ターゲットが明確な体験内容か。
  3. 施設整備:その施設が体験の提供に本当に必要か。自己資金の調達見込みがあるか、整備に必要な許認可は取れているか、スケジュールが現実的で期間内に確実に終わるか。
  4. 継続性:補助金をもらった年だけでなく、翌年度以降も施設を維持管理していく持続的な資金計画があるか。
  5. 体制・その他:関係者の役割分担が明確か。
出典:提出書類の一つ「事業概要書」。観光庁のウェブサイトに用意されています

2.6 地域連携が優先採択のポイント

公募要領には、以下の通り重要なポイントが明記されています。

「地域資源を活用した観光まちづくりの推進にあたっては、地域関係者との連携や地域一体となった取組が必要不可欠であるため、これらが具体的に分かる事業を優先的に採択します。」
つまり、自社単独で儲けようとする計画ではなく、地域の他の事業者や施設と協力し合う計画が有利になります。さらに、「必要に応じ、連携事業者に対してもヒアリングを実施する場合があります」とも記載されています。名前だけの提携ではなく、実体を伴った協力体制を地域で事前に築いておくことが、審査を突破する大きな鍵となります。

2.7 審査で考慮される三つの要素

上記の地域連携に加えて、事業計画に以下の要素が含まれていると、審査において考慮されます。該当する地域や事業者は、計画書で必ずアピールしましょう。

  1. 持続可能な観光への取り組み:申請者や連携先が、環境や地域文化を守りながら観光を行う「持続可能な観光」に関する国際的な基準を満たしていること。
  2. コンテンツ地方創生拠点での取り組み:アニメや食などの日本の魅力(クールジャパン)を活かした拠点として、国(クールジャパン戦略会議)から選定されている地域での取り組みであること。
  3. 歴史的まちづくりの展開地域であること:歴史的資源を活用した観光まちづくりの対象地域(取組展開地域や面的展開地域)における取組であること。

第3章:想定される活用イメージ

この新しい補助金を活用することで、地域はどう変わるのでしょうか。観光庁の資料をもとに、「想定される活用イメージ」をご紹介します。

  • イメージ1:空き家となっていた古民家が宿泊・体験施設へと変身

    使われていなかった歴史ある古民家を改修し、昔の暮らしや特別な体験ができる宿泊施設に生まれ変わらせます。これにより、日帰りだった観光客が地域に泊まるようになり、夜の飲食や翌日の観光など、地域全体にお金が落ちるようになるでしょう。
  • イメージ2:老舗の酒蔵を「体験型」の酒蔵へ

    ただお酒を売るだけだった酒蔵の一部を改修し、酒造りの文化を学べる見学コースや、郷土料理と一緒に日本酒を楽しめる飲食スペースを整備します。地域の食の魅力を深く味わえる拠点となり、海外からの旅行者にも大人気のスポットになるでしょう。
  • イメージ3:自然を楽しむビジターセンターの整備

    里山や森林に近い建物を改修して、トレッキング(山歩き)や自然体験ツアーの出発点(ビジターセンター)として整備します。ここを拠点にガイドツアーを行うことで、地域の自然を安全に、より深く楽しんでもらえそうです。

第4章:申請後のフローとスケジュール

手続きで迷わないよう、流れと締切を押さえておきましょう。
公募締切:令和8年4月22日(水)12:00必着
提出は電子メールのみです。容量制限(10MB以内)があります。ギリギリの提出にならないよう余裕を持って準備しましょう。

  1. 申請書の提出:必要な書類を作成し、電子メールで提出します。
  2. 審査・選定:書類審査があり、合格(内定)を通知します。審査の過程で、必要に応じて連携先へのヒアリングが行われます。
  3. 交付申請・交付決定:内定後、正式な手続きを行い、交付決定が出ます。業者への発注や契約は、必ず交付決定の後に行ってください。
  4. 事業実施・経費の支払い完了:実際に工事等を行い、令和9年2月26日までに業者への支払いをすべて終えます。
  5. 実績報告:事業が終わってから1ヶ月以内(または令和9年3月10日まで)に、領収書などを添えて報告します。
  6. 精算・入金:報告書がチェックされ、問題がなければ指定口座に補助金が振り込まれます。このように補助金は後払いですので、立て替え資金の準備が必要です
出典:観光庁のウェブサイトに掲載されている公募要領

第5章:よくある質問

トイレを洋式にしたいのですが、トイレの改修だけでも申請できますか?

いいえ、トイレの設置や改修「のみ」での申請は対象外です。あくまで「地域のストーリーに基づく体験を提供する施設」の整備とあわせて行う必要があります。

賃貸物件(借りている建物)を改修しても補助の対象になりますか?

はい、対象になります。ただし、建物の所有者に、この補助事業についてしっかり説明し、合意を得た上で進める必要があります。

補助金で改修した施設を、将来的に別の目的に使ったり、売ったりしてもいいですか?

補助金を使って整備した財産(建物や設備など)には、決められた期間の処分制限がもうけられています。無断で別の用途に使ったり、売却、譲渡、貸付をしたりすると、補助金の返還やペナルティを求められることがあります。やむを得ない事情がある場合は、必ず事前に国の承認を受けてください。

第6章:試される地域の一体感

「地域資源を活用した観光まちづくり推進事業」は、単なる施設改修のための補助金ではありません。この制度が本当に問うているのは、その拠点を起点に、地域としてどのように観光を育てていくのかという中長期的な視点です。
審査では、施設そのものの新しさや規模以上に、地域の事業者や関係者がどのように連携し、補助事業終了後も自走できる体制を描けているかが重視されます。言い換えれば、補助後の姿まで見据えた計画が求められているのです。
また、本補助金は後払い(精算払い)であり、スケジュール管理、事前の許認可調整や資金繰りの検討も欠かせません。申請を検討する際は、早い段階から自治体や地域の仲間、専門家と相談し、無理のない実行体制を整えておくことが重要です。 地域の魅力をどう磨き、どう連携させ、将来に向けてどう発展させていくのか。ぜひ地域一体で議論を重ね、将来につながる観光のかたちを描いてみてください。

▼ BizRizeでは、無料相談を行っております! ▼

▼ 補助金情報を毎週お届け!無料メルマガ配信中です ▼

BizRize事務局
ヒト・モノ・カネに関する経営資源を、効率よく活用できるプラットフォーム「BizRize」を運営。毎週木曜に経営者向けの勉強会を開催し、補助金や資金調達に役立つ情報を無料メルマガで配信中!

専門家・企業ブログ