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補助金・助成金

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2026.03.23

農業の未来を担う人材育成 最大360万円助成「雇用就農資金」

農業の人手不足に悩んでいる方や、将来の右腕となる人材を育てたい方を国が支援する制度をご存じでしょうか。個人農家や農業法人などが、50歳未満の就農希望者を新しい従業員として雇って技術を教え、育てるための費用を農林水産省がサポートしてくれる「雇用就農資金」の令和8年度(第1回)の募集が始まりました。この助成金は、就農者に関することであれば使い道を細かく制限されるものではありません。給与や社会保険料だけでなく、農業機械の購入などにも柔軟に活用できるのが大きな魅力です。
本記事では、制度の対象者や制度の仕組み、具体的な申請のステップなどを解説します。

第1章:雇用就農資金はどんな制度?

1.1 誰が、どんな人を雇える?

この制度は、農業法人だけでなく、個人農家や、農業者の作業を請け負う農業支援サービス事業者(酪農ヘルパーやコントラクターなど)といった、幅広い農業経営体が利用できます。そして対象となるのは、採用時点の年齢が50歳未満の就農希望者を新たに雇用した場合です。

1.2 研修計画を作成し指導することが条件

国(農林水産省)が支援するこの助成金は、単なる人件費の補填(ほてん)ではなく、人材育成を目的とした支援である点が大きな特徴です。そのため、「どのような栽培技術や飼養技術(独立を目指す場合は経営ノウハウも)を、いつ・どうやって教えるのか」をまとめた研修計画を作成し、実際に指導することが絶対条件となります。

1.3 助成金で農機購入もOK

この助成金は「従業員を雇用し、研修を行う体制を整えるための支援」ですが、受給したお金の使途を細かく指定・制限されることはありません。原則として使い道は自由であり、従業員の給与や社会保険料の支払いに充てることはもちろん、経営全体の資金繰りに余裕を持たせ、トラクターなどの農業機械の購入といった設備投資に回すことも可能です。

1.4 三つのタイプ

目的によって選べるメインの2タイプと、既存の職員向けの1タイプが用意されています。また、障がい者や生活困窮者、刑務所出所者等を雇う場合は、メインの2タイプにおいて年間最大15万円が加算される仕組みもあります。

1.5 従業員の入社時期に注意

この助成金で注意すべきは、従業員の採用タイミングです。これから雇う人や入社したばかりの人がすぐに申し込めるわけではありません。
支援開始日(第1回募集では令和8年6月1日)の時点で、採用されてから4ヶ月以上12ヶ月未満であることが厳密な条件として設定されています。つまり、第1回に応募できるのは「令和7年6月1日〜令和8年2月1日の間に従業員(原則正社員。独立前提の場合は有期雇用も可)として勤務を開始した50歳未満の人」に限られます。なお、第1回の応募締め切りは「令和8年4月7日(火)」です。

令和8年度の年間の募集スケジュール(予定)は以下の通りです。

第1回募集期間:令和8年3月4日~4月7日

第2回募集期間:令和8年6月18日~7月22日

第3回募集期間:令和8年10月22日~11月25日

出典:雇用就農資金の公式ホームページに掲載されているチラシ

第2章:自社でじっくり育成「雇用就農者育成・独立支援タイプ」

2.1 こんな人におすすめ

将来の自社の幹部候補を育てたい、あるいは自分の農園から将来的に独立していく若者を応援したい方向けのコースです。

2.2 もらえる金額

従業員1人あたり年間最大60万円(月額5万円)が最長4年間、トータルで最大240万円が支給されます。1つの農園(会社)につき、同じ年度内に5人まで申請できますが、3人目以降は年間最大20万円となります。

2.3 雇用形態のルール

原則として「期間の定めのない雇用契約(正社員)」を結ぶ必要がありますが、将来の独立を前提とする場合は「期間の定めのある契約(有期雇用)」でも対象になります。

2.4 多くの採択件数

令和7年度の実績を見ると、各回それぞれ数百件が採択されており、非常に多くの経営体が活用している制度であることがわかります。

出典:雇用就農資金の公式ホームページに掲載されているチラシ

第3章:新会社を作り独立させたい!「新法人設立支援タイプ」

3.1 こんな人におすすめ

従業員を自社で育てた後、別会社(新たな農業法人)を立ち上げて完全に独立させたいと考えている方向けのコースです。独立を大前提とするため、栽培や飼育の技術だけでなく経営ノウハウの指導も必須になります。

3.2 もらえる金額と継続審査について

最初の2年間は年間最大120万円(月額10万円)、3〜4年目は年間最大60万円(月額5万円)と、トータルで最大360万円のより手厚いサポートが受けられます。ただし、3年目、4年目も助成を継続して受けるためには、提出した進捗状況報告書に基づく毎年の審査をクリアする必要があり、継続が不適切と判断された場合は支援が中止される可能性もあります

3.3 ハードルが高く利用は少なめ

過去の実績を見ると、要件のハードルが高いこともあり、応募する経営体は毎回数件にとどまっています。実際の採択も毎回1件程度となっており、支援は手厚いものの、かなり限られたケースでの利用となっているようです。

第4章:既存の職員を外で学ばせたい!「次世代経営者育成タイプ」

このタイプは「新しく人を雇う制度」ではなく、すでに働いている職員のスキルアップを支援するものです。自社の職員を次世代の経営者として育てるため、国内外の先進的な農業法人や異業種の会社に派遣して実践的な研修を受けさせる場合、月最大10万円が最短3ヶ月〜最長2年間支給されます。このタイプのみ、令和9年1月29日までの随時募集となっています(申請した日の翌々月から研修をスタートできます)。

第5章:雇う側の条件

助成金を受給するためには、雇う側(農家や農業法人など)にもいくつかの条件があります。

5.1 指導者の要件

新しい従業員を教える指導者として、5年以上の農業経験がある役員や従業員、または認定農業者がつく必要があります。
※法人の認定農業者資格で指導者になれるのは代表者のみです。

5.2 求められる働き方改革

農業界でも働きやすい環境づくりが求められています。前提として所定の社会保険への加入や、法定の休憩・休日は確保したうえで、以下の項目のうち、「二つ以上」にすでに取り組んでいるか、支援開始(第1回の場合は令和8年6月1日予定)後1年以内に新たに取り組む必要があります。

  1. 年間総労働時間を2,445時間以内にする規定を作る
  2. 産休・育休などの働きやすさを向上させる規定を作る
  3. 人材育成や評価の仕組みを整備する
    注意「3」について新たに取り組む場合は、1年以内ではなく「支援開始後の最初の決算期まで」が期限となりますので、ご注意ください。
  1. 休憩所や男女別トイレ、更衣室、シャワーなどの施設を整備する
  2. くるみん(子育てをサポートしている証)」や「えるぼし(女性が活躍しやすい職場の証)」など、国が定める認定を受ける

すべてを一度に完璧に整える必要はありません。「休憩所はある」「年間労働時間はクリアしている」など、すでに取り組んでいる内容が該当するケースも多いので、難しく考えすぎず、できるところから少しずつ整えていくイメージで問題ありません。ただし、要件をクリアできないまま所定の期限(1年以内など)を過ぎてしまうと採択が取り消されてしまうため、計画的に進めるようにしてください。

出典:雇用就農資金の公式ホームページに掲載されているチラシ

第6章:応募から助成金をもらうまでの流れ

6.1 申請方法

雇用就農者育成・独立支援タイプ公式ホームページの応募申請フォームから申請するか、各都道府県に設置されている「農業会議」等へ郵送または電子メールで書類を提出します。

新法人設立支援タイプと次世代経営者育成タイプ:農業会議等へ原則電子メール(難しい場合は郵送)で書類を提出します。

 

農業会議(都道府県農業会議)

「農業委員会等に関する法律」に基づいて設置された、農業者のためのサポート組織です。全国組織である「一般社団法人 全国農業会議所」とネットワークを結び、各都道府県に設置されています(※都道府県の農業会議一覧)。農家や、これから農業を始めたい人を支援しており、雇用就農資金においては、制度全体を運営する全国農業会議所と連携して、地域での事前相談や申請の受付窓口を担っています。
公的な背景を持つ機関ですので、申請について分からないことがあれば、まずはお住まいの県の農業会議(※一部の県は別のサポート機関が窓口になっています)へ相談してみましょう。

6.2 申請後の流れ

第1回公募の場合、書類審査などを経て5月下旬に結果が通知され、6月1日から支援が開始される予定です。なお、助成金は前払いではなく、実際に働きやすい環境が整っているか、計画通りに研修が行われているかの「現地確認」(初回は支援開始から2ヶ月以内、以降は原則1年ごと )を受け、実績を報告した後に原則6ヶ月ごとに区切って支払われる(後払い形式)点に留意しておきましょう。

出典:雇用就農資金の公式ホームページに掲載されているチラシ

第7章:人が育った!制度活用事例を紹介

実際に雇用就農資金を活用して、人材育成や働きやすい職場づくりに成功している事例を二つご紹介します。

■ 事例1:資格取得を会社が全額バックアップ!過去の研修生が幹部に成長(秋田県・末広ファーム)

  • どんな取り組みをしたの? 雇用就農資金を活用した4年間の研修(OJT)プログラムを構築。最初の1年は基礎をしっかり教え、2年目以降は本人の適性に合わせて、大型特殊免許やフォークリフトなどの資格取得費用を会社が全額負担する仕組みにしました。あわせて、他産業に負けないしっかりとした賃金ルール(賃金テーブルや割増賃金)も整えました。
  • どんな結果につながった? 頑張りがいのある環境を整えたことで、従業員のモチベーションと定着率が大きくアップ。過去に前身の助成金を使って入社し、この研修ルートで育った若者が、現在は課長に昇進。今では指導者の立場として、現在の雇用就農資金で入社した新しい後輩たちの育成にあたるまでに成長しています。

■ 事例2:多様な働き方と客観的な評価制度で定着推進(岐阜県・ノウカノミカタ)

  • どんな取り組みをしたの? 同じく4年間の研修を実施しつつ、社内のルールを改革。生活スタイルに合わせて、正社員やフルタイム、パートタイムなど五つの働き方から自由に選べるようにしました。さらに、年2回の面談で個人目標を一緒に立てる人事評価制度を導入しました。
  • どんな結果につながった? 目標の達成度合いをお給料や手当にしっかり反映させるようにしたことで、社員のやる気が向上。どの働き方からでも正社員へステップアップできる道を用意し、「ここで長く働きたい」と思ってもらえる職場づくりに励んでいます。

第8章:よくある質問

過去に別の就農向けの補助金をもらっていた人は対象か?

過去に「就農準備資金(旧:農業次世代人材投資資金)」など、雇用就農資金と似た制度を利用して、同じような研修をすでに受けていた人は原則として対象外です。ただし例外として、道府県の農業大学校などで学んでいた期間にその資金をもらっていた場合は対象になります。

法人化していない個人農家でも申請できる?

申請できます。初めてフルタイムの従業員を雇う個人農家の方も活用しています。

パートやアルバイトでも対象になる?

原則として、週35時間以上のフルタイム雇用であることが条件です。ただし、障がいを持つ方の場合は週20時間以上でOKなど、柔軟な対応もあります。

全くの農業未経験者を雇用する場合でなければダメ?

過去にアルバイトなどで農業に関わったことがある人でも、その経験がトータルで5年以内であれば対象になります。

第9章:まずは「農業会議」へ相談を

農業の未来を支えるのは人です。人材育成には時間もコストもかかりますが、雇用就農資金を活用することで、その負担を減らすことができます。「条件が難しそう」と思っても、一つひとつ確認してみるとクリアできる項目があるはずです。「うちでも使えるかも?」と思ったら、まずは公式ホームページで詳細を確認したり、お住まいの都道府県の「農業会議」へ相談したりしてみてください。

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