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政策解説

bizrize

2026.03.23

【インタビュー2026「飛躍への道標」④】――一般財団法人 省エネルギーセンター  秋山俊一・業務統括役 技監(兼)省エネ技術本部長  運用改善とプロの省エネ診断で実現! 中小企業の圧倒的コスト削減術

終わりの見えないエネルギー価格の高止まりは、今日・明日の経営に向き合う多くの中小企業にとって重くのしかかる課題です。「これ以上のコスト削減となると、こまめに照明を消して空調を我慢するしかない」――そう思い詰める現場も少なくないでしょう。しかし、大企業を中心にサプライチェーン全体での脱炭素化要請が強まる中、カーボンニュートラルはお金がかかる大企業の話という先入観のままでは、将来の取引継続すら危ぶまれる時代が到来しています。 経済・産業界のキーパーソンに、次なる一手を聞く「飛躍への道標」第4回では、日本の省エネ推進を牽引する、一般財団法人 省エネルギーセンターの秋山俊一・業務統括役 技監(兼)省エネ技術本部長をお迎えしました。従業員に負担を強いる我慢の節電から脱却し、事業の無駄を削ぎ落とす最適化へと発想を転換することで、省エネを自社の競争力向上へと結びつける、主に中小企業へ向けた実践的なアプローチについて話をうかがいました。いきなり高価な設備投資や補助金申請を進める前に、企業がまず着手すべき確実なステップとは――。

 

カーボンニュートラル

人間の活動によって排出される二酸化炭素などの温室効果ガスをできるだけ減らしつつ、森林の吸収や回収技術などで埋め合わせることで、全体として実質ゼロにする考え方です。日本を含む多くの国が、2050年までの達成を目標にしています。

一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)( https://www.eccj.or.jp/index.html ):1978年に設立され、半世紀近くにわたり日本の省エネルギー推進の中核を担ってきた一般財団法人です(2012年に一般財団法人へ移行)。輸入化石燃料に大きく依存する日本において、徹底した省エネを中心とするエネルギー利用の最適化とカーボンニュートラル実現に向け、政策への協力から情報発信、人材育成まで多角的な事業を展開しています。 特に中小企業の現場支援に注力しており、工場やビルに専門家を派遣してエネルギーの現状分析と改善策の提案を行う省エネ最適化診断や、自治体や業界団体等が主催するセミナーへの無料講師派遣などを実施しています。また、優れた省エネ事例や製品を表彰する省エネ大賞の主催、国家資格であるエネルギー管理士の試験および講習業務を担うなど、初めて省エネに取り組む企業から高度な専門人材の育成まで、企業の成長段階に応じた包括的かつ実践的なサポートを提供しています。

現状、エネルギー価格がこれから先、下がるという見通しはなかなか想像できません。中東情勢などもあり、さらに価格が上がる可能性すらあります。ですから、高止まりを前提として、省エネによるコスト削減に取り組んでいただくことが一番です。省エネは自社のコスト削減に直結し、毎年継続すれば確実に収益が上がります。売上を1,000万円、2,000万円増やすのは非常に大変ですが、省エネでコストを下げればそれと同じ効果が得られるということを、経営者の方には常日頃お伝えしています。

今はもう、我慢の省エネのフェーズではありません。快適性との両立を前提とした最適化、つまりエネルギーの無駄を省くことが重要です。必要なところはしっかり使い、無駄な部分だけを減らす。これは本業において、経営者の方が真剣に取り組んでいる生産性向上や効率化と全く同じことなのです。そうした視点をお伝えすると、企業の皆様にも、「自社にも何か無駄があるだろうか」と気づいていただくことが多いです。

資源エネルギー庁の補助事業として私どもが実施している省エネ最適化診断などの公的診断を受けていただくことで、エネルギーの使い方が「見える化」されます。私どもでは、使用量やコスト、昼夜の使い方の違いなどをデータで把握し、どこに無駄があるのかをご提案します。民間のコンサルタントに診断を依頼すると数十万円かかることもあるかと思いますが、公的な診断であれば中小企業は1万円から2万円程度の費用で受けられます。社長さんが飲み会を1回我慢すれば受けられる金額ではないでしょうか(笑)。それで年間数十万円から数百万円のコスト削減項目が見えてくるのです。診断を受けていただくと、報告書をお渡しするだけでなく、専門家が経営者の方に直接、取り組み方も含めて丁寧にご説明する報告会も行っています。

出典:省エネ・節電ポータルサイト「診断ネット

尚、記載内容は令和7年度メニュー・料金 令和8年度については4月以降公開予定です

国から補助金が出ている診断として、当センターが実施する省エネ最適化診断のほかに、SII(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)が執行団体となっている「地域エネルギー利用最適化・省エネルギー診断拡充事業」があります。これらを合わせると年間で約1万件の診断予算が組まれているのですが、半分程度しか使い切れていないのが実態です。
そこで2024年に、経済産業省(資源エネルギー庁)が立ち上げたのが省エネ・地域パートナーシップです。全国の地方銀行や信用金庫などと、当センターをはじめとした省エネ支援機関などがパートナーシップを結び、日頃から経営者と接している金融機関の担当者から企業の皆様に診断をご紹介いただく仕組みとなっています。また、金融機関側にも省エネ設備導入に係る融資に繋がる可能性もあり、メリットがあります。

工場で一番ご提案が多いのはコンプレッサーです。高効率な設備に入れ替えるのも良いですが、まずは「使い方の見直し(運用改善)」が重要です。メーカーは最も高い圧力設定で出荷するため、そのまま使っていると無駄が生じます。設定圧力を自社に適正化して下げるだけで、大きな工場では数百万円のメリットが出ることもあります。
また、配管のつなぎ目などからの空気漏れも多く、大体10〜20%は漏れていると言われます。空気を圧縮するのには電気代がかかりますから、漏れを放置するのはお金を無駄にしてしまっているようなものです。 他には、ボイラーの蒸気配管バルブの保温対策です。修理のたびに保温材を剥がすのが大変なため裸になっていることが多いのですが、今は着脱式の断熱材があります。1箇所数万円程度の通常の経費で買えるもので、これを取り付けるだけでも大きな効果があります。

ビルの場合は、やはり空調と照明です。蛍光灯は2027年末までに製造・輸出入が終了となりますし、工場などの水銀灯はすでに生産が中止されていますので、LEDへの更新をおすすめしています。特に倉庫などでは、水銀灯はスイッチを入れてもすぐ明るくならないため点けっぱなしにしがちですが、LEDなら人が入る時だけ点灯させることができ、かなりの省エネになります。 空調も、古いものをお使いの場合は最新式に変えるだけで非常に効率が良くなります。診断では、こうした具体的なアドバイスを、それぞれの企業に合った形でご提案しています。

補助金を使って高価な設備を入れる前に、まずは診断で実態を把握し、新しい設備を入れたらどれくらいのメリットがあるかを見極めることが重要です。先ほどのコンプレッサーの例のように、運用改善だけでかなりの省エネになるケースは多々あります。まずは運用改善でコストメリットを得て、それを投資資金として次のステップへ進むのが理想的です。
また、国の省エネ補助金を申請する際、診断を受けていると審査で加点され有利になる場合があります。さらに最近では、自治体が設けている設備補助金において、診断の受診が必須要件になっているケースも非常に増えています。「どれくらい省エネになるか」という客観的なバウチャー(証明)を持って申請していただきたいですね。

はい、診断ネット」という省エネ・節電ポータルサイトで、「省エネセルフ診断ツール」を無料で公開しています。事業所の業種や、年間の電気・ガスの使用量などを入力するだけで、自社のCO2排出量が計算できます。他のツールと違うのは、過去5年分ほどの診断実績データとAIを活用している点です。入力された業種やエネルギー使用量に近い同業他社のデータから、どれくらいの省エネメリット(金額)がありそうか、どういった設備の省エネ提案が多いかといったポテンシャルをお示しします。これを見て、「それなら詳細な診断を受けてみよう」という入り口として活用いただいています。

省エネセルフ診断ツール:一般財団法人 省エネルギーセンター(ECCJ)が、省エネ・節電ポータルサイト「診断ネット」にて無料公開しているWebツールです。

調べたい事業所(一般事務所、店舗、病院などの「ビル」と、製造業などの「工場」を選択可能)の業種や所在地(都道府県)、エネルギー使用量などを入力すると、自社のCO2排出量が計算できます。
さらに、エネルギー管理状況などの簡単な質問項目にお答えいただくと、ツールに蓄積された過去の診断結果データとAI解析を活用し、同業他社とのエネルギー使用量の比較や、省エネポテンシャル(削減余地)、具体的な省エネ対策項目が可視化されます。
なお、入力した情報が診断用データベース等に二次利用されたり、外部に提供されたりすることは一切ないため、企業の方も安心してご利用いただけます。2026年2月にはツールがリニューアルされ、さらに使いやすくなりました。

おっしゃる通りで、銀行や信用金庫の担当者の方が、お客様からエネルギーの状況を聞いてその場で入力し、「お宅ならこれくらい省エネできそうですよ」と具体的な数字を見せて診断をご案内するケースもあるかと思います。A4の裏表1ページで結果が印刷できる機能も追加し、営業現場で使いやすいよう工夫しています。ぜひ多くの方に使っていただき、実際の診断へ繋げてほしいですね。

出典:省エネ・節電ポータルサイト「診断ネット

中小企業にとって、カーボンニュートラルやGX(グリーントランスフォーメーション)は大企業の話で、お金がかかることと思われがちです。しかし、まずは省エネに取り組めば良いのです。省エネを行えば化石燃料の使用量が減り、結果としてCO2排出削減とコスト削減が両立できます。
現在、大企業からサプライチェーン全体に対してカーボンニュートラルへの対応を求められるケースが増えています。納入先からCO2を減らしてほしいと言われた際、すでに取り組んでいれば競合他社に対する優位性になりますし、逆に対応していなければ部品を買ってもらえなくなる時代が来ます。省エネに取り組むことはコスト削減に繋がると同時に、自分たちの企業の発展、つまり攻めの戦略になるということをご理解いただければと思います。

 

GX(グリーントランスフォーメーション)

温室効果ガスの削減と経済成長を両立させるために、エネルギー、産業構造、社会の仕組みそのものを転換していく取り組みのことです。再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の普及に加え、企業活動や投資のあり方、制度設計まで含めて変革することを指します。日本では、カーボンニュートラル実現に向けた成長戦略として位置づけられています。

はい。例えば、省エネでコストが削減できれば収益が上がりますから、それを新たな事業への投資や、従業員の賃上げの原資に充てることができます。また、環境に良い取り組みをしているとPRすることで、採用活動(リクルート)に好影響を与えるといったメリットもあります。 他にも、離島にある宿泊施設の例があります。その施設では、お湯を沸かすのに本土よりも高い油を使っていたのですが、地元の木くずなどを燃料とするバイオマスボイラーを導入しました。燃料代が安くなる地産地消を実現しつつ、非常にグリーンな形でお湯を作っているとネットでPRしたところ、環境意識の高い海外からのインバウンド客の増加に繋がり、収益が拡大したそうです。このように、再生可能エネルギーを使った取り組みをうまくPRすることで、事業の発展に結びつけることも可能だと思います。

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