専門家・企業ブログ

政策解説

bizrize

2026.02.19

【インタビュー2026「飛躍への道標」②】 ―― 一般社団法人 新経済連盟 脱・失われた35年 JX宣言が描く未来像

2026年、日本経済は人口減少や国内市場の縮小という構造的課題に直面する一方で、変革次第では再び成長軌道に乗る可能性も秘めています。経済・産業界のキーパーソンに、次なる一手を聞く「飛躍への道標」第2回では、一般社団法人 新経済連盟(新経連)事務局に、日本経済再生の鍵を握る「JX(Japan Transformation)」の全体像と、地方企業やスタートアップが生き残り、成長するための具体的な戦略について、話をうかがいました。あわせて、2026年2月8日に投開票が行われた総選挙結果に対する受け止めについても聞きました。

一般社団法人 新経済連盟( https://jane.or.jp/)

楽天グループの三木谷浩史氏が代表理事を務める経済団体です。2012年の活動開始以来、「民でできることは民に」を基本原則に掲げ、アントレプレナー(実業家)たちを主役とした経済・社会改革「JX(Japan Transformation)」を提唱しています。

スタートアップから大企業まで、業種の垣根を超えた525法人(2025年8月時点)が加盟しています。規制改革や市場創造を目指す政策提言を積極的に行うほか、経営・政治のリーダー達が日本の未来ビジョンを語る「JX Live!」の開催や、最新のビジネストピックや実務を学ぶ会員向けセミナーを随時実施するなど、イノベーションと起業家精神の推進に向けた活動を展開しています。 また、活動拠点の全国展開を進める中で、地方企業を含む新たな仲間の参画も歓迎しています。入会案内は >>こちら

私たちはこれまで、国の規制改革についての提言などに力を入れてきましたが、課題の一つは、会員企業や活動の認知度が、どうしても東京に集中してしまうことでした。日本経済全体の底上げや、「JX(Japan Transformation)」を実現するには、東京だけでなく全国各地の企業が元気になることで、イノベーションを興していく必要があります。 そこで現在、「新経連 and 全国」というプロジェクトを立ち上げ、活動拠点を全国の主要都市に広げています。具体的には、札幌、仙台、新潟、名古屋、京阪神、福岡・北九州などを拠点地域と位置づけ、セミナーや交流会を通じてリアルな連携を深めています。地域の企業や、その地域でスタートアップを支援するエコシステムの方々と直接つながることで、地方から新しい経済のうねりを作りたい。そうした思いから、今回は地方の皆様にも私たちのメッセージをお届けできればと考えています。

JX宣言は、日本経済が長年抱える「失われた35年」という停滞を逆転させ、再び成長軌道に乗せるための提言です。具体的には三つの柱を掲げています。

一つ目は「異次元のスタートアップ戦略」です。日本発・世界で勝てる企業を生み出すため、海外市場を最初から狙えるような支援や、M&Aによる新陳代謝の促進を提案しています。

二つ目は「産業と働き方のアップデート」です。デジタルやAIが進化する中、年功序列ではなくスキルベースへの移行が必要です。この仕事にはどんなスキルが必要で、いくら報酬が出るのかといったことを可視化し、働く人のモチベーションを高める改革を訴えています。 三つ目は「人・知・財の呼び込み」です。日本は変わるという強い意志を世界に示し、海外から人材や資金を呼び込むことです。例えば、民間投資を現在の100兆円規模から300兆円へ引き上げる高い目標を掲げています。これを実現する具体策として、ソフトウェアなどへの民間投資を促進するため、投資額以上の損金算入を認める「ハイパー償却税制(例えば1億円の投資に対し、税務上は2億円の経費計上を認めることで税負担を大幅に軽減し、投資を促す仕組み)」の導入などを打ち出しています。また、国際競争力を高めるため、日本語と英語の「バイリンガル国家」を目指すべきだとも提言しています。

出典:新経連「JX (Japan Transformation)宣言2025 ~失われた35年逆転への政策~

今回の結果によって、選挙前の政権枠組みが維持されるだけでなく、かつてないほど強力なリーダーシップを発揮できる土台が整ったと見ています。私たち新経連としては、この結果を、日本経済の停滞を打破する出発点にしなければならないと考えています。政権が安定した今だからこそ、一時的な人気取りではなく、スピード感を持って本質的な成果を国民にもたらしてほしい。それが私たちの強い期待です。

>> 代表理事コメントでも述べていますが、無原則なバラマキは抑制すべきです。選挙前には各党から消費税減税や給付金の話が出ましたが、戦略性のないバラマキは、急激な円安や金利上昇、そして悪性インフレ(国内の需要が増加することによるインフレではなく、円の購買力低下によるインフレ)を招くリスクがあります。世界のマーケットは日本を冷徹に見ています。日本が成長に向けた適切な経済政策を取れない国だと判断されれば、結局苦しむのは国民や企業です。新経連は、目先の分配ではなく、持続可能な成長のための戦略的なリソース投下を求めています。

小さな政府を目指し、民間の活力を最大限に引き出すことです。例えば税制一つとっても、消費税をいじるのではなく、国際的に見て高すぎる法人税や所得税の減税を優先すべきです。そうすることで、海外から優秀な人材や資金、知的財産(人・知・財)を日本に呼び込む。この戦略こそが、JX宣言の実現には不可欠です。

正直なところ、目標には遠く届いていません。2024年の投資額実績は約8,748億円にとどまっており、目標の10兆円とはかなりかけ離れています。 また、ユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ)の数も、米国が600社を超える中、日本はまだ8社程度です。もちろん、スタートアップの母数は増えていますし、大学発のディープテック(高度な技術開発を要する分野)なども育ってきています。しかし、山で例えるなら、裾野は広がっているけれど、頂上の高さが足りない。山のピークとなるような大型の成長が実現できていないのが現状です。

出典:新経連「スタートアップ政策提言

最大の課題は、海外からの資金を呼び込めていないことです。10兆円という規模を実現するには、国内の資金だけでは限界があります。海外のベンチャーキャピタル(VC)やファンドからお金を引っ張ってくる環境が必要です。しかし、日本の規制が壁になっているのです。

一つは税制です。海外の投資家が日本のファンドに出資する際、PE(パーマネント・エスタブリッシュメント)課税の特例があるものの、条件が厳しく適用の可否が事前に読みづらいため、結果として日本で課税されるリスクが残ることが、海外マネーを遠ざけています。
もう一つは手続の煩雑さです。例えば、海外投資家が日本のIT企業等に投資する場合、外為法上の事前届出が必要になることがありますが、届出様式は「日本語のみ」となっています。これでは海外投資家にとってハードルが高すぎます。私たちは、こうした届出の英語化や、事前届出が必要な基準の緩和を求めています。

PE(パーマネント・エスタブリッシュメント)

事務所や支店などの恒久的な事業拠点。原則として、日本国内にPEがある場合、日本で事業を行っているとみなされ、日本で課税されます。

PE課税の特例

一定の条件を満たせば、海外投資家が日本のファンドに出資した場合でもPEがあるとはみなさず、日本での課税を免除する国際税務上の特例。なお、本特例については2026年度税制改正大綱で見直しが盛り込まれており、次の国会で法改正が行われれば要件緩和が実現することになります。

また、国内の資金についても、約250兆円もの資産を持つGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などが、もっとスタートアップへの投資(自ら投資先を選ぶのではなく、目利き力のあるベンチャーキャピタルに資金を預けて運用を任せること)を拡大すべきだと考えています。

最初からグローバル市場を狙うという意識変革です。日本国内の市場はそれなりに大きいですが、やはり限りがあります。大きく成長した海外のスタートアップは、最初から世界市場を前提にしています。政府の支援策としても、起業時点から海外を目指すBorn Global型の企業支援が強化されています。ここを目指す企業が増えてほしいですね。 また、情報開示も重要です。上場していない企業であっても、投資家に対して継続的に数値を公開し、成長のストーリーを伝えること。これができないと、特に海外の機関投資家からは見向きもされません。「私たちはこれだけ成長している」というアピールを、数値に基づいてしっかり行う姿勢が求められます。

大企業との協業は成長のチャンスですが、交渉力の差から、スタートアップ側が技術や情報を一方的に吸い上げられて終わってしまうケースも散見されます。これは下請けいじめに近い構造になりかねないとして、公正取引委員会も指針を出して注意喚起しています。スタートアップ側も、ただ協業を喜ぶだけでなく、自社の知財やノウハウを守るためのリテラシーを持つ必要があります。
また、大企業側もメリットを得られるよう、新経連はオープンイノベーション促進税制の拡充を提言しています。こうした制度をうまく活用して、対等なパートナーシップを築いていただきたいですね。

オープンイノベーション促進税制

2026年度税制改正大綱において、新経連が求めていた適用対象の拡充(吸収合併への適用等)は盛り込まれましたが、所得控除上限の引き上げ(所得控除上限を25%から50%へ引き上げる等)は見送られました。

人口減少が進む日本において、市場も労働力も縮小していくのは避けられない事実です。AI人材だけを見ても、2030年には約12万人が不足すると試算されています。だからこそ、海外の優秀なタレント(才能)を呼び込むことが不可欠です。

出典:新経連「2026年度税制改正提言

同時に、国内の人材流動性(労働者が企業や職務間を活発に移動する状態)を高めることも急務です。終身雇用を前提とした制度を見直し、成長産業へ人が移動しやすくする。これには解雇規制の緩和(金銭解決ルールの導入)といった議論も避けては通れません。私たちは、海外の人材が日本で活躍しやすい環境を整えること、そして日本人の働き方も、働きがい重視へと変えていくことでイノベーションを起こし続ける国になるべきだと考えています。

今こそ、こうした様々な抜本的な改革を断行する絶好の機会です。「民でできることは民に」の原則で、私たち新経連も、日本経済の再生に全力を尽くします。

【入会ご案内】新経済連盟でビジネスの可能性を広げませんか?

新経済連盟では政策提言のほか、会員企業に活用いただける機会として、イベントやセミナーをはじめとする様々な活動を行っています。活動にご関心のある経営者の方は、>> こちら のページをご覧ください。

▼ BizRizeでは、無料相談を行っております! ▼

▼ 補助金情報を毎週お届け!無料メルマガ配信中です ▼

BizRize事務局
ヒト・モノ・カネに関する経営資源を、効率よく活用できるプラットフォーム「BizRize」を運営。毎週木曜に経営者向けの勉強会を開催し、補助金や資金調達に役立つ情報を無料メルマガで配信中!

専門家・企業ブログ