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主な省庁の令和8年度予算案を紹介してきた本シリーズの最終回は内閣官房と内閣府です。国の予算と言えば、補助金や身近な制度変更が注目されがちですが、国の司令塔として新しい社会インフラやルールなどの原型をつくる内閣官房と内閣府の予算も見逃せません。 内閣官房・内閣府の予算から、日本の守り(防災・サイバー)と攻め(イノベーション・地方)の未来図を読み解き、そこにあるビジネスの萌芽を探ってみましょう。
第1章
社会と経済を止めないための防衛線
国が最も危機感を持ち、組織と予算を急拡大させている分野です。ここには、新しい官公需(官公庁ビジネス)とコンプライアンス需要が生まれるでしょう。
1. 防災庁(仮称)創設と防災DX
【予算】
令和8年中の防災庁(仮称)設置に向けた体制整備(約24億円)を含む防災担当予算総額は、約202億円が計上されています。
【ポイント】
これまで各省庁にまたがっていた防災対応の司令塔が創設されます。注目は防災DXです。発災直後に衛星やドローン等の画像を統合して被害を把握するシステムの構築などが進められます。
【ビジネスへの示唆】
今後、自治体が構築したり取り入れたりする防災システムや資機材は、国・防災庁の標準仕様への準拠が求められる可能性があります。また、ドローンによる状況把握や物資輸送など、テクノロジーを活用した防災ソリューションへの需要が高まりそうです。
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2. 能動的サイバー防御
【予算】
新たな監督機関となる「サイバー通信情報監理委員会」の設置(約14億円)や、実働の司令塔となる内閣官房「国家サイバー統括室」の増員・機能強化(約128億円)など、サイバー安全保障体制が抜本的に強化されます。
【ポイント】
国がサイバー攻撃を常時監視し、未然に防ぐ能動的サイバー防御が始動します。プライバシー保護等の観点から適正性をチェックする第三者委員会(監理委員会)もセットで設置され、国が強力な権限を行使できる体制が整うでしょう。これに伴い、重要インフラ事業者や政府調達企業が守るべきセキュリティ基準は、厳格化されることが予想されます。
【ビジネスへの示唆】
中小企業であっても、サプライチェーンの一角を担う以上、セキュア・バイ・デザイン(設計段階からの安全確保)への対応が取引継続の鍵になりそうです。
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3. 政府広報のオウンドメディア化と外交の情報戦対応
【予算】
内閣広報室の予算が約7億円(対前年度+3億円)と大幅に増額されました。国内外の重要政策に関わる情報の収集や分析、報告を行う内閣情報調査室には約38.4億円が計上されています。
【ポイント】
内閣広報室は首相官邸ホームページやSNSなどの官邸オウンドメディアを活用し、動画やインフォグラフィックス、テキスト記事等の伝わりやすい広報コンテンツを作成します。あわせて、それらのコンテンツを届きやすくするための取組を行うことにより、質の向上と量の拡充の両面で広報の強化を図ります。災害発生時における情報発信体制の安定化にも注力します。
他方、日本を取り巻く安全保障の状況は厳しくなっています。中国や北朝鮮の軍事的な動きに加え、国際テロ、サイバー攻撃、SNSを使った情報操作など、脅威は多様化しています。
こうした中、内閣情報調査室では、必要な情報を集め、整理し、分析して、政策を決める体制を強化するための予算を計上しました。
第2章
AI・宇宙・海洋…次の成長分野へ先行投資
民間だけではなかなか手が出せない領域に、国が市場を作ろうとしています。
1. 科学技術の司令塔(SIP/ムーンショット)
【予算】
内閣府が司令塔となり、各省庁の縦割りを打破して推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」や「研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)」といった科学技術・イノベーションへの投資に、総額約644億円が計上されています。また、破壊的イノベーションを目指す「ムーンショット型研究開発制度」については、内閣府が掲げた目標に基づき、関係省庁が別途予算を計上して推進します。
【ポイント】
ムーンショット型研究開発制度で採択されているテーマ(例:負荷を感じずにQOL(生活の質)の劇的な改善を実現するロボット、循環型食料生産、AIとロボットの共進化)は、国が2050年までに実現したい未来です。
【ビジネスへの示唆】
この分野に着目しておくことは、数年後のR&D(研究開発)トレンドの把握や、新規事業のきっかけ作りとして活用できるでしょう。特にAI、バイオ、量子技術などの分野で、国がどの技術に注力しているのかを知ることは、投資判断の重要な材料になり得ます。
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2. 準天頂衛星「みちびき」と海洋・国境離島の安全確保
【予算】
宇宙分野では、日本版GPSとも呼ばれる準天頂衛星「みちびき」の開発・運用に約205億円を計上しています。海洋分野では、総合海洋政策の司令塔として、領海管理や特定有人国境離島の保全・振興(約55億円)など、国益を守るための基盤整備を推進します。
【ポイント】
「みちびき」は11機体制へ向けた開発が進み、ドローン配送や自動運転にとって不可欠なインフラとなるでしょう。また、海洋分野では内閣府の司令塔機能のもと、文部科学省予算で建造が進む北極域研究船「みらいII」の活用や、排他的経済水域(EEZ)の管理強化が進められます。「みらいII」による北極海航路の調査は、将来の物流ルートを大きく変える可能性があります。
第3章
将来を見据えた戦略的な投資
地方創生や経済安保は、単発的な支援にとどまらず、将来を見据えた戦略的な投資として位置づけられています。
1. 重要物資のサプライチェーン強靱化
【予算】
経済安全保障と国家安全保障については、重要物資(半導体、蓄電池、重要鉱物など)の安定供給確保のための調査や推進に予算が計上されています。たとえば、以下のような項目です。
内閣府
経済安全保障推進法等の施策推進9.5億円:重要物資の安定供給確保(サプライチェーン強靱化)や基幹インフラの安全性確保など、法律に基づく制度運用に関する費用です。
シンクタンク機能・技術流出防止3.7億円:重要技術に関する調査・分析を行うシンクタンク機能の構築や、技術流出防止策を強化します。
重要土地等調査6.8億円:安全保障上重要な施設周辺の土地利用状況に関する調査費です。
内閣官房
国家安全保障局9.7億円:国家安全保障会議を恒常的にサポートする組織として、経済安全保障に関する総合調整、企画立案、諸外国との連携強化などに取り組みます。
なお、重要物資のサプライチェーン強靱化に関する大規模な設備投資支援(補助金等)は、主に経済産業省の予算(GX・半導体関連で1兆円以上)から拠出されます。廃棄された製品(家電、車、太陽光パネルなど)から重要物資(レアメタルなど)を取り出して、再び産業界に供給する仕組みに関しては、環境省が連携して設備導入支援(約379億円)を担う構造となっています。
【ポイント】
特定国への依存度を下げるための国産化やルート多角化に対し、国が手厚い支援を行います。
2. 新設される地域未来交付金
【予算】
従来の地方創生関連交付金を見直し、新たに地域未来交付金(約1,600億円)が創設され、地方公共団体に交付されます。
【ポイント】
地域未来戦略に基づき、半導体や蓄電池などの戦略産業の誘致や、地域独自の中核産業を育てる取り組みなどが、支援の対象となります。
第4章
国の令和8年度予算案に見る三つの潮流
最後に、本シリーズで紹介した省庁(厚労省、経産省、内閣府など)の予算案を俯瞰し、令和8年度の国内ビジネスを取り巻く三つの潮流を整理します。
1. 危機への備えが最大の投資テーマ
防災庁、能動的サイバー防御、経済安全保障、食料安全保障など、予算の増額が目立つ分野には有事(災害、紛争、供給途絶)への備えという共通点があります。ビジネスにおいて、BCP(事業継続計画)やセキュリティ、サプライチェーンの再構築は、もはや単なるコストではなく、事業を継続するための前提条件であり、取引先から選ばれるための競争力の一部になりつつあります。
2. 人への投資と賃上げの定着
文科省の高校授業料の実質無償化、35人学級、厚労省や経産省の省力化投資による賃上げ支援、リスキリングなど、人に対する投資が色濃く反映されています。人手不足が深刻化する中、国は人の質を高めて確保することに全力を挙げています。企業にとっても、人材戦略は経営の最重要課題の一つとなっています。
3. ビジネスチャンスは社会課題の中に
国の令和8年度予算案では、単に新しい技術を開発するだけでなく、防災、地方の過疎化、物流2024年問題、脱炭素(GX)といった社会課題を解決するための技術やサービスに、重点的に予算が配分されています。自社のビジネスが、国の抱える課題をどう解決できるか?という視点を持つことは、補助金活用につながるのみならず、次の成長市場を見つけるための大きなヒントにもなるでしょう。
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