専門家・企業ブログ

政策解説

bizrize

2026.02.19

【令和8年度予算案:文部科学省編】 給食費と高校授業料負担、より軽く AI研究は一気に加速

文部科学省の令和8年度予算案は、一般会計総額が前年度から3,700億円以上を積み増し、5兆8,809億円(前年度比+6.7%)を計上しました。
最大の焦点は、子育て世帯の家計を直撃する教育費の負担軽減です。長年の課題であった学校給食費や高校授業料に対し、国が新たな財源を投じて支援を大幅に拡充します。一方で、日本の稼ぐ力を取り戻すため、国家戦略として「AI×科学研究(AI for Science)」には令和8年度当初予算案で約193億円(主要事業計)、令和7年度補正予算で約1,527億円(関連経費含む)が計上されています。企業と連携したリスキリング教育も強化されます。

第1章
令和8年度予算案の全体像

一般会計総額:5兆8,809億円(前年度比+3,715億円)

(※令和7年度補正予算:1兆6,091億円)

ポイント:給食費・高校授業料を中心とした負担軽減と、科学技術・人への投資が二本柱

今回の予算案では、義務教育費国庫負担金(教職員の給与等)が約1.7兆円と大きな割合を占める中で、家計負担の軽減に向けた予算が数千億円規模で上乗せされているのが特徴です。また、1.6兆円規模の令和7年度補正予算と組み合わせた15か月予算として、切れ目のない投資が行われます。
具体的には、新規施策である「学校給食費の抜本的な負担軽減(公立小学校対象。いわゆる給食無償化)」に1,649億円、制度拡充が行われる「高校生等への修学支援」には前年度から約890億円増の6,174億円が計上されており、子育て世帯の家計負担を直接的に軽減する支援が大幅に強化されています。また、科学技術分野では、AIと研究開発を融合させる「AI for Science」が最重要政策として位置づけられています。これは単に計算にAIを使うということではありません。仮説立案から実験、データ解析までを、AIとロボットが自律的に超高速で回すという、研究スタイルの根本的な変革です。例えば、これまで専門家が何年もかけて行っていた新素材や新薬の探索を、科学データを学習したAIが24時間体制で行うことで、開発期間を劇的に短縮(数年を数ヶ月へ)し、国際競争力を一気に高める狙いがあります。

第2章
給食から大学まで学びのセーフティネット

子育て世代を支援する施策が盛り込まれています。

1. 公立小学校における学校給食費の保護者負担軽減

【施策名】

学校給食費の抜本的な負担軽減(給食費負担軽減交付金)

【予算額】

1,649億円(新規)

【制度内容】

給食を実施する公立小学校を対象に、保護者の負担軽減に取り組む自治体へ国が支援を行う新たな交付金制度です。食材費等の高騰が続く中、保護者の負担を限りなくゼロに近づけることを目指します。

【ポイント】

保護者の口座に現金を振り込む(現金給付)のではなく、国が都道府県に交付金を交付し、都道府県から市町村に配分することで、保護者への請求額をなくす(または減らす) 制度です。

• 支援額:児童1人当たり月額 5,200円 を基準額として算定されます。

• 負担割合:国が2分の1、都道府県が2分の1を負担するスキームです。

• 対象:授業料や教科書に加え、保護者負担となっていた給食費をゼロにすることを目指す施策です。令和8年度はまず公立小学校からスタートします。 ※注意点:お住まいの地域の給食費が基準額(5,200円)より高い場合、差額分は自己負担となる可能性があります(自治体が独自に補填する場合を除く)。

本記事の図表の出典は、いずれも文部科学省のウェブサイト「令和8年度予算」掲載の資料

2. 高校授業料の実質無償化(所得制限撤廃へ)

【施策名】

高等学校等就学支援金等

【予算額】

5,824億円

【制度内容】

高校授業料の実質無償化制度(就学支援金)について、これまで設けられていた所得制限(年収要件)を撤廃します。これにより、家庭の年収にかかわらず、全ての高校生(※)が授業料支援の対象となります。また、私立全日制高校に通う生徒への支給上限額を、授業料の実態に合わせて引き上げます。
※要件を満たす国内の高校等に通う生徒

【ポイント】

所得制限撤廃:これまで年収要件(目安910万円以上など)で対象外だった世帯も、一律に支援(年間11万8,800円以上)を受けられるようになります。

私立の上限引上げ:私立高校(全日制)の支給上限額が、現行の年間39万6,000円から45万7,200円へ引き上げられます。ただし、授業料がこの金額(45万7,200円)を超える学校の場合、差額は自己負担となります。

3. 大学・専門学校等の負担軽減

①⾼等教育の修学⽀援新制度(給付型奨学⾦・授業料等減免)

【予算額】

6,567億円

【制度内容】

⼦どもを3⼈以上扶養する世帯の学⽣(⼤学、短⼤、⾼専の4年・5年、専⾨学校の学⽣)について、授業料等を上限額(国公立大学の授業料相当額。私立は一定額を上乗せ)まで所得制限なく無償化します。住⺠税⾮課税世帯と、それに準ずる世帯(世帯年収⽬安600万円程度まで)の学⽣については、給付型奨学⾦と授業料等減免をセットで⽀援(支援額は所得に応じて異なる)します。

②貸与型奨学⾦・授業料後払い制度

【予算額】

無利⼦奨学⾦919億円

【制度内容】

無利⼦奨学⾦事業については、意欲のある学生が経済的理由で進学を断念することがないよう、貸与基準を満たす希望者全員への貸与を実施します。授業料後払い制度は、いわゆる出世払いのことで、卒業後の所得に応じた金額を返還していきます。

第3章
AI for Scienceと人材育成

人手不足対策に加え、国の科学技術投資と人材育成施策をビジネス視点で捉えます。研究開発型の企業や、社員教育を強化したい中小企業に関連する予算です。

1. 科学研究×AIに約1,700億円を集中投資

【施策名】

「AI for Science」による科学研究の⾰新

【予算額】

令和8年度当初193億円+令和7年度補正1,527億円(関連経費込)=1,720億円

【概要】

事業内容として、
①AI基盤モデルの研究開発やデータの充実とAI研究開発⼒の強化
②⾃動・⾃律・遠隔化による研究データ創出・活⽤の⾼効率化
③次世代情報基盤の構築
④世界を先導する戦略的な産学・国際連携
という四つの柱があります。

【ビジネス視点で想定されること】

今後はAI活用前提の研究開発プロセスが標準化されていくでしょう。

• AI解析サービスやラボオートメーション(実験自動化)機器の需要拡大。

• AI創薬やマテリアルズ・インフォマティクス(材料探索)分野のスタートアップとの連携機会の増加。

2. 産学連携で社員をリスキリング

①【施策名】産学連携リ・スキリング・エコシステム構築事業

【予算額】

令和7年度補正予算:約22億円

【制度内容】

大学等が、地域企業や産業界のニーズを聞き取り、社会人向けの学び直しプログラムを開発・実施する費用を支援します。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、経営・マーケティングなどが重点分野です。

②【施策名】専修学校による地域産業中核的⼈材養成事業

【予算額】

令和8年度当初予算案:約13億円

【制度内容】

専修学校(専門学校)が企業と連携し、デジタル技術等を活用して現場の生産性を高めるアドバンスト・エッセンシャルワーカー(AIやICTといったデジタル技術を駆使し、高い専門性と高待遇を実現する次世代の現場の担い手)を育成するプログラム開発を支援します。

【ビジネス視点で想定されること】

• 中小企業が地元の大学と連携し、自社社員向けの実務直結型デジタル研修を作ってもらう。

• 地域の専門学校から、最新技術を身につけた即戦力の若手人材を採用するルートを開拓する。

コラム:AI for Scienceのすごさとは?

AIが科学を変えると言われても、計算が速くなるだけでは? と思う方がいるかもしれません。しかし、文部科学省が目指しているのは、人間が寝ている間も科学が止まらない未来なのです。

従来の研究活動とは、研究者が論文を読み、仮説を立て、実験室でピペット(スポイト)を握り、結果をまとめて……という、人間による手作業の積み重ねでした。当然、夜は眠りますし、読める論文の数にも限界があります。

しかし、AI for Scienceの世界では、こう変わります。

1. AIが「徹夜」で論文を読む:世界中の膨大な論文や実験データをAIが読み込み、「この素材とあの素材を混ぜれば、すごい電池ができるかも?」という仮説を勝手に提案してくれます。

2. ロボットが「休日なし」で実験する:AIからの指示を受けた自動実験ロボットが、人間が帰宅した後も24時間体制で試薬を調合し、実験を続けます。

3. 失敗すらも「糧」にする:失敗した!という結果が出ても、AIは瞬時に「じゃあ、次はこの配合で」と計画を修正し、ロボットに次の指示を出します。 つまり、人間が数年かけて行っていた試行錯誤(トライ&エラー)を、科学専門のAI頭脳と、疲れを知らないロボットが、超高速回転で終わらせてしまうのです。研究者は、AIが出した結果を受け取り、そこからノーベル賞級の発見へとつなげる――。そんなAIという働いて働いて働いて働いて働き続ける最強の相棒を持つことが、先行する欧米を追い上げ、これからの日本の勝ち筋になる可能性を秘めているのかもしれません。

第4章
学校改革と新ビジネス

教育活動の一部を民間や地域が担うことで生まれる、新しいビジネスチャンスや地域課題解決に関係する予算です。

1. 部活動の地域移行とスポーツビジネス

【施策名】

部活動の地域展開等の全国的な実施

【予算額】

令和8年度当初57億円+令和7年度補正82億円(計139億円規模)

【制度内容】

公立中学校の部活動を、学校単位から地域クラブ活動へと移行させる改革(改革実行期間)を支援します。受け皿となる団体の運営費、指導者への謝金、コーディネーター配置などが補助対象です。

【ビジネス視点で想定されること】

• 地域のスポーツクラブや芸術団体が、中学校の部活動指導を受託する。

• スポーツインストラクターやアーティストが、副業として部活動指導員(有償)になる。

2. 教員の処遇改善

施策名】

義務教育費国庫負担金

【予算額】

1兆7,118億円

【ポイント】

約40年ぶりとなる公⽴中学校の学級編制標準の引下げにより、中学校35⼈学級を実現します。また、教師の処遇改善として、学校横断的な取組について学校内外の調整機能を果たしたり若⼿教師をサポートしたりする主務教諭を創設するほか、令和9年1月からは、時間外勤務手当(残業代)や休日給の代わりに支給される教職調整額を改善し、5%から6%に引き上げる措置が講じられます。

3. 文化財のインバウンド活用

【施策名】

文化資源を活用した全国各地のインバウンド創出・拡大

【予算額】

約224億円(国際観光旅客税財源等)

【制度内容】

城郭、社寺、古民家などの文化財について、単に保存するだけでなく、高付加価値な観光コンテンツとして活用するための改修や、多言語解説の整備、夜間公開(ユニークベニュー)などの取り組みを支援します。

【どんな場面で使える?】

• 観光事業者が、地元の文化財を活用した特別な体験ツアーやイベントを企画・運営する。 • 古民家を宿泊施設やカフェに改修し、インバウンド客を誘致する。

第5章
課題別「逆引き」ガイド

抱えている課題やニーズから該当する施策を探せるガイドです。

「小学校の給食費負担をなくしたい・減らしたい」

>> 第2章-1(学校給食費の無償化)

「高校の授業料、これまでは所得制限で対象外だったが支援を受けたい」

>> 第2章-2(高校授業料の実質無償化・所得制限撤廃)

「子供が3人以上いて、大学の学費負担が重い」

>> 第2章-3(多子世帯の大学無償化)

「自社の研究開発プロセスに最新のAI技術を導入したい」

>> 第3章-1(AI for Science連携)

「社員にデジタルの知識を身につけさせたいが、社内リソースがない」

>> 第3章-2(産学連携リスキリング)

「スポーツ指導のノウハウを活かして、中学校の部活動指導を受託したい」

>> 第4章-1(部活動の地域移行)

「地域の文化財を活用して、外国人観光客を呼び込みたい」

>> 第4章-3(文化資源のインバウンド活用)

▼ BizRizeでは、無料相談を行っております! ▼

▼ 補助金情報を毎週お届け!無料メルマガ配信中です ▼

BizRize事務局
ヒト・モノ・カネに関する経営資源を、効率よく活用できるプラットフォーム「BizRize」を運営。毎週木曜に経営者向けの勉強会を開催し、補助金や資金調達に役立つ情報を無料メルマガで配信中!

専門家・企業ブログ