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環境省は、令和8年度当初予算案において、脱炭素社会の実現と地域課題の解決を同時に目指す、総額約5,711億円(東日本大震災復興特別会計含む)の編成を行いました。
今年度の最大の特徴は、将来の成長財源を先行して調達する「GX経済移行債(GX債)」を活用した攻めの投資と、令和7年度補正予算(約4,875億円(復興特会含む))を組み合わせた「15か月予算」による切れ目のない支援体制です。これにより、即効性が求められる経済対策は補正予算で、中長期的な技術開発は当初予算で、という役割分担が明確になっています。
本記事では、大規模な窓リノベ補助金から、中小企業の資金繰りを助けるESGリース、そして日本発で設置場所を選ばない次世代技術「ペロブスカイト太陽電池」まで、注目の事業を解説します。
GX経済移行債
日本が2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指し、脱炭素社会への移行(GX:グリーントランスフォーメーション)を推進するために発行する国債です。この債券で集めた資金を呼び水に、政府の先行投資と合わせて官民が10年間で150兆円超の脱炭素投資を実現し、将来導入されるカーボンプライシング(炭素税など)で得た資金を償還財源に充てる仕組みです。
第1章
GXと安全対策に重点投資
まずは予算の規模感と構造を確認します。通常の予算に加え、GX推進対策費として成長分野へ重点配分されているのがポイントです。
令和8年度当初予算案5,711億円
一般会計(1,570億円)、エネルギー対策特別会計(2,061億円)、復興特会(2,080億円)の合計額です。この中には、脱炭素による経済成長を促すGX推進対策費(561億円)が含まれており、後述するペロブスカイト太陽電池や資源循環への投資の原資となっています。
令和7年度補正予算4,875億円
当初予算に迫る規模の補正予算が計上(3会計の合算)されています。令和8年度当初予算案と令和7年度補正予算を合わせる(15カ月予算)ことで、総額1兆円超の財源が、脱炭素や国民の安全確保へ集中的に投じられます。
第2章
断熱で光熱費を抑え快適な暮らしを
家庭の光熱費削減に直結する断熱に対し、補正予算で即効性のある大型支援を行いつつ、当初予算でベースとなる環境を整える支援構造です。
1. 窓のリフォームで光熱費ダウン(通称:窓リノベ)
【施策名】
断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業
【予算額】
令和7年度補正予算:1,125億円
【施策概要】
既存住宅において、熱損失が大きい窓の断熱性能を高めるための改修工事(ガラス交換、内窓設置、外窓交換等)に対して補助を行います。
【どんな場面で使える?】
- 冬の寒さや結露に悩んでいる自宅の窓を、二重窓(内窓)にリフォームしたい場合。
- 冷暖房費を抑えるために、リビングや寝室の窓ガラスを高性能なものに交換したい場合。
【ポイント】
予算規模が1,125億円と極めて大きく、環境省の補正予算の中でも目玉事業となっています。窓は住宅の熱の出入りの大半を占めるため、費用対効果の高い電気代高騰対策として期待されます。
2. 住宅脱炭素化の基盤をつくる支援
【施策名】
住宅の脱炭素化促進事業
【予算額】
令和8年度当初予算案:80億円(新規)/ 令和7年度補正予算:10億円
【施策概要】
新築・既存を問わず、住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化や、壁・床などを含む面的な断熱リフォームを支援します。
【どんな場面で使える?】
- 窓だけでなく、壁や床に断熱材を施工する改修や、玄関ドアを含めた本格的な断熱リフォームを行いたい場合。
- 戸建住宅やマンションを、ZEH仕様で新築・改修したい場合。
【ポイント】
壁や床の断熱など、窓以外の改修もカバーする基盤事業です。なお、「エコキュート」などの高効率給湯器については、連携する経済産業省の補正予算(570億円規模)で別途手厚い補助が用意されており、「窓リノベ」とセットでの活用が推奨されます。
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3. 新築住宅の省エネ化を強力支援
【施策名】
脱炭素志向型住宅の導入支援事業
【予算額】
令和7年度補正予算:750億円
【施策概要】
高い断熱性能と高効率な設備を兼ね備えた、ZEH水準を上回る脱炭素志向型住宅の導入を支援します。
【どんな場面で使える?】
これからマイホームを新築・購入する際、将来を見据えて光熱費のかからない高性能住宅を選びたい場合。
【ポイント】
補正予算で750億円という巨額が計上されており、住宅取得者にとっては大きな支援となります。
第2章のまとめ
窓リノベで一点突破、住宅脱炭素化促進で面的な底上げ、新築支援で未来の基準作り。これらを組み合わせることで、光熱費の抑制と快適性を実現できる構成です。
第3章
初期費用を抑えるリースと設備更新
中小企業の設備投資に対し、購入補助だけでなくリースを活用した支援が用意されている点が今年度の大きな特徴です。
1. 初期費用を抑えて設備を導入(ESGリース)
【施策名】
カーボンニュートラル社会構築に向けたESGリース促進事業
【予算額】
令和8年度当初予算案:1,225百万円(新規)
【施策概要】
中小企業等が、脱炭素機器をリースにより導入する際に、リース料総額の一部を補助します。初期投資の負担を軽減し、脱炭素化に資する設備の普及を促進します。
【どんな場面で使える?】
- 工場の空調やボイラーを更新したいが、一括購入する資金的余裕がない場合。
- 所有することによる資産計上や処分の手間を避け、最新設備を利用したい場合。
【ポイント】
最大のメリットは、リースの活用により初期費用ゼロで最新設備を導入できる点です。さらに本補助金でリース料総額の1%~6%が補填されるため、リース料の支払いを抑えつつ、光熱費(ランニングコスト)の削減というダブルのキャッシュフロー改善効果が期待できます。
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2. トラックやタクシーのEV化を強力に支援
【施策名】
商用車等の電動化促進事業
【予算額】
令和7年度補正予算:300億円
【施策概要】
トラック、タクシー、バスなどの商用車について、電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)などへの買い替えを支援します。車両本体だけでなく、充電設備の導入も補助対象となります。
【どんな場面で使える?】
- 配送用の小型トラックやバンを、ガソリン代のかからないEVトラックに切り替えたい場合。
- タクシー会社やバス会社が、車両更新のタイミングで電動車を導入する場合。
- 建設業者が、電動ショベルなどのGX建機を導入する場合。
【ポイント】
補正予算で300億円という極めて大きな予算が確保されています。通常、EVトラック等は高額ですが、この補助金を使えば、一部を除き、標準的なガソリン車との価格差の2/3が補助されるため、導入ハードルが大幅に下がります。
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3. 業務用ビルのZEB改修を加速
【施策名】
建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業
【予算額】
令和8年度当初予算案:6,700百万円/令和7年度補正予算:4,800百万円
【施策概要】
業務用建築物の新築や既存改修において、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化に役立つシステムや設備機器などの導入を支援します。
【どんな場面で使える?】
- 自社ビルやテナントビルを大規模改修する際、ZEB水準まで省エネ性能を高めて不動産価値を向上させたい場合。
- サステナブル倉庫など物流施設の省エネ化を図る場合。
【ポイント】
新築だけでなく、既存建築物の改修も対象です。補正と当初を合わせて総額100億円超の大型予算が確保されており、ストック(既存建物)の脱炭素化が重点的に支援されます。
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第3章のまとめ
初期負担を軽減するESGリース、物流・移動を脱炭素化する商用車EV化、建物価値を高めるZEB改修と、企業の課題や財務状況に応じた多様な選択肢が用意されています。
第4章
経済安全保障を支えるリサイクル投資
資源循環は環境活動から国家戦略(経済安全保障)へと変貌しました。廃棄物を、リスクから国産資源へ転換するため、巨額の予算が投じられます。
1. 重要物資「金属資源」の確保に379億円
【施策名】
経済安全保障の確保に貢献する金属資源等の再資源化に対する投資促進支援 【予算額】令和8年度当初予算案:379億円(うち200億円は経済産業省連携のGX債事業)/令和7年度補正予算:31億円
【施策概要】
使用済みの電子機器、自動車、船舶などから、レアメタルや高品質な鉄スクラップを回収するための設備導入を支援します。特に破砕、選別、製錬といった高度な技術を持つ設備投資に対し、経済産業省と連携して大規模な支援を行います。
【どんな場面で使える?】
- 産廃業者が、電子基板から金やパラジウムを抽出する高度なラインを新設する場合。
- 自動車解体業者が、EV廃車からモーター(ネオジム磁石)やバッテリー素材を回収する自動解体機を導入する場合。
【ポイント】
予算規模が前年度(令和6年度補正+令和7年度当初)比で約1.6倍に急増したこの分野の本丸施策です。単なるリサイクルではなく、国内への資源供給拠点としての機能強化が求められます。
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2. 廃プラ・太陽光パネルの脱炭素リサイクル
【施策名】
プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業
【予算額】
令和8年度当初予算案:約73億円/令和7年度補正予算:30億円
【施策概要】
プラスチック資源(廃プラ)や、大量廃棄が見込まれる再エネ製品(太陽光パネル、リチウムイオン電池)のリサイクル設備導入を支援します。こちらは経済安全保障よりもCO2削減(脱炭素化)に主眼が置かれています。
【どんな場面で使える?】
- 廃プラスチックを洗浄・選別し、高品質な再生樹脂(ペレット)を製造する設備を導入する場合。
- 廃棄された太陽光パネルからガラスや金属を分離・回収するリサイクル装置を導入する場合。
【ポイント】
上記「1」が金属・鉱物特化なら、本項はプラスチック・太陽光パネルがメインの対象です。資源循環と同時に、製造・廃棄プロセスにおけるCO2削減効果が補助金審査の重要ポイントになります。
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第4章のまとめ
資源循環はもはや単なる環境活動ではなく、国家の経済安全保障を左右する産業戦略へと変貌しました。金属資源には379億円、プラスチック・再エネ製品には73億円と、対象素材に応じた巨額投資が用意されており、廃棄物をリスクから資産へと転換する企業の挑戦を後押しします。
第5章
暮らしの安全と次世代技術の実装
脱炭素だけでなく、野生動物との共生や、次世代技術の実装など、地域の未来を守るための予算も手厚く配分されています。
1. クマ被害から住民を守る
【施策名】
指定管理鳥獣対策事業等のうちクマ被害対策パッケージ
【予算額】
令和8年度当初予算案:6,147百万円/令和7年度補正予算:3,409百万円
【施策概要】
クマの捕獲強化、出没抑制対策、人身被害防止のためのゾーニング管理、専門人材(ガバメントハンター等)の育成・確保などを総合的に支援します。 【ポイント】昨今の深刻なクマ被害を受け、補正予算とあわせて総額96億円規模の対策費が確保されました。国際観光旅客税(旅客税)も財源の一部に活用されています。
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2. 次世代の創エネ技術「ペロブスカイト」を社会実装
【施策名】
ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業
【予算額】
令和8年度当初予算案:70億円
【施策概要】
日本発の技術であるペロブスカイト太陽電池について、公共施設や民間施設等における早期の社会実装に向けた実証・導入を支援します。
【どんな場面で使える?】
耐荷重が不足している屋根など、従来のシリコン系太陽光パネルでは設置が難しかった場所への導入実証を行う場合。 【ポイント】軽くて曲がる次世代太陽電池の実用化を加速させるための予算です。GX推進対策費が活用されています。
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3. 避難所のエネルギーを確保する
【施策名】
地域の防災拠点や避難施設となる公共施設の脱炭素化・レジリエンス強化
【予算額】
令和8年度当初予算案:20億円/令和7年度補正予算:40億円 【施策概要】災害時に避難所となる学校、公民館、公立病院等に対し、平時の脱炭素化と非常時のエネルギー確保を両立する再生可能エネルギー設備(太陽光、蓄電池等)の導入を支援します。
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第5章のまとめ
クマ対策などの身近な安全確保に加え、ペロブスカイト太陽電池という未来のインフラへの投資をセットで進めることで、持続可能な地域づくりを目指しています。
第6章
課題別「逆引き」ガイド
【一般家庭・地域の方】住まいと暮らしを守りたい
「自宅の窓を断熱リフォームして、電気代を下げたい」
>> 第2章-1(断熱窓への改修促進)
「冬でも暖かいZEHの家を新築したい」
>> 第2章-2(住宅の脱炭素化)
【事業者・中小企業の方】コスト削減と新ビジネス
「工場のボイラーを省エネ型に替えたいが、購入資金が苦しい」
>> 第3章-1(ESGリース促進)
「自社ビルを省エネビル(ZEB)に改修したい」
>> 第3章-3(建築物等のZEB化)
「蓄電池のリサイクル事業を始めたい」
>> 第4章-1, 2(再資源化投資支援)
【自治体】地域の安全と脱炭素
「最近クマが出没して怖い。捕獲や追い払いの対策を強化したい」
>> 第5章-1(クマ被害対策)
「災害時に避難所となる学校の停電対策(蓄電池導入など)を行いたい」
>> 第5章-3(地域レジリエンス強化)
環境省の令和8年度予算案は、単なる脱炭素対策の積み上げではありません。住宅の断熱化や商用車の電動化といった、暮らしと事業の足元を支える施策から、資源循環やペロブスカイト太陽電池といった次の産業基盤を育てる投資まで、生活・産業・安全保障を一体で捉えた構成となっています。補正予算で現場の課題に即応しつつ、GX推進対策費やGX債を通じて将来の成長分野へ資金を先行投入する――。環境政策をコストではなく国家投資として位置づけた点に、今回の予算案の本質があると言えるでしょう。
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