
総務省の令和8年度予算案は、地方自治体の財政運営を支える「地方交付税交付金等」を主軸としつつ、デジタル社会の信頼性確保や、地域社会の持続可能性を高めるための施策を強化しています。特に、物価高騰に対応した補助制度の拡充や、SNS等の偽情報対策、さらには5年に一度の「経済センサス」など、事業者や住民の生活に密接に関わる項目に重点が置かれています。
第1章
21.3兆円で支える日本の基盤
総務省予算は、地方公共団体が安定的な行政サービスを提供するための財源確保と、情報通信や防災といった国家基盤への投資で構成されています。
• 予算総額:21兆2,701億円。
• 地方交付税交付金等:20兆8,778億円(全体の約98%)。自治体が福祉、教育、住民登録などの標準的なサービスを適切に維持できるよう、前年度から約2兆円増額して確保されています。
• 一般歳出のうち、政策的経費として3,497億円。この枠内に、地域活性化、デジタルインフラ、防災、統計調査などの核心事業が集約されています。
• 【別枠】東日本大震災復興特別会計:458億円。震災復興特別交付税などを通じ、被災自治体の復旧・復興を財政面から支え続けます。
第2章
新しい「人の流れ」を創る
人口減少が進む地域において、デジタルを活用した新しい住民の形の提案や、民間資金を活用した創業、さらに生活拠点の維持を多角的に支援します。
1.新しい関係人口の形
【施策名】
ふるさと住民登録制度の創設
【予算額・制度内容】
令和7年度補正予算 3.5億円(モデル事業の実施) 特定の地域を応援したい都市住民等を「ふるさと住民」として登録し、地域の担い手確保や活性化につなげる新しい仕組みです。
【どんな場面で使える?】
自治体が、二地域居住者や頻繁に訪れるファンを住民として可視化し、地域課題の解決に向けた協力を依頼したり、交流を深めたりしたい場合の実証事業としての活用が想定されます。
【ポイント】
デジタル庁と連携し、全国の自治体が円滑に導入できるようプラットフォームとなるシステム構築と利便性の実証を並行して進めます。
総務省_img01.png)
2.地方での創業・新規事業を強力バックアップ
【施策名】
ローカル10,000プロジェクトの推進
【予算額・制度内容】
6.7億円(別途、令和7年度補正予算 21.2億円を計上) 地元の金融機関から融資を受けて、地域の資源を活用した新事業を立ち上げる際の経費(設備投資等)を補助します。
【ポイント】
近年の物価上昇等を踏まえ、民間金融機関による融資や出資をさらに促進するため、補助上限額が従来の2,500万円から3,000万円へ引き上げられました。さらに、民間融資額(または出資額)が公費の4倍以上となる意欲的なプロジェクトについては、上限が5,500万円(従来5,000万円)まで拡大され、地域経済への波及効果が高い事業を強力に支援します。
3.郵便局の活用を推進
【施策名】
郵便局の「コミュニティ・ハブ」としての活用推進
【予算額・制度内容】
1.7億円 銀行や商店が撤退した地域等で、郵便局が「行政窓口」や「買い物支援」といった生活サービスの拠点となる実証を推進します。
【ポイント】
単独の郵便局だけでなく、複数の郵便局が広域で連携するモデルを重点化し、地域全体の利便性と持続可能性を高めることを目指します。
総務省_img02.png)
4.「地域の司令塔」づくりと集落の維持
• 地域運営組織の支援(0.3億円):集落機能や地域コミュニティを維持するため、自治会やNPO法人等が連携して分野横断的に活動する地域運営組織の形成を支援します。
• 過疎対策の推進(8.0億円):「集落ネットワーク圏(小さな拠点)」において、空き家を活用した住宅整備や、ICTを活用した生活支援・なりわい創出など、地域課題の解決に向けた取組を幅広く支援します。
総務省_img03.png)
第2章のまとめ
新設の「ふるさと住民登録制度」による関係人口の可視化、補助額を増額した「ローカル10,000」による起業支援、そして郵便局のハブ化や地域運営組織の形成を通じ、経済の活性化と生活機能の維持の両輪で地域の活力を底上げします。
第3章
AI社会を支えるデジタル基盤
デジタル化の恩恵を誰もが安心して受けられるよう、次世代インフラの整備、システムの標準化、そして情報の信頼性確保を徹底します。
1.マイナンバーカードの利便性と窓口体制の強化
【施策名】
マイナンバーカードを円滑に取得、更新できる環境整備
【予算額・制度内容】
298.3億円(別途、令和7年度補正予算701.6億円を計上)。 カードや電子証明書の更新需要の急増に対応し、自治体の窓口体制や申請サポートを強化します。
【ポイント】
在留カードとの一体化を進め、利便性や機能向上を進めます。
2.自治体システムの共通化とセキュリティ強化
• 自治体情報システムの標準化:3.1億円(別途、令和7年度補正559.4億円を計上)。自治体情報システムの標準準拠システムへの円滑な移行を図るための「手順書」の改訂や、自治体の情報セキュリティ対策に関する調査研究等を実施します。
• サイバーセキュリティ対策の強力な推進:51.9億円(別途、令和7年度補正83.7億円を計上)。実践的サイバー防御演習(CYDER)に基づく高度セキュリティ人材の育成や、政府端末やネットワーク観測を通じた情報収集・分析を強化します。
総務省_img04.png)
• インターネット上の偽・誤情報、違法・有害情報対策等の推進:8.5億円(別途、令和7年度補正予算 24.9億円を計上)。SNS等での偽情報拡散防止に向けた実態調査や、国民のICTリテラシー向上を支援します。
第3章のまとめ
マイナンバー基盤の整備やシステムの標準化、偽情報対策を進めることで、誰もが安心して利用できるデジタル社会の実現を目指しています。
第4章
命を守る消防防災力の抜本的強化
激甚化する自然災害に対し、専門部隊の車両整備とAI等の最新技術を融合させ、救命率の向上を図ります。
1.車両配備支援と消防団の充実
【施策名】
緊急消防援助隊の充実強化(57.5億円。令和7年度補正86.9億円)
【施策名】
消防団等の充実強化(7.9億円。令和7年度補正24.1億円)
【制度内容】
大規模災害時に応援に入る緊急消防援助隊の車両整備や、地域防災の要である消防団の入団促進を支援します。
【ポイント】
物価高による車両価格上昇を踏まえ、補助基準額(上限)を引き上げ、現場の負担を軽減します。
緊急消防援助隊
消防庁長官が全国の消防本部の中から部隊を登録しています。大規模・特殊災害発生時に被災地の消防機関のみでは対処が困難な場合、緊急消防援助隊が消防・救助活動等の応援を行います。
2.最新技術による消防DX
【施策名】
消防防災分野の新技術・DX推進
【予算額・制度内容】
6.0億円の内数(別途、DX推進全体で令和7年度補正予算 6.1億円を計上)。救急搬送人数の将来予測を踏まえ、AIを活用した救急隊運用の最適化や、マイナンバーカードにより効率的に搬送先の病院を選定する仕組み(マイナ救急)の全国展開を図ります(マイナ救急の全国展開・機能拡充については同補正予算のうち 2.2億円)。
マイナ救急
救急現場で救急隊員が「マイナ保険証」(健康保険証として利用登録されたマイナンバーカード)を活用し、傷病者の医療情報(受診歴、処方薬など)を迅速に把握して、より適切な処置や搬送につなげる仕組みです。
総務省_img05.png)
第4章のまとめ
車両整備などのハード対策と、AIやマイナンバーカードを活用したソフト対策を両輪で進め、あらゆる災害から住民の命を守り抜く体制を強化します。
第5章
国の土台となるデータ整備
数年先の国際競争力を左右する最先端技術の研究と、日本の羅針盤となる正確な統計調査を推進します。
1.次世代通信・量子技術の社会実装
① オール光ネットワーク技術等の次世代情報通信基盤の研究開発等の加速
【予算額】
115.0億円(別途、令和7年度補正予算 239.0億円を計上)
【内容】
2030年代の導入が見込まれる次世代情報通信基盤「Beyond 5G」の技術確立を目指します。
【ポイント】
消費電力を大幅に抑える「オール光ネットワーク」技術などの研究開発や国際標準化を加速し、グローバル市場でのシェア獲得と脱炭素化の両立を図ります。
総務省_img06.png)
② 量子暗号通信の研究開発等の推進
【予算額】
22.0億円(別途、量子暗号通信の社会実装等に令和7年度補正予算 232.0億円を計上)
【内容】
計算速度が飛躍的に向上する量子コンピュータを繋ぐ「量子インターネット」の実現や、盗聴を確実に検知でき、量子コンピュータ時代でも安全な「量子暗号通信」の実装を支援します。
【ポイント】
通信の機密性を極限まで高めることで、経済安全保障に不可欠な情報の自律性を確保します。
大型補正予算による補完:上記の地上インフラに加え、海外依存を脱却し通信の自律性を高めるため、「低軌道衛星コンステレーション」を活用した衛星通信インフラ整備に、令和7年度補正予算で1,500億円の投資が充てられています。
2.日本経済の今を可視化する超大型統計
【施策名】
令和8年経済センサス‐活動調査など社会・経済実態の把握に資する統計調査等の実施
【予算額・制度内容】
260.9億円。
【ポイント】
国内の全事業所・企業を対象に得られたデータは、地域振興や民間企業の市場分析など、あらゆる政策・経営の基礎資料となります。
経済センサス
いわば、5年に一度実施される「経済の国勢調査」です。国内の事業所・企業の経済活動を全国的及び地域別に明らかにするとともに、事業所及び企業を対象とした各種統計調査の母集団情報を得るための調査です。
第5章のまとめ
Beyond 5Gや量子技術への戦略的投資とともに、経済センサスによる正確なデータ整備を行うことで、日本の成長とエビデンスに基づく政策立案の土台を固めます。
第6章
課題別「逆引き」ガイド
総務省の予算案には、私たちの暮らしやビジネス、そして地域の未来を形作るための多様な支援メニューが用意されています。ご自身の立場や目的に合わせて、該当する項目をチェックしてみてください。
1.【一般の方向け】デジタル社会での安全と利便性を享受
「SNS等での偽情報や詐欺被害を防ぎ、安心してネットを使いたい」
>> 第3章‐2 (インターネット上の偽・誤情報、違法・有害情報対策等の推進)偽情報の被害相談や情報の真偽を見極めるリテラシー向上を支援し、安全なネット利用環境を整えます。
「マイナンバーカードの更新や申請を、窓口で待たずにスムーズに行いたい」
>> 第3章‐1 更新需要の急増に対応し、自治体の窓口体制や申請サポートを強化して、利便性を向上させます。
「万が一の救急搬送時、持病などの情報が正確に伝わる仕組みを利用したい」
>> 第4章‐2 マイナンバーカードを活用して救急隊員が医療情報を迅速に把握し、最適な搬送先を選定する体制を広めます。
「応援している『第2のふるさと』の活動に、より深く関わりたい」
>> 第2章‐1 (ふるさと住民登録制度) 特定の地域を応援する人を「住民」として可視化し、交流や担い手確保につなげる新しい仕組みを創設します。
2.【事業者・起業家の向け】地域の資源を活かして成長し、リスクに備える
「地元の資源と金融機関の融資を活かして、新しいビジネスを立ち上げたい」
>> 第2章‐2 (ローカル10,000プロジェクト) 地域密着型事業の創業を支援。物価高騰を踏まえ、補助上限額が最大5,500万円まで拡充されました。
「サイバー攻撃のリスクに備え、自社の情報資産を守る防御スキルを高めたい」
>> 第3章‐2 (サイバーセキュリティ対策) 最新の攻撃手法を体験し、対処能力を磨く実践的な演習(CYDER等)を重要インフラ事業者等へ提供します。
「最新の経済統計データを、精度の高い市場分析や経営計画に役立てたい」
>> 第5章‐2 (経済センサス) 5年に一度実施される「経済の国勢調査」の結果は、民間企業の経営戦略に欠かせない基礎資料となります。
「Beyond 5Gや衛星通信など、次世代のインフラを活かした新サービスを開発したい」
>> 第5章‐1 (次世代通信技術の研究開発等) 2030年代の基盤となる超高速・低遅延な通信技術の開発や、国際標準化に向けた挑戦を支援します。
3.【自治体・地域リーダー向け】地域の基盤を維持し、安全を高める
「銀行や商店が撤退した地域で、郵便局を生活サービスの拠点として守りたい」
>> 第2章‐3 (郵便局の「コミュニティ・ハブ」化) 郵便局を行政窓口や買い物支援の拠点として活用し、地域に必要な機能を維持する実証事業を支援します。
「住民が主体となって地域課題を解決する組織を立ち上げたい」
>> 第2章‐4 (地域運営組織の形成支援) 自治会やNPOが連携し、分野横断的に活動する組織の形成や、持続的な運営をサポートします。
「消防車両を最新鋭に更新したり、消防団の活動環境を改善したりしたい」
>> 第4章‐1 (消防防災力の充実強化) 物価高に伴い補助基準額を引き上げたうえで、最新車両の配備や消防団の資機材アップデートを後押しします。
総務省予算案は、地域社会の基盤を維持しつつ、デジタル化やセキュリティ強化を通じて、自治体サービスの進化と住民の安心を支える内容となっています。自治体情報システム標準化や創業支援、郵便局機能の拡充など、多角的な施策で地域力を高め、未来志向の行政運営の実現を目指していると言えるでしょう。
▼ BizRizeでは、無料相談を行っております! ▼
▼ 補助金情報を毎週お届け!無料メルマガ配信中です ▼

BizRize事務局
ヒト・モノ・カネに関する経営資源を、効率よく活用できるプラットフォーム「BizRize」を運営。毎週木曜に経営者向けの勉強会を開催し、補助金や資金調達に役立つ情報を無料メルマガで配信中!

総務省_img07.png)



