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2026.03.05

総務省「ICTスタートアップリーグ」徹底解説 基本枠最大2,000万円支援+追加あり

総務省が推進する官民一体の支援プログラム「ICTスタートアップリーグ」の令和8年度の公募が始まっています。
本事業は、総務省による「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度にスタートしました。ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)分野での新たなビジネスに挑戦する企業や個人を、国による資金と専門的なサポートだけでなく、メディアや支援機関による民間ネットワークの両面から支援する強力なエコシステムです。
総務省の資金援助における基本枠の上限は最大2,000万円ですが、事業の進捗などの評価に応じて最大3,000万円まで引き上げられるポテンシャルを持った仕組みとなっています。
本記事では、この制度の特徴や概要、どのようなアイデアが求められているのか(採択事例)など、実務担当者が知りたいポイントを徹底解説します。

第1章:中小企業や起業前でもチャンス

本事業は「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」という名称ですが、「スタートアップ限定」の制度ではありません。設立15年以内で、ICT分野の研究開発および事業化に取り組む中小企業も対象となります。さらに、まだ起業していない個人やグループ、これから法人化を予定している個人事業主でも、ステータスに合わせて応募が可能です。

1.1 二つの支援の柱

本制度には、大きく分けて以下の二つの支援の柱があります。

単なる技術開発だけでなく、ビジネスとして自立させるための活動を全面的にバックアップします。具体的には、支援期間中(約7ヶ月間)に以下のような事業化に向けたプロセスに取り組むことが想定されており、これらが支援の対象となります。

  • 技術の概念実証(PoC)や実現可能性調査
  • 事業計画(ビジネスモデル)の立案、検証、ブラッシュアップ
  • チームビルディングや法人化(起業前の場合)など

1.2 事業化が必須要件

総務省支援に応募する上で知っておくべき前提は、研究開発とその成果を活用した事業化の双方に取り組むことが求められる点です。論文の執筆や国際会議などの学術的な成果のみを目的とした研究は対象外となります。技術を作るだけでなく、それをビジネスとしてどう稼ぐかを目指す強い意志が必要です。

第2章:対象経費と定額補助(10/10)の仕組み

支援枠は、事業のステージに合わせて二つ用意されています。

【Support 1】最大300万円(基本枠):これから起業や事業化を目指す個人、グループ、起業直後のスタートアップ向け。

【Support 2】最大2,000万円(基本枠):事業の確立や拡大を目指し、技術の事業化に取り組むスタートアップ等向け。

2.1 上限超えは自己負担

本事業の補助率は「定額補助(10/10)」です。これは、上限額の範囲内であれば、認められた対象経費が100%補助されるという意味です。つまり、上限を超えた分はすべて自己負担になります。
例えば、Support1(上限300万円)に応募し、事業全体の経費に800万円かかった場合、もらえる補助金は300万円となり、残りの500万円は自社で用意する必要があります。 なお、申請した額が上限内であっても必ず全額もらえるわけではなく、選考評価の結果、減額して交付される可能性がある点には注意が必要です。

2.2 追加交付(合算上限)の仕組み

採択後の研究開発実施期間中に、以下のいずれかの評価を受けた場合、当初の交付額に追加して研究開発費が交付される場合があります。

  • 当初交付された予算の執行により、ICTの研究開発・事業の進捗が著しいこと
  • 伴走支援を通じた追加の取り組み(協業による新たな市場やビジネスモデルの獲得等)を実施することで、研究開発の成果や事業に飛躍的な成長が見込まれること

単に計画通りに進めるだけでなく、リーグの支援体制をフル活用して事業を拡大・成長させる姿勢が評価の鍵となります。この追加交付分を含めた合算の上限額は、Support 1で最大500万円、Support 2で最大3,000万円となります。

2.3 対象となる経費の具体例

募集要項によると、研究開発に直接必要な経費として主に以下のようなものが対象となります。

  • 人件費:研究開発に直接従事する研究員や、アルバイト、派遣社員などの人件費
  • 物品費:研究開発に必要な設備備品、消耗品
  • 旅費:実証実験などの出張にかかる交通費や宿泊費、学会参加費
  • その他:システム開発に必要なクラウドサービス利用料、通信費など
    ※法人応募の場合(個人・グループは対象外)は、直接経費の30%を上限として間接経費(管理部門の経費など)を計上することが可能です。

2.4 事前着手NG

一般的な国の補助金と同様に、補助金が振り込まれるのは事業がすべて終わった後の精算払(後払い)です。補助金の交付決定が下りる前に発注や支払いをした経費は補助の対象になりません。一時的な立て替え資金の確保と、スケジュールの見切り発車には十分注意しましょう。

2.5 外注費のルール

データの分析等を外注することも可能ですが、計上できる外注費の金額には直接経費の総額の50%までという上限があります。ここで注意すべきは、「直接経費の総額」には、自社経費だけでなく外注費そのものも含まれるという点です。このルールをひも解くと、結果的に「外注費は、自社で使う経費(自社の人件費や物品費など)と同じ金額までしか計上できない(1対1の割合が上限)」という計算になります。

NG例

事業費100万円(自社経費10万円+外注費90万円)の場合:ベースとなる自社経費が10万円しかないため、認められる外注費の上限も10万円に制限されてしまいます。その結果、補助の対象として認められるのは20万円(自社10万+外注10万)となり、残りの外注費80万円はすべて自己負担となります。

OK例

外注費として50万円の補助を受けたい場合:自社の人件費等で50万円以上を使い、全体の直接経費を100万円以上にする必要があります。

金額の計算に加えて、もう一つ重要なルールがあります。それは「事業の根幹となる部分を丸ごと外注することは禁止されている」という点です。全体の予算の大部分を外注費が占めるような計画は、事業主体が応募者自身ではないとみなされるリスクがあります。あくまで「自社が主体となって開発を進め、その補助として外注を活用する」というバランスで計画を組み立てましょう。

第3章:公開情報から読み解く評価の傾向

本事業の明確な審査基準は公開されていませんが、公式サイトに掲載されている過去採択事例の研究成果に対する評価(Good Points)や募集要項の指定項目から、過去の採択者が高く評価されたポイントの傾向が見えてきます。

過去の事例の講評を見ると、技術そのものの優位性に加え、ターゲット層が明確に定義されていることが評価される傾向があります。

  • 自然言語処理AIによるシステムの効率性と有益性が高い(AironWorks 株式会社)
  • 小児弱視という一定の患者数が想定されており、想定ターゲットが明確である(InnoJin株式会社)

募集要項の事業提案資料でも、市場ニーズや独自の価値や優位性を記載することが求められています。

第1章でも触れた通り、事業化が必須である本事業では、ビジネスを前進させる具体的なアクションが高く評価されていると考えられます。

  • 販売チャネルの開拓を進め、大手企業への導入が決定した(AironWorks株式会社)
  • 大手企業との商談やVCとの協議を通じた実用化への道筋固めが進展している(ハービット株式会社)

提案資料には、実現を目指すビジョンと道筋の記載が求められており、技術開発にとどまらず、販売戦略や外部連携など、事業を成立させるための体制づくりをしっかりと計画に盛り込むことが重要になりそうです。

第4章:もう一つの柱「民間支援」のエコシステム

総務省による資金援助の仕組みとは別に、ICTスタートアップリーグには民間支援の枠組みが用意されています。

4.1 メディアと連携して発信

採択されると、メディアと連携して自社の取り組みが世の中に広く発信される仕組みがあります。これにより、スタートアップを応援する人を増やし、事業成長を後押しします。

4.2 強力な支援機関ネットワーク

ベンチャーキャピタル、金融機関、大手企業、地方公共団体など、様々なスタートアップを支援する30を超す団体がサポーターとして参画しています。資金調達の支援(ベンチャーキャピタルなどからの直接出資やマッチング)のほか、概念実証(PoC)を行うための実証フィールドの提供を受けたり、ビジネスを加速させる外部ネットワークを活用できたりします。

4.3 幅広い支援の枠組み

「資金は自社で足りているが、この強力なネットワークやメディアによるPRの恩恵を受けたい」という企業向けに、リーグ活動のみに参加する「Support 0(支援金0円)」での応募も想定されています。
さらに公式の「よくある質問」には、「提案内容にICTの研究開発要素が含まれない場合、総務省の資金援助の対象にはならないが、リーグとしてその他の支援を受けられる可能性がある」とも明記されています。つまり、総務省の資金要件には合致しなくても、応募のチャンスが完全になくなるわけではありません。アイデアやビジネスモデルが評価されれば、民間支援の枠組みでエコシステムに受け入れられるルートが用意されています。資金目的ではない企業や、ICT要件に少し不安がある企業にとっても、このエコシステムに応募する価値は高いと言えます。ただし、いずれの場合も正式な選考プロセスを経て採択される必要があります。

4.4 「リーグ」に込めた思いとは

ここまで見てきたように、本事業は単に、国から補助金をもらうだけの制度ではありません。総務省の支援を契機として、メディアや民間企業、自治体などが集まり、スタートアップを応援する人を増やすための巨大なエコシステムを形成しています。
プレイヤーであるスタートアップと、サポーターである民間支援機関、メディア、自治体、総務省が一つの輪(=リーグ)となって、日本のスタートアップ市場全体を盛り上げ、事業の成長と地域活性化につなげていく――。そんな熱い思いが、ICTスタートアップリーグという名称に込められていると言えます。

第5章:ここに注意!申請フローとスケジュール

応募期間は、2026年3月24日(火)18:00までです。

 

ステップ

ステータスに合った応募フォームの選択

申請はすべて公式サイトの応募フォームからオンラインで行います。フォームは個人、グループ、法人、推薦の4種類に分かれているため、自社のステータスに合ったものを正しく選択して入力項目を埋めていきます。

 

ステップ

必須書類2点の用意と書き分けのコツ

応募フォームへの入力とは別に、以下の二つの書類(PDF形式)をアップロードして提出する必要があります。

① 予算計画書(指定様式あり):公式サイトから専用のExcel様式をダウンロードして作成します。ここには、本事業の補助対象となる経費(上限額内)を記載します。

② 事業提案資料(様式自由・15ページ程度):事業プラン、市場ニーズ、技術的特徴、人員計画などをまとめ、実現を目指すビジョンと道筋を審査員に伝えるための資料です。自己負担分を含めた事業全体の予算規模(資金計画)は、こちらの資料に記載することで全体の規模感を正しく伝えることができます。

 

ステップ

プレゼン動画の準備(任意・推奨)

必須ではありませんが、事業内容や実現したいことについての3分程度のプレゼンテーション動画の提出が推奨されています。動画の撮影や編集には時間がかかるため、早めの準備をおすすめします。

 

ステップ

選考とスケジュール

応募締め切り後、書類選考を経て、4月下旬頃から面談選考が行われます。面談では、提出した事業提案資料に基づいたプレゼンテーションと質疑応答が予定されています。すべての選考を通過した採択候補者の発表は、5月下旬以降の予定です。

第6章:応募前に確認!よくある質問

既存事業のシステム開発や改修でもいいの?

はい。すでに事業化しているサービスであっても、さらなる市場獲得に向けた研究開発要素が含まれていれば対象になり得ます。

ICTの明確な定義はある?ソフトウェアだけ?

本事業では、厳密な定義は示していません。ICTに関する研究開発要素が含まれていれば、SaaSに限らず、ハードウェアやサービスなども広く対象となります。

他の補助金や支援事業との併願は可能?

本事業は国の競争的研究費に該当するため、他の公募事業などと内容が類似した技術開発や同一の内容での申請は認められません。

第7章:まずは説明会をチェック

本事業には、上限を超えたら自己負担になる、精算払(後払い)である、事業化の道筋を描く必要があるなど、補助金ならではの実務要件もあります。しかし、採択されれば、事業化に向けた資金と強力なサポーター(専門家陣や民間支援ネットワーク)を一気に獲得できる絶好のチャンスです。 少しでも、自社のアイデアがいけるかもしれないと感じた方は、まずは公式サイトの詳細を確認したり、開催されている説明会をチェックしたりしてください。

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