
地域の中堅・中小企業が大都市の専門人材を採用する際に生じる給与差を国が補助する新しい支援策が注目されています。地域金融機関がコンシェルジュとなり資金と人材の両面で支援する、地域経済活性化支援機構(REVIC)運営のレビキャリは、給付金を通じて大都市から地方への人の流れを後押しし、企業の成長や地域の賃金底上げを目指す事業です。金融庁監督局総務課人材マッチング推進室の室長補佐・沢田一仁さんに、レビキャリの狙いなどをうかがいました。記事の後半では、利用までの流れなどを解説しています。
大都市から地方へ 人の流れを後押し
――金融庁が人材事業に取り組む意義や狙いを教えてください。
まず背景をご説明します。金融庁では金融機関向けの「監督指針」を定めていますが、2018年にその一部改正を行いました。そこで、金融機関が取引先に対して人材紹介業務を行うことが可能であると明確化した経緯があります。
もちろん、それ以前から人材紹介を手掛けている金融機関もありましたが、金融庁として改めて「取り組んで大丈夫ですよ」と明示した形です。それ以降、金融機関は経営改善支援の一環として、経営人材や副業・兼業人材のマッチングに積極的に取り組むようになりました。
金融庁としては、融資による資金繰り支援だけでなく、人材紹介を含めた多様な事業者支援を通じて金融仲介機能の強化を図り、ひいては地域企業の生産性向上や地域経済の発展につながることを期待しています。
――金融機関による地域経済への貢献という目的があるのですね。
はい。そのような中で2021年からスタートしたのが「REVICareer(レビキャリ)」です。 多くの民間人材紹介会社がありますが、民間のビジネスでは、どうしても「東京から東京」といった大都市圏内や、同一経済圏内でのマッチングが主流になりがちです。そこで金融庁としては、地方創生の観点から、「大都市から地方へ」「大企業から地域の中堅・中小企業へ」という人の流れを後押しするために、この事業を立ち上げました。
――確かに、大手の人材会社では、人材を「大都市から地方へ」という視点は、あまり強くないのかもしれません。
あくまで一つの見方ではありますが、ビジネス構造上の理由があると考えています。
人材紹介会社は通常、成約した人材の年収に応じた手数料を受け取りますが、地方に行けば行くほど年収帯は下がる傾向にあるため、手数料収入も減少します。そのため、大手事業者にとってはビジネスとして注力しにくい側面があるのではないでしょうか。だからこそ、国の政策として支援する意義があると考えています。
――「レビキャリ」と、内閣官房・内閣府が主導する「先導的人材マッチング事業」には、目的や人材、企業への効果の観点で、どのような違いがありますか。
金融機関を通じて人の流れを創ることを目的とするという点は共通していますが、レビキャリは「大企業から地域の中堅・中小企業へ」というコンセプトのもと、人材データベースを作り、その活用を促すというアプローチを取っています。他方、先導的人材マッチング事業は、人材マッチングの担い手として活躍できるように金融機関を後押しするというアプローチを取っています。
そのため、「お金の流れ」としても給付金が、レビキャリはデータベースを利用して人材を採用する企業に支払われるのに対して、先導的人材マッチング事業は、仲介を行った金融機関等に支払われます。企業、金融機関両面の支援をすることで、人の流れを創っていくとイメージして頂けると良いと思います。

――給付金の支払先が異なるのですね。では、マッチング対象となる「人材」については、どのような違いがありますか。
レビキャリは「大企業人材」を対象とし、先導的人材マッチ事業は「ハイレベル人材」を対象としています。具体的には、前者は資本金10億円以上または従業員数2000人超の企業に現在お勤めの方、もしくは退職後5年以内の方と定義しており、あくまで企業規模が基準になります。
一方、後者は、在籍していた企業の規模によらず、年収額や、管理職に就いていることなどを基本的な要件としていると認識しています。
給付金で「給与の壁」を超える
――レビキャリを活用した企業にもたらされる「効果」はいかがですか。
レビキャリは「経営人材」として採用されることを前提としているため、経営改善や業績向上が期待できます。
また、レビキャリ独自のメリットとしては「給与ギャップの解消」が挙げられます。大企業から地域の中小企業へ転職する場合、年収が下がるケースも少なくありません。レビキャリでは企業に給付金が支払われるため、それを原資として給与の低下分を補填していただくなど、給与ギャップをカバーできる点が大きな効果の一つだと考えています。
――企業側が得た給付金は、給与低下分の補填のほか、採用にかかるコストなどに充てることも可能なのでしょうか。
そうですね。給与ギャップの解消が念頭にありますが、必ずしも給与に上乗せしなければならないというわけではなく、資金使途に特段の制限は設けていません。例えば、面接に来ていただくための交通費といった採用コストや、入社後の備品・制服代などに充てていただくことも可能です。
――レビキャリや先導的人材マッチング事業において、金融機関には「お金」だけでなく「人材」の面でも企業を支える役割が求められています。その必要性や意義、両面から支援することで期待される効果について教えてください。
現在、金利上昇や物価高、DX、AI、インバウンド対応など、金融機関の顧客である企業が抱える課題は多様化しており、金融機関は融資取引以外にもさまざまなニーズへの対応が求められています。特に人材に関しては、全国的に人手不足が深刻な状況です。
金融機関が人材紹介事業を手掛けることは、取引先の人手不足解消をサポートすることになり、資金繰り支援とは違った形での事業者支援が可能になります。
また、これは金融機関にとってもビジネスですので、手数料収入を得ることで自身の収益にもつながります。金融庁では「地域金融力(地域金融が地域経済に貢献する力)」という言葉を使っていますが、人材事業に取り組むことは、金融機関の収益確保だけでなく、この「地域金融力」の向上にもつながると考えています。

――レビキャリでマッチング後の「人材の定着」という課題に対して、金融機関に、どのようなフォローを期待されていますか。
レビキャリを活用して給付金を支払ったものの、早期退職によって返還いただくケースが、若干ではありますが存在しています。求職者と企業の相性という部分など理由はさまざまあると思いますが、定着支援のフォローについては、ぜひ金融機関に行っていただきたいと考えています。
レビキャリの制度上、採用から2年間は給与支払実績の書類を提出していただく必要があり、その手続きを通じて金融機関は企業と接点を持ちます。その期間は「採用した方の様子はどうですか」といった対話が行われていると思いますが、2年経過後も継続してフォローを行っていただければと考えています。
――人材マッチングに至っていない金融機関もあるのでしょうか。
まだ実績がない金融機関も少なくありません。これまでの傾向として、1件目の成約ができると、2件目、3件目とトントン拍子に成約が進むケースが多く見られます。そのため、まずは「最初の1件」の成約を目指していただくよう、全国地方銀行協会などを通じてお願いしているところです。
また、レビキャリのデータベースを運営している地域経済活性化支援機構(REVIC)では、金融機関向けのオンラインセミナーや成約事例の共有会を開催しています。他行の取り組みを知ることは非常に重要ですので、こうした事例の横展開を行うなど、予算の範囲内でできる限りのサポートを行っています。
――レビキャリの成功事例について、金融機関の関わり方に何か共通点・特徴はありますか。
金融機関のトップや担当役員、そして現場で人材紹介業務を行う担当者の方々の「やる気」や「熱意」によるところが大きいと感じています。
また、日頃から取引先企業とよく対話し、強固なリレーションを築けている金融機関はマッチングが進みやすいと感じます。私自身、企業の方とお話しする中で「金融機関と良好な関係が築けているのだな」と感じる場面がありますが、そうした日頃からの関係性が、結果として成約につながりやすいのではないかと考えています。
――レビキャリを活用し、企業が人材を採用する目的は多様だと思いますが、政策的に特に期待される場面(たとえば事業承継やDX)はありますか。
レビキャリに関しては、特定のテーマや産業に限定しているわけではありません。念頭にあるのは大きく2点です。
まず1点目は、これまでも申し上げてきた通り、「大企業から地方への人の流れ」を創出し、その人材が地方で活躍することです。
2点目は、それに伴う経済効果です。給付金を活用していただくことで、地域の賃金上昇や経済波及効果といった「面的な効果」が出ることを期待しています。もちろん、事業承継の場面でも活用いただけますが、特定のテーマを推進するというよりは、まずはこの2点を重視しています。
――最後に、人材不足に悩む企業に向けてメッセージをお願いします。
金融機関に対しては、日頃からレビキャリの活用をお願いしていますし、また、金融機関の相談の門戸は開かれております。
もし「人手が足りない」「人材が欲しい」というお悩みがあれば、まずはお近くの、あるいは日頃お付き合いのある金融機関にご相談ください。 その中で、もし「経営人材」が必要であれば、ぜひレビキャリの活用をご検討いただきたいですし、経営人材以外の人手不足に関しても金融機関へご相談いただければと思います。
レビキャリ利用までのステップ
ここからは、レビキャリ利用にあたっての要件や申請の流れについて詳しくご紹介します。
1.地域の企業と大企業の人材をマッチング
レビキャリは、転籍や兼業・副業、出向といった様々な形を通じた、大企業から地域の中堅・中小企業への人の流れの創出を目的とする政策(地域企業経営人材マッチング促進事業)の一環で整備された、大企業のビジネスパーソンの自発的なキャリアデザインとネクストキャリアを支援するプラットフォームです。金融庁と経済産業省が連携して推進するこの事業の核は、REVIC(地域経済活性化支援機構)が運営する「REVICareer(レビキャリ)」を通じた採用に対し、国が最大450万円(転籍型の場合)の給付金で支援することです。
株式会社 地域経済活性化支援機構(REVIC)
地域経済の活性化と信用秩序の基盤強化を目的として、中小企業等の事業再生支援や地域活性化支援を行う機関です。2013年に前身の企業再生支援機構を改組・改称して設立され、事業再生支援、地域活性化ファンドの運営、再チャレンジ支援など多岐にわたる業務を行っています。地域企業経営人材マッチング促進事業の運営もその一つで、大企業の人材と地域企業をマッチングするプラットフォーム(レビキャリ)を提供しています。
2.企業規模の条件
レビキャリを利用するにあたり、求人側の中堅・中小企業と、転職者が属している大企業それぞれに定義(要件)が定められていますので、企業規模について要件を満たす場合に限り制度を活用できます。
- 給付対象企業となる中堅・中小企業
日本国内で本店の法人登記を行っており、資本金の額または出資の総額が10億円未満かつ常時使用する従業員の数が2000人以下(みなし大企業等は除く)
- 転職者が属する大企業
日本国内で本店の法人登記を行っており、資本⾦10億円以上又は常時使用する従業員の数が2000⼈を超える法⼈
3.レビキャリの特徴
①四つの契約形態で、多様な課題を解決
レビキャリでは、企業の経営課題や体力に応じて、以下の四つの契約形態を選べます。
| 採用パターン | 契約形態の例 | 主なメリットと特徴 | 契約期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 転籍型 | 期間の定めのない雇用 (正社員など) | 長期的な経営の柱として迎え入れ、 企業全体を立て直す場合に最適。 | 1年以上の 雇用が前提 |
| 兼業・副業型 | ①雇用契約または ②業務委託契約 | 特定課題の解決やノウハウの 試験的な導入に活用。 | 3か月以上の 契約が前提 |
| 在籍出向型 | 大企業からの出向 | 大企業との関係を維持しつつ、 組織改革や技術移転を進める場合に有効。 | 3か月以上の 出向が前提 |
②人材の条件と説明義務
給付金を受給するためには、採用予定者がREVICの人材リストに登録された人材であること、企業規模要件のほかにも、いくつかの要件が求められます。特に、転籍型の場合は、下記のいずれも満たす必要があります。
- 給与水準
原則として、採用人材の年間の給与等が500万円以上であること(※60歳以上かつ一部地域での採用では450万円以上に引き下げられます)。
- 事前説明の義務
採用する企業が採用人材に対し、経営理念、経営戦略などの5項目について事前に説明すること。
③採用コストを補填できる資金支援
国が、採用人材の確保に必要なコストに対し、支援策を用意しています。この給付金は、採用企業へ直接支給されます。たとえば以下の費用に充てることで、採用に伴う金銭的な負担を大きく軽減することが可能です。
- 高水準な給与の補填
- 人事制度や福利厚生の充実
- その他採用に際して要する諸費用
| 採用形態 | 給付金の上限額 |
| 転籍型(正社員化など) | 最大450万円 |
| 兼業・副業型、出向型 | 最大200万円 |
④申請フロー
給付金の申請手続きは、地域金融機関のサポートを受けながら進めます。
レビキャリ登録金融機関へ相談
貴社のニーズを、レビキャリ登録金融機関に相談します。レビキャリへの求人票掲載などは、登録金融機関を通じて行われます。
レビキャリ登録人材とマッチング~内定
レビキャリ登録人材(大企業で働いている方/働いていた方)との面接などを経て、条件が合致すれば内定。
レビキャリ登録人材を採用・入社
給付金の給付要件を満たす雇用条件でレビキャリ登録人材を採用・入社します。
採用過程において、採用企業は採用人材に対し、経営理念、経営戦略などの5項目について事前に説明する必要があります。
給付金申請
- 採用企業
給付申請書(転籍型/兼業・副業型/在籍出向型)をはじめとする所定の書類一式を、給付申請が可能になる日から6か月以内に、レビキャリ事務局へ提出します。
- 登録金融機関
人材確認書やヒアリングシートをレビキャリ事務局へ提出します。
「給付申請が可能になる日から6か月」の起算日
- 転籍型:雇用期間又は任期の開始日
- 兼業・副業型(雇用契約等):雇用期間又は任期の開始日
- 在籍出向型:雇用期間又は任期の日
- 兼業・副業型(請負契約等):報酬を支払った日
令和7年度の申請受付締め切り:令和8年2月14日必着
審査、給付金の給付・不給付を決定
REVICが書類審査を行い、給付金支給の可否を決定します。給付が決定した場合、給付対象企業の口座に給付金を振り込みます。 給付金を受給後は、登録金融機関を通じて、REVICに実績報告(賃金台帳の写しなど)を提出します。


4.マッチング事例
レビキャリのポータルサイトでは、マッチング事例や、インタビューが掲載されています。事例の一部をご紹介します。
- 登録金融機関:山口銀行
中国地方の不動産業の企業が、自動車部品メーカー出身者(50歳代)を、総務部門の管理職として採用

- 登録金融機関:十六銀行
東海地方の流通業の企業が、電子部品メーカー出身者(50歳代)を、管理本部長として採用

5.変革への第一歩は地域金融機関とともに
事業の成長や組織の変革を考えるなら、まずは地域金融機関の取り組みに目を向けてみませんか。レビキャリでは、地域金融機関自身が日頃のお取り引きから企業の課題や成長可能性を細やかに見極めたうえで、自らマッチングを行い、最適な人材と企業を直接つなげる役割を担っています。資金面だけでなく、「ヒトの力」をしっかり評価し、地域金融機関が主体となって貴社に最もふさわしい人材を見つける仕組みです。
「自社に合った人材が本当に見つかるだろうか」「新しい挑戦に踏み出すには不安がある」と感じている方も、現場を知る地域金融機関担当者が貴社の悩みや希望を丁寧に聞き取り、最適な人材を紹介するために協力してくれるはずです。新たな出会いと成長のきっかけは、まずは地域金融機関に相談することから。ぜひ、お気軽に話をしてみてください。
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