
国土交通省(観光庁含む)の令和8年度当初予算案は、一般会計で史上初めて6兆円を突破する6兆749億円という歴史的な規模となりました。今回の予算は、埼玉県八潮市の道路陥没事故という痛ましい教訓を胸に刻んだインフラ老朽化対策などの「国民の安全を支える基盤整備」と、物流2024年問題の解決や観光立国の深化を目指す「経済を加速させる投資」を二本柱としています。令和7年度補正予算(2兆4817億円)と一体となった「15か月予算」として運用することで、安全の確保と持続的な成長を切れ目なく推進する方針です。
第1章
6兆円予算が牽引する安全保障と社会基盤の新時代
今回の予算案の最大の特徴は、史上初めて6兆円の大台に乗った圧倒的な規模感にあります。いわば、荒波の中を進む日本経済という船の海図を最新に書き換え、灯台の光をより遠くまで届くように整備する、国としての決意の表れと言えるでしょう。
【ここがポイント!】
中長期的な公共事業の見通しを示す「第1次国土強靱化実施中期計画」が本格始動します。これにより、建設業や設計コンサルタント業にとって、単なる一過性の復旧事業ではない継続的な仕事の柱となる予算が確保されました。
【安全の顔:海保の強化】
大臣折衝の結果、海上保安庁の無操縦者航空機の購入が、当初要求から1機追加され計5機へ増強されます。隙のない海洋監視体制が、日本の安全を土台から支えます。
【命を守るDX:線状降水帯予測】
令和8年から、線状降水帯の発生予測を2〜3時間前に早めることを目指し、スパコンや次期衛星「ひまわり10号」への投資を強化します。データと技術で逃げ遅れを防ぐ、命を守るためのDX投資です。
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第2章
交通・物流をアップデートする成長投資
1. 物流網を2030年までに一気に造り変える
【施策名】
次期「総合物流施策大綱」の策定を見据えた物流革新の集中改革の推進
【予算額・制度内容】
124億円。2030年度までの期間を「集中改革期間」と定め、自動運転トラックの社会実装や、鉄道・船舶への新モーダルシフトを強力に推進します。
【ここがポイント!】
単なる2024年問題への対症療法ではなく、2030年度という明確な期限を設けて物流網を根本から再構築しようとする、国の強い緊迫感が表れています。
【どんな場面で使える?】
荷役作業の負担を軽減したい物流事業者が、テールゲートリフター(重量物の積み降ろし作業の負担を軽減する昇降装置のこと。パワーゲートとも言う)や自動化機器、デジタル化ツールを導入する際の補助金として活用できるでしょう。
2. 空港での待ち時間をテクノロジーで解消
【施策名】
空港におけるFAST TRAVELの推進
【予算額・制度内容】
40億円。顔認証システムでの一元化(One ID化)や自動チェックイン機の普及により、搭乗手続きを迅速化します。
【どんな場面で使える?】
空港ビル会社や航空会社が、インバウンド急増に伴うボトルネックを解消するため、最新の自動手荷物預入機や顔認証ゲートを設置する際に活用できそうです。
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第2章のまとめ:エンジンの載せ替え
少ない人数で、これまでの何倍もの価値を生む。これは、船の動力を旧式の石炭から最新のモーターへ載せ替えて、スピードと効率を劇的に上げる成長投資と言えます。
第3章
担い手を守り、働き方を改善するための経営支援
1. 現場の労働者に適正な賃金を届ける指導体制
【施策名】
担い手の確保・育成や生産性向上による持続可能な建設業の実現
【予算額・制度内容】
5億円。建設業における「労務費に関する基準」の徹底を図るため、建設Gメンによる書面・立入調査の体制を大幅に強化します。
【ここがポイント!】
従来は努力義務に近かった労務費(=人件費の一部)の確保について、Gメンによる強力な指導体制が構築される点が大きな変化です。
【どんな場面で使える?】
下請企業が元請から不当に労務費を抑制されそうな時、この基準を適正な価格交渉の「盾」として使えるでしょう。
2. 内航海運事業者の働き方や取引の適正化
【施策名】
内航海運と荷主等の連携による取引環境改善・生産性向上
【予算額・制度内容】
41百万円(令和8年度当初+令和7年度補正)。事業者の99.7%が中小企業である内航海運において、荷主との取引適正化のためのガイドライン周知や、省力化投資への補助を実施します。
【どんな場面で使える?】
船主やオペレーターが荷主と連携し、省力化投資や協業化によって船員の労務負担を軽減し、配乗業務を効率化する取り組みに活用できるでしょう。また、ガイドラインは、内航海運事業者が荷主と作業手順を見直したり、非効率な業務の廃止を交渉したりして、適正な取引環境を構築する際の指針となります。
3. 外国人材の受け入れをデータで効率化
【施策名】
外国人建設技能者の円滑・適正な受入れを実現するシステム開発
【予算額・制度内容】
5.78億円(令和7年度補正)。出入国在留管理庁の在留情報と「建設キャリアアップシステム(CCUS)」をデータ連携させ、現場での確認をペーパーレス化します。
【どんな場面で使える?】
外国人材を採用している建設会社が、毎日の現場入場時の事務負担(就労管理)を減らし、コンプライアンス管理を正確に行いたい場面で役立つでしょう。
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第3章のまとめ:乗組員の保護とメンテナンス
どんなに高性能な船でも、腕の良い乗組員がいなければ航海は続けられません。適切な給与と労働環境を保証することは、船の沈没(人手不足による廃業)を防ぐための船体のメンテナンスにもつながります。
第4章
地域インフラを守り、観光の未来をつくる
1. 八潮市の陥没事故を教訓にした重要管路の複線化
【施策名】
埼⽟県⼋潮市の道路陥没事故の教訓を踏まえた上下⽔道管路の⽼朽化対策の推進
【予算額・制度内容】
320億円(新規)。八潮市の道路陥没事故を受け、重要管路(上下水道のパイプ)の更新や「一本ダメになっても他で補える複線化(リダンダンシー)」を重点支援する事業を創設しました。
【ここがポイント!】
「皆増(新設)」事業であり、単なる上下水道パイプの老朽化修繕ではなく「二重化・予備の確保」という新しい考え方で、重要インフラを事故から守ります。
【どんな場面で使える?】
大きな水道管や下水道管、または緊急時に使われる重要な道路の下に埋まっているパイプが古くなって事故が起きた場合、たくさんの人の生活に大きな影響が出てしまいます。今回の予算は、そうした重要なパイプを新しく取り替えたり、もし一本ダメになってもすぐに他のパイプで水や下水を流せるように予備のパイプ(複線)を増やしたりするために使われます。これにより、事故や災害が発生したときにも、地域の人たちが安心して生活できるようにします。
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2. 観光旅客税を「地方の稼ぐ力」に直接還元
【施策名】
国際観光旅客税の引上げとオーバーツーリズム対策等
【予算額・制度内容】
1,383億円(うち国際観光旅客税1,300億円)。旅客税を1000円から3000円に引き上げ、増収分を地方誘客や混雑対策に充てます。
【ここがポイント!】
税収が3倍に増える一方で、その使途は毎年度「洗い替え」(※税収の使い道を固定化するのではなく、どの事業に充てるか年度ごとに見直すこと)を行い、透明性を確保する仕組みが導入されました。
【どんな場面で使える?】
旅行者が荷物を預けて手ぶらで観光できる取り組みや、観光地の混雑を防ぐための対策が強化される見込みです。また、空港や港での入出国手続きがよりスムーズになり、国立公園などの自然を活かした観光もさらに充実するでしょう。空港と市街地を結ぶ鉄道や国内線の飛行機、クルーズ船など、交通の利便性や機能が高まることも期待されます。
第4章のまとめ:重要インフラの強靭化と地域の持続的発展
災害時や混雑時にも機能を維持できるインフラ整備と、地域の魅力向上による持続的な発展を目指した施策となっています。
第5章
住宅の進化とスモールコンセッションによる地域再生
1. 住まいの省エネ化と税制支援
【施策名】
みらいエコ住宅2026事業
【施策名】
住宅ローン減税等の家計支援
【予算額・制度内容】
みらいエコ住宅2026事業:令和7年度補正予算において2050億円(令和8年度当初予算案と合計した金額は2,500億円)を投じ、ZEH水準住宅の新築や既存住宅の省エネ改修を支援します。
住宅ローン減税等の家計支援:住宅購入時の負担を軽減する住宅ローン減税について、5年間延長します。
【ここがポイント!】
住宅取得を検討している方にとっての注目点は、住宅ローン減税の床面積要件が、従来の50㎡から40㎡以上へと緩和されたことです。これにより、単身者や共働き世帯に人気の高いコンパクトな住宅も減税の対象となり、住まいの選択肢が大きく広がります。
【どんな場面で使える?】
- 新築・購入:40㎡以上のマンションや戸建てを購入する際、最大13年間にわたってローン残高に応じた税額控除を受けられます(所得制限等の条件あり)。
- リフォーム:自宅の断熱性を高める省エネ改修を行う場合、所得税から最大80万円の税額控除を受けることができ、光熱費高騰への対策と納税額の軽減を同時に実現できるでしょう。
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2. 地元の知恵で廃校や古民家をビジネス拠点に
【施策名】
PPP/PFIの推進
【予算額・制度内容】
484百万円。PPP/PFI(官民連携)を、より広い分野・地域で使えるようにして、民間からの提案も取り入れながら、新しい手法やモデル事業を増やしていきます。さらに、小規模なコンセッション(スモールコンセッション)も全国に広めて、実際の案件づくりを後押しします。
スモールコンセッション
使われていない廃校や古民家などの公共施設を、民間のアイデアで小さく再生し、地域の課題解決やにぎわいづくりにつなげる官民連携(宿泊、カフェ、農園など)の仕組みです。
【ここがポイント!】
巨大資本による開発ではなく、地元の小規模事業者が参加しやすい「身近なまちづくりビジネス」の形成を、専門家の派遣などを通して国が直接支援します。
第5章のまとめ:母港のアップグレード
補助金を賢く使ったり、減税を活用したりして住まいを快適にアップデートする。また、地域の遊休資産を新しいビジネスに変える。これは、私たちが帰る場所である「母港」(地域・家庭)の価値を高め、次世代に引き継ぐための投資と言えるでしょう。
第6章
課題別「逆引き」ガイド
1.【一般・家計向け】住まいを整え、負担を減らす
「省エネ住宅を建てたい/今の自宅を断熱リフォームしたい」
>> 第5章-1(みらいエコ住宅2026事業) ZEH水準の新築や、光熱費削減に直結する省エネ改修への強力な補助が受けられます。
「コンパクトなマンションや戸建てを購入して、ローン控除を受けたい」
>> 第5章-1(住宅ローン減税:床面積要件の緩和)床面積要件が50㎡から40㎡以上に緩和され、単身者や共働き世帯の選択肢が広がります。
2.【事業者向け】現場の担い手を守り、効率化を進める
「物流の2024年問題に対応するため、荷役の自動化や省力化を進めたい」
>> 第2章-1(物流革新の集中改革)テールゲートリフターや自動化機器の導入補助を活用し、限られた人数で輸送力を確保します。
「元請からの不当な値引きを防ぎ、職人の適正な賃金を確保したい」
>> 第3章-1(建設業の「労務費基準」と建設Gメン)国が定める労務費基準が、価格交渉における強力な「盾」および指導の根拠になります。
「地元の廃校や古民家などの空き資産を活用して、新しいビジネスを始めたい」
>> 第5章-2(スモールコンセッションの推進)地元の小規模事業者が参加しやすい官民連携モデルとして、専門家の派遣などの支援が受けられます。
3.【地域住民・自治体向け】地域の安全と平穏な暮らしを守る
「観光客の混雑やマナー違反(オーバーツーリズム)を解消し、住民の生活を守りたい」
>> 第4章-2(オーバーツーリズム対策/解決の主体は自治体・DMO)
混雑の「見える化」や誘導、ゴミ対策など、旅客税の増収分を財源とした住民生活保護のための環境整備が重点支援されます。
「道路の陥没や水道管の破裂事故を防ぐため、古い管路を新しくしたい」
>> 第4章-1(上下水道管路の老朽化対策/解決の主体は自治体)
八潮市の事故を教訓に、重要管路の更新や「一本ダメになっても他で補える複線化」を国が新規事業として強力にバックアップします。
国土交通省の令和8年度予算案は、地域の暮らしの質を維持・向上させることに主眼が置かれています。インフラの戦略的なメンテナンスで暮らしの安全を担保し、物流や観光、地域活性化の現場が直面する課題を制度と予算の両面で支えるものです。各施策が持続可能な未来へ向けた確かな投資となり、日本の活力を呼び覚ます契機となることが期待されます。
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