
物流業界では深刻な人手不足や「2024年問題」が現場に影響を及ぼしている中、国による投資支援の2次公募が開始されました。令和6年度国土交通省補正予算「中小物流事業者の労働生産性向上事業(テールゲートリフター等導入等支援)」です。これは、エンジン付きの緑ナンバー(事業用自動車)を5台以上保有する中小トラック運送事業者を対象とした補助事業です。
今回の補助金は、テールゲートリフター(TGL)の導入だけでなく、ITシステムや大型免許取得、M&Aなど、物流現場の生産性向上に資する全18メニューが対象となる総合パッケージとなっています。2次募集の予算額は約5億円で、期間内でも予算に達し次第終了する先着順となっています。申請条件や注意点をご確認のうえ、スムーズな手続きにお役立てください。
第1章:補助事業の全体像と四つのカテゴリー
今回の事業は、単に設備を買うための補助金ではありません。物流現場の人、設備、IT、経営を総合的に底上げするために、国が用意した18メニューのパッケージ型支援です。18メニューは四つのカテゴリーに整理されています。 この補助事業の背景には、2024年問題によるドライバーの拘束時間の制限、人手不足、荷待ち・荷役の長時間化など、物流現場が抱える構造的な課題があります。こうした課題に対し、中小トラック運送事業者が、必要なところに必要な投資を行えるようにするのが、この補助事業の目的です。
1.1 本補助事業の三つの特徴
- メニューが広い(全18種類)
車両設備からIT、人材育成、経営改善まで幅広くカバーしています。 - 組み合わせ申請ができる
この補助事業では、異なるカテゴリーのメニューを自由に組み合わせて申請可能です。たとえば、以下のような組み合わせも認められます。
※丸数字は「補助対象事業(メニュー一覧)」の図をご参照ください。
- ①テールゲートリフター + ⑨配車計画システム + ⑱大型免許取得
- ②トラッククレーン + ⑭原価管理システム + ⑯求人広告掲載

- 中小運送事業者の現場の困りごとに直結
荷役負担の軽減、待ち時間削減、採用力向上、経営改善など、現場の課題に合わせて選べる仕組みです。
1.2 四つのカテゴリー
補助対象は18メニューから選べます。メニューは四つのカテゴリーに分類されます。
Ⅰ.車両の効率化設備の導入等事業(①〜④)
荷役作業の負担軽減や輸送力の強化につながる設備が対象です。
(※導入費には取付工賃や消費税は含まれませんので、ご注意ください)
| メニュー番号 | 内容 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| ① | テールゲートリフター | 1/6 | 最大20万円(後部格納式・床下格納式の場合) |
| ② | トラック搭載型クレーン | 1/6 | 最大70万円(大型クラスの場合) |
| ③ | 2段積みデッキ | 1/6 | 最大18万円(1基6万円×3) |
| ④ | ダブル連結トラック | 1/6 | 最大400万円 |

Ⅱ.業務効率化事業(⑤〜⑬)
ITシステムの導入により、待ち時間や事務負担を減らすことが目的です。
| メニュー番号 | 内容 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| ⑤〜⑫ | 予約受付、配車計画、契約書電子化など | 1/2 | 1事業者あたり最大24万円(複数の補助対象システムを申請する場合も1回にまとめる) |
| ⑬ | 車両動態管理システム(デジタコ等) | 1/2 | 1台あたり最大12万円(1事業者10台まで)※⑤~⑫いずれかのシステムとの同時導入が必要 |
Ⅲ.経営力強化事業(⑭〜⑮)
経営改善や事業承継に関する支援です。
| メニュー番号 | 内容 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| ⑭ | 原価管理システム | 1/2 | 最大6万円 |
| ⑮ | M&A・事業承継コンサル | 1/6 | 最大50万円 |
Ⅳ.人材確保・育成事業(⑯〜⑱)
人材の採用・育成・資格取得に関する支援です。
| メニュー番号 | 内容 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| ⑯〜⑰ | 求人広告、人材育成講習 | 1/2 | 最大15万円 |
| ⑱ | 中型・大型・けん引免許、フォークリフト資格取得 | 1/2 | 最大15万円 |

第2章:中小企業の対象要件と補助台数拡大のポイント
2.1 申請できる事業者の条件
- 資本金3億円以下、または従業員数300人以下の中小企業であること。
- 会社全体で「エンジン付きの緑ナンバー(事業用自動車)」を5両以上保有していること。
2.2 車両設備の補助台数を増やす「積み上げ」ルール
「車両の効率化設備(①〜④:TGL等)」については、上記の宣言等がなくても1事業者1台は申請可能です。しかし、取組または取組の組み合わせによっては補助枠を最大7台まで拡大することができます。
通常1台のところ、
① Gマーク取得事業者は上限3台
② ホワイト物流宣言、働きやすい職場認証、またはパートナーシップ構築宣言を行っている事業者は上限2台
③ 間接補助事業終了時点(実績報告を行うタイミング)における事業場内最低賃金時間額が、間接補助事業開始時点(令和6年12月1日時点)と比較して3%又は45円以上を達成している事業者は上限2台とすることができます。
さらに、上記①~③に掲げる要件を複数満たす場合においては、それぞれの上限数の合計値が 申請台数の上限数となります。
例
①Gマーク取得事業者 + ②パートナーシップ構築宣言を行う事業者の場合は合計5台まで
①Gマーク取得事業者 + ②パートナーシップ構築宣言を行う事業者 + ③間接補助事業終了 時点(実績報告を行うタイミング)における事業場内最低賃金時間額が間接補助事業開始時点(令和6年12月1日時点)と比較して3%又は45円以上を達成している事業者の場合は合計7台まで
Gマーク
国土交通省が推進し、全日本トラック協会が認定する「安全性優良事業所」のシンボルマークのことです。トラック運送事業者の安全性を評価・認定し、利用者が安全な事業者を選びやすくするとともに、事業者全体の安全意識向上を促す制度です。「安全・安心」の証として、認定された事業者のみが使用できます。
ホワイト物流宣言
トラック運転者不足が深刻化する中、国土交通省などが主導する「ホワイト物流推進運動」に参加し、物流の生産性向上と、女性や高齢者も働きやすい「ホワイト」(健全・良好)な労働環境の実現を目指して、企業が自主的に行う取り組みとその宣言のことです。
第3章:申請フローのポイントと注意事項
2次募集の申請受付は令和8年2月6日(金)までの消印有効(ただし2月10日までに全日本トラック協会に届くこと)です。なお、予算額に到達した場合は、期限前であっても受付が締め切られますので、ご注意ください。
3.1 申請フローの全体像
補助金の流れは、次の4ステップで進みます。
見積取得・対象確認
- 補助対象メニュー(「1.2 四つのカテゴリー」の①〜⑱)を選ぶ
- 型式が補助対象に含まれているか販売店に確認
| ※補助金の対象となるテールゲートリフター、トラック搭載型クレーン、ラック搭載用2段積みデッキの各型式一覧は、本補助事業の公式サイトに掲載されていますので、ご確認ください。 |
- 導入予定日・支払予定日を調整
- 必要書類(車検証、宣言書類など)を準備
申請書の作成・郵送(令和8年2月6日までの消印有効で、2月10日までに必着)
- 申請書類を全日本トラック協会へ郵送
- 書留またはレターパックのみ受付
- 持参・宅配便・オンライン申請は不可
導入・支払いの完了(令和8年2月6日まで)
- 補助対象となる導入期間:令和6年12月1日〜令和8年2月6日
- 支払いは令和8年2月6日までに完済が必須
- 導入前申請の場合は、導入・支払いを2月6日までに完了させる必要あり
【例外】
2段積みデッキ(③)のみ、令和7年12月1日から令和8年2月6日までの間に導入し、且つ令和8年2月6日までに支払いが完了したものが対象
実績報告の提出(導入前申請のみ)
- 実績報告書の提出期限:令和8年2月20日(金)必着。消印有効ではありません。
- 導入後申請(すでに導入済み)の場合は不要
3.2 「導入」の定義と対象期間
補助対象となる「導入」は、次の基準で判断されます。
- TGL・クレーンなどの車両設備→新規登録日、または構造等変更検査を受けた日
- ITシステム・人材育成・経営支援→契約日・利用開始日・支払日などが基準
👆注意:導入前申請の場合、「交付決定日より前」の発注・契約・導入は補助対象外となりますので、ご注意ください。
3.3 支払いの「完済・清算」ルール(最重要)
補助金の審査で最も厳しくチェックされるポイントです。
- 令和8年2月6日までに、機器代金が1円残らず清算されていることが絶対条件
- 銀行振込・現金支払いが原則
第4章:よくある質問
- 補助金はいつ振り込まれますか?
-
2026年(令和8年)3月末頃の予定です。先に全額を自社で立て替えて支払う必要があるため、資金計画にご注意ください。
- デジタコ(車両動態管理システム)だけを申請したい。
-
不可です。デジタコは、予約受付や配車計画など、他の業務効率化メニューとの同時導入(重複申請)が必須です。
- 国の他の補助金と併用できますか?
-
同じ「機器本体」に対しては、国の他の補助金と一緒に利用することはできません。しかし、例えば環境対応車補助金などで車両本体の補助を受けている場合、その車両に後から取り付けるリフターについては、本補助金を併用することが可能です。一方、ダブル連結トラックについては、他の補助金と本補助金を同時に使うことはできません。
- 免許取得の補助対象外はありますか?
-
普通免許、準中型免許は対象外です。中型・大型・けん引・フォークリフトが対象となります。
第5章:自社の課題に合わせて、最適な投資判断を
今回の補助事業は、設備・IT・人材・経営の4領域にわたる18メニューを対象とした、物流事業者向けの総合的な支援策です。
単に「安く買える」ための制度ではなく、2024年問題や人手不足といった構造的な課題に向き合うための、中長期の投資を後押しする仕組みと言えます。
補助金を最大限に活かすために大切なのは、次の3点です。
自社の課題を起点に、必要なメニューを選ぶこと
荷役負担の軽減、待ち時間削減、採用力の強化、経営改善など、事業者ごとに抱える課題は異なります。18メニューの中から「今の自社に最も効果がある投資」を選ぶことが、補助金活用の第一歩です。
導入・支払いのスケジュールを逆算すること
今回の2次募集は、2月6日までの完済が絶対条件です。
導入前申請の場合は、
- 見積取得
- 申請
(必ず交付決定を待ってから)
- 発注
- 納品
- 支払い
までを、すべて期限内に終える必要があります。補助金の可否は、スケジュール管理が9割と言っても過言ではありません。
社内外の関係者と早めに連携すること
販売店、整備工場、ITベンダー、経理担当者など、複数の関係者が関わるため、早めの情報共有が重要です。
おわりに
この補助金は、物流現場の生産性を底上げするための総合メニューです。設備だけでなく、IT、人材、経営まで含めて支援される制度は貴重でしょう。大切なのは、自社の未来に必要な投資を見極め、期限から逆算して動くこと。「必要だ」と感じたメニューがあるなら、まずは早めに動き出してみてください。
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BizRize事務局
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