
持続可能な社会の実現に向け、地球規模の課題解決は待ったなしの状況です。この大きな壁を乗り越える鍵となるのが、既成概念を打ち破るイノベーションを生み出すスタートアップ企業です。
環境省は、そうした将来有望な環境スタートアップ企業を発掘し、その成長を強力に後押しするため、「令和7年度 環境スタートアップ大賞」の募集を開始しました。今回は受賞者に対して新たに、企業、自治体、投資家などとの個別ビジネスマッチングの機会が提供されます。ブランド力を高めて事業の飛躍的な成長を目指すスタートアップにとって、見逃せない機会となるでしょう。
第1章:環境スタートアップ大賞とは
1.1 制度の目的
環境スタートアップ大賞は、令和2年度より環境省が実施している表彰制度です。私たちが目指す持続可能な社会と、従来からの延長線上にある未来(BAU: Business As Usual)の間には、依然として大きなギャップが存在します。このギャップを埋めるためには、多くの分野で、革新的なアイデアや技術を社会で実際に活用(社会実装)し、大きな成果(インパクト)を生み出すことが不可欠です。
この賞は、環境問題の解決に貢献する革新的な事業(イノベーション)を持つスタートアップ企業を表彰することで、当該企業の取組をロールモデルとして広く紹介するほか、事業機会の拡大とグリーン経済(環境リスクと生態系の損失を減らしながら、人々の生活の質を改善し、社会の不平等を解消する経済のあり方)の加速を目的としています。
1.2 対象となる事業領域
環境保全、特に気候変動、資源循環、自然共生、安全確保などに役立つビジネスや技術を保有する企業が対象です。

第2章:応募要件の概要
2.1 対象企業
応募対象は「創業後、概ね15年以内の環境スタートアップ企業」であり、且つ以下の条件をいずれも満たす必要があります。創業後のステージ(シード、アーリー、ミドル、レイター)は問いません。
- 拠点に関する要件:
日本に何らかの拠点を置いている企業、または置くことを計画している企業。 - コンプライアンス要件:
法令を遵守しており、反社会的組織に所属もしくは関係していない企業(別途「法令遵守宣言書」の提出が必要です)。
なお過去に、この賞(大臣賞、事業構想賞、選定委員賞)を受賞した企業は対象外となります。
2.2 応募締切と提出書類
応募はメールにて受け付けます。募集要領と提出書類①、③は環境省のウェブサイトからダウンロードできますので、ご参照ください。
| 内容 | 詳細 |
|---|---|
| 応募期間(締切) | 令和7年12月19日(金)17:00 |
| 提出書類① | 応募様式(Word形式、A4用紙 3〜5枚程度) |
| 提出書類② |
ピッチ資料(PowerPointまたはPDF形式) ※本編は20枚以下。環境保全性の内容について必ず1枚含めること。 |
| 提出書類③ | 法令遵守宣言書(Word形式、A4用紙1枚程度) |
| 提出先(メール) | env-startup-pitch@yano.co.jp |
2.3 スケジュール
表彰式は令和8年2月20日(金)に予定されており、受賞者にはピッチの機会が提供されます。日程(予定)は以下の通りです。
| 内容 | 日時 |
|---|---|
| 書面審査通過連絡 | 令和8年1月16日(金)まで |
| 面接審査(オンライン) | 令和8年1月23日(金)午前中 |
| 受賞企業発表 | 令和8年1月下旬頃 |
| Green Startup Pitch(表彰式) | 令和8年2月20日(金) |
第3章:受賞特典
受賞企業にはさまざまな特典が用意されています。過去の受賞企業からは、信頼獲得や事業ネットワークの構築、採用活動などにプラスの効果があったという声も上がっています。
3.1 三つの表彰カテゴリー
| 賞の名称 | 選定基準の概要 |
|---|---|
| 環境スタートアップ大臣賞(1社) | 審査基準(第4章参照)を総合的に勘案し、最も高い評価を得た事業。 |
| 環境スタートアップ事業構想賞(1社) | 特に今後の成長が期待される事業。実績の有無を問いませんので、シード、アーリーステージの企業にもチャンスがあります。 |
| 環境スタートアップ選定委員賞(数社) | 大臣賞と事業構想賞に次ぐ、高い評価を得た事業。 |
3.2 成長加速のチャンス
受賞企業は、その後の事業成長を加速させる支援を受けることができます。
- 個別ビジネスマッチングの提供:
受賞者に対し、企業などとの個別面談の機会が提供されます。革新的な技術やサービスの実証、導入、資金調達を後押しします。 - 「Green Startup Pitch」への登壇。
- 環境省が定める受賞ロゴマークの使用許諾。
第4章:審査で問われる六つの評価軸
選定委員会による審査は、以下の六つの評価項目に基づいて行われます。環境保全性は、資料に必ず1枚盛り込むことが求められている項目でもあります。
| 評価項目 | 評価内容のポイント |
|---|---|
| ① 成長・チャレンジ性 | 野心的な目標設定と、その実現に向けた具体的な見通しが立てられているか。 |
| ② 環境保全性 | 環境保全に役立つ事業であるか。期待される効果について、特許や学術論文、実証データなどの科学的な根拠が示されているか。 |
| ③ イノベーション創出 | 技術やビジネスプランに新規性があるか。競合他社に対する明確な優位性があるか。 |
| ④ 市場性の魅力 | 海外市場を含む市場規模やニーズが大きく、事業機会が期待できるか。 |
| ⑤ 事業体制 | チームの能力や多様性、リソース調達力など、事業を推進する体制が魅力的か。 |
| ⑥ 実績 | ビジネスとしての実績(資金調達額や売上など)が上がっているか。(※事業構想賞では実績は問われない) |
第5章:過去の受賞事例に見るイノベーション
過去の受賞例の中には、国内の環境スタートアップのロールモデルとして、その社会的インパクトを拡大している企業もあります。環境省のウェブサイトでは、過去の受賞者の取組に関する資料や表彰イベントの様子が紹介されています。事例を二つ、ご紹介します。
5.1 株式会社Gaia Vision(令和5年度 環境スタートアップ大臣賞)
事業内容
東京大学発のグローバル・高解像度洪水シミュレーション技術(Climate Vision/Water Vision)を活用し、気候・水リスク分析ソリューションを提供しています 。
社会的効果
- リスク開示と経営判断への活用:将来の気候変動シナリオに基づく高解像度な洪水リスク分析を可能にし、企業の財務影響評価を支援します。これにより、TCFD/TNFDレポートなどの情報開示や、リスクを踏まえた対策の優先度付けといった経営判断を可能にしています。
- 実働的な危機管理への貢献:リアルタイム洪水予測ソリューションを活用することで、水害切迫時における自治体による適切な避難誘導や、企業による従業員の安全確保、資産の事前退避といった実働的な危機管理を支援します。

5.2 株式会社 TOMUSHI(令和5年度 環境スタートアップ事業構想賞)
事業内容
カブトムシの幼虫を活用し、地域の廃菌床や農業残渣などの有機廃棄物を処理する事業を展開。処理後のフンは国産の有機肥料として活用され、幼虫は高タンパク飼料や医薬品の原料などに変換される、循環型のビジネスモデルです。
社会的効果
タンパク質危機や廃棄物処理といった地球規模の課題解決に貢献し、地方創生などの地域貢献も積極的に行っています。

第6章:次のステージへの第一歩
環境スタートアップ大賞は、夢や理念を語る場であると同時に、事業を一歩前に進めるための実務的な機会でもあります。受賞によって得られるのは、資金調達や販路拡大の可能性、自治体や企業との具体的な協業の場です。これらは、日々の事業運営に直結する現実的な後押しとなります。
環境課題の解決は壮大なテーマですが、応募の一歩は決して大げさなものではありません。 「今ある技術や取り組みを、社会にどう役立てるか」を整理し、応募書類に落とし込むことから始まります。
この賞は、挑戦を続ける企業にとって、次の顧客やパートナーと出会うための入り口でもあります。現場で積み上げてきた努力を社会に示す場として、ぜひ挑戦してみてください。
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