再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力の不安定化に備え、国は電力需給の柔軟な調整手段として、蓄電池や設備の制御技術を活かした「ディマンドリスポンス(DR)」の活用を本格的に後押ししています。令和6年度補正では、DRに参加可能な蓄電池の新規導入を支援する事業と、既存の空調、照明、生産設備などをIoT化してDR対応を可能にする事業の2制度が同時に公募されています。企業の皆さんが「自社の電力設備にDRという新たな選択肢をどう経営に取り込むか」を判断する上で、制度面からの後押しとなるものです。本記事では、それぞれの事業の目的や対象要件などを整理し、皆さんが自社における活用余地を検討するための視点をお届けしたいと思います。 1 DRとは何か。停電との違いと制度の思想 DR=ディマンドレスポンス=とは、「電気を使う側が、電力の需給バランスに応じて使用量を調整する仕組み」です。猛暑で電力が足りなくなりそうなとき、企業が空調を控えたり蓄電池を放電したりすることで、電力全体のピークを下げます。その結果、停電を未然に防ぐことにもつながります。2011年の東日本大震災の際、電力供