確定申告をした際に、想像以上の税金が発生して驚いた経験はありませんか?
実は、確定申告の段階では節税を試みても、ほとんど効果的な方法が残されていないのが現実です。節税を効果的に行うためには、年内に対策を取ることが重要です。
そのため、11月ごろには、事業の利益がどの程度出ているのか、またそれに伴う所得税などの税負担がどれくらいになるのかを試算してみましょう。こうすることで、年末までに最適な節税対策を講じるための準備ができます。
この記事では、個人事業主が年末に実行できる具体的な節税方法について詳しく解説します。
倒産防止共済
倒産防止共済(正式名称:経営セーフティ共済)は、中小企業や個人事業主が取引先の倒産など、突発的な経営リスクに備えるための共済制度です。この制度を活用することで、万が一取引先が倒産し、売掛金などの回収が困難になった場合に、最大で掛金総額の10倍(上限8,000万円)の貸付を受けることができます。これにより、資金繰りの急な悪化を防ぎ、事業の継続性を高めることができます。
倒産防止共済は年末の節税策として非常に有効です。掛金は「必要経費」として扱われるため、事業所得を減らすことができます。年末までに年払い(前納)を利用すれば、その年の経費を大きく増やすことができます。たとえば・・・
- 月額20万円の掛金を1年間分前納すると、最大240万円の経費が計上可能。
- 月払い(年間240万円)と前納(年間240万円)を組み合わせると、1年間で最大480万円の経費計上が実現。
ただし、解約時に受け取る返戻金は事業所得として課税されるため、解約するタイミングは所得が少ない年を選ぶのがおすすめです。
加入手続きと前納の注意点
加入方法
- 登録取扱機関(商工会議所など)や金融機関窓口で申し込み。
- 必要書類を揃え、審査を経て加入が認められます。
前納の手続き
- 「掛金前納申出書」を提出し、希望月の5日までに中小機構に届くように手配。
- 提出が遅れると翌月受付となるため、締切には注意。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、事業主専用の退職金制度です。
この制度では、毎月の掛金を支払うことで、個人事業主が廃業した際などの生活資金を計画的に積み立てることができます。
掛金は月額1,000円から7万円まで(500円単位)で自由に設定・変更可能です。また、掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額が所得控除の対象となり、節税効果が期待できます。
さらに、掛金は年払いも可能で、たとえば12月に翌年1年分をまとめて支払った場合、その全額をその年の所得控除として計上できます。つまり、年末ぎりぎりに掛金を支払うことで、所得を抑えることが可能です。ただし、加入には一定の手続きが必要なため、11月下旬ごろまでに準備を進めると安心です。
掛金の上限である月7万円を年払いすると、最大84万円(7万円×12か月)の所得控除が受けられるため、特に高所得者には大きな節税メリットがあります。
また、共済金を受け取る際は「退職所得」として扱われるため、比較的軽い税負担で受け取れるのも特徴です。ただし、加入後20年以内に廃業以外の理由で解約した場合、元本割れとなるリスクがあるため、長期的な視野での利用が重要です。
30万円未満の備品を購入
固定資産(備品など)を購入する際、1組10万円以上のものは減価償却費として処理するのが原則です。これは、購入費用を数年間にわたって経費として分割計上する方法であり、購入した年に全額を経費に計上することはできません。しかし、青色申告者の場合には特例が設けられており、1組30万円未満の固定資産であれば減価償却をせず、購入した年に全額を即時償却として経費に計上することが認められています。
この特例を活用すると、たとえば20万円のパソコンを購入した場合、その全額をその年の経費として計上することが可能になります。この結果、所得を大きく圧縮することができ、節税効果が生まれます。
ただし、無計画に支出を増やすことは避けなければなりません。不要なものや、今後使用する予定のないものを購入してしまうと、節税目的で得られるメリット以上に事業資金を圧迫してしまう可能性があります。そのため、近いうちに購入を予定しているものを早めに用意する程度にとどめるのが賢明です。
また、この30万円未満の即時償却制度には年間の上限額があります。1年間で即時償却できる固定資産の購入金額は合計で300万円が限度とされているため、同じ年に複数の備品を購入する場合は合計金額に注意が必要です。この上限を超えた場合、超過分については減価償却費として計上する必要があります。
年末が近づく時期は、事業の利益や節税の必要性を見直す良いタイミングです。この機会に、事業に必要な備品の購入を検討し、即時償却の特例を活用してみるのはいかがでしょうか。ただし、特例を利用するためには青色申告が条件となる点や、年間300万円の上限がある点に注意が必要です。
年末までに適切な節税対策を講じることで、確定申告時の税負担を大幅に軽減することができます。ご紹介した3つの方法は、効果的で実践しやすい手段です。
- 倒産防止共済を活用して掛金を必要経費に計上する。
- 小規模企業共済で将来の生活資金を積み立てつつ所得控除を受ける。
- 30万円未満の備品購入で即時償却特例を利用し、必要な支出を経費計上する。
これらの対策を活用するには、事前に事業の利益を把握し、計画的に実行することが重要です。また、それぞれの制度には手続きや条件があるため、早めの準備を心がけましょう。年末の節税対策をしっかり行い、安心して新しい年を迎える準備を進めていきましょう。
投稿者
経営資源プラットフォームBIZRIZE