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補助金・助成金

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2025.11.21

運送事業者らの安全対策を支える ASV補助金は登録済み車両が対象の事後精算方式

近年、交通事故削減と安全文化の定着が運送事業者に強く求められています。その実現を支援するのが、国土交通省の「先進安全自動車(ASV)の導入に対する支援」事業(以下、ASV補助金)です。ASV補助金は、補助金の交付決定を待たずに、購入・新車新規登録後に申請する「事後精算方式」です。ASV補助金には複数の事業がありますが、今回ご紹介するのは、バス、タクシー、トラック運送事業者の皆さんを対象に、安全運転サポート装置が搭載された先進安全自動車(ASV)の購入費の一部を補助するタイプです。

ASV補助金は申請が先着順で審査される仕組みになっており、申請期間内であっても予算額に達した時点で受付が終了します。そのため、早めの準備が推奨されます。以下では、この補助金の概要を整理していきます。

※最新の補助金残額割合は、補助金申請ポータルサイトに掲載されています。

第1章:まず確認!あなたは対象?

1.1 ASV(先進安全自動車)とは

「先進安全自動車(Advanced Safety Vehicle/ASV)」は、先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した自動車のことです。国土交通省は、ASVの普及に向けてASV推進計画に取り組んでいます。

1.2 対象事業者の条件

補助対象事業者は以下の通りです。詳細な条件については、補助金申請ポータルサイトに掲載されている公募要領などの資料をご確認ください。

 

【原則】以下の全てを満たす事業者

✓ 業種:路線バス事業者、タクシー事業者、トラック運送事業者

✓ 規模:中小企業者等

✓ 行政処分歴:申請日から過去3年の間において行政処分を受けていないこと

※トラック運送事業については、申請時点において、補助対象装置を導入した車両が属する営業所の届出車両数が5両以上である必要があります。

 

【例外】規模要件が緩和される事業者

観光バス、貸切バス事業者については、中小企業者等でなくとも申請できます。

 

【リース事業者】

上記の事業者に車両を貸し渡すリース事業者も対象です。

◆補助対象事業者チェック表

事業種別中小企業要件その他の要件行政処分歴(3年以内)判定
路線バス必須(中小企業者等のみ)なし✓対象
観光・貸切バス不要(規模問わず)なし✓対象
タクシー必須(中小企業者等のみ)なし✓対象
トラック必須(中小企業者等のみ)営業所の届出車両数
5両以上
なし✓対象
※行政処分歴(3年以内)が「あり」の場合は、すべて対象外となります

1.3 申請期間・窓口

項目詳細
申請受付期間令和8年1月30日 午後5時00分まで
申請窓口公益財団法人 日本自動車輸送技術協会(JATA) 補助金申請ポータルサイト
※運輸支局等では受け付けておりませんので、ご注意ください。

1.4 補助率と中小企業者の定義

事業者区分補助率
中小企業者等2分の1
中小企業者等以外3分の1
 

中小企業者の定義

中小企業者等は、ASV補助金の公募要領で中小企業者、または中小企業等協同組合法で定義する事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会、企業組合と規定されています。このうち中小企業は、中小企業庁の解釈により、以下のいずれかに該当する事業者を指します。

  1. 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社
  2. 常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

第2章:何にいくら補助されるのか

2.1 補助対象車両の条件

補助対象車両は、以下の全ての条件を満たす必要があります。

  1. 新車新規登録期間
    令和7年4月1日から令和8年1月30日までに新車新規登録されたASV
  1. 支払い完了
    補助金申請時に支払いが終わっていることが必須です。補助金交付申請書と実績報告書を兼ねた書類、自動車検査証記録事項の写し、領収書の写し、納品書の写し又は搭載証明書を提出する事後精算方式のため、購入、支払い、新車新規登録は完了している必要があります。
  1. 装置搭載
    衝突被害軽減ブレーキや先進ライトなどの対象装置が搭載された新車であること。

2.2 補助対象装置と補助上限額一覧

それぞれの装置には、詳細な機能(性能)の要件が公募要領に定められています。必ず公募要領をご確認ください。 

区分補助対象装置補助対象車種補助上限額 (中小企業等)補助上限額 (中小企業等以外)
衝突被害軽減ブレーキ
(歩行者検知機能付き)
車両総重量3.5t超のトラック、バス100,000円67,000円
車間距離制御装置+車線維持支援制御装置トラック、バス、タクシー100,000円67,000円
ドライバー異常時対応システムトラック、バス、タクシー100,000円67,000円
先進ライトトラック、バス、タクシー100,000円67,000円
側方衝突警報装置車両総重量3.5t超8t以下のトラック、バス50,000円33,000円
後側方接近車両注意喚起装置車両総重量3.5t超のトラック、バス50,000円33,000円
統合制御型可変式速度超過抑制装置バス100,000円67,000円
アルコール・インターロックトラック、バス、タクシー100,000円67,000円
事故自動通報システム(後付け含む)トラック、バス、タクシー(後付け以外)
50,000円
(後付け)
30,000円
(後付け以外)
33,000円
(後付け)
20,000円
車輪脱落予兆検知装置車両重量8t以上のトラック
乗車定員30人以上のバス
50,000円33,000円
道路標識注意喚起装置トラック、バス、タクシー30,000円20,000円

2.3 車種別の補助限度額

同一車両に複数の装置を装着する場合、車両1台あたりの補助限度額(総額)が定められています。

車種補助限度額(中小企業者等)
トラック200,000円
バス300,000円
タクシー150,000円
※中小企業等以外の観光バスや貸切バス、および貸渡し先が中小企業者等以外の場合の補助限度額は200,000円

2.4 特例措置(トラクタ/後付けシステム)

トラクタ(トレーラヘッド)特例
トラックのトラクタ(トレーラヘッド)に装着する衝突被害軽減ブレーキについて、当該トラクタとともにトレーラーを導入する場合の補助限度額は150,000円です。

事故自動通報システムは後付け可能
例外として、事故自動通報システムについては既存車両への後付けも認められます。ただし、国土交通大臣が認定したシステム(こちらに掲載)に限られます。

後付けの事故自動通報システムは、サブスクリプションによる購入が可能で、車両1台あたりの補助限度額は12カ月分の料金の2分の1(中小企業者等以外は3分の1)です。

第3章:申請に必要な条件と注意点

この章は、申請に必須の条件をまとめています。

3.1 安全マネジメント体制の整備

補助金の申請にあたっては、単に装置を導入するだけでは足りません。事業者が「安全を最優先にする」という経営姿勢を明文化し、輸送の安全に関する以下のような目標や計画を策定していることが求められます。この補助金が単なる装置導入支援ではなく、事業者が安全文化を持ち、継続的に改善する姿勢を前提に設計されていることが見て取れます。

 

基本方針の策定

経営トップが「輸送の安全は事業の根幹である」旨を宣言する基本方針を定める

 

数値目標の設定

人身事故ゼロ、飲酒運転ゼロといった具体的な数値目標を掲げる

 

行動計画の策定

目標を達成するための具体的な行動計画を策定する

  1. ドライバー教育の実施
  2. 車両点検の徹底
  3. アルコールチェックの義務化、など

3.2 支払い方法の制限

新車の代金支払い方法については、以下のように定められています。

 

認められる支払い方法

  • 振込
  • 現金
  • 小切手
  • 振出日から3カ月以内に支払期日が到来する約束手形(本人手形に限る)
  • クレジット一括払い
 

認められない支払い方法

ローンによる支払いの場合は補助対象外となりますので、ご注意ください。

3.3 処分制限と返還義務

補助金で取得した車両や装置を処分制限期間(4年または5年)内に売却する場合は、以下の対応が必要です。

  1. 事前にJATAの承認を受ける
  2. 原則として補助金の一部を返還する

3.4 優先採択制度(賃上げ表明)

予算超過時の申請では、令和7年(度)に賃上げに取り組むことを表明している申請者を優先的に採択する仕組みが設けられています。

 

要件

  1. 対前年(度)比で「給与総額」を1.5%(中小企業者等以外は3%)以上増加させることを従業員に表明
  2. 賃上げ実績を示す書類を提出

第4章:よくある質問

補助金の交付が決定してから車両を購入しないといけないのでしょうか?

いいえ、一般的な補助金と異なり、先に購入しておく必要があります。

このASV補助金は、車両の購入と支払いを済ませた後、その実績をもって申請する「事後精算型」の仕組みです。補助対象は令和7年4月1日から令和8年1月30日までに新車新規登録された車両です。

ただし、予算には限りがあり、申請は申し込み順に審査されますので、購入後は速やかに申請手続きを行ってください。

すでに所有している既存車両に装置を後付けで導入する場合でも、補助金は適用されますか?

補助対象車両は原則「新車新規登録された車両」です。このため、衝突被害軽減ブレーキなどの主要なASV装置を既存車両に後付けしても補助対象とはなりません。

ただし、事故自動通報システムに限り、後付け専用の補助限度額が別途設定されています。国土交通大臣が認定したシステムに限り導入可能です。

オートローンで車両代金を支払い途中の場合、ASV補助金を活用することはできますか?

いいえ、オートローンで支払いを終えていない場合は補助対象外です。

第5章:まとめと申請チェックリスト

5.1 この制度が目指すもの

ASV補助金は、単なる装置導入支援にとどまらず、事業者が安全文化を根付かせることを前提としています。「安全を最優先にする経営姿勢」を後押しするための仕組みとも言えるでしょう。

輸送事業者にとって、事故ゼロを目指す取り組みは社会的責務とも言え、同時に企業価値を高める投資でもあります。この制度を活用し、装置導入と安全マネジメント体制の強化を両輪として進めることが、持続的な事業運営と信頼獲得につながるのではないでしょうか。

5.2 申請前チェックリスト

申請後に「対象外だった」と判明するケースを防ぐため、以下のポイントを事前にチェックし、要件を満たしていることを確認してください。

◆必須条件チェックリスト

チェック項目確認欄
自社は対象事業者(バス、タクシー、トラック運送事業者のいずれか)である
中小企業者等に該当する(観光・貸切バスは規模を問わない)
過去3年以内に行政処分を受けていない
トラック事業者の場合、営業所の届出車両数が5両以上である
車両の新車新規登録日は令和7年4月1日〜令和8年1月30日の間である
※購入契約日ではありませんので、ご注意ください。
補助対象装置が搭載された新車である
車両代金の支払いは全額完了している
支払い方法はローン以外(振込、現金、小切手、約束手形〔3か月以内〕、
クレジット一括払い)である
輸送の安全に関する基本方針を策定している
輸送の安全に関する数値目標を設定している
数値目標達成のための具体的な行動計画がある
自動車検査証記録事項の写しを用意できる
領収書の写し、納品書の写し又は搭載証明書を用意できる
補助金申請ポータルサイトで最新の残額を確認した
申請期限(令和8年1月30日 午後5時00分)前である

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