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2025.07.25

有機JAS・GAP等認証取得支援の補助事業 輸出・販路拡大に活かす認証取得のポイント解説

農林水産省が、有機JAS認証やGAP等認証の取得にかかる費用を補助する支援事業を実施しています。輸出や販路拡大を目指す事業者にとって、認証取得は事実上、安全性の証明として国内外の商談や取引の前提となる重要なツールです。本記事では、有機JAS認証取得支援事業とGAP等認証取得支援事業の概要、申請方法、補助対象経費、制度の背景にある政策的な意図までを分かりやすく整理して、実務的な視点から情報をお届けします。

(出典:事業に関する資料

01 有機JAS認証とは?制度の概要

「有機」と表示された食品に、国の基準があることをご存じでしょうか。有機JAS認証は、日本の農林水産省が定める「日本農林規格(JAS規格)」に適合した生産・加工・流通が行われていることを第三者機関が認証する制度です。これは、日本独自の認証制度であり、取得した商品には「有機JASマーク」を付けることができます。

認証の対象は、農産物だけでなく、加工食品や飼料、畜産物、藻類などにも広がっており、輸出時にorganic表示の根拠として求められる場合もあります。

02 GAP等認証とは?輸出での役割

GAP(Good Agricultural Practices)は、農畜産物を生産する工程で生産者が守るべき管理基準とその取組のことを指し、「良い農業の取り組み」や「農業生産工程管理」などと訳されます。持続可能な農業のために生産者が取り組むべき基準となっています。

GAP「等」認証取得支援とあるのは、認証制度が国内外に複数存在するためです。今回の事業の実施要領によると、支援対象は「GLOBALG.A.P、ASIAGAP、JGAP、MPS-ABC等のいずれかに限る」とあります。

バイヤーによっては、商談条件として特定のGAP等の認証(特に国際基準)を求めてくるケースもあり、輸出においては実務上の必須要件になることも少なくありません。

 

各種認証制度について

JGAPとASIAGAP
両認証プログラムを開発、管理、運営している一般財団法人日本GAP協会によると、JGAPは2005年にスタートした日本の標準的なGAP です。ASIAGAPは、アジア共通のGAP のプラットフォームとしての位置づけです。両認証プログラムの認証機関一覧は、こちらに掲載されています。同法人によると、JGAPへの集中によるGAP普及の一層の加速化を目指して、ASIAGAPの2028年終了とJGAPへの一本化が予定されています。

GLOBALG.A.P.
一般社団法人GAP普及推進機構のウェブサイトによると、食品安全、労働環境、環境保全に配慮した「持続的な生産活動」を実践する優良企業に与えられる国際基準であり、世界130か国以上に普及しています。欧米の大手小売ほか、最近は日本の小売でもGLOBAL G.A.P.などの国際認証を取得した生産者からの仕入れを優先する傾向がみられます。

MPS-ABC
日本の農林水産省が公表している資料によると、MPSは「花き」生産の環境プログラムであり、MPS-ABCは生産過程における農薬、肥料、エネルギーなどの環境負荷低減への取組みに関する環境認証です。

03 認証取得が輸出や商談で求められる理由

インターネットにおいて、「有機JAS認証 必要性」「GAP等認証 商談条件」などの用語で検索されることが増えていますが、輸出拡大を進めるうえで認証取得はあれば安心という選択肢ではなく、なければ始まらないという位置づけにもなりつつあります。

例えば、有機JAS認証においては、米国、EU、カナダ、スイス、英国、台湾などの国・地域との間で有機同等性協定が締結されています。これは、それぞれの有機認証制度が同等の基準を満たしていると認め合う制度です。またEUを含む多くの国では、食品の製造や加工工程における衛生管理手法を意味するHACCP(ハサップ)や、GLOBALG.A.P.などの導入が推奨されており、取得が求められる場面が増えています。

こうした背景には、価格競争から信頼競争へのシフトがあります。安ければ売れるではなく、信頼できるから選ばれる時代。認証はその信頼を可視化する手段であり、品質や安全性、持続可能性といった目に見えにくい価値を証明するツールとして機能しています。

認証取得は国内での市場拡大においても効果を発揮しています。有機JAS・GAP等認証取得支援事務局を務める株式会社マイファームの資料「認証取得による輸出拡大に向けた各地の取り組み事例集」から一例を見てみましょう。

福岡県筑紫野市の「オーガニックパパ株式会社」は、有機JAS認証を取得したことで、地元のオーガニック給食用の有機原料・素材を学校に供給するようになり、地域からも高い評価を得たといいます。京都府久御山町の京葱SAMURAI株式会社は、GLOBALG.A.P.を取得し、シンガポールへの輸出実績などを築きました。同社は「3社の農家からなる会社のため、3社とも認証基準をクリアする必要があった」といいますが、同じ世界基準にそろえることで仕事に対するモチベーションも向上。より良い品質の商品を安定した品質で供給することが可能となりました。

※HACCPの認定・認証取得に向けた費用を補助する「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」については、こちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひお読みください。

HACCP認定・認証に関する補助事業を解説
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04 有機JAS認証取得支援事業の内容と補助対象

※事業に関する公式ウェブサイトはこちらです。

事業概要

有機農畜産物や有機加工食品の輸出に向け、新たに有機JAS認証を取得しようとする農業者などを対象に、認証取得費用や、輸出へ向けた商談会や展示会などへの出展、商品開発、機械リース導入に必要な経費を支援する事業です。

支援対象者の要件

以下のいずれかに該当する必要があります。

①農業者、農事組合法人、農事組合法人以外の農地所有適格法人、農業協同組合、その他農業者の組織する団体、又は農畜産物の生産を行う事業者

②有機加工食品の製造又は有機農畜産物などの流通・販売に取り組む事業者

③構成員に①または②が含まれる協議会

支援対象経費

①有機JAS 認証の取得
有機農畜産物や加工食品などの輸出に向けて新たに必要となる有機JAS 認証の取得費用

※輸出しようとする品目が、有機JAS 認証を取得済みの有機農畜産物である場合や、新たな有機JAS 認証の取得を必要としない加工食品である場合は支援対象外です。

②商談
日本国内又は国外で行われる商談展示会への出展費用や展示商談会などの場を活用した海外バイヤーや輸出関連事業者との商談に関する費用(出展費、通信運搬費、印刷製本費、旅費、謝金など)

③商品開発
輸出向け有機農畜産物等の試作品の開発に必要な費用(原材料費、消耗品費、旅費、謝金、役務費など)

④機械などのリース導入費=「6.有機JAS・GAP等認証支援事業に共通する申請要件」の「④目標設定」のうちア(新たな輸出)又はイ(輸出額105%以上)のいずれかの目標を設定した場合に限り選択可能です。

注意:①または②は必須の取組です。

補助率等

上記①(認証取得)と④(リース)の取組は1/2以内、 ②と③の取り組みは定額です。

05 GAP等認証取得支援事業の内容と補助対象

※事業に関する公式ウェブサイトはこちらです。

事業概要

GAP等認証(GLOBALG.A.P. /ASIAGAP/JGAP/MPS-ABC等)を受けて生産された農産物の輸出に向けて、認証取得の費用や輸出向けの展示商談会への出展に必要な経費を支援する事業です。

支援対象者の要件

以下のいずれかに該当する必要があります。

① 農業者、農事組合法人、農事組合法人以外の農地所有適格法人、農業協同組合その他農業者の組織する団体、又は農畜産物の生産を行う事業者など

②構成員に①及び輸出関連事業者が含まれる協議会

支援対象経費

① GAP等認証の取得
農作物の輸出に向けて新たに必要となるGAP等認証(GLOBAL.G.A.P./ASIAGAP/JGAP/MPS-ABCなど)の取得に必要な費用(団体認証における構成経営体数の拡大を含みます)が対象です。具体的には以下の通りです。

(1)認証審査費用
(2)研修指導受講費用
(3)環境整備費用
(4) 機械などのリース導入費用

②商談
日本国内外で行われる展示商談会への出展費用や、展示商談会などの場を活用した海外バイヤーや輸出関連事業者との商談に関する費用(出展費、通信運搬費、印刷製本費、旅費、謝金、旅費など)

補助率等

上記①(認証取得)の取組は1/2以内、②(商談)の取組は定額
上記①(認証取得)の(2) (3) (4)についての上限額は以下の通りです。

(2) 研修指導受講費用(上限額)

  1. GLOBALG.A.P. 5万円/日(上限25万円)
  2. ASIAGAP 4万円/日(上限20万円)
  3. JGAP/MPS-ABC 4万円/日(上限20万円)
  4. 研修指導員の旅費は2万円/日(上限10万円)

(3)環境整備費 上限20万円

(4)機械などのリース導入費 「6.有機JAS・GAP等認証支援事業に共通する申請要件」の「④目標設定」のうちア(新たな輸出)又はイ(輸出額105%以上)のいずれかの目標を設定した場合かつ、事業事務局が、輸出に向けて合理的なリスク管理手法を活用するモデル的な取組として承認した場合のみ対象に含めることが可能です。

06 有機JAS・GAP等認証支援事業に共通する申請要件

農林水産物や食品輸出に関するプロジェクト(GFP)のコミュニティサイトに登録することが必要です。

 

キーワード

GFP
Global Farmers / Fishermen / Foresters / Food Manufacturers Project の略称であり、農林水産省が推進する日本の農林水産物輸出などを推進するプロジェクトです。

(出典:GFPのウェブサイト

過去に輸出を目的とした国の事業による認証取得支援を受けていないこと。

なお、県や自治体独自の支援を受けている場合は対象外ではありません。

③応募受付期間

第3回:2025年7月8日(火)~8月6日(水)(採択可否通知:8月下旬頃)

第4回: 2025年8月7日(木)~9月8日(月)(採択可否通知:9月下旬頃)

第5回: 2025年9月9日(火)~10月10日(金)(採択可否通知:10月下旬頃)

第6回: 2025年10月11日(土)~11月10日(月)(採択可否通知:11月下旬頃)

注意:予算額の上限に達した場合、公募は終了します。

④目標設定

次のア~ウのいずれかの目標を設定することとし、目標を達成できなかった場合には、自己負担で取り組みを続ける必要があります。

ア.2026年度末までに、新たにGAP等認証農産物の輸出を行うこと

イ.2026年度中における農畜産物・加工食品の輸出額または輸出数量を、2023年度と比して105%以上とすること

ウ.事業実施期間終了までに、GFPのコミュニティサイトにおける輸出診断を受けるとともに、日本国内で海外バイヤー等を招聘して行われ、又は日本国外で行われる展示商談会において、GAP等認証農産物を1回以上出展すること。また、事業実施期間中に、輸出に向けた具体的な計画を策定すること。

⑤実績後の書類提出

2026年2月25日(水)までに実績報告書類を提出する必要があります。

認証取得へ向けたお役立ち情報

有機JAS認証取得等支援に関する公式ウェブサイトには認証費用に関する情報など、GAP等認証取得支援に関する公式ウェブサイトには農林水産省によるGAPの実践に必要な情報など、認証取得に向けて役立つ情報を紹介したウェブサイトのリンクが掲載されていますので参照してください。

07 よくある質問-認証取得支援事業の申請時の注意点

認証取得支援事業に関する申請時の注意点や、制度の運用に関する疑問点をQ&A形式で整理しました。

個人事業主でも応募できるか。

補助対象者の要件を満たしていれば応募可能です。

すでに有機JAS認証/GAP等認証を取得しているが、更新・継続にかかる費用は対象となるか。

対象となるのは新規の取組に対する経費のみですので、更新・継続の場合は対象外です。

有機JAS認証/GAP等認証の取得はまだ出来ていないが、すでに審査機関に申込んでおり、取得に向けた経費が発生している場合、採択までにかかった費用は補助の対象になるか。

原則として、審査を経て採択後に発生した経費のみが対象となりますので、お尋ねのケースは対象外と考えられます。

同一の事業者が、有機JAS認証取得支援事業とGAP等認証取得支援事業の両方に同時に応募することは可能か。

両方の認証取得に要する費用について、それぞれの事業で申請することは可能です。ただし、同一の取組内容(例:同一の商談会に必要な旅費や出展費用など)を、両事業に重複して申請することはできません。申請にあたっては、各事業で申請する内容の切り分けが必要となります。

08 制度設計に込められた工夫

今回の支援事業は、申請者のハードルを下げて裾野を広げようとする農林水産省の意図が込められているように見受けられます。

 

5月~11月まで「毎月公募」

  通常の補助事業では年1〜2回の公募が一般的ですが、本事業では毎月の募集が行われています。これは、認証取得のタイミングや事業者の準備状況に合わせて申請しやすくするための工夫と考えられます。

 

対象経費の幅広さ

補助対象には認証審査費用だけでなく、試作品の開発費、展示会の出展費用、旅費、機械リース費用なども含まれています。これは、認証取得を単なる手続きではなく、商流づくりや輸出支援の入口ととらえた政策設計といえます。

09 認証取得支援事業の申請方法と流れ

①応募書類一式をダウンロード

②書類に記入

参考資料の記入例も見ながら、書類を完成させます。

③応募

申請書類の提出は、電子メール(Word、Excelファイルのままで可)にて、事業事務局宛てに送ります。メールアドレスは、事業の公式ウェブサイトに掲載されています。

④交付決定の通知

事業着手は原則、交付決定後でなければ認められません。事前に事務局の承認を得た場合は、例外的に認められることがあります。

⑤事業期間と完了後

事業期間は2026年2月25日(水)までです。事業後は、同日までに実績報告書と支払請求書を提出します。

⑥補助金受領

報告書などの書類審査の結果、補助金の交付条件に適合すると認められたときは、事業者に補助金が交付されます。

10 認証取得は次への一歩

有機JAS認証やGAP等認証の取得は、商談や取引の入り口として機能し、ブランド構築や市場開拓の土台、次の戦略へ向けた一歩となります。今回の支援制度は、そうした一歩を無理なく踏み出せるよう設計されており、輸出に向けた取組を後押しする仕組みとなっています。認証取得をきっかけに、事業の新たな展開につなげてみませんか。

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