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2025.07.04

低濃度PCB廃棄物の適正処理へ 令和9(2027)年3月31日の期限迫る 助成金を活用し速やかな処理を! 環境省担当者インタビューも

「PCB」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。ポリ塩化ビフェニル(Poly Chlorinated Biphenyl)の略称で、人工的に作られた主に油状の化学物質のことです。PCBという言葉が広く知られたきっかけは、1968年に発生したカネミ油症事件です。低濃度PCB廃棄物は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号。以下「PCB特措法)という。)により令和9(2027)年3月31日までに処理を終わらせることが義務付けられています。環境省は中小企業等の処理を後押しするため、分析費と処理費に対し2分の1の額を助成する事業を実施中です。本事業を所管する同省PCB廃棄物処理推進室の担当者に、速やかな処理を進める必要性などをうかがいました。処理対象の機器等を使用もしくは保管している、または作業場や倉庫に眠っている可能性がある中小企業や個人事業主の方は保有の有無を総点検し、保有していることが判明した場合は助成金の活用も検討し、適正な処理を進めてください。
 
低濃度PCB廃棄物や、本事業の詳細については、以下のホームページも参考にしてください。

低濃度PCB廃棄物の処理を迅速に進めるべき理由や、適正な処理がなされない場合のリスクなどについて、環境省のPCB廃棄物処理推進室の担当者にインタビューしました。

 国は、令和4年度に調査の手引きを公表し、令和5年度からは実態調査を進めていますが、実態を把握することは非常に困難であり、具体的なデータとして、お伝えできるものはありません。

 特定の業界で処理が遅れているという状況は把握していません。PCBは、主に絶縁油や熱媒体に使われていますが、製品寿命などを考えると、大容量の電気を必要とする機器に組み込まれた変圧器やコンデンサー等から低濃度PCBが発見されることが多いです。このため、業界を問わず、2004年(※一部のメーカーのコンデンサーについて、2004年以前に生産されたものもPCB汚染の可能性があるとされています)以前の古い受電設備や、溶接機、レントゲン装置、制御盤などを現在も使用されている事業者を中心に周知しているところです。

 PCBという物質は残留性と毒性があるものですから、環境中に放出されてしまうと、広範な汚染や長期的な健康被害のリスクを引き起こす物質であると世界的に認識されており、ストックホルム条約により廃絶が求められています。それがきっかけで、日本でもPCB特措法を作り、令和9年3月31日までに低濃度PCB廃棄物の処分完了を目指して対策を進めています。

 低濃度PCB廃棄物が長期間にわたって放置されてしまうと、容器の劣化や、それに伴う漏えいなどにより、PCBが環境中に飛散・流出するリスクが高まることが懸念されます。管理者が不明となった場合は、不適正な処理が行われる可能性もあります。放置される期間が長いほどリスクは高まりますので、速やかな処分が行われないと、環境汚染が進んでしまうことになります。

また、PCB特措法で定める処分期限である令和9年3月31日を超えたあとも低濃度PCB廃棄物を保有していると法令違反となり、改善命令(行政処分)等の対象となる場合があります。そのため国としても、(低濃度PCB含有物の)保管事業者の皆様や、まだ使用されている方々に対しては、速やかに処分をしていただきたいと考えています。

 使用中の低濃度PCB含有電気機器についても、長期間使用することによるPCB漏洩のリスクが伴うため、早期に確認して、適切に処分していただくことが望ましいです。低濃度PCB廃棄物が発生した場合には、処理期限までに確実に処分するようお願いします。

 PCBは、国際的にも廃絶を求められている危ない物質です。低濃度PCB廃棄物の処分というのは、企業のコンプライアンスの根幹にも関わる重要な課題ではないでしょうか。一方で、中小企業の皆様や個人事業主の方々にとっては、処理費用が大きな負担となり、処理がなかなか進まないといった状況があります。そこで、環境省は、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団を執行団体とする低濃度PCB廃棄物の補助金制度を設けました(分析・収集運搬・処分において2分の1を補助する)。この制度をうまく活用され、処分を進めていただきたいと思っています。

 昭和47年8月(※家電製品にPCB⼊りコンデンサーなどの部品を使⽤することは、⾏政指導により昭和47(1972)年8⽉末をもって、事実上禁⽌されています)までに作られた家電にはブラウン管テレビや電子レンジなどがあると思いますが、耐用年数を考えると既に廃棄されていると考えられます。また、家電リサイクル法が適用されますので、廃家電はリサイクル業者によって回収されます。よって、リサイクル業者が低濃度PCB廃棄物を適切に処分することになりますので、消費者目線では、心配の必要はないと考えています。


01 PCBとは

PCBは、人工的に作られた、主に油状の化学物質です。水に溶けにくい、沸点が高い、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高いなど、化学的に安定した性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されていました。しかし、米ぬか油の製造時に脱臭工程の熱媒体として用いられたPCBが混入した油を摂取したことによる食中毒事件(カネミ油症事件)が発生し、その毒性が明らかとなりました。この事件で吹出物、色素沈着などの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振など多様な健康被害が確認されたことから、国内では1972年にPCBの製造、輸入、使用が禁止されました。

また、PCBは自然環境の中で分解しにくいこと、有害物質が食物連鎖を通して生物の体内に蓄積されやすく、地球規模で汚染が拡散していることが確認されたため、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の規制対象物質に指定され、国際的には2028年までの廃絶が目指されています。 国内では2001年、PCB特措法が成立・施行し、2027年3月31日を期限として処理が進んでいます。

02 ⾼濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物

PCB廃棄物は、PCB濃度により高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に区分されています。

  1. 高濃度PCB廃棄物:PCB濃度が0.5%(=5,000mg/kg(=ppm))を超えるもの
  2. 低濃度PCB廃棄物:PCB濃度が0.00005%(=0.5mg/kg)を超え0.5%以下のもの

ただし、塗膜くずや感圧複写紙のように可燃性のPCB汚染物については、10% (=100,000mg/kg)を境に高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に分類されています(下の図参照)。

今回の環境省インタビューでご紹介された補助金で、助成対象としているのは低濃度PCB廃棄物です。これは令和9年3月31日までに、適正な処理を終えなければなりません(※高濃度PCB廃棄物は、すでにPCB特措法上の処分期限が終了しています)。低濃度PCB廃棄物のうち多数を占めるのは、数mg/㎏から数10mg/㎏程度のPCBに汚染された絶縁油(電気機器の絶縁や冷却に使用される油)が使用された電気機器とされます。これらは、1990年まで行われた再生絶縁油の製造、流通、使用の過程で汚染されたものとみられています。

出典:低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト

03 低濃度PCB廃棄物の種類

低濃度PCB廃棄物は、大きく低濃度PCB廃油、低濃度PCB汚染物、低濃度PCB処理物の3種類に分類されます。これらのうち、特に微量PCB汚染廃電気機器等は、PCBを使用していないはずの電気機器が意図せず汚染されたものであり、低濃度PCB廃棄物の中で存在量が特に多いタイプとされています。

微量PCB汚染廃電気機器等: PCBが使用された代表的な電気機器は、変圧器(電気の電圧を変換する装置)やコンデンサー(蓄電器)などです。PCBが含まれている変圧器やコンデンサーは、主に古い工場やビル等で使用されていました。電気機器の銘板情報などから製造年を確認しメーカーに問い合わせるか、絶縁油について所定の分析を行い確認する必要があります。

出典:低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト
出典:環境省のパンフレット

04 調査から処分までの主な手順

調査

技術者等に依頼し、キュービクル、分電盤などを調査します。

判別

銘板情報から判別、または採油した絶縁油のPCB濃度の分析を委託します。

助成金が交付される可能性があります
一般社団法人日本環境測定分析協会ホームページにて分析機関の検索が可能です

届出

(1)使用中の機器に低濃度PCBが含まれていた場合
(2)保管中・廃棄物の機器に低濃度PCBが含まれていた場合

上記の場合、設置場所を管轄する産業保安監督部または保管場所を管轄する自治体に、毎年度の状況を翌年度の6月末までに届け出る必要があります。

保管

低濃度PCB廃棄物は、処分するまでの間、廃棄物処理法で定める保管基準に従い、適切に保管しなければなりません。

処分

無害化処理事業者へ処理を委託、処分してください。

助成金が交付される可能性があります

収集運搬の委託

低濃度PCB廃棄物の無害化処理を行う無害化処理施設への運搬は、廃棄物処理法で定める特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を有する収集運搬事業者に委託して運搬しなければなりませんので、都道府県の担当部署に確認してください。無害化処理認定事業者の中には、収集運搬と処分を同時に行うところもあります。

無害化処理事業者への処理委託

低濃度PCB廃棄物は環境大臣の認定を受けた無害化処理認定業者または都道府県・政令市の長の許可を得た民間の処理業者に委託して処理します。これらの業者については、環境省の「低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト」で確認してください。無害化処理事業者によっては低濃度PCB廃棄物のうち廃電気機器の処理ができないところもあるので注意してください。

05 主な助成要件

助成対象者

  1. 中小企業者(会社<株式、有限、合資、合名、合同>、個人事業主、中小企業団体等)
    ※それぞれ要件や基準が定められていますので、本事業に関する公式サイトの「助成金概要」を確認してください。
  2. 法人(会社、中小企業団体等を除く)
  3. 個人
    ・解散または事業を廃止した事業者から、助成対象となる廃棄物を継承して保管している個人
    ・何らかの理由で軽減対象となるPCB 廃棄物を保管することとなった個人
    ・破産者(破産管財人)

申請受付期間

2026年3月31日(火)まで

ただし、予算の範囲を超えた日をもって申請書の受付は停止されますので、ご注意ください。

分析費の助成

助成対象経費:低濃度PCBに汚染されているおそれのある電気機器(高濃度PCB及び安定器を除く)に使用されている絶縁油が低濃度PCBであるかどうかを把握するために行う試料採取および分析に要する経費。

助成割合と限度額:助成対象経費の2分の1/1検体あたり10,000円を限度額とする。

※分析費・処理費ともに、消費税および地方消費税は助成対象外です。

処理費の助成

助成対象経費:

  1. 収集・運搬(積込み・積下しを含む)に要する経費
  2. 漏えい防止措置に要する経費
  3. 処分に要する経費

助成割合:助成対象経費の2分の1

助成限度額:収集・運搬(積込み・積下しを含む)に要する経費および漏えい防止措置に要する経費」の助成金は表3に掲げる額を限度額とし、処分に要する経費の助成金は、表4に掲げる標準処分単価により算出された額または申請者が申請してきた額のいずれか低い方の額の2分の1の額を限度額とする。

助成費に関する表の出典はいずれも本事業の公式サイト

※機器の種類・使用状況ごとの申請可否に関する「整理表」は、本事業の公式サイトにあります。

06 よくある質問

既に分析などを実施してしまったが、これから申請は可能か。

交付決定通知前に実施された分析、収集・運搬および処分については、助成金の交付対象外となりますので注意してください。

2者以上の相⾒積もりが必要か。

見積もりは1者分で構いませんが、助成額には上限がありますので注意してください。

助成金が支払われるタイミングはいつか。

実績報告書の受付後です。事前に助成金を交付することはできません。

分析した結果、低濃度PCBに該当しなかった場合は助成対象とならないのか。

分析費用の助成金は、検査の結果、低濃度PCBに該当しなかった場合も交付されます。

07 まとめ

PCBは、人体に有害で国際的にも廃絶が求められている化学物質です。特に、低濃度PCB廃棄物は、令和9年3月31日という処分期限が迫っています。調査・処理に要する費用負担が生じるため、国(環境省)は中小企業者(個人事業主を含む)に対し、分析費・処理費の2分の1を助成する制度を創設しました。該当する方は、助成金制度を積極的に活用しながら、速やかにPCB廃棄物の適正処理を進めるようにしてください。

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