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2025.09.04

「こんな地域になったらいいな」 データで形にしてみよう! 地方創生☆政策アイデアコンテスト2025募集中

 「もっと若い人が住みたくなる街にしたい」「この商店街を盛り上げたい」「観光客にもっと来てもらいたい」——地域への思いは人それぞれですが、そんな「こんな地域になったらいいな」という願いを、データという武器で形にしてみませんか?住みよいまちにするための、未来づくりのアイデアを競う「地方創生☆政策アイデアコンテスト2025」が作品を募集しています。学生から自治体職員、企業、一般の方まで、誰でも参加できるのが魅力です。

 「データ分析なんて難しそう」と思うかもしれませんが、初心者でも使える分析システムなどが用意されていますので、心配はいりません。まずは、「地方創生って何?」というところから、一緒に考えてみましょう。

01  地方創生とは何か

 地方創生とは、人口減少や東京一極集中といった課題に対処し、地方の活力を取り戻すことを目指す政策です。2014年に「まち・ひと・しごと創生法」が制定されて以降、全国でさまざまな取り組みが進められてきました。

 しかし、現在の地方創生では、「国がすべてをやってくれる時代は終わった。地域も市民も、自分たちのまちを考える時代へ」という考えのもと、地域が自らの未来を考え、創っていく姿勢が何より重視されています。これは、地域の人たちが主役となり、自分たちの手で未来を切り拓いていこうという、希望に満ちたメッセージです。このコンテストへの挑戦は、自分たちのまちのことは自分たちも考える、という取り組みの実践でもあります。

02 地方創生の新しい潮流

地方創生は、これまでの政策を踏まえ、新たな段階に入っています。

観点従来の地方創生現在の地方創生
目的人口減少を止める人口減少を前提に、自律的な地域づくり
主体国主導国・自治体・市民の役割分担
成果限定的路線転換と制度の再設計
RESASの位置づけ政策支援ツール市民参画を促す装置

2.1 新しい地方創生はここが違う!5つの重点ポイント

 現在の地方創生では、若者や女性が住みたい・働きたいと思える地域づくりや、デジタル・新技術の活用といった新しい視点が重視されています。それらの実現のために、国は次の5つの重点政策を掲げています。

① 安心して暮らせる生活環境の整備

若者や女性にも選ばれる持続可能な地域基盤の構築を目指します。若者や女性の転出を防ぐための働き方改革や、女性の起業支援、教育現場でのアンコンシャス・バイアス対策などが挙げられます。

② 稼げる地方経済の創出

地域の資源を活かした高付加価値産業の育成や、スタートアップ支援により、自立的な地方経済の実現を目指します。

③ 人や企業の地方分散

東京一極集中の課題に対処するため、政府機関の地方移転や、地域との多様な関わりを持つ「関係人口」の創出を目指します。

④ デジタル・新技術の活用

AIやデジタル技術を活用して地方の社会課題を解決する「デジタル田園都市構想」やスマート農業、遠隔教育などを推進します。

⑤ 広域リージョン連携

都道府県や市町村の枠を超えて、地方公共団体と企業、大学などが広域的に連携し、地域経済の成長につなげる施策を展開します。

2.2 アイデアを生むツール

 この政策転換を支えているのが、データ活用基盤の進歩です。誰でも地域のデータを活用できる「RESAS(地域経済分析システム)」や「RAIDA(地方創生データ分析評価プラットフォーム)」といったツールが整備されています。これらは、政策立案だけでなく、住民や学生が地域の課題に気づくための装置としても開かれています。

2.3 RESASとは?

RESASは、地域の産業、人口、観光などの現状を可視化できるツールで、内閣府と経済産業省が提供しており、誰でも無料で利用できます。例えば、自分の住む市の主力産業や、観光客がどこから来ているのかなどが一目でわかります。

(出典:RESASの公式サイト

2.4 RAIDAとは?

 RAIDAは、RESASのデータに加えて、さまざまな行政データや統計データを組み合わせて分析できるプラットフォームです。地域の人口動態、経済活動、観光動向などを多角的に分析でき、主に自治体職員が政策効果の検証や地域課題の発見のために活用しています。

 RESAS(2015年公開)とRAIDA(2024年公開)という2つのデータ分析基盤の整備を通じて、地方創生は専門知識を持つ人だけでなく、地域への思いを持つより多くの人々が参加できる取り組みへと発展しています。

(出典:RAIDAの公式サイト

03 コンテストの基本情報

 このコンテストは2015年に始まり、今年で11回目を迎えます。昨年は1,475件の応募があり、多くの地域愛あふれるアイデアが集まりました。

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項目内容
名称地方創生☆政策アイデアコンテスト2025
募集期間2025年9月25日(木)17:00まで
応募方法公式サイトからオンラインで提出
提出物RESASまたはRAIDAを活用した政策アイデア
(分析テーマ、対象地域の概要、課題説明、効果検証を含む)。
また、分析テーマに基づいた解決策の提示、データや引用文献の出所・出典を明記する必要があります。
募集要項では、RESASやRAIDAに加えて、他の公開データや統計資料などを組み合わせて活用することも推奨されています。
対象者学生・自治体職員・企業・一般市民など誰でも参加可能
審査ポイント審査では、主に以下の点が評価されます。
◆RESASなどを活用したデータ分析が行われていること
単にデータを羅列するのではなく、データから課題を特定し、その根拠として活用するアプローチが求められます。
◆地域の地方創生に資する有効性の高い政策アイデアであること
地域特性を踏まえた独創性があり、期待される効果が定量的に説明されているかが重視されます。
◆地域の関係者を巻き込んだ構想となっていること
アイデアの実現可能性、必要なリソース(コスト、人材、設備)や調達手段、
そして地域内の多様なステークホルダー(産業界、学術界、行政機関、金融機関、労働界、言論界、士業など)を巻き込む視点が重要です。
より詳細な評価のポイントについては、募集要項で確認できます。

3.1 表彰について

  • 高校生以下の部:地方創生担当大臣賞2作品、優秀賞3作品
  • 大学生以上一般の部:地方創生担当大臣賞2作品、優秀賞3作品
  • 地域ブロック賞:九つのブロック(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄)ごとに経済産業局長賞、沖縄総合事務局長賞
  • 協賛企業賞:協賛企業からの特別賞

3.2 審査について

 第一次審査(2025 年 10 月上旬~10 月中旬予定)、第二次審査期間(2025 年 10 月中旬~10 月下旬予定)を経て、最終審査会は2025年12月6日(土)に東京都内で開催予定です。

04  過去の参加事例から構想のヒントを得る

 地方創生☆政策アイデアコンテストでは、「地域課題への対応」「データの活用」「地域との連携」といった視点が重視されています。以下に、前回大会から2つの事例を紹介します。

 なお、コンテスト公式サイトの前回2024年大会の審査結果のページでは、受賞者が発表した資料や、プレゼンテーションの模様が分かる動画などを見ることができますので、ぜひ参照してください。

デジタル×観光で花巻に革命を

岩手県立花巻北高等学校/revolutionsは、RESAS(地域経済分析システム)を用いて花巻市の観光客の動向を分析し、観光客の注目が温泉地に集中しており、その他の観光施設があまり検索されていない現状を可視化しました。この課題に対し、デジタルスタンプラリーとAIコンシェルジュを組み合わせたアイデアを提案しました。特に、デジタルスタンプラリーはQRコードを活用し、参加者のデータを収集することで、今後の活動に繋げることを想定していました。また、この取り組みはクラウドファンディングで必要な経費を調達し、地域の企業から協賛を得るなど、資金調達や地域との連携も実践しています。チームは花巻市役所観光課や花巻観光協会へのインタビューも行い、現場の課題感を把握していました。

移住者を増やして地方創生

 熊本県立大学/井田研究室は、RESASを活用して熊本県の人口動態や転入傾向を分析しました。その結果、熊本市以外の地域への転入者が少ないという課題を特定し、生産年齢人口の減少が特に顕著であることを示しました。この課題解決に向けて、移住のハードルを下げるための工夫として、「キャンピングカー体験型」と「公営住宅拠点型」を組み合わせた2段階移住モデルを提案しました。具体的には、キャンピングカーを利用した移住体験や、遊休化した公有地を活用した交流スペース付きの移住エリア建設などが含まれます。彼らは熊本県庁や6つの市町村へのヒアリング調査、移住に関するアンケート調査も実施し、地域の実情に基づいた多角的なデータ分析を行いました。また、「ローカル10,000プロジェクト」のような官民連携の補助金活用も視野に入れていました。

両事例に共通するのは、主に以下の3点です。

① データを「読む」だけでなく「活かしている」

課題の発見から解決策まで、データが構想の土台になっています。

② 実現可能性を意識している

アイデアだけでなく、実施方法や資金調達まで具体的に考えています。

③ 地域との関係性を築いている

机上の構想ではなく、地域の人々との対話や協働を通じて構想を深めています。

 「RESASを使いこなす」こと以上に、「地域をよくしたい」という強い問題意識をデータで客観的に裏付け、具体化していくことが、本コンテストで評価される重要な要素と言えそうです。まずは、ご自身の身近な課題に目を向けてみることから始めてみませんか。

05 構想から実現へ

5.1 フェーズごとの支援

受賞アイデアは、構想段階から実現に向けた支援が行われます。

構想段階のアイデア取り組みたいことの明確化や、組織づくりの支援。

実施が予定されている段階のアイデア詳細な実施内容や、関係者間の協議の場を設定。

既に実施されている段階のアイデア経済的・体制的な持続性の確保や、広報活動の支援。

5.2 実現したアイデアの事例

 地方創生☆政策アイデアコンテストで発表されたアイデアの中には、実際に地域での活動へと発展しているものがあります。しかし、その実現の道のりには、様々な課題も存在します。ここでは、「2022年度 地方創生☆政策アイデアコンテスト 受賞チームアイデア実現支援のためのフォローアップ報告書」から、コンテストをきっかけに実現へ向けて動き出した2つの事例と、その活動を継続していく上で直面する課題についてご紹介します。
(※報告書が公表された2023年3月時点の情報です)

群馬県「銘仙のまち伊勢崎プロジェクト」(2022年度)

アイデア

市の特産品である伊勢崎銘仙の文化継承を図りつつ、市内の空き家や店舗で新たな企画を実施することで、中心市街地の活性化を目指すアイデアです。目標は「銘仙でまちなかを元気に」すること。

実現化

市が主催する月に1回のイベントでブース出展を始めました。しかし、メンバーのほとんどが学生のため、卒業後の活動継続が課題となっています。

兵庫県「聖徳太子 1400 年プロジェクトチーム」(2021年度)

アイデア

ベッドタウンとしての機能を持つ太子町で、町にゆかりの深い聖徳太子を軸に、住民の町への愛着を育むような仕掛けをつくるアイデアです。

実現化

町としてこのプロジェクトに取り組み、2022年12月のイベントでフィナーレを迎えました。町役場の若手職員によるシティプロモーションチームが活動を継続していますが、資金確保が依然として課題です。

5.3 アイデア実現に向けた今後の課題

 コンテストで高く評価されたアイデアであっても、その活動を継続し、さらに発展させていくためには、主に以下の課題を乗り越える必要があると考えられます。

①データ分析に関する課題

データ活用とスキルの向上

RESASだけでなく、他の公開データや商用データなどを組み合わせる際、それぞれのデータの特性や偏り(バイアス)を理解し、分析スキルを向上させることが求められます。

必要なデータの作成

既存のデータだけでは課題の本質に迫れない場合もあります。その際は、自ら調査を実施し、定量・定性を問わず必要なデータを作成する意識が重要です。

反復的なプロセス

アイデア形成から実行までを一方通行で進めるのではなく、実践後に再びデータ分析に戻るなど、試行錯誤を伴う「反復的なプロセス」を導入することが、アイデアを磨き上げる上で不可欠です。

②実践的活動の持続に関する課題

活動を継続していく上で欠かせないのが、以下の3つの要素です。このいずれか一つでも欠けると、活動が頓挫するリスクが高まります。

経済的な持続性

活動を持続させるための収益化モデルを初期段階から設計することが重要です。クラウドファンディングや助成金、制作物の販売など、資金獲得方法を具体的に検討する必要があります。

チームの継続的な活動

学生の卒業や自治体職員の異動などによるメンバー交代は、活動継続の大きな課題です。コアメンバーのリソースに合わせた活動範囲や頻度の設定、仲間集めの方針を検討し、実行していくことが重要です。

明確なオーナーシップ

複数の主体が連携して活動する際、関係者間で「自分のこと」として捉えるマインドセット(オーナーシップ)が共有されていない事例も見られます。関係者がオーナーシップを持って活動を推進できるような連携体制を構築することが重要です。

これらの課題を乗り越えるためには、経済的な持続性、メンバーの継続的な活動、明確なオーナーシップという3つの要素を、活動の初期段階からしっかりと検討しておくことが不可欠です。自身のアイデアが現実のものとなるよう、これらの視点から自己点検してみましょう。

06 よくある質問

データ分析が苦手でも参加できる?

もちろん参加できます。重要なのは高度な分析技術ではなく、「地域をよくしたい」という思いと、データから気づきを得ようとする姿勢です。RESASは、地図やグラフを使って、地域の人口動態や産業構造、観光動向などを視覚的に把握できるツールです。RAIDAでは、RESASのデータに加えて、行政統計などを組み合わせた多角的な分析が可能です。どちらも無料で使え、操作マニュアルも公開されていますので、安心して取り組めます。

チームでの参加は可能?

可能です。多様な視点を持つメンバーでチームを組むことで、より豊かなアイデアが生まれることが期待されます。個人での応募のほか、学校や企業のチーム、異世代・異業種の混成チームなど、様々な参加形態が可能です。

受賞した場合の具体的なメリットは?

表彰や副賞はもちろん、以下のような価値ある機会が得られます。

発表・交流の機会

最終審査会では、企業関係者の前でアイデアを発表でき、その後の活動につながる出会いが生まれる可能性もあります。

実装の可能性

コンテストがきっかけで実際に政策化されたり、地域との継続的な連携に発展したりする事例もあります。

全国への発信

公式サイトでアイデアが公開され、全国の地方創生に関心を持つ人々に見てもらえます。

ネットワークの拡大

地域を想う仲間との出会いが、活動の大きな支えになります。

07 今こそ、地域の未来に向けた一歩を

 地方創生は「自律」の時代に入り、RESASとRAIDAは、そのための気づきのツールとして、私たち一人ひとりに開かれています。データという新しい「眼鏡」をかけて地域を見つめ直してみると、これまで気づかなかった課題や可能性が見えてくるかもしれません。そして、その発見こそが、地域の未来を変える第一歩になります。

 コンテストに参加することは、自分のまちを考える絶好の機会です。たとえ受賞に至らなくても、地域データと向き合い、課題を整理し、解決策を考える過程そのものが、あなたにとって貴重な経験となるはずです。あなたのアイデアが、誰かの暮らしをちょっと良くする一歩になるかもしれません。

 「こんな地域になったらいいな」——その思いを、データで形にしてみませんか?データが示す現実と、あなたの想いが出会うとき、きっと新しい地域の可能性が見えてくることでしょう。

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