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2025.06.20

ガストロノミーツーリズム推進 食の魅力を最大限に活用し、地域活性化の起爆剤に! インバウンド誘客へ観光庁が補助事業 

今、外国人旅行者から絶大な人気を誇る日本食。日本食の魅力を最大限に生かしてインバウンド(海外からの旅行者)誘客を進めるとともに、地方への誘客を促進する取組を、観光庁が実施しています。その土地の気候風土が育んだ食材(特産品など)や、そこに根差した習慣、伝統、歴史に触れることを目的とした旅を意味するガストロノミーツーリズム「2.ガストロノミーツーリズムとは」参照)を体験するために必要な施設の整備・改修やコンテンツ(観光客に魅力を伝えるための要素や体験)造成などに必要な経費の一部を国が補助する事業です。食べてよし、文化に触れてよし。皆さんの地域の食の魅力を最大限に引き出し、新たな観光需要を創出する一歩になりうる本事業の魅力を、ご紹介します。

01 データが示す日本食人気の現状

日本食の高い人気が続いています。インバウンド消費動向を調査した観光庁の2024年の年次報告書 「訪日外国人の消費動向」によると、訪日前に期待していたことを複数回答で尋ねたところ、「日本食を食べること」が82.2%で最多となりました。次いで「ショッピング」(62.8%)、「繁華街の街歩き」(54.7%)、「自然・景勝地観光」(53.6%)と続きました。

また、今回の日本滞在中に実際にしたこと(複数回答)でも、「日本食を食べること」が97.9%と最も高く、多くの旅行者が期待を裏切らない体験をしていることがわかります。特に、日本滞在中に「日本食を食べること」で96.9%という非常に高い満足度を示しています。飲食に満足した理由を見ると「美味しい」(94.0%)、「食材が新鮮」(45.5%)、「伝統的・日本独特」(21.0%)などが挙げられています。 これらのデータが示すように、日本食が訪日外国人の圧倒的な人気を集める背景には、多様で新鮮な食材、健康的で栄養バランスの取れた食文化、そして料理を通じて表現される自然の美しさや季節感といった、多岐にわたる魅力があると考えられます。

2.ガストロノミーツーリズムとは

今回、観光庁が実施しているのは「観光振興事業費補助金(食の力を最大活用したガストロノミーツーリズム推進事業)補助対象事業」です。ガストロノミーツーリズムは、フランス語の「ガストロノミー(美食)」と英語の「ツーリズム(観光)」を組み合わせた言葉です。ただし、単に美食を楽しむ旅行を意味するわけではありません。

ガストロノミーツーリズムは、その土地の気候風土が生んだ食材、習慣、伝統、歴史などによって育まれた食を楽しみ、食文化に触れることなどを目的としたツーリズムで、地域の伝統や多様性を下支えするだけでなく、文化の発信、地方経済の発展、持続可能な観光の実現などにも役立つものとされています。例えば、次のような要素が含まれます。

  1. 伝統的な食文化や料理を学ぶ体験
  2. 地元の食材を使った料理教室への参加
  3. ワイナリーや酒蔵、農園などの生産現場訪問
  4. 食のイベントや祭りへの参加
  5. 地域の食文化に詳しいガイドとの交流

このような交流や体験を通して旅行者が食に関する文化や歴史を学び、その土地への理解を深めることで、地域活性化へとつながる可能性があります。

本事業における「食」の力を最大活用したガストロノミーツーリズム推進の考え方については、公募要領に説明があり、以下に掲げる点を複合的に実施することを重視する、としています。

  1. 外国人旅行者から需要が高い「食」について、外国人目線で展開する「ガストロノミーツーリズムコンテンツ」(地域の習慣・伝統・歴史・文化に根ざした地域の食体験)を造成し、その地域の特色、経済的発展、伝統的文化への意識を高める。
  2. 地元では有名な「食材・料理」をより付加価値の高い場所や斬新な場所で食し、また、食文化体験ができることでその地域に関心を持ち、外国人観光客目線で地域の知名度を向上させ、観光誘客を図る。
  3. 事業者のみならず、生産者や地域住民、行政など地域が一体となり地域の食文化をPRすることで、持続可能な観光の受入体制の強化を図る。
  4. ガストロノミーツーリズムが地域における持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する。
  5. 日本版ガストロノミーツーリズム(食文化ツーリズム)として観光産業の新たな一躍を担う。

03 なぜ今、注目されるのか

ガストロノミーツーリズムへの関心が高まっているのは、訪日外国人旅行者が日本の「食」に対して強い関心を有していることが大きな理由の一つです。また、先述した通り、その持続可能性に対する期待の表れとも言えるでしょう。

持続可能な責任ある観光の促進を責務とする国連専門機関「世界観光機関(UN Tourism)」が公表している ガストロノミーツーリズム発展のためのガイドライン(日本語訳:2020年12月発行)に掲載されている「10の推奨事項」は示唆に富んでおり、各地域でガストロノミーツーリズムに取り組むにあたっての重要な指針になりそうです。

「ガストロノミーツーリズム発展のためのガイドライン」のポイント(10の推奨事項)
 

コラム 無数の〇〇ツーリズム

ここまで、ガストロノミーツーリズムが持つ意味や概要について、ご紹介してきました。ところで、〇〇ツーリズムは、「ニューツーリズム」と言われるもので、特定のテーマに沿った体験や交流を重視した旅行スタイルを意味します。インターネット検索をすると、それこそ無数の〇〇ツーリズムがあり、体験型・経験型の旅行が人気であることが分かります。

例えば、エコツーリズム/グリーンツーリズム/ヘルスツーリズム/メディカルツーリズム/スポーツツーリズム/ロケツーリズム/ダークツーリズム/インダストリアルツーリズム/サスティナブルツーリズム/スローツーリズム/アドベンチャーツーリズム/ユニバーサルツーリズム/インフラツーリズム/コンテンツツーリズム/ダムツーリズム…。

どのようなことを体験するのか、想像がつきますか?

 ニューツーリズムの対極にあるのがマスツーリズムです。観光事業者らが企画制作した団体旅行や、パッケージツアーなどの観光商品を通じて、大勢の観光客が同じような体験をします。ただ、大量輸送や大量消費を伴うマスツーリズムは、環境への負荷が大きいと認識されるようになってきたこともあり、より環境に優しいエコツーリズムや、より個人の趣味趣向に沿ったニューツーリズムの人気が高まってきたようです。

 さて、皆さんは旅行にどのような価値を求めますか。どのような体験をしてみたいですか。


04 事業目的

それでは、ガストロノミーツーリズム推進事業の紹介に戻りましょう。訪日外国人旅行者に人気の食ですから、食を軸にした観光振興に取り組みたいという地域は多いです。しかし、単なる一過性のイベントや一部の飲食店などの取組にとどまらず、地域の歴史や文化、自然環境などと関連付けた本質的な体験を提供し、地域経済への波及効果を生み出している事例はまだ少ない状況です。

そこで本事業では、食の力を最大限に活用したガストロノミーツーリズムを体験するために必要な施設などの整備・改修や設備・備品の購入、コンテンツ造成、販路形成などの取組に対して支援を行い、訪日外国人旅行者らの消費額の拡大や地方誘客の促進につなげることを目指します。

05 事業の要件など

応募期間

2025年6月30日(月)17:00まで(必着)

申請団体の要件

地方公共団体、観光地域づくり法人(DMO)、民間事業者など

補助対象経費

歴史的建造物、文化施設や公的空間といった特別な施設などの整備・改修費や、ユニークベニュー(美術館や博物館、歴史的建造物など、会議やイベント、レセプションを開催することで特別感を演出できる施設のこと)活用にあたって特別な空間演出などを必要とする設備・備品の購入、体験コンテンツ造成に要する経費、販路形成に係る旅行商品の造成や各種情報発信などに要する経費

※原則として、補助金は事業終了後の精算払いとなります。

※施設などの整備・改修、設備・備品の購入の場合、見積書(写)を提出する必要があります。

※消耗品は補助の対象外です。本事業の設備・備品については、原則5万円以上、耐用年数3年以上のものとしています。基本的に5万円未満の物品は補助対象外となりますが、耐用年数が長く、保管・管理ができ、事業に役立つものであれば認められる場合があります。

審査の必須項目

1) 事業計画の的確性(例:旅行者一人当たりの観光消費額及び地域の収益増加が見込めるよう具体的に提案されていこと)

2) 地域に対する理解度(事業実施地域の食文化等に精通しており、当該地域の擁する地域資源やそれらをとりまく状況・課題等を幅広くかつ深く把握していること)

3) 事業計画に位置づけられた補助事業の確実性及び継続性(例:補助事業終了後も事業者自らによる事業の継続及び拡大を見据えた実施体制となっていること)

補助率

1/2以内

補助上限額

1事業計画当たり2,500万円

※下限は特に設けません。

応募方法

電子メールで申請書など所定の書類を提出してください。

申請書類のほか問い合わせ先・提出先などは本事業の公式サイトでダウンロードしたり確認したりすることができます。

注目

T地域関係者との連携が図られ、地域一体となった取組であることが具体的に分かる事業は、優先的に採択される可能性があります。

06 成功事例に学ぶ具体的な取り組み

 観光庁は、地域一体型ガストロノミーツーリズム推進のための成果事例集を公表しています。この事例集は、ガストロノミーツーリズムの推進を検討している地域の方が、地域における観光分野の経済波及効果を最大化するためのノウハウや参考事例をまとめたものです。地域が抱える課題、それを乗り越えて目指す姿、そして事業計画策定・評価における3要素(後述)がどのように設定され、成果を上げたかについて、具体的な記述がなされており、非常に参考になります。一例を見てみましょう。

「一次生産者との連携を通した『山形村短角牛』の域内活用推進」(申請者:岩手県久慈市)では、自然放牧で健康に飼育される希少種の和牛「山形村短角牛」を活用したメニュー開発・周知施策と、インバウンド対応に関するセミナー開催及びツアーの開発・検証に取り組みました。

山形村短角牛というオンリーワンの価値ある地域資源がありながら、インバウンドへの意識が不足し、観光コンテンツとしての造成もなされていなかったといいます。そこで、地域のインバウンド対応メニューを5つ以上確立すること/台湾やフランスからの観光客をターゲットとしたグルメツアーは2つ以上造成すること/グルメ体験を中心に楽しむ観光客層を作り出し、観光客による消費額を2倍に伸ばすこと、を目標としました。

「計画策定・評価における3要素」に沿った具体的な取組により、一定の成果も得られました。

軸となる食の開発

「山形村短角牛」の赤身を活かしたメニュー開発および伝統文化を絡めた訴求方法の検討、テストマーケティングを通して「山形村短角牛」の魅力を発掘できた。

課題:他地域の肉との差別化

特別な体験(ツーリズム)の造成・提供

GI(地理的表示制度)登録されている「木炭」や、日本一の白樺美林を活用した自然体験と、食に関するツアー造成につながった。モデルツアーでの評価を通して、高付加価値商品としての磨き上げに関する課題を得た。

課題:高付加価値な宿泊・食体験の提供、販路構築

持続的な推進を踏まえた体制づくり

一次産業との連携体制の構築。また、試食イベントを通したシビックプライド(地域への誇り)の醸成・取組周知拡大にもつながった。

課題:市内広域での連携

ガストロノミーツーリズムの計画策定・評価における3要素の図

07 よくある質問

補助対象とならない経費には、どのようなものがあるか。

例えば景品などの購入費、クーポンや乗車船券などの割引原資のための経費、既存物品の買い替え(同レベル機能の場合)に必要な経費、消耗品に該当する経費などは対象外です。詳細は公募要領で確認してください。

申請書は郵送することはできるか。

電子メールによる提出のみ可能ですので、紙媒体や CD-ROM などの電子媒体を、郵送や持込みなどの方法で提出することはできません。なお、提出する電子データは、ファイル容量が合わせて 10MB 以内にする必要があります。ファイル送付にあたり、電子メールへの添付に代えて大容量送受信ツールなどを用いることは、原則としてできません。

08 まとめ

訪日外国人旅行者からの「日本食を食べること」への高い期待に応えるため、観光庁が展開しているのが、「食」の力を活かしたガストロノミーツーリズム推進事業です。この事業は、観光分野における地域全体の経済波及効果の最大化、旅行者の消費額拡大、地方誘客の促進を目指し、地域が一体となった持続的な取り組みを支援するものです。計画策定・評価においては、「軸となる食の開発」「特別な体験(ツーリズム)の造成・提供」「持続的な推進を踏まえた体制づくり」という3つの要素が重要視されます。各地域が秘める食の魅力を磨き上げ、多様な関係者が連携し、独自の食文化を体験型のコンテンツとして発信することは、国内外からの旅行者を呼び込むだけでなく、地域住民が自身の地域の価値を再認識する貴重な機会にもなることでしょう。

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