
再生可能エネルギー等の普及の可能性を秘めた「種」をまき、事業という大きな「幹」に育てようという「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が助成するこの事業について、2025年度の公募が行われています。まず公募されているのは中小企業やスタートアップ企業による「新エネ中小・スタートアップ支援制度」です(※中小企業のみならず大企業も応募できる「未来型新エネ実証制度」は、NEDOが別途公募予定です)。2025年度の助成要件などをまとめました。
01 新エネ中小・スタートアップ支援制度とは?
中小・スタートアップ企業が有する再生可能エネルギー分野の技術シーズ(=新たな事業開発を進めるための基礎となるノウハウやアイデア)を基にした研究開発に関し、NEDOが公募するものとしては、「新エネ中小・スタートアップ支援制度」と「未来型新エネ実証制度」の二つがあり、今回、NEDOが公募するのは「新エネ中小・スタートアップ支援制度」です。


02 事業の目的と期待される効果
新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業は、再生可能エネルギー分野を導入・普及させるための研究開発に助成し、事業化・ビジネス化につなげることが狙いです。中でも、新エネ中小・スタートアップ支援制度は、中小・スタートアップ企業等が有する技術シーズを活用した、再生可能エネルギーの大量導入に役立つ研究開発を支援する内容となっています。また、福島イノベーション・コースト構想の推進につながる研究開発の支援を強化することにより、福島県浜通り地域の復興・再生に貢献する狙いもあります。
つまり、事業を通じて以下のような効果が期待されます。
期待される効果
- 実用化に向けた技術開発の促進
- スタートアップ企業の自立的な成長
- 国内外のベンチャー・キャピタル等からの資金呼び込みの推進
- 再生可能エネルギー分野における新たな事業創出と拡大
- 低炭素・脱炭素化技術開発への貢献 ü潜在的な優れた研究テーマの発見
このように、「新エネ中小・スタートアップ支援制度」は、単なる技術開発の支援にとどまらず、事業化、資金調達、社会実装、そして地域貢献といった多角的な側面から日本の再生可能エネルギー分野の発展を力強く後押しすることが期待される制度なのです。
キーワード
福島イノベーション・コースト構想
福島県浜通り地域等の産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクト。対象地域で実施する新エネ中小・スタートアップ支援制度にかかる提案は、審査における加点及び助成金額の上限額の増額といった支援強化策が図られる。
03 事業スキーム
新エネ中小・スタートアップ支援制度は、再生可能エネルギーや低炭素・脱炭素化技術の開発等に取り組む中小・スタートアップ企業の提案を、研究開発や事業化計画の進捗状況に応じ、フェーズA/フェーズα/フェーズB/フェーズβ/フェーズCという5段階のフェーズに分けて助成します。
また、新エネ中小・スタートアップ支援制度は、ステージゲート審査が設けられているのが特徴です。

各フェーズの関係性
フェーズA/フェーズB
社会課題解決枠
新エネ等の導入・拡大の障壁となる社会的な課題の解決を目的とした研究開発
フェーズC
実用化研究開発
事業化に向けて必要となる実用化技術の研究開発、実証研究
フェーズα/フェーズβ
新市場開拓枠
新エネにおける新たな市場の開拓を目的とした研究開発
各フェーズを通算して、原則として最大8年以内に実用化を目指します(通算5年の研究開発終了後、3年以内の実用化を想定)。研究開発や事業化計画の進捗状況に応じ、事業はどのフェーズからでも始めることができます。
キーワード
ステージゲート審査
次のフェーズへの移行について、その可否を外部有識者により評価する審査のこと。具体的には、社会課題解決枠のフェーズA及びフェーズB並びに新市場開拓枠フェーズα及びフェーズβの終了前に実施し、それぞれのフェーズで得られた結果(研究開発成果、ビジネスプラン、次のフェーズでの計画等)をもとに、移行可否を判断する。
ステージゲート審査を経ると、以下のように移行することができる。
審査後のフェーズ移行
- 社会課題解決枠フェーズA→フェーズB
- 新市場開拓枠フェーズα→フェーズβ
- 社会課題解決枠フェーズBまたは新市場開拓枠フェーズβ→フェーズC ①、②については、必ずステージゲート審査を受ける必要がある(NEDOが認めた場合を除く)。③については、任意でステージゲート審査を受けることが可能。
キーワード
フィージビリティ・スタディ
新製品や新事業に関する実行可能性や実現可能性を検証する作業のこと。具体的には、科学的・技術的メリットの具体化、研究開発の実施、市場調査などを行って、事業の実現可能性の見通しをつけること。
04 助成内容や助成要件等
全フェーズ共通の応募要件として、下記「1.」「2.」が挙げられます。
1.エネルギー基本計画等に示されている(1)又は(2)の分野に該当し、再生可能エネルギーの普及につながる提案であること
(1)太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス利用、太陽熱利用、その他未利用エネルギー分野
(2)再生可能エネルギーの普及、エネルギー源の多様化に資する新規技術(水素・燃料電池、蓄電池、エネルギーマネジメントシステム等)
2.日本国内で登記されている中小企業等であって、研究開発拠点を国内で確保できること
フェーズごとの応募要件などは、以下の通りです。
フェーズA
- 応募要件
- 共同研究先として、学術機関等を実施体制に加えること
- 共同研究先との役割分担(共同研究先の開発取組内容)が明確に示されていること。(提案者と共同研究先の解決すべき技術課題が、それぞれ明確となっていること。)
- 事業期間:1年以内
- 助成対象費用:原則として、1テーマあたり1,250万円以内
- 助成率:8/10以内(NEDO負担額:1,000万円以内)
キーワード
学術機関等
国公立研究機関、国公立大学法人、大学共同利用機関法人、公立大学、私立大学、高等専門学校、ならびに国立研究開発法人、独立行政法人、地方独立行政法人及びこれらに準ずる機関
フェーズB
- 応募要件
- 提案書における「委員会等における外部からの指導及び協力者」に学術機関等からの指導・協力者を入れるなど、実施体制に学術機関等を含むこと
- 事業期間:原則として2年以内
- 助成対象費用:原則として、1テーマあたり6,250万円以内
- 助成率:8/10以内(NEDO負担額:5,000万円以内)
フェーズα
- 応募要件
以下(i)、(ii)のいずれかの資料を提出すること
(i)ベンチャー・キャピタル等から出資を得ている場合:本提案に関して出資を得ていることを示す出資理由確認書及び投資契約書等の、出資を確認する書類の写し(出資実行が公募締切日より遡って原則1年以内であること)
(ii)ベンチャー・キャピタル等から出資を得ていない場合:ベンチャー・キャピタル等の出資(検討)意向確認書
- 事業期間:1年以内
- 助成対象費用:原則1テーマあたり1,500万円以内
- 助成率:2/3以内(NEDO負担額:1,000万円以内)
フェーズβ
- 応募要件
以下(i)、(ii)のいずれかの資料を提出すること
(i)ベンチャー・キャピタル等から出資を得ている場合:本提案に関して出資を得ていることを示す出資理由確認書及び投資契約書等の出資を確認する書類の写し(出資実行が公募締切日より遡って原則1年以内であること)
(ii)ベンチャー・キャピタル等から出資予定の場合:ベンチャー・キャピタル等が出資を予定していることを示す出資意向及び理由確認書(採択された場合、採択通知日から30日以内に、投資契約書等の出資を証明する書類の写しの提出を求めます)
- 事業期間:原則として、2年以内
- 助成対象費用:原則として、1テーマあたり1.05億円以内
- 助成率:2/3以内(NEDO負担額:7,000万円以内)
フェーズC
- 応募要件
- 事業期間終了後3年以内での事業化を達成可能とする具体的な内容であること
- 予め、基礎となる技術が確立されていること
- 事業化に当たり、法的規制等がある場合には、具体的な対応策を有していること
- 事業化に当たり、具体的な知財戦略を有していること
- 事業期間:原則として、2年以内
- 助成対象費用:原則として、1テーマあたり2.25億円以内
- 助成率:2/3以内(NEDO負担額:1.5億円以内)
05 受付期間や応募手続き等
公募期間:2025年6月12日(木)正午までに書類のアップロードを完了させること
応募手続き等:以下両方の準備が必要です
- 府省共通研究開発管理システム(e-Rad)の申請
- NEDOへの提案書類(Web入力フォームによる登録)
注意:e-Radシステムの使用にあたっては、事前に研究機関及び研究者の登録が必要です。
06 事前審査基準と本審査基準
事前審査基準
フェーズA及びフェーズB/フェーズα及びフェーズβ
技術審査の主なポイント
- 解決すべき技術課題が、明確に示されていること
⇒記載されていない場合、他項目の審査結果にかかわらず不採択。 - 化石燃料の使用量削減などに加え、自立運転システムやCO2削減等に活用され得る等、国民生活や社会経済に対する波及効果が大きいこと
⇒再生可能エネルギー導入量やCO2削減量など、具体的な成果の予測を定量的に示すこと。
事業化審査の主なポイント
- 事業内容が市場ニーズを踏まえており、競合するビジネスと比較して優位性が高いこと。
- 市場ニーズ及び競合するビジネスが具体的に示され、信頼できるものであること
⇒市場ニーズ及び競合ビジネスに関する説明の記載がない場合、他項目の審査結果にかかわらず不採択。
フェーズα、βのみ
- ターゲット市場の規模が十分に大きく、短期間で高収益が望める収益モデルとなっていること。
フェーズC
技術審査の主なポイント
- 実用化研究開発の目標が、合理的な根拠に基づき具体的かつ定量的に設定されており、解決すべき技術課題が明確に示されていること
⇒解決すべき技術課題の記載がない場合、他項目の審査結果にかかわらず不採択。
事業化審査の主なポイント
- 事業化計画の内容が、市場ニーズ等を踏まえたものであり、競合するビジネスと比較して優位性が高いこと
⇒市場ニーズ及び競合ビジネスに関する説明の記載がない場合、他項目の審査結果にかかわらず不採択。
本審査基準の主なポイント
全フェーズ共通
- 助成事業の目標が、NEDOの意図を踏まえていること。
- 助成事業の方法、内容等が優れていること。
- 助成事業の経済性が優れていること。
07 よくある質問
- 同一テーマで複数フェーズへ、同時に提案することはできるか。
-
できません。他方、同一提案者が複数のテーマを提案することは可能です。
- フェーズB、フェーズβ又はフェーズCから、その事前のフェーズ(例えばフェーズBの場合はフェーズA)の事業を行わずに応募することは可能か。
-
直接フェーズB、フェーズβ、又はフェーズCから応募することは可能です。計画書で、提案時点又は本フェーズ以前の開発状況を、必要に応じて説明してください。
- 実施体制に加えることのできる共同研究先に制限はあるか。
-
国内の学術機関等、一般財団法人、一般社団法人に限ります。民間企業、海外の学術機関等は対象外です。なお、対象外事業者を共同研究体制に含めた上で提案事業を実施することは可能ですが、NEDO費用の助成対象にはなりません。
08 まとめ
NEDOの「新エネ中小・スタートアップ支援制度」は、再生可能エネルギー分野の優れた技術シーズを「研究」で終わらせず、「事業」として成功させるための制度です。ステージゲート審査やフェーズごとの厳格な審査基準により、実現性の高いプロジェクトが選定される仕組みと言えるでしょう。企業の挑戦が、再生可能エネルギーの大量導入や脱炭素社会の実現に貢献し、新たなビジネスとして大きく花開く可能性があります。応募にあたっては、オンラインシステム(e-Rad)への事前登録等の準備もお忘れなく!
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